俺は暗い闇の中、またヴォイドのような地面の上に立っていた。相変わらずの落ち着く部屋だが、俺を此処に呼んだ犯人はわかっているので、今は驚くこともなく歩いた方がいいだろう。
俺はそう思い、闇の中を進み始める・・・・・・まるで俺を誘うようだが、待っているのは真名なので警戒しなくてもいいだろう。
そして数分歩くと、目の前にはあのヴォイドの・・・・・・アポカリプスと呼ばれる結晶の前で俺は真名が現れるのを待った。そうして数分後、結晶体の上には、いつも通りに脚をぶらぶらさせているピンク髪の少女が現れた。
「やあ、真名。何時も思うけど・・・・・・下着が見えるからやめた方がいいよ?」
「へぇー、興味あるんだ~。見てもいいわよ? それに、この空間は私と桜歌だけの特別な場所。私と桜歌以外は入れないの。何度も誘惑してるのに答えてくれないし」
「それはごめん。でも、現実で会いたいだろ? 俺も、本物の真名と会いたいな」
「そう・・・・・・でも、今日はブロンドの熾天使さんと一緒だったじゃない。本当は私のことなんてどうでもいいんでしょ? ただ機嫌をとって、力が欲しいだけ・・・・・・」
どうやらガブリエルさんと俺の会話とか、いろいろが聞かれていたようで、真名は拗ねたような素振りを見せる。俺も《王の能力》がちゃんと全部が解放されるのは嬉しいけど、それ以外の戦い方を学んでいるために欲しいとも言えない。実質、これは貰い物の力だ。
「わかってるのね。でも、少し寂しい。桜歌は私のよ」
「いや、俺は君のものじゃないし。それはいいけど、まだ教えてくれないんだね・・・・・・」
「下着の色はピンクよ?」
「・・・・・・真名、それは聞いてない」
真名は話を逸らすように下着の色をピンクだと言う。それを聞いているわけではないのだが、今日俺を呼びだした理由はわかった。多分、ガブリエルさんに嫉妬してるんだと思う。
「・・・・・・酷い、わかってて『会いたい』って言うなんて・・・・・・! やっぱり、女の子は外見なんだ。
中身だけの私なんて、体の無い私なんてエッチなことが本当の意味でできないものね。私は思念体であって、本物じゃない」
「お~い、真名? そんなにしてほしいの?」
「当たり前よ! 桜歌にさえ愛されれば私はそれでいいの!!」
どうやら真名はご立腹のようで、膝を抱えて座りながら、俺に対して怒ったように言ってくる。まるで拗ねているようって言うか、何だろうね?
俺は考えながらも真名を見ていると、綺麗な脚と下着がスカートの中から見える。───本当に何でこの子は本当の下着の色を答えるのだろうか・・・・・・ピンクだった。
「桜歌のエッチ」
「真名、男の性だから心の中を読むのは止めてくれ。じゃないと、何でも見透かされてるこっちが鬱になりそうだから」
真名は顔を少し赤くしながら、俺の方を見てそう言ってくる。否定はしないが、一誠ほどの変態ではない。もう本当に見透かされすぎて、頭がおかしくなりそうだ。
「キスしてくれたらあの人と会ってたこと許してあげる」
「わかったよ。じゃあ、降りてきてくれない?」
「ダメ。あなたがこっちにきて」
真名はそう言って、自分の座っている結晶体を軽くたたく。どうやら登ってきてほしいらしく、俺はジッとその綺麗な目で見ている。・・・・・・うん、何を考えているかわからない。
俺はそう思いつつも結晶を登り、真名の隣に座った。真名は明らかに嬉しそうに頬をゆるめ、俺の顔をジッと見てくる。どうやら、俺からのキスをご所望のようだ。
真名の頬に手を振れ、顔をだんだん近づける。真名は目をつむり、俺はそのまま真名の唇に自分の唇を押し当ててキスをした。真名は嬉しいのか、ぎゅっと抱きついてくる。
「ちゅ・・・あっ・・・桜歌・・・はぁ・・・くちゅ・・・ぷはぁっ。───桜歌のキス、貰っちゃった♪」
真名はそう言い、俺の胸に寄り添ってくる。制限時間とかないのかは聞きたいけど、今は真名の好きにさせておこう。
「配慮は嬉しいけど、もう時間よ。今度会うのを楽しみにしてるわ。じゃあ、バイバイ♪」
「───えっ? ちょっと何で押したんだよ!?」
俺は真名に『バイバイ』と言われると同時に、結晶から落とされて暗い闇の中に落ちていく。それを真名が楽しそうに見ながら、俺は奈落の底に落ちていくのだった。
数日後の朝、俺はいつも通りに目を覚まし、いつも通りにトレーニングをした。真名は上機嫌で俺の頭の中で歌を歌っているため、俺も周りの音があまり聞こえない。そう言うより、ふつうの常人と同じレベルで聞こえている。
「さあ、今日が特訓の最終日よ! みんな、気合いを入れていきましょう!」
「「「「おぉーーーー!!!!」」」」
リアス先輩のかけ声に答えたのはリアス先輩の眷属だけで、俺といのり、祭はこの元気さに驚いている。今はリビングで、みんなが最後の気合いを入れたところだ。やっぱり真名より、リアス先輩達の方がうるさいのと言うのは言わないでおこう。
『元気ね、あなたの仲間は・・・もしかして、男も桜歌を・・・!』
『真名、俺はノーマルだから安心しろ』
俺の頭の中で被害妄想をたてる真名は、上機嫌でまた鼻歌を歌い始める。俺がノーマルかどうかはどうでもいいようで、全く気にしていない。それどころか、俺に『愛されていればそれでいい』というのは結構本気だったようだ。あの中じゃ、俺の嘘を見抜くスキルも役に立たない。
「・・・・・・桜歌先輩、今日も連れて行ってください。まだちゃんと修得できていませんし、それに姉様のうるさい顔を見るのも・・・・・・その、面白いですし・・・・・・」
「ああ、じゃあ行こうか」
白音は少し恥ずかしそうにしながらも、黒歌のことを話題に出す。あれからというもの、白音は黒歌に仙術を習いに行く度に仲良くなってきている。会わせてよかったというか、俺のやったことは無駄じゃなかったようだ。何より、俺と白音の仲が悪くなって、告白された後に騙したみたいにならなくてよかったと思ってる。
俺は魔法陣を展開し、それが白音と俺を包み込み、リビングから音もなく消えるのだった。
気が付くとそこは京都の何処か・・・・・・目の前には、八坂さんと九重の屋敷の中であろう庭園が見えている。そして、俺に飛びつく大きな影と小さな影・・・・・・うん、八坂さんと九重だ。白音には同じように黒歌がくっついており、白音はうっとしそうにしながらも、恥ずかしそうに黒歌を押し退けようとしている。
「姉様、私に対する当てつけですか」
「違うにゃ! ただ私は妹を愛でようとしてるだけにゃ!」
「その邪魔な二つのものを私に当てないでください」
「桜歌は喜ぶにゃ!」
「私に対しては当てつけでしかありません」
こういう風に、二人は仲良く? なってきているのだ。喧嘩しているように見えるが、喧嘩するほど仲がいいとも言う。俺に抱きつく二人・・・・・・というか、二匹も俺に頬ずりをしている。
「うぅ・・・さびしいのぉ。今日で終わりとは、寂しすぎるのじゃ」
「妾も嫌じゃ! 桜歌ともっと遊びたいのじゃ!」
「あはは、また遊びに来るから二人とも早く修行を始めようよ。今日の夜の12時までが期限だからさ。いつもよりは時間があるよ」
それを聞いたとたん、八坂さんと九重は嬉しそうな顔になる。
俺は二人を離して、八坂さんと九重の遠くに離れ、向かい合うように立った。
八坂さんも気分を入れ替えたのか、真剣な顔で俺を見る。その顔はまるで俺を狩ろうとする獣のように、光っていた。
「あっちも始めたようじゃのう。じゃあ、こっちも始めるとするかのう」
隣を見てみると、白音と黒歌が仙術の修行を始めていた。そうして俺も白音から目を離すと、目の前には3匹の炎の狐が・・・・・・。
「危なっ! 八坂さん、何でいきなりスイッチ入ってるんですか!?」
「これも桜歌の為じゃ。いのりと結婚するのであろう? 妾も苦しいが、桜歌のために心を鬼にするのじゃ」
そう言って、次々に火を放ってくる八坂さん。俺は同じように火を操り、ぶつけ合うことで相殺していく。
「ほれ、妾に火で勝てると思っておるのか?」
「思ってません!」
さらに八坂さんが放つ火の弾数が増え、俺に向かって容赦なく襲ってくる。これを一気に受けたらトラウマものだろうが、そんなことを言っている余裕はない。
かわしたり、相殺したり、若干押されてやばくなったり、さらには九重の放つ火まで避けてみたりと俺を追い込むような攻撃が続く。親子だからか、コンビネーションもよく、八坂さんの放った火の後によく九重の火が飛んでくる。
それを剣も無いので、手刀で無理やり斬ったりしてかわす。黒歌から借りればいいのだが、八坂さんは武器のないシチュエーションで戦うことを勧めてきたのだ。まあ、本から武器なしで、《王の能力》抜きで戦うことを学んできたわけだけど、しっくりこない。
───3時間後───
俺は八坂さんの炎を避けたり、火柱を避けたりして相手の近くに接近する訓練を行っていた。八坂さんも少ししか手加減しなくて、本当にキツい。まあ、九重が疲れたから縁側でお昼寝してるのは微笑ましい光景だと思う。
「これを避けい、桜歌」
そう言って八坂さんが放ってきたのは全方位からの俺を包むような炎・・・・・・まるで、俺を蒸し焼きか何かにしようとしているように見える。
熱い・・・・・・どんどん空間が狭くなって、俺に八坂さんの炎が襲いかかり、俺は手の中に水と氷を作り出してそれを全て振り払った。
「やっぱり桜歌は魔力の扱いが上手いの。ちょっと一休みじゃ。休むのも修行のうち───明日に体を壊したりしたら元も子もないからの」
「はい。ありがとうございます。八坂さん」
「汗を流すだけとは・・・・・・桜歌は将来有望じゃの。妾が夫に欲しいくらいじゃ」
「あはは・・・・・・八坂さん、九重がいるでしょ」
「なに、お前が父になろうと九重は喜ぶだけじゃ」
八坂さんはそう言いながらべったりと俺にくっつき、俺と一緒に縁側に座り込む。
そうしてぼーっとしていると、八坂さんに頭を両手で軽く掴まれて倒された。頭の裏には着物の生地と、柔らかい感触が伝わってくる。
俺の視界には、八坂さんの胸と顔が見えており、なんか落ち着く・・・・・・。多分、俺は膝枕を八坂さんにされているんだろう。ちょっと痛い視線が2つくらい俺に向かっているが、俺は気にせずに目を閉じる。
風も八坂さんの体の感触も気持ちよく、本当に寝入りそう・・・・・・だ。
「眠るがよい。妾は幸せじゃぞ。桜歌に膝枕が出来て寝顔も見れるとなると、本当に嬉しいの。ファンとしては得にもほどがあるじゃろ」
「ありがとうございます・・・・・・八坂・・・・・・さん」
俺は気持ちいい感覚にあらがえずに、深い眠りの中に落ちていった。
それから数時間後、俺は暗い部屋でロウソクの灯りの中に起きた。時刻は11時くらいで、白音と黒歌、九重は何処にいるのかわからないが、一つだけ確かなことがある。俺の目の前には女性特有の胸に、周りには凄くフサフサした柔らかい感触・・・・・・うん、八坂さんだな。
俺は取り合えず起きようとするが、八坂さんが俺を抱き締めるように、抱き枕にしているので簡単に抜け出せない。目の前には、八坂さんの白い胸が見えている・・・・・・しかも、寝るときは薄い着物のようなものだけなのか、それすらもはだけて胸が・・・・・・。
「桜歌、どうしたのじゃ? 妾の魅力的な体に惚れたかの?」
「否定はできないですが、そろそろいろいろと準備しなくちゃいけないんですけど・・・・・・」
「まあ、待つのじゃ。妾は少しもてなそうと思っての。料理を用意したのじゃ。みんなで食べるくらいいいじゃろ?」
「好意を無駄にするわけにはいきませんし、頂きます」
そう言うと八坂さんは笑顔で立ち上がり、着物を着た。そうして俺も立ち上がると、八坂さんは部屋の中から出て行き、廊下に出る。
俺も廊下から出て進み、八坂さんの後を付いていく。八坂さんが一つの部屋の扉を開け、中にはいるとそこには黒歌と白音、九重が料理と共にちょこんと座っていた。
どうやら俺と八坂さんを待っていたらしく、九重は俺が来ると笑顔、白音と黒歌は遅かったのがいけなかったのかムスッとしていた。
「さて、桜歌と白音の勝利を祈って食事会じゃ」
「・・・・・・俺だけなんかはぐれものみたいですね」
「いや、はぐれものじゃなくて主役じゃ。妾達が食べさせるのだからの」
「・・・・・・やっぱりそうですか」
俺がそう思うと同時に、近くの襖が開いてその奥から沢山の妖怪が各々の料理の前で座っているのが見えた。どうやら俺と白音を送り出す宴会のようなものらしく、妖怪たちは笑顔で俺と八坂さん達を見ている。
「さて、皆で桜歌を元気付けて送り出すのじゃ! 今からは宴会、今日は好きに飲んで歌って楽しもうではないかっ!!」
「「「「オォーーーー!!!!」」」」
みんな乗り気で歓声を上げ、焼酎の瓶らしきものを掲げる奴もいれば、お酌を掲げる妖怪もいる。
まさに宴会・・・・・・でも、肩の力を抜くにはいいことだ。
まずは俺が八坂さん、九重、白音、黒歌に順番に食べさせられたり、逆に食べさせたり。それを妖怪共が見てテンションを上げて得意技(隠し芸)の披露大会。さらには妖怪の女の子が次々に挨拶。
そして俺は歌のリクエストをされて独りで独唱だったり、デュエットをやったりした。
そんなこんなで俺と白音は楽しい時間を過ごして、八坂さんたちとお別れしてレーティングゲームの会場に向かうのだった。
次はレーティングゲームですね。
さあ、ライザーをどうするか・・・・・・。