side《一誠》
日も暮れかけている路地に俺、小猫ちゃん、木場に匙は白いローブを纏ってあの気の狂ったエクソシストを探していた。あの後、イリナとゼノヴィアに白いローブの予備を借り、神父狩りをしているフリードにあう確率が高くなるだろうと着ているのだ。昼間は暑苦しく感じたが、今は日も沈みかけているのでそれほど暑くない。
「くっそ~、なかなか出て来ないよなその神父狩り」
「匙、耐えてればそのうち出てくるさ」
何でまだ匙がいるかというと、匙は逃げるのを諦めた・・・・・・ではなく、木場の過去を聞いて、号泣して協力してくれることになったのだ。こいつが此処まで熱い奴だったとは、凄く嬉しいことだと思う。
「そうだ、兵藤、お前の夢って何なんだ? 悪魔になってから、夢とか変わっただろ?」
匙が唐突に質問をしてくる。将来の夢、悪魔になった俺の夢はただ一つ、部長のおっぱいを揉んだり吸ったりすることだ。・・・・・・いや、女性なら誰でもいい。
「聞いて驚け、匙! 俺の夢は、部長のおっぱいを吸ったり揉んだりすることだッ!! 俺は一度あの輝かしいおっぱいを生で見たんだ! 忘れられるわけがなかろう!」
「何!? 主様のおっぱいを見たのか!? 裸体を、主様の裸体を見たというのか!?」
俺の発言に驚く匙。多分だけど、俺と趣向が同じなのだろう。木場のエピソードで泣いてたし、こいつとは気があいそうだ。
「ああ、俺は見た! ・・・・・・でもさ、桜歌の方が主の裸体を何回も見てると思うぞ! 羨ましすぎるんだよあいつ! あんな簡単に見れるなんて!」
「何だと・・・・・・!? あいつ、楪さんの裸体を何回も・・・・・・見ているだと! それは俺達にとっての希望でもあるじゃないか! 聞け、兵藤。俺の夢は会長とできちゃった結婚する事だ!!」
どうやら匙も似たような目的を持っているらしく、会長とのできちゃった結婚を夢としているようだ。隣の小猫ちゃんから殺気が放たれている気がするが、俺達の暴走は止まらない。
「イッセー先輩、変態は黙っていて下さい」
「ええっ! 酷いよ小猫ちゃん! 夢を語ることがそんなにいけないのか! 桜歌だって、こういう夢の一つや二つ持っているはずだッ!!」
「・・・・・・そうなんですか?」
「ああ、そうだ! 桜歌だって、やりたいことが沢山あるはずだ! 現状を見て見ろ、桜歌の奴は音楽を夢にしているくせに、ハーレムを俺より先に築いているんだぞ! そういうあいつが、俺らと同じような夢を持っていても可笑しくない!」
熱弁する俺に、小猫ちゃんは揺れ始めた。桜歌がそういう願いを持っているのか真剣に考え込む姿を見せている小猫ちゃんは、一途と言うか何というか、俺らに毒されかけている。
そんなとき、周りの空気が一瞬で変わる気配がした。まるで何かがこっちを狙っているかのような感覚に、木場が反応した。
「上だよ、イッセー君!」
それと同時に俺は後ろに飛び、小猫ちゃんは匙を片手に、木場は剣を構えて後ろに飛ぶ。そしてその数秒後に何かが、俺達のいた場所に落ちてきた。
「お~っと、気づかれちった。まさかあんな簡単に避けられるとはねぇ~。これは狩り甲斐がありそうな神父達でござんすこと! って、お前らどっかで見た?」
「フリード! やっと見つけたぜ!」
「あんんれ~、これはこれはあの馬鹿悪魔君の御一行じゃあ、ありませんか~。特に俺の顔面をぶん殴った借りなどは返すチャンス? それにあの白髪やろうがいねえが、まあいっか。このエクスカリバーちゃんでギッチョンギッチョンにして上げるから♪」
言い終わると同時に、フリードが剣を片手に地面を蹴って接近してきた。俺は赤龍帝の籠手を手に出して、臨戦態勢を取るが、そこで木場が前に出て剣でフリードと競り合った。剣はギチギチと音を立て、お互いに力をぶつけ合う。
「やっと見つけたよ、フリード・セルゼン。君の聖剣、今度こそ叩き折らせてもらうよ」
「あれれ~、生きてたんでござんすかこの仮面やろう! やっぱり、ちゃんと切り刻んで上げた方がよかったよね~。それとも俺のファンなわけ?」
木場がフリードと剣をぶつけ合い、何度も打ち合っていく。そして、俺はその打ち合っている木場とフリードが距離を取った瞬間に接近した。
「フリード、一発食らえ!」
「嫌なこった」
俺が接近して殴りつけるも、簡単に剣で防がれる。フリードは澄まし顔で、楽しそうな邪悪な笑みを浮かべ、こっちを斬りつけようとしてくるがそこに小猫ちゃんが割ってはいった。
「やらせません」
そう言い、小猫ちゃんはフリードに一発拳を叩き込む。それは見事にフリードが剣でガードしたが、小猫ちゃんの力に押し負けて吹っ飛ばされた。
壁にフリードは突っ込み、壁には亀裂が入った。そしてその数秒後にフリードが何事もなかったように出て来て、服から埃や砂を払う。
「あ~あ、ちょっと分が悪いなぁ~。剣は防がれるわ、人数が多いわ。・・・・・・じゃあ、そう言うことで俺様退散!」
そう言ってフリードは素早い足で、瓦礫から飛び出て俺達のいない方向に走っていく。
「待て、フリード・セルゼン!」
「あっ、木場、待てよ!」
その逃げ出したフリードを追いかけて木場もこの場を離れ、その追いかけていく木場を俺達も追うのだった。
日が完全に沈んで夜となった。その時間に俺たちはフリードを追いかけ、町外れの古い建物の外に集まっている。逃げ切れなかったフリードが目の前で息を切らさずにこっちをにらみ、木場もそのフリードを睨み返している。
「おいおい、もしかしてなに? 俺っちのストーカーなわけ? それとも熱烈なファン? どっちにしても、斬り殺すしかないよね! と言うわけで、めんどくさいので斬られちゃって下さい!」
「僕は君を逃がすわけにはいかないよ」
フリードが屋根の上に乗り、木場がそれを追って屋根の上に飛び乗った。そして、数秒のうちにまた剣で打ち合いを始める二人。
俺は屋根の上に登れず、加勢することが出来ない。そんな中、匙が前に出てきて、右手をつきだした。
「俺も黙ってみてられねえぜ!
匙はそういうと同時に右手にカメレオンのような、龍のような頭のものを手に出現させ、そこから舌のようなものを飛ばす。それはフリード目掛けて一直線に伸び、フリードの腕に巻きついた。
「イッセー先輩、譲渡する準備をして下さい」
「えっ? どういう事?」
何時の間にか後ろに来ていた小猫ちゃんに俺は抱えられ、意味不明な言葉を言われる。まさかとは思うが、投げたりしないよな・・・・・・?
俺の倍加は移動中に既にマックスになっており、準備はOKなのだが、心の準備は全くOKじゃないところ、俺はそのまさかで小猫ちゃんの力の入れ方が強くなっていることに気づく。
「・・・・・・行ってらっしゃいです、イッセー先輩」
「ちょっと待って、心の準備が・・・・・・!」
「(譲渡の)準備なら出来てるじゃないですか」
そう言って小猫ちゃんは一直線で木場とフリードの間に割り込むように投げた。俺の制止の声も聞かずに、勢いよく投げた。
直ぐに俺は木場とフリードの間に割り込む形で、顔面から着地しそうになっている。俺は潔く諦めて、譲渡の為に木場に手を向けた。
「木場!!」
『Transfer!!』
「───魔剣創造!!」
譲渡を受けた木場がそう叫び、屋根の上から大量の剣を生やす。それは聖剣で壊していくフリードに当たり、壊せなかったぶんが直撃した。
「いってえ! くそっ! この気持ち悪い舌も斬れねえし、何なんだよッ!」
「フリード、お前には聖剣の因子を渡しているだろう。聖剣に力を込めろ。そうすれば、そんな舌ごときは容易く斬れるはずだ」
イラつくフリードを諭すように言った声を探してみると、この廃墟の下から人が出てきた。その身には神父服を纏い、此方を見上げている。見た目は50を過ぎたオッサンというか、おじいさんのようにも見える。
───いったい何故こんな所に人が・・・・・・?
そんな疑問も、簡単にフリードの言葉でかき消された。
「よお、バルパーの爺さん。旦那はどうしてるんだい? っで、爺さんの言うとおりに聖剣の因子を込めるってこうするんだっけか?」
そう言ってフリードは俺たちが爺さんに気を取られている隙に聖剣で匙の神器の舌を斬り、爺さんの隣に立った。
「ふむ、自己紹介をしておこう。私はバルパー・ガリレイ、"皆殺しの大司教"と呼ばれた身だよ。そこにいるのは悪魔共か・・・・・・興味深い神器を宿しているものが大勢居るようだ」
「バルパー・ガリレイ! 君は僕が殺す!」
木場はそう言って、バルパーに近付こうとする。が、フリードがまた聖剣で木場を迎え撃ち、バルパーという男に近寄ることが出来ない。
「見つけたぞ、バルパー・ガリレイにフリード・セルゼン!」
「イッセー君から連絡を受けてみれば、こんなとこにいたのね!」
やっと増援も到着したようで、ゼノヴィアとイリナがフリードとバルパーに向かっていく。その手には聖剣を携え、近づこうとするが・・・・・・
「ふむ、潮時かな。フリード、コカビエルとギルにこれを連絡するぞ」
「合点承知! じゃあ、悪魔さんさいなら」
フリードは懐に手を突っ込むと、中から何か缶のようなものを取り出す。それの頭に着いている紐を口で引っ張ると、地面に叩きつけた。
その缶からはその衝撃で光が飛び散り、まぶしい光で俺達の目を眩ます。・・・・・・これはゲームで得た知識で予想すると、閃光手榴弾。
俺の視界が戻った頃に目の前を探すと、木場もフリードもバルパーもいない。そして後ろにいたはずのイリナとゼノヴィアまで消えていた。
「くっそ、木場はどこに行ったんだよ」
「・・・・・・祐斗先輩」
「置いてけぼりかよ・・・・・・」
俺たちがそれぞれ愚痴っていると、近くに赤い魔法陣が発生した。それに似たようなものももう一つ。そしてそこからは、部長と朱乃さん、いのりさんと生徒会長のソーナさんが現れた。
「ひぃっ! 会長! えっと、これはそのですね・・・・・・」
「御託はいいから、ちょっと話をしましょうか、匙」
匙は会長の鋭い眼孔に怯え、一瞬で綺麗な土下座に持って行く。主従関係と言ったら、多分今の匙と生徒会長の関係を表すんだろう。
「イッセー、小猫! 本当に心配したわ・・・・・・!」
そう言って部長は近づき、俺と小猫ちゃんを抱き締める。本当に心配してくれていたのか、目には若干涙を溜めているのが見えた。
「部長・・・・・・すみません」
「・・・・・・・・・・・・」
俺は即座に部長に謝るも、小猫ちゃんは無言・・・・・・まだ木場のことを気にしているのか、その瞳は不安を浮かばせている。
「小猫・・・・・・どうしてあなたまで?」
「・・・・・・私は祐斗先輩が居なくなるのは嫌です。好きなのは桜歌先輩ですけど、祐斗先輩は仲間として好きです。ですから、私は祐斗先輩をほっとけません」
「そう・・・・・・でも、一歩間違えば戦争になっていたかもしれないのよ?」
「桜歌先輩のお陰で、それはないと思います」
確かに小猫ちゃんの言うとおりに、桜歌の名前を使ったから問題は無いはずだ。小猫ちゃんは凛とした眼差しで、ただ部長を見続けている。
「桜歌から連絡来た・・・コカビエルのことはもう知ってる。それに、手助けしてもいいか偉い人に許可を貰ったって・・・」
「そうよ。何処まで本当かはわからないけど、桜歌がこっちに向かってるそうよ。多分、上の方に知り合いでも居るんでしょうね。あの子、可愛いもの好きだから・・・・・・それはそうと、やっぱりお仕置きは必要よね」
「えっ・・・・・・丸く収まる感じじゃないんですか?」
「大丈夫よ、桜歌にもいのりが罰を用意してるって言ってるし」
「その手の魔力は何ですか?」
「小猫にはやれないじゃない。だから、その分と考えなさい・・・・・・あっ、やっぱり小猫には別のお仕置きを考えたわ。でも、魔力はありだけど」
こうして俺は有り難くお尻叩き千回を喰らうのだった。
小猫ちゃんの分を差し引いても、プラスマイナスゼロだったのは、多分桜歌の所為だと思う俺は部長のお尻叩きを受けながら桜歌を恨むのだった。
今度絶対にハーレムの邪魔をしてやる!
side《綾瀬》
私達は報酬を貰い、人間界に帰ってきた。アルゴも大雲さんもボロボロで、傷だらけなのがわかるのだが、一番に重傷なのが愛歌ちゃん。私のために、ただ復讐の為に私の言うとおりに動いてくれたけど、結果的には殺すことが出来なかった。
ギル・ハルバート・・・・・・こっちも禁手全開で行ったのに、あいつの禁手は影に潜ることが出来るために捉えられなかった。アルゴさんのナイフも外れ、大雲さんの爆撃も意味を無くし、愛歌ちゃんは私のためにギルと接近戦を行ったのに・・・・・・。
その身に大鎌をを突き刺され、傷を付けられた。みんな疲れ切っていて、もう満身創痍というか戦う気力はあるけど体が追いつかない。そんな状態だ。もう一生、愛歌ちゃんのお腹の傷は消えることがないだろう。
ツグミが魔力でマーキングを行ったけど、影になったせいで攻撃も当たらずに敗北。ずっと相手の動きをモニターしてたのに、ただの一撃も与えられなかった。
そして現在、私達は家のいたるところで好き勝手にくつろいでいる。アルゴさんと大雲さんは冥界の風呂に傷を癒やしに行き、傷を負っていないツグミと私は家の中。ツグミはもう疲れたのか、ベッドの上で熟睡中。私は納得できずに、リビングだ。
『綾瀬。大丈夫・・・ですか・・・?』
「ごめんね。愛歌ちゃん・・・・・・私が無茶な命令をしなければ、お腹に傷を残すこともなかった。背中にも大きな傷が残っちゃう」
『良いですよ、どうせ誰にも愛されないんです。私のこの名前・・・・・・まるで、愛されないのを悲しんで歌うみたいに付けられたみたいじゃないですか・・・。ピッタリです。歴代の所持者は私を戦う道具として使い、ただ慰み物として扱おうとしました。その度に私が主を殺して、今は綾瀬の相棒として居られるんだから幸せです。音楽も知れました、好きという感情も知れました、何より暖かい感情をいっぱい綾瀬から教えて貰いました。どうせこのまま死ぬのなら、綾瀬の願いを叶えてから死にたいです』
「どうせ愛歌ちゃんが死ぬなら、私もあのモードを使って死ぬね・・・・・・。私も歩けないし、みんなの足手纏いだもん」
「ありがとう、綾瀬。じゃあ、最後の仕事に行きましょうか」
そう言って慰めてくれた愛歌ちゃんは実体化をして、私の目の前に降り立った。
美しかった着物は自分の血で汚れ、綺麗な黒髪も血が付着して傷んでいる。着物は修復されず、ただボロボロだった。それもその筈、愛歌ちゃんは人間と変わらない機械。体の中にあんなシステムがなければ、神器でなければ普通の女の子だ。
ちょっと長生きだけど、殆どが主を殺したが為に成長していない。・・・・・・それとも、成長するという概念みたいな物が無いのか。
「じゃあ、綾瀬。外に出ましょうか」
「ええ、ツグミとかにはバレないようにね」
私と愛歌ちゃんはこっそり、復讐のために、みんなにこれ以上は迷惑をかけないために、車椅子を愛歌ちゃんに押されて家を出て行くのだった。
愛歌ちゃんに車椅子を押されて数分。時刻は深夜近く・・・・・・私と愛歌ちゃんはただ、この地域の公園に強い力を感じて歩き続けた。明かりは街灯だけで、殆ど真っ暗。そして、この場所は駒王学園の近くで、桜歌が来るかもしれない。でも、引くことも出来ない。
悪魔が来たって、関係ない。愛歌ちゃんの覚悟も、私の覚悟もとうの昔に決まっている。アルゴやツグミ、大雲さんには悪いけど、手紙を置いてきた。
失う物はなにもない。得られる物も無いのはわかってる。でも、私の心は復讐をしないことには晴れないだろうと言うことも、全部わかっている。
『うそっ! コカビエルと"死神の殺戮鬼"まで揃うなんて!』
『あいつ1人だったら、可能だったかもしれないがな・・・・・・イリナ、此処は一旦退こう』
『仕方無い。僕も勝てるとは思わないし、退こうかな』
鳴り響く金属のぶつかる音に、話し声まで聞こえる。誰かが"死神の殺戮鬼"と戦っているようだけど、これは私にとってのチャンスでしかない。
「綾瀬。誰か戦っているようですよ?」
「でも、こっちには都合がいいよ。このまま、急いで愛歌ちゃん」
私は急ぐように愛歌ちゃんに言い、車椅子を押してもらう。路地から公園に入り、私と愛歌ちゃんは声の方へ急ぐ。
少し愛歌ちゃんが痛そうにしているのもわかっている。
それでも、私はやり遂げなければいけない。公園の声のする方に近づき、やっと見えたかと思うとあの"死神の殺戮鬼"に翻弄されている3人の姿が目に入った。
1人は栗毛のツインテールの女の子。
1人は青髪のメッシュ入りの女の子。
1人は金髪の男性。
それぞれに剣を構えて、堕天使とギル、白髪の剣使いに神父服を着たお爺さん。その4人に囲まれている。
「む? 人間が何故ここに?」
「おお、これはまた大層な獲物の登場だ。でも、誰の取りこぼしだよ? もしかして、切り捨てるのを忘れちゃったお古なの? でも、それを奪うのも面白いよね!」
「ああ、悪い悪い。あれは俺が殺し損ねたクソ人形とクソビッチだわ。と言っても、あのクソ人形はよく生きてやがったな」
堕天使、白髪男、ギルが順番に私の方を見てそれぞれに何か言ってくるが、私はそれを無視して愛歌ちゃんの方をみる。
「ごめん。行って、愛歌ちゃん!」
「わかりました、綾瀬!」
愛歌ちゃんは返事をすると同時に飛び出し、堕天使に一撃を与える。それをわざと受けたのか、堕天使は思いっきり吹っ飛んで行き、木をなぎ倒しながら公園の茂みの奥に消えていった。
「おお、旦那、結構飛んでいったな。マジで斬り甲斐がありそうな血泥み人形!」
「コカビエルの奴、アホじゃねえか? いくら俺でも、心を折る位はするね」
白髪男とギルはそれぞれの感想を述べて、コカビエルと名乗る男が消えていった茂みの奥を見ている。愛歌ちゃんに殴られたら、並大抵の怪我じゃすまない。それを知らずに受けたコカビエルは今頃茂みの奥で、骨が折れているだろう。
───大雲さんだって全治二ヶ月の大怪我を負ったし・・・・・・。
私がコカビエルに目もくれずにギルを睨みつけていると、私の隣に金髪男と青髪女、ツインテール女が駆け寄ってきた。
「助けてくれて感謝しよう。だが、今のうちに逃げるぞ」
「ありがとね、えっと・・・・・・兎に角、まずは逃げよう」
「僕もあまりあの人数相手に勝つ自信が無いからね」
三人が逃げることを勧めてくるが、私は頷かない。もう戻るわけにはいかないし、このままあいつだけでも倒せればそれで良いと思ってる。
「ごめんなさい。私はあいつを殺さなきゃいけないの」
「ハハハハ・・・・・・! 良いぞ、面白い奴だ! こんな相手、久々に面白い戦いが出来そうだ!」
茂みの奥から声が聞こえ、そこからさっきぶっ飛ばしたコカビエルが出て来る。多少は泥などをかぶっているが、そこまでボロボロじゃない。
「綾瀬。これは分が悪いですよ。どうするんですか、綾瀬」
「仕方ない、か・・・・・・愛歌ちゃん、寿命が何年、消えても文句は言わないでね」
「勿論です。もう、他の人がマスターなんて嫌ですから・・・・・・」
「「《
私と愛歌ちゃんの声が重なり、この場に反響する。
それと同時に、私の体が赤く輝き、愛歌ちゃんはそれに呼応するように髪を白くして、額から二本の綺麗な角を生やした。その姿は最初の人間の容姿から角を生やして髪を染めただけだが、まるで威圧が違う。
これは禁忌であり、愛歌ちゃんの隠された能力。所有者の寿命を吸うことであの姿になり、その代わりに力を手に入れる。今まで、使ったことは無いらしいからわからない。自分がどうなるか、愛歌ちゃんもどうなるか・・・・・・誰も知らない。
「行って・・・愛歌ちゃん・・・あいつを殺して・・・」
「あ"あ"ぁぁぁーーーー!!!!」
最早、愛歌ちゃんは人間の声を発しておらず、ただ戦う化け物と化した。私はそれに命令して、ギルに突っ込ませる。
地面を蹴り、一瞬で近づくがギルは影となり地面に潜った。その隙にコカビエルが狂喜の顔を浮かべて、愛歌ちゃんに光の槍で攻撃する。
それを愛歌ちゃんが受け止めて、光の槍を片手で殴りつけて粉砕。それにコカビエルはさらに嬉しそうな顔を浮かべて、光の槍を放ってくる。
「ハハハハ・・・・・・! 良いぞ、もっと暴れろ!」
「ア"ァ"ァァーー!!!!」
単調な攻撃な為か、コカビエルは簡単に愛歌ちゃんの攻撃を避けて、直ぐに光の槍で攻撃。それでも愛歌ちゃんは光の槍を体に掠めながら、コカビエルに突っ込んでいく。後ろには、ギルが影から出て来て斬撃を愛歌ちゃんの体に入れようとしていた。
「おいおい、お前は俺を狙ってんだろ?」
「愛歌ちゃん、避けて!」
私は後ろから襲い来るギルの大鎌に、愛歌ちゃんが避けるように言う。だがしかし、コカビエルが邪魔なのかその場から動けない。
そして愛歌ちゃんは後ろから背中を切り裂かれ、その痛みに呻きながらも、ギルを蹴飛ばそうとするがギルはまた影になり、その後ろからコカビエルが光の槍で愛歌ちゃんを貫く。
愛歌ちゃんはそのお腹から血を吹き出しながら、モードを解除して倒れた。口からは血を流していて、出欠の量も尋常じゃない。
「ふん、やはり面白くないな。ギル、何故手を出した?」
「いやいや、あれもとから俺の獲物だから。旦那こそ、人の獲物を盗らないでくれます?」
「まあ、お前がいなかったらもっと楽しめたかもしれんがな」
「だから、俺を追ってきたから良い獲物と巡り会えたんでしょ!!」
あいつらが言い争っている言葉も最早私には聞こえず、ただ車椅子を動かして愛歌ちゃんの下に車輪を動かそうとする。・・・・・・が、3人が私の車椅子を放さない。
関係ないのに、私の邪魔をする3人。
まだ居たのかと言う疑問もあるが、私は愛歌ちゃんの事しか考えていない。
「今のうちに逃げるぞ」
「残念だけど、あの娘は助からないから諦めた方が・・・・・・最初から傷も負っていたみたいだし」
「退かなきゃ君がやられるよ」
「離して! 私は、私の所為であの娘が・・・・・・!」
私に逃げるように言う3人だが、私は車椅子から落ちて這いつくばって愛歌ちゃんの所に行こうとする。
私が命令した・・・・・・傷も治ってないのに。
私が命令した・・・・・・無茶だとわかっていたのに。
私が命令した・・・・・・愛歌ちゃんが断らないと知っていながら。
意志もある、食欲もある、性欲もある、怒りという感情も、泣く事も出来る、悲しいって感情もあるし、楽しいという感情もある。
一緒にいれば人間と変わらないという事が、一緒に住めば人間と同じということが、全部わかっていたのに・・・・・・私の所為で・・・・・・!
「詰まらん! 殺しておこう」
「じゃあ、俺が殺すわ~~~」
「おいおい、俺にも斬らせて下せえよ。旦那、せめて首だけ残して!」
コカビエルにギル、白髪の男の声がまるで遠いところに居るように聞こえる。
そして、愛歌ちゃんに光の槍、赤い大鎌、綺麗な剣が振り下ろされようとした瞬間───
───振り下ろされた武器を全て弾き、愛歌ちゃんの上に全身真っ白のコートに身を包んだ男が長い白髪を振りまいて立っていた。
《鬼神化》
神器所有者の寿命を吸って力を得ることが出来る。
力関係
1,ギル"死神の殺戮鬼"
2,コカビエル
3,愛歌(ただし、鬼神化を使った時にはコカビエル以上になるが、攻撃が単調、さらには実践不足という理由でコカビエルと同格)
ですね・・・・・・。
ほかの奴ら?
戦闘はしてないので放置だよ。