ハイスクールD×D ~歌姫と罪の王~   作:黒樹

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まだ終わらない戦闘・・・・・・


第三十八話  与えられた力

 

 

 

 此処は暗い空間の中・・・・・・俺はそこに、ただ横たわっている。周りにはアポカリプスの結晶が生えており、薄暗い空間を作り出し、俺を照らし出していた。その光は紫で、なんか知らないけど凄く落ち着く・・・・・・。そう、此処は真名との空間だった。

 

 あれからどれくらい眠ったんだろう? 確か、俺はコカビエルとギル相手に1人で戦い、劣勢でも優勢でもない中戦っていた筈だ。そして、その時・・・・・・後ろから誰かに刺された。

 

 思考を掘り起こしている間にも、俺の意識は覚醒していく。現実に戻る訳じゃないけど、触覚や視界もハッキリとしてきた。俺の目の前には気付くと真名の顔があり、頭の裏からは凄く柔らかい感触がする。

 

「桜歌・・・・・・起きたのね?」

 

「ああ、真名ありがとう」

 

 俺は即座に膝枕の礼を言い、真名の手を取る。それを受けた真名は頬を赤くして、ただ俺の頭を空いている方の手で撫で始めた。

 

 起き上がれるには起き上がれるのだが、そんなことはしない。

 

「ごめんね、桜歌・・・・・・あのクズがあなたの邪魔をして、それに《王の能力》も・・・・・・」

 

「気にするな。俺は本から、《王の能力》に頼る戦いをするつもりじゃなかった。これからは、それが無くても勝てるようにすれば良いじゃないか」

 

 悲しそうな顔で謝ってくる真名に、俺は頬に手を添えて慰めた。何処か罪悪感があるのか、その瞳には俺に対しての悲しみの情が取れる。

 

 凄いクズ呼ばわりだが、一体誰に刺されたのだろうか? それに、あれからどうなった? 戦況はどうなった? いのりは無事なのか?

 

「ところで、あれから何分たったの?」

 

「・・・・・・あれから十分。まず説明すると、あなたは死ぬ予定じゃないけど私が呼んだの。あいつが来たことで、注意しとかなきゃいけないから・・・・・・それに、あなたの手助けがしたかったから。実は桜歌、あなたを刺したのはトリトン、それも《王の能力》でね」

 

 どうやらあれからそんなに時は経っていないようだった。それに、俺を刺したのが《王の能力》と言うことは、誰かが・・・・・・アンドロマリウスの誰かが与えたのだろうか? 真名はあいつをクズ呼ばわりしているから無いとしても、いのりも考えられない。

 

「実はね、あのヴォイドの能力は『奪う』なの。刺した相手の力を奪えるけど、使い手によって多少は劣化する。ギルのヴォイドね。そして、あなたは私同様に"奪われた"。あれは本来、私が持っていたんだけど、トリトンが『真名の為に俺に力を貸してくれ』とか言って持ってちゃったの」

 

「凄いカミングアウトだね・・・・・・」

 

 真名のカミングアウトに呆然とする中、俺は真名の頬を撫で続ける。そのお陰か、幾分か哀しそうな目も何処かに消えている。

 

 そして、その瞳は愛しい物を見るような瞳に変わっていた。

 

「でも、所詮は奪った力・・・・・・《王の能力》と言っても、あれは取り戻せる。元は私の能力なんだから、此処からじゃ制御が効かないけど」

 

「取り戻せる? 本当に?」

 

 俺がそう聞くと、真名は妖艶な笑みを浮かべながら頷いた。

 

「私の中に制御していた残りの力は残ってるの。制限されていた力は、全部使える。男の人から取り出せなかったでしょ? 女性からは取り出せないけど、その部分が残ってる。それと、私の奪われていない女の人から取り出せる力を使えば、あいつを倒せば取り戻せる。あのクズトンが持って行った力は、男からしか取り出せないもの。私からは取り出せないわ、あなた専用だもの♪」

 

「でも、戦況とか気になるし、そろそろ出してくれるとありがたいんだけど・・・・・・」

 

 嬉しそうに言う真名に若干惹かれつつも、俺は戦況を聞いた。俺の目を通して世界を見ているならば、現在の戦況もわかるはずだ。

 

 真名は嬉しそうにしながら俺の頭を撫でるのを止め、手を動かして俺の顔の前に数枚のアポカリプスの結晶で出来た薄い板を浮かばせる。その板の合計は四枚で、一枚には"禁手"に至ったであろう木場の姿、フリードと交戦中。一枚にはボロボロのコカビエルと戦うリアス先輩達。もう一枚にはギルと戦う愛歌とアルゴ、ツグミに大雲さん、綾瀬の姿。そして最後の一枚は、トリトンと言われるであろう黒コートの男と戦っている、アポカリプス結晶を纏ったいのり。

 

 愛歌は体を黄金に光り輝かせ、いのりはアポカリプス結晶を、木場は白と黒の波動のようなものを

纏った剣を、コカビエルではゼノヴィアが二つのデカい剣を振りかざして戦っていた。それぞれがこの段階で、力を覚醒させた。・・・・・・ゼノヴィアのは隠し持っていたんだろうけど。

 

「ふふ、いのりはあなたのお陰で覚醒したのよ? あなたが傷つく姿を見て、自分の中に眠っている感情と力を抑えられなくなった。いのりなら、周りを殺すのは時間の問題。でも、トリトン相手に勝てるとは思えないわ。いくらあれが強いと言っても、今のいのりは制御できてないもの。あなたから自分の気持ちである《王の能力》が消えて、死んだと思ったのでしょうね。それに、あなたの体には穴が空いてるわ。それも、心臓に。でも、この娘が塞いでくれたようだけど」

 

 そう言って、真名はもう一枚のアポカリプス結晶プレートを取り出した。そこには、泣きながらに回復させようとする祭と必死なアーシア。それに、レイヴェルが泣いていた。その側に落ちているのは使ったであろう、フェニックスの涙の空瓶が転がっている。

 

 多分、今だに目を覚まさないから心配しているのであろう。実際、心臓に穴が空いて生きている人間なんて聞いたことがない。

 

「みんな、コカビエルにあれだけの傷を負わせておいて、何で押されてるんだ?」

 

「それをやったのはいのりよ。あなたが死んだと思って覚醒したときに、真っ先にコカビエルがあの聖夜に現れた"ロストクリスマス"の"名前の無い怪物"だと気付いて突っ込んでいったの。それであのコカビエル、一瞬で返り討ちにされたわ。いのりはコカビエルに目もくれず、トリトンに突っ込んで行っちゃったのよ」

 

 どうやらコカビエルのボロボロにされている原因はいのりのようだ。真名はクスクスと笑い、口元を抑えている。というより、隠している。

 

 ・・・・・・余程、コカビエルがボロボロにされるところが面白かったんだろうな。首謀者は、コカビエルだろうし。

 

「それで、そろそろ此処からだしてくれない? じゃないと、俺も出方知らないんだけど」

 

「待って。私の力を貸してからね」

 

 真名はそう言い、顔を近づけて俺の唇に自分の唇を重ねてきた。柔らかい感触と真名のいきなりの行動に俺は困惑し、停止する。

 

 そして力が流れ込んでくるのを感じると、真名は舌を入れてきた。

 

「くちゅ・・・んっ・・・はぁ・・・・・・これでOKよ。ついでに私のヴォイドをあなたに貸したから、あっちに戻ったらちゃんと使ってね♪」

 

 俺から口を離した真名はそう言い、膝枕の体勢で俺を見つめながら言う。そして、真名が俺の顔を隠すと同時に、景色が黒く塗りつぶされたように見えなくなった。

 

 

 

 

 

 ぶつかり合う金属の音、啜り泣く震えた声、怒りの込められた美しい声、それら全てが聞こえる暗闇を祓い、俺は目を覚ました。目の前には祭とレイヴェルが泣きながら、アーシアは俺の生還に驚いたような表情で俺を見た。

 

 そして、祭とレイヴェルは俺が目を開けたのを確認すると同時に勢いよく抱きついてくる。そこら辺にはアポカリプス結晶が散乱しており、此処だけ何も被害は出ていないようだ。

 

 よく見ると、祭の周りには多数の十字架が並んでいる。・・・・・・いや、俺たちを囲んで安全地帯を作り出しているという方が正しいだろう。

 

「桜歌様!!」

 

「桜歌!!」

 

 二人は泣きじゃくりながら、俺に抱きついている。優しく頭を撫で、背中を撫でてから起き上がると二人を離した。

 

「祭、この結界は?」

 

「私の禁手の《禁断乙女の聖域(スピリチュアル・メイデン・サンクチュアリ)》だよ」

 

 俺の質問に祭は答え、十字架をクルクルと回しだした。それはいのりの方から飛んでくるアポカリプス結晶を弾き、此方に一つも飛ばさない。この結界は、誰も触れられない聖域と言うことだろう。

祭にピッタリの禁手だ。

 

 というか、何で此処にいるのだろうか? 家で愛歌を見ているように言ったはず・・・・・・それに、その張本人の愛歌と綾瀬達も戦場で戦っている。しかも、綾瀬達の方が押している。

 

 コカビエルに関しては劣勢だけど、それよりもいのりだ。《王の能力》を奪ったトリトンを相手にしているが、その身にはアポカリプス結晶を生やしたようにして、それを武器にして斬撃や弾丸のように打ち出して戦っている。

 

 ───その姿は凄く綺麗で、舞を踊るように戦い、トリトンと互角。いや、それ以上に戦っているが決定打にもなっていない。

 

 ・・・・・・いのりは泣いている。心が、叫びが、剣撃の音が、その全てが泣いている。自分の心の内に飼う力を"化け物"とでも言うように、その力を振るうのを、その姿を見せるのを、全てに対して泣いている。

 

 実際に泣いているわけじゃないが、心が泣いている。

 

「泣いてる・・・・・・」

 

「・・・・・・そうだね。いのりさん・・・・・・桜歌が倒れたとき、凄い怒ってたよ」

 

 俺と祭は戦ういのりを見つめ、ただそう言う。

 

 いのりが怒った、それは凄い珍しいことだ。・・・・・・いや、それすらも俺は見たことない。それも俺のために怒っているのか、俺が生きているのをわかっているのか・・・・・・。

 

 俺は立ち上がり、レイヴェルと祭の頭を撫でる。既にアーシアは一誠達に俺が息を吹き返したことを伝えに行ったため、いない。

 

 ただ、それを伝えたところで俺がコカビエルよりもいのりを優先することはわかっているだろうから、増援は期待してない。回復役として行っただけ。

 

「祭、レイヴェル、行ってくる。祭とレイヴェルは、一誠達の加勢をお願いね」

 

「わかった。でも、気をつけてね」

 

「気をつけてくださいですわ。桜歌様」

 

 俺は祭とレイヴェルと軽い約束を交わして、その場を離れる。祭は戦闘タイプじゃないが、あの禁手は役に立つだろう。綾瀬達は大丈夫。いのりは俺。そうなるとリアス先輩が危ないために、そこに行かせた。もし指示をしなかったら、俺と一緒にとでも言うだろう。

 

 右手の甲には"王の紋章"が浮き出ており、真名から貰った力の証があることを示している。

 

 地面を蹴り、俺はいのりとトリトンが戦っている戦場に飛び出した。

 

 空を凄い速さで駆け、

 

 魔力で足場を作り、

 

 右手と胸を輝かせ、

 

 右手に何かが形作られると同時に、俺はその手をトリトンに振り下ろして斬撃を放った。それをトリトンが細身の剣で受け止めた瞬間にぶっ飛ばされ、校舎に突っ込む。

 

「───桜歌・・・ッ!」

 

「ごめん。いのり、遅くなって」

 

 いのりはその身にアポカリプス結晶を纏い、俺に近づかないようにこっちに来ない。本当なら飛び込んできたいんだろうが、この姿を見られたことを悲しんでいるのだろう。自分の体を抱き締めるようにして身を隠し、俺から遠ざかろうとしている。

 

 

 ───本当に馬鹿。

 

 

 そんないのりに俺はゆっくりと近づき、どんどんと距離を積めていく。いのりは俺から離れられずに、近づくことも出来ずに戸惑っている。

 

 

 ───俺がアポカリプス結晶になって消えるとでも思ってるのだろうか?

 

 

 そうして俺はいのりの前まで行くと、いのりは哀しそうな顔で俺から遠ざかろうとした。それに対して、俺は遠ざかろうとしたいのりの腕を掴み、引き寄せ、抱き締め、キスをした。

 

 小鳥が啄むようなキスだが、いのりはフリーズし、離すと同時に俺を狼狽えながら見る。その視線はチラチラと俺を見ないように動き、たまにこっちをチラチラと気にする。

 

「いのり、俺は"ロストクリスマス"を知ってる。真名を知ってる。その能力も知ってる。だから、怯えないで、怖がらないで一緒にあいつを倒す」

 

「私・・・"化け物"だから桜歌の隣にいる資格なんてない。黙ってた・・・だから、資格なんて・・・」

 

 いのりはまだ視線を合わせず、コカビエルや周りの戦闘中の人たちを見ている。俺を真っ直ぐに見れない理由は、後ろめたさか、罪悪感から来ているのだろう。

 

「まず一つ、近づいてもアポカリプス結晶にはならない。これはさっきのキスで証明できた。だからお前に近づいてはいけない理由にならない。過去の"ロストクリスマス"を気にしてるんだろう、でもそれは迷信だ。そして二つ目、俺はいのりの隣にいたいから居るのであって、資格なんてどうでもいいし関係無い。そして三つ目、その姿は可愛いし綺麗だし、怖がらなくてもいい。もし他の人が嫌いでも、嫌いにならないから、隠さなくていいよ。・・・・・・俺はその姿、好きだよ」

 

 俺が説教するみたいにそう言うと、いのりは段々と目を合わせるようにゆっくりと俺の足元から視線を動かして顔を上げる。頬を少しだけ赤く見せながら

 

 

「・・・そんなに見たい・・・? 桜歌は・・・えっちな人・・・?」

 

 

 と言った。

 

 

 だが、そこに水を差す馬鹿が一人、校舎の瓦礫の中から這い上がってくる。

 

 

 

「桜歌、それは真名のヴォイドだ・・・・・・返せッ!」

 

 

 

 その手に細身の剣を携えた、黒いコートのトリトンが怒ったような顔で立っていた。




終わんなかったぁーー!!
次で終わるかな?
終わればいいけど。
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