今は午前11時、黒歌は何処かに帰り、今は俺と祭の二人だけ。黒歌もここに住めばいいのだが、
今はダメらしい。
「祭、そろそろ行こうか・・・・・・って、その格好じゃ無理だよな」
「うん、いのりさんから借りることは出来ないの?」
今の祭は俺のワイシャツ一枚で、下着なども身につけていない。この格好なら、即お巡りさんのお世話になるか、そこらのチンピラやおじさんの餌食になるだろう。かと言って、いのりの服じゃ小さい気がする。祭って、いのりと違って胸とか大きいし・・・・・・。
「その・・・・・・桜歌の服じゃだめなの?」
「祭、その前に下着が必要だろ?」
俺がそう言うと、祭は赤面して俯いた。今はリビングで二人ソファーに座っており、俺はスマホをいじっている。
確か、祭の家には人払いの結界が張ってあるはずで、今はまだニュースにもなっていないはず。それどころか、こっちで証拠とかは消すとか言ってたからな。
「じゃあ、祭の私物を取りに行こうか」
「えっ!? この格好で!? その・・・・・・恥ずかしいよ」
「大丈夫、他の人には見られないように、魔法陣を使うから」
俺はそう言って、祭と俺の足元に魔法陣を展開した。この魔法陣は、部室にあったものといのりから教わったもので頑張って作った魔法陣だ。悪魔になるなら、いろんなことを覚えておいた方がいいらしい。
「えっ!? 何コレ! どうなってるの?」
「安心して、祭。祭の家に飛ぶだけだから」
俺と祭は魔法陣に包まれ、その場から消えた。後に残るのは、人気のないリビングだった。
そうして、俺と祭は魔法陣で転移をして、祭の家にやってきた。そこは可愛らしい部屋で、机には写真立てに筆箱、壁には学校の制服がかかっていた。
「ここ・・・・・・私の部屋」
「へえ~、そうなんだ。これ・・・・・・昔の写真か?」
俺は机の上においてある写真立てに触れ、見てみる。そこには、幼い祭と俺、綾瀬が写っていた。
確かこの写真は綾瀬が引っ越す数日前、綾瀬が事故にあった後に撮った写真だ。綾瀬が真ん中に車椅子で写り、俺と祭がその横に立っている。
「さて、じゃあ早く支度しようか。祭、いるものは纏めて置いてくれ。後で俺が転送しておくから」
「えっ、うん・・・・・・えっと、ちょっと部屋から出ておいてくれないかな? その・・・・・・着替えを見られるのは恥ずかしいし・・・・・・見たいなら見ても良いけど」
祭が恥ずかしそうに顔を逸らし、人差し指同士をつんつんとしている。本能としては見たいが、見ない方がいいだろう。俺は無言で祭に背中を向けて、部屋から出た。
そして後ろ手に扉を閉め、深呼吸する。俺の心臓は破裂しそうというか、もう既に心拍数は限界を超えているだろう。
祭ってあんなに可愛かったかな? そんな事を思いながら、俺は下の階へと降りていく。
下に降りると、鉄の匂いは消えていて、無臭の空間が漂っていた。リビングへの扉を開け、俺は中に入る。そこには、昨日と同じままの夫婦が壁に磔にされていた。
せめて、下ろして弔わないとな・・・・・・。
俺は壁に刺さっている杭のようなものを一つずつ抜き、おじさんを下ろす。このまま祭が見たら、
また泣くかもしれない。だから、俺は壁からおじさん達を丁寧におろしていく。おじさん達には、子供の頃世話になった。俺の親が死んだ後、少し生活の援助をしてくれたのだ。それに、気にもかけてくれた。なんで最初はわからなかったんだろうな。
最後におばさんを降ろして、手を合わせる。後は、何処に埋めるか・・・・・・庭に埋めるのが妥当かな? 祭には悪いけど、穴を掘っておこう。でも、勝手に埋めるのもな~。仕方ない、祭の準備が終わるまで待っておこう。
俺はおばさん達に綺麗なお辞儀をする。
「おじさん、おばさん。今までありがとうございました。それと、守れなくてごめん・・・・・・でも、安心してください。祭だけは・・・・・・何としてでも守ります。おじさん達の大切な祭は・・・・・・俺が責任持って守ります。悪魔になったけど、祭は絶対に手放しませんので、安心して眠ってください」
俺がおじさん達の遺体に感謝をしていると、突然後ろから足音がした。どうやら、俺は集中しすぎていたようだ。俺が振り返ると、そこには可愛い服を着た祭が立っていた。
「お父さんとお母さん、ホントに死んだんだね・・・・・・でも、桜歌の言葉は信じていいのかな? お父さん達が死んじゃったのは悲しいけど、その言葉は信じていいよね。桜歌の一番がいのりさんでも、
私は桜歌が守ってくれるんだよね?」
涙を流している祭は、おじさん達の死体を見つめている。優しげな瞳で、祈るような顔でおじさん達を見つめている。
「そうだよ、でも俺は一番とか関係無く全部守るさ。いのりも好きだけど、祭も好き。俺は大切な存在を守るために、悪魔になったんだと思う。だから、祭は俺を好きな祭でいいんじゃないか? 最近悪魔になったからか、強欲になって来ちゃってさ」
「ふふっ、酷い王子様だね。でも、桜歌が強欲なら安心かな?」
俺は祭を抱き締めて、指で祭の目元に溜まった涙を拭う。
それで安心したのか、祭は俺にキスをしてから離れた。
祭の唇は柔らかくて、温かかった。
「準備は出来たし、そろそろ行こうよ。私の荷物は多いよ?」
「どうせ転送するだけだし、大丈夫だ。じゃあ、そろそろ行こうか」
俺は階段を駆け上がっていく祭を追いかけて、二階に上がっていった。その際にスカートの下から下着が見えたのは、仕方のないことだと思う。
それから1時間後、俺と祭は街中を歩いていた。あの後は結構大変だった。祭の部屋から洋服類を転送し、制服を転送し、机を転送し、アルバムを転送し、さらにはベッドまで転送した。後は靴などの小物類をいくつか送ったが、家の中がどうなっているかは分からない。帰ったら整理と言う名の仕事が待っているのは、俺にとっては軽いことだろう。だって、グレイフィアさんのスパルタに比べたら・・・・・・うん、言ったら何を言われるかわからないから止めよう。
それと壁から降ろしたおじさん達の遺体は、俺と祭の前で焼くことになった。それを祭は海にばらまいた方が良いという。もう既に、おじさん達とは相談していたらしい。
「まずは、昼ご飯だよな。どうする? 金ならいくらでもあるけど?」
「う~ん、じゃあ普通のファミレスでいいんじゃない? お金はあると言っても、有限なんだよ。それを好き放題使ってたら、あとで後悔するのは桜歌だからね」
俺は軽く怒られ、言い返すことも出来ない。確かに祭の言うとおり、お金は有限。かと言って、お金をどこに使えばいいかわからないんだよな。ライブするごとに増えて行くし、学校行っててもお金が入ってくるし。それに、貯金が億を越えてしまったんだよね・・・・・・祭にお小遣いでもあげようかな? 黒歌にもあげてるし・・・・・・。
「それじゃあ、ファミレスに行こうか。ちょうどそこにあるし」
「そうだね、買うものはファミレスで相談すればいいよね」
俺と祭はそう決めて、ファミレスに向かう。時刻は12時くらいで、お昼時なのだが、周りは無駄に人が多い。俺と祭はファミレスに入ると、そこにウェイトレスの人が歩いてきた。
「いらっしゃいませ、二名様でございますね。では、こちらへどうぞ」
ウェイトレスの人は笑みをこぼしながら、俺と祭を席に案内する。着いた席は、窓際の席で、外がよく見える場所だった。
「それでは、ご注文がお決まりになりましたらお呼びください。それに今日は春のカップルフェアですので、こちらのお飲み物がオススメとなっております。では、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
「ふぇっ!? ・・・・・・カップル///」
ウェイトレスの言葉に反応した祭は顔を真っ赤にして、呟いた。あの店員は、どうやらカップルと思ったようだ。まあ、間違いでもないし、当たりでもない。でも、ハーレムにカップルの概念ってあるのかな? まあいいや、今はカップルで。
最後に祭を赤面させたウェイトレスは、『初々しいわね♪』とかいって、去っていった。初々しいのは祭だけだな。実際、俺はいのりとも付き合ってるし。
「それで何食べる? さっき言ってたジュースでも頼んでみる?」
「えっ? いいの? 私達、カップルじゃないし・・・・・・」
「何言ってんだ? お前は俺の”大切な人”なんだから、別に良いだろ?」
俺がそう言うと、湯気を出しそうなくらい赤くなる祭・・・・・・うん、嬉しいんだろうな。それにこれはデート? だから普通だろう。多分・・・・・・。
俺はメニュー表を捲って、食べたいものを探す。特に食べたいものもないし、凄い迷う。そんな中、祭も迷っているのかページを同じところでパラパラとめくっていた。
「決まったのか、祭?」
「えっと・・・・・・どっちにしようか迷ってるの。桜歌、これとこれのどっちが良いと思う?」
祭は迷っている料理のページを見せてきた。片方はハンバーグで、もう片方はエビグラタン。どっちも美味しそうに写っているが、思わず苦笑してしまう。
いのりなら、簡単に決めてしまうので、あまり見られない光景だ。それどころか、俺のおにぎりが食べたいという。
「酷い、桜歌。結構悩んでるんだよ?」
「いや、可愛いと思ってさ。じゃあ、俺がエビグラタンを頼むから、祭はハンバーグを頼んでよ。それで交換したら、両方食べれるだろ?」
俺はボタンを押して、ウェイトレスを呼ぶ。その間にも、可愛いと言われた祭は慌ててあたふたとするが、可愛いので放っておこう。
そして数秒でウェイトレスが現れ、メモを片手にしていた。それもさっきのウェイトレスで、祭の様子を見てクスクスと笑っている。
「御注文は何ですか?」
「それじゃあ、このエビグラタンとハンバーグセットお願いします。ライスは大盛で、スープはミネストローネでお願いします」
「お飲み物はどうなさいますか?」
「じゃあ・・・・・・このカップルフェアの特性ドリンクを」
「フフフッ♪ 畏まりました、ではご注文のご確認をします」
そう言ってウェイトレスは俺の頼んだ品の確認をして、去っていった。その間に祭はドリンクの絵を見て赤面していた。ドリンクに刺さっているストローは先が二つに分かれているが、凄く短い設計になっている。即ち、顔が接近すると言うことだ。
何度もキスしたのに、こういうことになるとダメなんだな・・・・・・。
俺は慌てふためく祭を眺めながら、外を眺めた。そこには、ゲームセンターに入っていく男女が目に入った。見た感じ、片方は駒王学園の制服を着たチクチク頭と金髪のシスター少女だった。もしかしたら、一誠がデート中? まあいいや、あとでわかるだろう。
俺は外から目を離して、祭に視線を戻す。そう言えば、祭の携帯の番号知らないな。俺はスマホを取り出して、祭に向ける。
「祭、携帯の番号を教えてよ。俺の番号知らないでしょ?」
「えっ! あっ、うん! 待ってて、ちょっと出すから」
祭はそう言ってハンドバッグを探り、スマホを取り出した。俺と祭は携帯の番号を交換すると、もう一度しまう。その間にも、祭は『桜歌の携帯番号・・・・・・』とか言ってたが、幸せそうなので放っておこう。
それから1時間くらいで、俺と祭はファミレスから出て来た。祭は今にも倒れそうなほど顔を真っ赤にしていて、俺に寄りかかっている。何があったかと言うと、簡単に説明しよう。
まずは、ドリンクが届いたのだが、それはストローが繋がっていて、さらに顔が凄く近くなると言う代物。それにより、祭は赤面しながらも飲み物を飲んだのだ。それだけで終わるかと思われたが、次は運ばれてきたご飯・・・・・・つまり、エビグラタンなのだが、俺がスプーンに掬って祭に食べさせようとしたところ、さらに顔を赤くしてしまったのだ。
それにより今は戦闘不能というか、思考停止・・・・・・頭がオーバーヒートを起こした。どうやら普通に迫られるのには弱いらしい。兎に角、嬉しかったようだ。
「じゃあ、次は買い出しに行こうか。祭、何かいるものはある?」
「・・・・・・うん、えっと・・・・・・歯ブラシとか、いろいろかな?」
兎に角、祭に任せた方が良さそうだ。俺に出来ることは、荷物持ちくらいだろう。多分、生理用品とか色々あるだろうし。
「もう、聞こえてるよ・・・・・・桜歌の馬鹿。空気は読んでるみたいだけど」
「あれ? 聞こえてた? というか、口に出してた?」
どうやら、全部口から出ていたらしい・・・・・・。祭は顔をわずかに赤くさせて、俯いた。俺はそんな祭の前を歩いていく。
この後、俺と祭はデパートに行って、俺は夕飯の買い出し、祭は自分の必要なものを別れて買った。
その時に目に留まったリボンを祭に買ったところ、渡された祭が喜んでいたのは俺に取っては嬉しい出来事だった。
ヤバい、眠すぎて書けない・・・・・・。