ハイスクールD×D ~歌姫と罪の王~   作:黒樹

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開戦!!


第三十七話  奪われる力

 

 

 駒王学園に張られた巨大な結界。そして、中からは何か可笑しな魔力が結界の中から漏れ出てくる。その横に俺といのりは辿り着いた。周りにはリアス先輩と、眷属である朱乃さん達にシトリー眷属。そして、黒歌がいた。黒歌は俺が家を飛び出したときに、手伝うと言いながら付いてきたのだ。その時に背中にくっつかれたが、置いてくるのも面倒なのでそのまま走ってきたのだ。

 

「リアス、私達は結界の維持に努めます。中のコカビエルは頼みましたよ」

 

「ええ、任せてちょうだい! 何としてでも、止めてみせるわ!」

 

 送り出そうとする生徒会長に、それに答えるリアス先輩。お互いに役割がハッキリしているのはいいが、問題が一つある。

 

「リアス先輩、サーゼクスさんは呼んだんですか?」

 

 俺は一番気になる質問。それをリアス先輩に聞いた。

 

「・・・・・・いいえ、呼んでないわ。ソーナが呼べばいいんじゃないかしら?」

 

「・・・・・・家の姉はダメです。町諸共吹き飛びます」

 

 それに対してリアス先輩は、呼んでないという。ある意味、危険だが呼んでも危険。もう1人の魔王の妹である生徒会長も断固拒否。そんな中、俺がグレイフィアさんに連絡するしかないと諦めていると、朱乃さんが見かねたように話してきた。

 

「もうサーゼクス様は呼んでありますわ。二人とも大人げないですので、私が先ほど連絡しておきました」

 

「仕方ないわね・・・・・・こういう事態だもの」

 

 朱乃さんの手回しの良さに呆れるリアス先輩。この場面では感謝するところだろうが、そんな暇も時間も無いのだ。

 

 この二人が魔王を呼びたくない理由は明白。この二人の兄姉兼魔王は、とんでもない問題児と言っていいほどのシスコンなのだ。俺の上級試験に、魔王の2人が来ていたからわかる。

 

「黒歌、結界の手伝いを頼むよ?」

 

「任せて。私は桜歌の使い魔だから、がんばるのにゃ。その代わり、結界の手伝いのご褒美として一緒に今度寝てね?」

 

「まずはレイナーレを慰めてからな」

 

 ご褒美を欲しがる黒歌に、俺は軽く了承する。黒歌も本当は中に入りたかったんだろうが、町を壊されても困るので、こうするしかない。

 

「これは心強いです。あなたが結界の手伝いをしてくれるとは」

 

「桜歌の為だから仕方なくにゃ。他意はないにゃ。あるとしたら、白音の為かにゃ」

 

 お礼を言う生徒会長に、黒歌はそう返した。まだ同じ悪魔のことは、良くも思ってないのだろうけど、今はそれで良い。

 

「行くわよ、いのりに桜歌も働いてもらうわ!」

 

「勿論です。いのりを守るために、あいつの真実を聞き出すために此処に居るんですから」

 

「私も・・・桜歌にだけ、任せない。戦う・・・」

 

 俺達はリアス先輩の出発の合図と共に、結界の中に、コカビエルとギルが待つであろう駒王学園に乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 そこは、冥界のような紫の空だった。結界の所為でそう見えるのかもしれないが、駒王学園の空はそんな色・・・・・・レーティングゲームの為に作り出したコピーでもなければ、異世界でもないこの空間は、結界が壊れたら被害が町に及ぶだろう。

 

 空にはコカビエルとギルが飛び、体育館近くには大きな魔法陣が出来上がっている。そこには、聖剣が四本、宙に浮きながら光を纏っている姿が見えた。

 

「よく来た、アンドロマリウスにグレモリーよ。特に、そこの白髪の貴様。今から余興を楽しもうではないか。貴様の実力がこの中で一番高い。アンドロマリウスにこのような眷属がいたとは思わなかったが、面白いだろう」

 

「ふざけないでッ! 何が余興よ! あなたは収まりかけた戦争を、また掘り返すつもりなの! この町で好き勝手する事は許さないわ!」

 

 歓迎するコカビエルに、リアス先輩は怒りながらコカビエルに反論する。明らかに余裕のコカビエルは、余裕の表情で笑い出した。

 

「フハハハハッ! 何を言うか、あの戦争はあのまま続ければ、私達堕天使が勝っていたのだぞ。それをアザゼルの奴、『もう戦争はしない』とぬかしやがった! 此処にいるギルに加え、あの大罪の日、《ロストクリスマス》で消された堕天使や悪魔は多かったが勝てたのだ! 《ロストクリスマス》に現れた"名前の無い怪物"など、最高の相手じゃないか! なのにあいつは数が減ったからと言って戦争を止めるなどと抜かしおった!!」

 

 キレるコカビエルは、拳を握りしめてアザゼルへの不満をぶち巻く。その目は強者と戦える喜びに満ちていたようで、その奥に不満げな色を伴わせている。

 

 それを聞いていたいのりとリアス先輩、朱乃さんはピクリと動いた。いのりは俺から目を逸らすように俯き、リアス先輩と朱乃さんは哀しげにいのりを見ている。

 

 恐らくだが、リアス先輩と朱乃さんは知っている。いのりの過去を、現在を知っている。ただ気遣うような目は、逆にいのりの不安を掻き立てている。

 

 俺はそんないのりの手を握り、不安を消すように握り締めた。いのりの手は震え、ただ俺を不安げに見つめている。それを俺は笑い返して、強く握りしめた。

 

「気にするな」

 

「・・・私は桜歌を守る。どんなことがあっても・・・」

 

 いのりが返した返答はそんなもの。明らかに何かが違うが、今はこれでいいだろう。後でお互いに分かり合えばいいし、今は震えが止まったいのりをまた不安にするわけにはいかない。

 

 そんなとき、バルパーがコカビエルの下にやってきた。

 

「コカビエル、もう準備は整った」

 

「そうか、ならば余興を始めようとするか! 貴様ら、あれがなんだかわかるか?」

 

 コカビエルは大きな魔法陣を指差し、俺達全員に問いかける。───だが、その問いに答える物はおらず、そのままコカビエルは続けた。

 

「───あれは聖剣を統合する錬金術。あれが完成して1時間後には、私を倒さない限り、この町諸共吹き飛ぶ術式だ!」

 

「まさか、そんなものが!? 不味いわ、お兄さま達が来るまでにこの町は・・・・・・!」

 

 どうやら相当ヤバい術式らしい。リアス先輩は焦ったような表情で、歯を食いしばる。いのりはいつも通りの顔に戻り、ジッとその聖剣達を見つめている。

 

 そしてコカビエルはその表情を見て満足そうに指を鳴らすと、光の柱がいきなり体育館に現れては光が体育館を破壊し、光が消えた頃には体育館の残骸すら残っていなかった。

 

 塵も積もれば山となる、と言いたいところだが、塵の一つも残っていない。

 

「これから余興を始めよう。貴様ら、私の相手をする前に存分に楽しませてくれよ? ギル、お前も手を出すのは許さん」

 

「ヘイヘイ、わかりましたよ。でも、時が来たら俺も遊ばせてもらいますわ」

 

 コカビエルの命令に軽口を挟むギル。明らかにコカビエルをなめた表情だが、圧倒的に実力の差がコカビエルよりも強いことがわかる。もしかしたら、この一瞬でコカビエルを消せるかもしれない。

そう思えるほど、力が強い。

 

 コカビエルはそれを無視し、指を鳴らすと次は地面に魔法陣が出現した。そしてそこから、大きな三首の犬が姿を現す。大きさはティアマット程じゃないが、旧校舎と同じ背丈はアルだろう。見るからにゲームに出てくるケルベロスそっくりだ。

 

「そんな、ケルベロスがどうしてこんな所に!?」

 

「・・・気をつけて。桜歌、噛まれると痛いし炎は熱い・・・」

 

 驚くリアス先輩に、冷静に注意を促すいのり・・・・・・冷静さはいのりの方が上だろうか? どんな危ない状況でも、いのりのメンタルの方が強い。

 

 ライザーの時も、リアス先輩はどんどん消えていく眷属にリタイア。いのりは最初から眷属が俺と祭だけだったのに、諦めなかった。それの差だろうか?

 

 そんな考えを起こしている間にも、ケルベロスが5匹に増える。計算としては俺が一匹にいのりが一匹で、リアス先輩達に3匹で対等だろう。

 

「桜歌・・・私を使って・・・?」

 

「いのり、借りるよ」

 

 真っ直ぐと俺の目を見てお願いしてくるいのりに、俺は見つめ返して手をいのりの中に入れる。光が俺といのりを包み、俺は入れた右手をいのりから引き抜く。それと同時に、俺の手にはいのりから引き抜いたヴォイドの《剣のヴォイド》が出現する。

 

「リアス先輩、俺が一匹。いのりが一匹。リアス先輩達は3匹頼みます」

 

「あなた達は1対1・・・・・・わかったわ。上級悪魔として、なんか差がある気がするけど仕方ないわね」

 

 リアス先輩は了承し、眷属全員に指示を出す。この場に木場とイリナ、ゼノヴィアはいないので戦況的にはリアス先輩は魔力で倒さないといけないことになる。斬った方が速いのだが、それも仕方ないのだろう。

 

 俺はいのりと並んで立ち、二匹のケルベロスに目を向ける。その獰猛な瞳は全部、いのりと俺に注がれており、緊迫した空気が流れる。

 

 そしてケルベロスが息を吐いたと同時に、もう一匹のケルベロスが動き出した。大地を蹴り、その大きな巨大で俺といのりに突っ込んでくる。いのりはジャンプしてかわし、俺はその逆方向に大きく飛び、ケルベロスがいのりとを狙って方向を変えた。

 

 その瞬間、もう一匹のケルベロスもいのりに向かっていく。地面を蹴り、いのりは挟み撃ちにされるように真ん中で立っている。

 

 そして、いのりに二匹のケルベロスが噛みつこうとした瞬間にいのりは宙に舞った。地面を軽く蹴るだけで、大空に舞い、まるで蝶や鳥のように空に躍り出た。その姿は美しい舞を踊っているようにも見え、ケルベロスに宙で背を向けながら空を見ている。

 

 二丁の銃を取り出すと、空中で身を捻ってくるくるとケルベロスの上を回転しながら銃で魔力弾を撃ちだして、雨のように弾丸を浴びせていく。

 

 綺麗な着地をいのりはして、俺はそれと同時に二匹のケルベロスに向かって飛び出した。いのりの

《剣のヴォイド》を振りかざして、一瞬で何回もケルベロスを通り過ぎるときに切り裂く。

 

 そうして俺はいのりの横に移動すると、それと同時にケルベロスの首が落ちた。二匹のケルベロスの首は全て綺麗に落とされ、その場に崩れ落ちる。

 

「ケルベロスってこんなに弱いのか・・・・・・」

 

「一瞬で斬る桜歌が強すぎなだけ・・・でも、私の大切なペット・・・だよ・・・?」

 

「俺はまだペットですか・・・・・・まあ、いのりが嬉しいんなら良いけど」

 

 終わった俺といのりは軽く会話をして、リアス先輩達の方をみる。さっき感じた通り、木場とイリナにゼノヴィアがこの場に来ており、3人とも唖然とした表情で俺といのりを見ている。

 

「いのり・・・・・・なんで見られてるの?」

 

「・・・桜歌と私のコンビネーションがよかった、から・・・?」

 

 どうやらいのりにもわからないらしい。俺は簡単に結論づけると、何か力が動くのを感じた。

 

 その力の反応が大きかった方向を見てみると、聖剣が統合されて、魔法陣の上でクルクルと回っている姿が見えた。神々しい光を放ち、辺り一帯をその光で照らしている。

 

「フリード、お前はこれを使え」

 

「マジっすか? 俺ちゃんの最強のエクスカリバーがようやく完成? 待ってましたよ、この時を待ってました! やっと俺っちの出番じゃん! 早速、悪魔君どもに試し斬りでもしてみようか」

 

 バルパーが降りてきた聖剣をフリードに渡して、フリードは振りかざしながら狂喜の笑みを浮かべて俺達をみる。

 

 その中、コカビエルは余興を飽きたのか、俺の前に降りてきた。その横にはギルも一緒で、俺を面白そうに見ている。

 

 余程、聖剣に興味がないのか、それとも俺がケルベロスを切り刻むのを見ていたのか、その笑みは嬉しそうだ。

 

「もう余興も飽きた。貴様、私と戦え! さもなくば、お前の横にいる女を殺すぞ?」

 

「・・・・・・いのり、悪いけどリアス先輩達と一緒にいてくれ。巻き込みたくないし、傷ついて欲しくもないからわかるよな?」

 

「・・・わかった。でも、絶対に死なない? 約束して・・・」

 

「わかった。約束する。早くこいつを倒して、終わらせるよ」

 

 いのりは俺の返事を不安そうに聞くと、その場から下がってリアス先輩達のところに行く。

 

 そんなとき、コカビエルが手に光の槍を出現させてそれを遠ざかっていくいのりに投げた。それを俺は先回りして、《剣のヴォイド》で一閃して弾き、叩き折る。

 

 その光景を見たギルは面白そうな顔をして、俺を睨み付けた。その手には大きな赤鎌を持っているが、気にせずにコカビエルを真っ直ぐとみる。

 

「おい、お前は何をしている?」

 

「何、貴様はあいつが死ねばそれ以上の力を出すと思ってな。それも面白いが、貴様を殺して怒り狂った奴を殺すのも両方面白い! もしあっちが死ねば、そっちと戦うつもりだっただけだ」

 

 コカビエルは両手に光の槍を出現させて、俺を睨む。威圧感はグレイフィアさん以下・・・・・・あのグレイフィアさんの本気の怒りようと言ったら、思い出すだけでも───兎に角、コカビエルはグレイフィアさん以下なのだ。

 

 俺は《剣のヴォイド》を構えなおして、コカビエルを一瞬睨む。そして、コカビエルが気づいたときには俺はコカビエルの後ろを取っていた。その《剣のヴォイド》を遠慮なく振り下ろして、コカビエルの羽に傷を付けるがそこに大鎌の刃が飛んでくる。

 

 それを避けて、俺はその手の先にいるギルに一閃する。───が、その《剣のヴォイド》での一閃は影となったギルには当たらない。

 

「チートか、この能力・・・・・・弱点はあるはずだが・・・・・・」

 

「俺を普通に斬っても斬れねえよ。工夫が必要だぜ?」

 

「こいつに手を出されるのは納得いかんが、もしお前がこいつを殺した場合には他の奴はどんな面白い奴だろうとわたさんぞ」

 

「ヘイヘイ、わかってますよ。そんな怒んないでいいだろ」

 

 喧嘩しながらも、ギルは俺に突っ込んできて、大鎌で斬撃を放ってくる。俺はそれをヴォイドで弾いて、斬り返そうとするが、コカビエルから邪魔が入る。

 

 光の槍は俺を貫こうとするが、俺は《剣のヴォイド》で光の槍を壊して、コカビエルに一撃を与えた。一閃したヴォイドはコカビエルの肩を切り裂き、血を吹き出させる。だが、狙いが甘かったのかギルに気を取られすぎていたのか傷は浅かった。

 

 ギルが俺の肩を切り裂き、大鎌に俺の血を付着させる。少し血が飛び出たが、仙術で体を癒しながらに戦っているためにダメージは少ない。

 

 続いて俺はコカビエルに斬りかかるが、またギルの邪魔が入って容易には切り裂け無い。

 

 そして何回目かのギルの大鎌が俺に襲いかかったとき、俺は片手に仙術強化と魔力強化を集中させて受け止め、もう片方のコカビエルの斬撃を受け止めた時に、俺は魔力を放った。

 

 滅びの魔力を全開で、ギルとコカビエルの両方に・・・・・・。

 

 それが効いたのか、ギルは少しボロボロになりながらも俺から離れ、コカビエルは魔力の質に驚きながらも俺から距離を取った。

 

「そうか、弱点はやっぱりあったのか・・・・・・お前の能力は、触れているときには発動できないという条件付きだろう?」

 

「正解じゃないけど、外れでもない。一番いい方法があるが、バラさねえよ。それに、お前に会いたがってたあいつが来たぜ?」

 

 ギルがそういうと同時に、俺の腹から何か細長い剣が俺の腹から出て来た。それは俺の腹を貫き通し、血を溢れさせる。

 

 そしてその後ろには、1人の俺と同じくらいの男が立っていた。その手には剣を携え、俺を簡単に貫いている。

 

 

 

「やあ、桜歌───この力はお前には相応しくない。例え真名がお前を認めようと、俺はお前を絶対に認めない。大人しく、そこで見ていろ」

 

 

 

 そう告げると同時に、俺の中から何かが抜けていき、俺は意識を手放した。




さて、どなたでしょうか?
わかる人にはわかる・・・・・・?
かもしれない。
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