「桜歌~~~♡」
「・・・・・・」
転移魔法を使い、桜歌の目の前にいきなり現れた私は、勢いよく愛しい男性に抱きつく。桜歌の方が身長が低く、年齢もしたということは気にしない。
そんな私に彼はビックリしているのか、無言を貫き、私を避けることもなく受け止めた。
桜歌の体を撫で回し、私はベタベタと触りながらも満面の笑みで離れないように、あの汚物を記憶から消すように堪能する。流石は私の清涼剤と言うか、心がもう幸せいっぱい。桜歌の体は貧弱なトリトンよりも逞しくて、堅い・・・・・・もしかしたら、下も・・・・・・!
「・・・・・・もう『知らない』とか言ってなかった?」
「言葉の文だもん! 嫌いになるわけ無いじゃない!」
嫌なところをツッコまれるが、私は誤解を解こうとする。だって、桜歌に気にかけて欲しかっただけなんだから、別にいいよね。
そう言いながら、私は彼の下半身に手を伸ばして・・・・・・
「マナ、何してる?」
「えっと・・・・・・桜歌の体って堅いから、下はどうなのかな~って・・・・・・」
私は触る前に、腕を掴まれた。見えていないはずなのに、この対応は凄い・・・・・・でも、知識ってあるのかしら、桜歌は? そう言えば、あの暴漢共相手に知識はあると公言していたような気がするけど、結局は『脱がす方が好き』とか言っていた気もするけど、この年齢で何故そこまで?
「ねぇ、私の体に興味ない?」
「無い」
聞いた瞬間、間を空けずに断言された。
「ほら、これじゃあどう?」
言い切られた私は悲しくなって、桜歌の手を取り自分の左胸に当てる。その瞬間、私の胸が桜歌の手でムニュっとなり、少し嬉しくなったがそのまま当てさせる。そして、さっきより強く桜歌の手を自分の胸に押し付けた。
だけど、一向に揉んでくれない・・・・・・やっぱり、思考はまだ子供? この年じゃ、まだ性的なことには興味ないのかな?
数分間の硬直に私は耐えきれない。私の体が段々と熱くなってきた。これは不完全燃焼になりそうだし、私は沈黙を破ってみることにした。
「ねぇ、揉んでよ!」
間違えた。だけど・・・・・・
「・・・・・・あのさ、もう少し自分を大事にしたら?」
「・・・・・・え?」
桜歌の口から放たれた予想外の言葉に、私は驚いた。彼ならきっと、無感情な言葉と表情で、私に質問でもしてくるかと思ったのだ。でも、彼は前より興味を持ってくれているのか、私を無表情ながらも悲しそうな目で見てくる。
───目は表情よりも、感情を表す───
誰が言ったか、私はそう思った。桜歌の瞳は悲しそうで、まるで私を心配しているようにも見えるのだが、でもやっぱり違う・・・・・・。
「ふふ、やっぱり私は一番桜歌が好き。結婚して♪」
「嫌だね」
不意打ちのように繰り出した告白は、見事に断られた。それでも、私を突き放そうとしない桜歌は優しいのだろう。無感情でも、優しさだけは隠せない。
「───第一、君は婚約者がいるんじゃないの?」
「そんなのどうでもいいでしょ? 私は私で決める。それに、年齢は桜歌と同じで桜歌よりガキなのよ? 私、そんなの趣味じゃない!」
「じゃあ、俺も年下だから趣味の範囲じゃ───」
「桜歌は私と結婚するの!」
逃げようとする桜歌が言い切る前に、私は断言した。我が儘だと思われるだろうけど、愛情を表現するにはコレしかない。というより、桜歌以外とは結婚したくない。無感情でも、こうしているうちにわかってくれると思う。
それは何時の間にか決めたことで、桜歌にとっては迷惑だろう。でも、言い切らないと私の気が済まないし、頭が変になりそうだった。
お見合いのストレスにあいつと居るとストレスが・・・・・・うぅ、思い出しただけでイライラする。だけど、"心配してくれた"ということは、まだチャンスありよね!
「・・・・・・」
「沈黙は肯定?」
「絶対にない」
呆れたような桜歌に、私は追い打ちをかけるが、またも全力で否定されてしまった。これでは私がトリトンと結婚することになってしまう。
───桜歌と結婚できない!
私はこの日、避けようともしない桜歌をいいことに、一緒にご飯を食べたりベタベタしたり、お風呂に乱入したり一緒に寝たりと好き放題するのだった。
それからは、何日も親に偽って桜歌の家に寝泊まりした。
勿論、桜歌は私を追い出すことも怒ることもしない・・・・・・。
5月7日
この日、私は家から桜歌の家に通った。しかも、トリトンは運がいいことに生きていた。なんでも大雲が、何時も通りに私の後をつけていたらしい。そして、爆撃王のような火力で、見事に敵を跡形もなく消し去った。
その余波でトリトンは吹っ飛び、返り血も浴び、血だらけだったらしい。私は『こんな時間まで婿を置いてどこに行ってたんだ!』と怒られたが、桜歌の幸せ成分で幸せトリップしていたので聞いてない。大雲に転移魔法が追跡できなかったと言われたときは、『実力よ♪』と返しておいた。
6月8日
桜歌が好きなものは、甘いものと音楽だとわかった。最初はギターだったけど、家にはピアノやらヴァイオリンやら、なんでも楽器がある。桜歌と一緒に行動していたから、何度も綺麗な音色を聞けて満足だ。
7月7日
七夕と言われる日、この日は父親が『日本の風習をやるぞ!』と張り切り、トリトンまで呼び少し屋敷でパーティーを行うことに・・・・・・この日は何でも、魔王様を排出したグレモリー家も自分の娘も楽しげなパーティーに入れてくれと頼んできた。
父は恐縮し、受け入れ、私達に失礼の無いように言う。だけど、トリトンだけは私を未来の婿だと紹介し、舞い上がっていた。上級悪魔に対する躾もなっていないため、私は親に怒られるであろうトリトンを期待。
翌日、トリトンは顔を真っ赤にしながらもアンドロマリウス邸に来た。泣き虫、まだ知り合ったグレモリーのリアスの方が大人だった。
───男って屑ね・・・・・・勿論、桜歌は別よ!
8月4日
今日は桜歌と海に行く日、仕方ないのでいのりも連れて行く。今日の今日まで、桜歌は一度も私の体には興味を示さなかった。だけど、私は絶対に惚れさせてみせる。そんな思いを胸に、トリトンが家に来る前にいのりと転移、桜歌の家に向かった。
行くと、桜歌は朝ご飯を用意して待っていた。何でも、泳ぐなら朝ご飯はちゃんと食べて欲しいらしい。溺れても、自分じゃ力不足だと・・・・・・桜歌の気遣いは、若干だけど心を開いてくれているのがわかった。抱きついたら難しそうな顔だったけど・・・・・・。
海に到着、私は白のビキニ、いのりはワンピースタイプのピンクの水着。桜歌はパーカーを羽織りながらも、フードをかぶり、面白く無さそう。
でも・・・・・・
『真名、いのり、凄く似合ってるよ・・・・・・』
と、褒めてくれた。何でもちゃんとわかっているらしく、流石は桜歌。抱きついたら、桜歌は顔を赤くして俯いた。何時もと違って、なんとも人間らしい表情。愛らしくなって、私は抱き締めてキスを強要。
だけど、何回もやると逃げられる。何回も裸を見てるのに、恥ずかしいらしいけど、周りは結構な人がいた。
そりゃそっか・・・・・今まで、人前でキスしたことなかったな。
少し感情を開けるどころか、人間性まで引き出したらしい。もしかしたら、周りに人間がいたから羞恥心が倍増されたのか・・・・・・。
私は桜歌を探す。そして探していると、どこかのチャラいお兄さん型(ゴミ虫)がナンパしてきたのだ。桜歌もこれだけ積極的になればいいのに・・・・・・。嫌がる私を、男共(クズ虫)は腕を掴んで連れて行こうとする。だけど、そこで桜歌が何処から持ってきたのか警棒みたいなスタンガンを思いっきりバカ虫(男共)に殴り、離れたと同時に電流を流した。
まあ、桜歌も不良品(男共)───訂正、不良品の方がまだ使い道あるわ。失礼ね、不良品に対しての冒涜だわ。ということで、不良(男共)を容赦なく一体ずつ減らす。しかも、凄く綺麗な体捌きで殴りかかってくるのを避けているのだ。相手は見た目、18のクズ虫。それも、3対1で簡単に圧勝してしまった。
崩れ落ちる不良に、拍手喝采の周りの人たち。嬉しくなって、私は桜歌に抱き付いた。そこまではいいが、桜歌の体はビリビリしてる。悪魔である私が、それで少し怯んだ。でも、足の力が抜けた私を桜歌はお姫様だっこしていのりの元へと連れて行ってくれた。
───凄い、悪魔の私以上の耐久力・・・・・・これは、上級悪魔間違いなしね。
この後、いのりは今だにビリビリする彼の体に触れたが無反応。私は何度もさわり、ビリビリを体験するのであった。
───いのり、感覚まで鈍ってるのかも・・・・・・。
9月24日
ついに、結婚の日程が決まった。私の嫌いな結婚、それもトリトンと・・・・・・私が上機嫌で返事を返すのを、勘違いしたみたい。私はただ、桜歌との幸せトリップを脳内で楽しんでいただけ。トリトンに告白されてもない。しても、断るけど。
この日、私は親に向かって反抗した。でも、『もう決まったことだ』と父は、母は言う。幸せになる権利すら与えられないのか、私は嘆いた。
10月10日
私はついに、桜歌に泣きついた。みっともなくても、私は桜歌と一緒にいたいと願う。だけど泣きついている私の元に、一つの魔法陣。そこから出てきたのはトリトンで、桜歌の顔を見て嫌そうな顔をした。
「ねぇ、君が真名を泣かせたの? そうなら、黙ってないよ」
「・・・・・・そっか、お前が婚約者か・・・・・・泣かせているのは、どっちだ?」
開口一番、トリトンは自分が悪いとも気付かずにそう自信満々の笑みでそう言う。対する桜歌は私の頭を撫でて、抱き締めた。魅せ付けるように、トリトンを無視して・・・・・・。
初めて、桜歌から・・・・・・。
私は嬉しくて、桜歌に抱きつく。
だけど、トリトンはよく思わずに
「君は真名に何か仕込んだな!」
そんな馬鹿な言葉を叫ぶと、桜歌に魔力を放った。そして、その魔力を普通の人間が当たったらヤバいと思い、私は盾になる。抱きついて、桜歌を守るように。
痛みが背中を襲い、私は崩れ落ちた。軽傷だけど、それでも痛い。
「そうか・・・・・・真名が、トリトンを嫌う理由がわかった・・・・・・」
「うるさい。嫌われているのは君だ! このまま死ねッ!!」
もう一度、魔力を打ち出すトリトン。私は見ていることしか出来ず、桜歌が魔力に飲まれるのを見ているしかない。だけど、それは裏切られた。
私のヴォイドを、桜歌が咄嗟に引き抜いたのだ。
魔力を切り裂き、トリトンを見据える。家の中は結界が張ってあって、物は壊れない。寧ろ、此処は防音が完璧な桜歌の二つ目の寝室だ。物なんて、ベッドしか置いてない。
「コレで終わり?」
「うるさい! 今から本気を出すんだ!」
そう言い、トリトンが蝙蝠に似た羽を出した。
「───どうだ、カッコいいだろう! これは───っ!?」
自慢するトリトンだが、桜歌の殺気に言葉を止めた。私の前で今、おかしなことが起こってる。人間の桜歌が、尋常じゃない・・・・・・何時も以上に、感情を出しているのだ。
───憎しみ
───怒り
───悲しみ
───復讐心
負の感情が、桜歌を変えさせた。───否、今まで隠してた。最初に逢った時は、感情を無視して消すことで自分を抑えていた。それをこじ開けたが為に、私がそうしたためにここまで抑えられなくなってしまった。
「お前・・・・・・あいつの、仲間か・・・・・・?」
何時もの桜歌じゃない、復讐心を取り入れた桜歌。低く怒りを帯びた声音で、トリトンを敵視しながら言い放った。
「あいつって・・・・・・?」
「ウァレフォル・・・・・・この名前に、聞き覚えは?」
今にも飛びかかりそうな桜歌は、そう言うと足をガクガクと震えさせる。これは、怖いから発している訳じゃない。
「なんだ、お父さんの知り合い? それとも、お母さん?」
「そうか・・・・・・なら、お前を人質にすればいいか」
そう言って、桜歌は私のヴォイドで斬りかかった。何時もの桜歌じゃない桜歌は、人間の筈なのにトリトンを追い詰める。
そして、右腕を切り落とした。それにもがき苦しむトリトン。子供には耐えられないのか、悪魔でありながらものたうち回る。
血を流し、人を斬る覚悟のない目で、命乞いをするかのように・・・・・・。
「やっぱ、人質は止めだ。同じ痛みを、味逢わせてやる」
そう言うと、桜歌は剣を振り下ろす。それは空を斬り、トリトンの心臓に突き刺されるかと思ったけど、
───トリトンが消えた
目の前から、いきなり消えた。何故か私の横には、いのりがちょこんと座っている。
「あ~あ、逃がした・・・・・・でも、真名も似たようなの使えるよね? 音は違うけど、あいつの音と似ているし、あいつの居場所を知ってるだろ?」
「それは、ダメ・・・桜歌・・・それをすると、死んじゃう・・・恩人だから、死なせない」
私の言いたかったこと、いのりは2回しか逢っていないのにそう言った。初対面で、話すことも聞くこともしない、興味を持たないいのりが・・・・・・桜歌に、興味を持った。
シリアス・・・・・・?
人間なのに、最早恐ろしい桜歌・・・・・・。
あっ、トリトンが弱いだけですよ?
スタンガン、それがどうしたって?
感情は消えてます・・・・・・だから、痛いのがどうしたって感じです。
決して、桜歌が超人というわけでは・・・・・・無いはず。