朝、俺は目を覚ますとグレイフィアさんが俺の髪を微笑みながら撫でていた。それもその筈、昨日は一緒に風呂に入ったときに(不可抗力)グレイフィアさんが寝るという事が起きて、仕方無くミリキャスの部屋にグレイフィアさんを運べば、次はミリキャスが一緒に寝たいという始末。俺は渋々了承してミリキャスが寝たあとに部屋を出ればいいと考えたのだが、そのまま眠ってしまったのだ。
グレイフィアさんが風呂で寝てしまったときは、結局の所最後まで体を洗い。体を拭いて服を着せたのだが、使用人を呼んでも誰も来ない。なので、グレイフィアさんの着替えとしてバスローブを簡単に着せて、グレイフィアさんをミリキャスの部屋に運んだわけだが・・・・・・。
翌日、グレイフィアさんがエロいバスローブ姿で微笑みながら俺の髪を撫でているときはビックリした。だって、グレイフィアさんだよ? ミリキャスは何時の間にか部屋から居なくなっているし、
起きたらグレイフィアさんがイルって・・・・・・。
起きた瞬間に『桜歌、早くしないと試験に遅れますよ?』とか言いながら、着替えの服を持ってくるし、どこの親だよ・・・・・・って、思った俺は悪くないだろう。
試験会場にグレイフィアさんと向かい、そこには性懲りもなく上層部のお偉いさんが座っていたのだが、これで無駄に時間が早かった理由がわかった。
俺が試験に遅れるように、わざと朝の5時を指定したのだろう。
まずは、筆記試験だったのだが、眠い頭などはグレイフィアさんの寝起きドッキリみたいなので既に覚めていたため、ちゃんと受けれた。その時のテスト用紙が全部冥界の言葉だったため、嫌がらせをされているにも関わらず、俺は難なくすらすらと回答を書き込んだ。
次に昼間の戦闘試験なのだが、やっぱりこっちも細工されているらしく、魔力を使えないように変な装置を付けるように言われたが(表向きは安全装置)、それを装着。魔力が使えなかろうが、サイラオーグさんを見習って拳でオッサンと言う名の猛者達と語り合った。
それは午後11まで続き、深夜近くになったというか、深夜だな。深夜までぶっ通しで行われたのだが、全部一瞬で意識を刈り取ってきた。
───そして、今・・・・・・。
俺はいのりの《剣のヴォイド》を片手に、堕天使コカビエルであろう男、ギルと呼ばれる殺人鬼に祭の親を殺したフリードを前に、俺は横たわる少女を助けるために立っていた。
後ろには木場と青髪の女の子、栗毛ツインテールの女の子、長い髪をポニーテールにした女の子が地面に這っている姿が見える。
そこは何処か幼なじみに面影があり、近くには車椅子・・・・・・。
「ほう、早いな」
「あれ? 何でお前がここにいるんだよ? このクソ野郎。もしかして、またヒーロー気取り?」
「え~、この状況で邪魔が入っちゃうのかよ?」
コカビエル、フリード、ギルであろう男が口々に文句を言う。フリードの剣は公園の中にはじき飛び、ギルはしっかりと赤き大鎌を握り締め、コカビエルは第二の光の槍を構える。
「残念だな・・・・・・悪いけど、俺はこの娘を見殺しにするわけにはいかない」
「フハハハッ! ならば、この状況で割り込んだのだ。自分で逃げることくらい出来るであろう。それまで、貴様で楽しませて貰うぞ!」
コカビエルはそう言い、光の槍を俺に振るってくる。上から来る攻撃を、横たわる黒髪の少女を抱えて避ける。
そこにフリードも第二の聖剣を構えて、横に一閃。それを俺は上に飛ぶだけで避けて、木場達の隣まで行く。
そして、俺が見たことのある少女を見てみると、地面に這いつくばっている少女はこっちを見ながら、驚いたような顔をしていた。明らかに面識がある・・・・・・。
「綾瀬か?」
「桜歌・・・・・・何でこんな所に、あなたは上級悪魔の試験を受けているはずじゃ・・・・・・」
「そんなものもう終わったよ。いろいろと聞きたいけど、今はこの娘を助けなきゃいけない。俺1人なら簡単に逃げれただろうけど、お前は足が悪いし、この娘は重傷だ」
「どうやって逃げるのよ・・・・・・あいつら相手に、どうやって・・・・・・」
綾瀬が諦めたように言い、車椅子によじ登る。その間にもコカビエルが迫ってくるが、俺は仕方無く黒髪の女の子を優しく抱き抱えると、いのりのヴォイドを手放した。それと同時に、いのりのヴォイドは虚空に消えていく。
そして綾瀬に向き直ると、俺は目を合わせて綾瀬の胸に手を突っ込んだ。ガブリエルさんの十字架の能力が相手のヴォイドを見れるのだったら、この状況でも使えるはずだ。
俺は綾瀬から手を引き抜くと、結晶が綾瀬の足にまとわり付いて、靴のような形を作っていく。そして弾けるように形が整うと、綾瀬の脚に長いブーツのような物が出現した。
「綾瀬、立って見てくれ・・・・・・それがあれば、お前は逃げきれるはずだ」
「えっ・・・・・・うそ、私・・・・・・立てる」
綾瀬は恐る恐る立ち上がると、自分の脚を不思議そうに見つめている。
「綾瀬、俺の家に逃げろ! この娘を連れて早く行け!」
「でも、桜歌はどうするのよ!?」
「すぐに追いつく」
俺は綾瀬に黒髪の女の子を抱えさせ、後ろのコカビエルの斬撃を止めるためにツインテールの女の子が割り込んだのを確認すると、綾瀬を押し出した。
仕方ないという風に、綾瀬は俺の家の方向に向かっていく。後ろのツインテールの少女が弾き飛ばされ、俺にコカビエルが向かってくるのを確認すると、一瞬で俺はコカビエルの後ろに移動し、拳で殴りつけた。
そのままコカビエルは衝撃で吹っ飛び、茂みの中に消えていく。
近くを見ると木場が剣を片手にフリードと交戦中。吹き飛ばされた少女は立ち上がり、青髪の少女と並んで立っていた。ギルは赤い鎌を片手に、こっちを伺っている。
「お前は襲ってこないんだな」
「いやいや、襲うよ。でも、今はやんねえ。お前が仲良い奴を消されて怒り狂う時が、一番面白い狩り時だしな! それに、あいつには自分で片付けたいから手を出すなと言われてるんだよ」
あいつ・・・・・・? もしかして、トリトンの事だろうか?
「あいつ・・・・・・トリトンのことか?」
「御名答。今は涯と名乗っているけどな。あいつと俺はちょっとした知り合いなんだよ。まあ、そんなの関係無く狩り時になったら狩るさ。じゃあ、俺は他にも目的あるから此処ら辺でサヨナラ」
そう言って、聞きたいことも聞けずにギルは影に紛れて去っていった。後はフリードと、森の中に消えたコカビエル。
俺が1人でその場に立っていると、そこに栗毛のツインテール少女と青髪の女の子が駆けてきた。
その手には聖剣らしきものを持ち、栗毛は目を輝かせ、青髪は面白い物を見たような目で俺を見ている。
「凄い! 桜歌様! コカビエルをあんな簡単にぶっ飛ばしちゃうなんて!」
「助けてくれてありがとう。しかし、さっきの少女は君の知り合いか? 随分、殺すことに執着していたようだが・・・・・・それに、君が桜歌か・・・・・・これなら、勝てるかもしれないな」
「そうか、栗毛の女の子がイリナで君がゼノヴィアだね?」
「そうです! 私がイリナです! ああ~、桜歌様に会えるなんて死んでも良いかもッ!!」
話し方で決めてみたけど、どうやらあっていたようだ。栗毛の少女がイリナで、青髪髪ゼノヴィアか・・・・・・。っと、こんなことをしている場合じゃない。早く帰らないと。
「フハハハッ! いいぞ、そこのガキ、名前は桜歌と言うのか。サーゼクスの前の良い余興になりそうだ! 小僧、聞け! 今から私は駒王学園で儀式を始める、それを止めに来い! 楽しみに待っているぞ!!」
何時の間にか茂みから出て来たコカビエルは、宣戦布告をする。コイツ・・・・・・明らかに戦闘凶だなとか思うが、逆に猶予をくれることがありがたい。
コカビエルは宣戦布告をするなり、羽を羽ばたかせて去っていく。俺はその姿を見るのを止め、ただ家に帰るために魔法陣を展開するのだった。
それから俺は家に1人で帰ってきた。リビングに入るなり、黒髪の女の子を祭が"聖母の微笑"で治療している姿が目に入った。その傍らには泣く綾瀬と、ツグミにアルゴ、大柄の男にいのりが立っているのが見える。
「大丈夫か。その娘」
「桜歌、傷は治ったけど、目を覚まさないよ」
祭はそう言い、気づいたみんなが俺の方を向く。その顔にはみんな、気まずい表情と悲しみを混ぜたような表情を作り出している。
「じゃあ、俺の部屋に寝かせといてくれ。その娘には休養が必要だ。その間に、綾瀬とアルゴ、ツグミにはいろいろと話してもらうよ? 別に話したくなければいいけど」
俺がそう言うと、みんなは押し黙って、口を開かなくなった。やっぱり、この娘が心配なのだろうけど、こっちも事情が事情なので困る。後数時間のうちに、コカビエルは行動を開始する。それが何をするのかわからないが、ろくな事じゃない。
みんなが話さない中、大柄の男が近寄ってきた。大柄の男が近寄って俺に話す前に、いのりが俺の隣にトテトテと走ってくる。そして隣に立つと、いのりは真っ直ぐに大柄な男をみる。
「俺は大雲。アンドロマリウス、そのいのりお嬢様の父上に仕えていた。いのりお嬢様の女王よ、今まで守ってくれてありがとう。俺以外の眷属は皆、全滅。実質、俺が最後の1人だ」
「俺は桜歌です。女王ですが・・・・・・何故此処に?」
大雲と名乗る男に、俺は疑問を抱いた。今まで、いのりが自分の親の眷属の話をする事は無かったし、今頃出て来たのにも驚いている。それに、グレイフィアさんには全滅と聞かされていた。眷属諸共、みんな死んだと───。
「桜歌・・・この人は信用できる。昔、私とよく遊んでくれた」
「なるほど、よろしくお願いします。大雲さん」
「こちらこそ、よろしく頼む」
俺は大雲さんが手を出してきたので、俺も手をだして握手をした。その手はデカくて、力強さが伝わってくる。
「なるほど、強い・・・・・・」
「大雲さんこそ、強いですよね?」
お互いに睨み合ったり、握る手を強くしながら相手の強さを確かめる。そうして数分後に離すと同時に、俺を信用したのか、話を始めた。
「ツグミ、アルゴ、綾瀬は俺と共同生活をしている。そこの少女は愛歌、綾瀬の神器だ。悪いな、こちらの回復能力が無いためにいのり様と桜歌に助けて貰って・・・・・・」
「難しい話は後でいいです。あなたが信用できるというのもわかりましたから」
「そう言ってくれると助かる」
そう言って、大雲さんは俺から離れる。要するに、落ち着いてからじゃないと話は出来ないということだろう。こっちも何時、コカビエルが動くかわからないし、油断も出来ない。
そんなことを思っていると、突然、大きな魔力を駒王学園の方から感じた。
「始まったか・・・・・・いのり、俺は行ってくる」
「桜歌・・・私も行く」
俺はその場にいる祭に愛歌という女の子の面倒を見るように言い、家から飛び出すのだった。
戦闘が・・・・・・コカビエルが軽く殴られちゃったよ。
もうスペックの高さが尋常じゃない。
そして逃亡するオリ敵さん・・・・・・どうなってるんだろうね。