【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい 作:洩矢廻戦
特にリッチブレンドは最高だぞダイ。
霧が濃い。
自分が前まで操っていた、月の光を飲み込む妖術のそれとは違う、自然が生み出す本物の霧に対し、ぬえはそう思う。
視界が機能し、道を認識できるのは、精々が数m先のみで、それより遠くは、純白に染まる大気が本来の景色を遮っている。
たかが自然を相手に。自分が今、どの辺りにいるのかが分からなくなってくる。
いつも通りなら、華麗に宙を舞って、適当に空へ飛翔し、森を抜けられるのだが、ぬえは今、訳があって空を飛ぶことができない。
なのに――
「うむ、困ったな」
前方から聞こえる呑気な言葉。
男。頼政は口ではそう言っているが、ぬえには分かる。
声色に含まれる抑揚から、彼は言葉通りそのまま、「困った」と、本当にそう思っている訳ではなく。
むしろ、この無駄に過ぎる時間に対して、「まぁいいか」と、ある種の思考放棄をしているようであった。
合計10分にも満たない、本当に僅かな付き合いではある…が。
ぬえは不覚にも、この男の性格や嗜好やらが、何となく分かってくるようになってきてしまった。
……それが、余計に苛立つのだ。
「なぁ、ぬえ」
「…何よ」
「どっちに進めばいい?」
そんなぬえの胸中を知らずに、頼政は視線を前にしたまま、言葉のみでそう問う。
ぬえが覗き込むように見ると、頼政の前方には、二つの道があった。
踏み慣らされた獣道である。
霧のせいで、その先の景色は見えないし分からないが、獣道が形成される程、そこを何かが通る"何か"がある事は確かで。
頼政は無表情のまま、しかし、僅かに声だけを弾ませて、ぬえに問う。
「………」
「………」
「どっちがいい?」
暫くの沈黙。
そして性懲りなく、彼は一字一句変わらぬ言葉を連投した。
「どっちがいい?」
「知るかッ!」
ふしゃーっ!と、まるで野良猫のように威嚇。
変化の力を使わない、本来の姿である人型なのもあって、そこに恐ろしさはない。
「そもそも、あんたはどこに行こうとしてるのよ?まさかこのまま、私をあいつらに渡すってんじゃ……」
「あいつら?…あぁ、連れてきた彼らか?あれは多分もう帰ったぞ」
「……はぁ?何言ってんのよ?そもそも私はあんたの前で気絶…」
「覚えてないのか?」
納得がいかないぬえとは違って、頼政は呆れ半分に言う。
今更ではあるが、彼は自分が『鵺退治』の為に、ここを訪れたということを覚えているのだろうか…
「そもそも、俺はお前の攻撃を弾いた。そしてお前は吹っ飛び、この森の中で気絶しただろう?そのお前を追いかけて、しばらく森の中を歩いたら"こう"なったんだ」
「………こう?」
「霧だ。お前が出していたのとは違う、自然のだがな」
「ふぅん…」
――話を聞く限りでは、今のところは安心か。
ぬえは考える。どうやら、自分の本来の姿を知るのは現段階で、この男しかいないということだ。
自惚れのようにはなるが、そもそもぬえは、他と比べて非常に整った容姿をしている。
都を恐怖に陥れた、大妖怪の真の姿。人々の衝撃と、噂の伝達速度は想像に難くない。
妖怪とは恐怖が全て。恐怖の供給を失ってしまった妖怪など、本来の実力の半分、もしくはそれ未満に弱体化してもおかしくは無い。
何より格だ。妖怪としての存在の格、商売敵の多い妖怪の世界で、相手から「舐められる」というものは身体的な苦痛の遥か上。
……避けねばなるまい。決して失敗は許されない。
『正体不明』、人間個人に委ねた、完全な想像力が全ての謎。
それこそが、恐怖を糧とする妖怪の至上であると、ぬえは考えている。
唯一、本来の姿を知っている人間。
ぬえは、頼政をじっと見つめ。
「…頭を殴れば消せるかしら…?」
「………??」
何やら物騒なことを考えている。
幸いにも、頼政にはそれが聞こえていなかったのか、僅かに首を傾げて、それで終わりだった。
それから互いに、言葉を発することなく、無言で歩みを続けていく。
依然として、視界を遮る濃い霧の中を進み続け。
誰に向けるでもない、小さな独り言と共に。
「というか……」
ぬえはちらりと、己の背中から生える翼に視線を向けた。
目の前で「あー」だの「うーん」だの、唸り声を上げて行き先に迷っている頼政は、頭の中から完全に除外。
自分の翼。
己の背後、その右から生える三枚の、赤い右翼こそ、ぬえが空を飛べない理由。
傷こそ塞がっているものの、それはあくまでも見た目だけで、肝心の飛行能力は未だ欠損したまま。
相手を己の土俵に持ち込む為だろう、ぬえの予想通り、頼政が使った数十本の矢の中でも、最初に使ったこれのみに、より濃密な霊力が込められていた。
霊力は、妖怪にとっては毒のようなものであり、それの傷を癒すには途方もない時間がかかる。
勿論、傷跡に妖力を集中させて肉体を活性化させれば、自然治癒力が高まると共に、体内に残留する霊力を打ち消す事にも繋がる為、怪我の完治は極論、その者の実力と、何より技量が最も求められるのだ。
――では、自分はどうだろうか?
ぬえは自分が大妖怪であるという誇り・自負は持っているが、だからといって過剰に自惚れる程ではなく――己の技量を正確に把握していた。
嫌でも理解させられた…というのもある。人が短い一生を、妖怪と比べてあまりにも小さく、儚い人生のほとんどを費やし、そして至った極致。
そのような、新しい世界を見れたとも言った方がいいだろうか、ぬえは意外にも、人間が築き上げ、継承し、紡いでいく知識と技術、その価値をなんとなく、受け入れられるようになった。
――だからといって、決して心の底から敗北を認めた訳ではないが。
「そもそも、あんたが翼を射たなきゃ今頃は…」
「……む」
つい、独り言ではなく明確に、ぬえは相手に投げかける言葉を紡ぐ。
突然のその言葉に、頼政は申し訳なさそうに、声のトーンを下げて返す。
「それはすまん。しかし…そうしなければ俺は勝てなかったからな」
意外にも、もしもの敗北の可能性を肯定した頼政。
ぬえも流石に、彼が今更そのようなことを言うとは思っておらず、あれだけ揶揄われたかのように思えたやり取りの裏で、思っていた以上に自分が評価されていた。その事実に思わずにやつく。
笑い声を少し漏らし、顔をぷいっと横に向けて。
抑えきれない喜色と共に、得意げに返す。
「ふ、ふふん。そうでしょそうでしょ?」
「まぁ地上なら意外と楽ではあったが――」
「うっっっさいわね!」
訂正、やはり気に食わない。
ぬえの絶好調は文字通り、正に刹那のものであった。
ぬえは分からない。
自分は負けた。完膚なきまでに負けて、生殺与奪を握られている。
逆らえる筈もない、その現実はとうに受け入れた。しかしだ、だからといって今の
(こいつは何を考えてるのかな…)
初めて出会った明確な格上。
それも人間が、自分に対して、悪意や敵意以外の、何かの感情を向けているという事実が、どうにも受け入れられないのだ。
妖怪は皆、本能のままに動き、生きる。
妖怪が人間を怖がらせ、殺し、犯すのはどれも本能のまま。
そこに理性が、そして知性が付け加えられるのは、ほんの一握りの強者の特権で、ぬえはそれを意図せずに手にした者。
人間と同じか、またはそれ以上の頭脳をもってしても、ぬえは頼政という男が分からない。
(私を連れて、何処に行こうとしてるんだろ…)
ぬえは、頼政と戦っていた時、その背後にたくさんの人間が、それも部下と呼ばれる上下関係が構築されている者達がいたことを知っている。
人間は、妖怪と違ってその関係性は脆弱だ。
頼政はぬえのことを、過去の苦い記憶から決して害さないと言った。だが彼は、ぬえに何の説明もせず、こうして先を歩いていく。
「俺について来い」と、そう言わんばかりに。こうして黙って先を歩き続ける。
流されるように、ぬえはその背中を追い続ける。
分からない。
未だに、自分は彼をどう思っているのかもそうだが。――彼が、一体何を考えているのか。それがまだ分からない事実が、怖い。
「相変わらず霧が濃いな」
そんなぬえの困惑を他所に、彼は相変わらずの態度のまま、歩き続ける。
右も左も、獣道はいつの間にか消えて。
先程まで足元にあった、踏み慣らされた地面は既に、森の中らしい、草が生い茂るものとなっていた。
「ねぇ、そもそもここってどこなの?」
「さぁな」
変わらず、頼政は歩き続けながら言う。
「人の気配はない」
「それは…そうでしょ」
「だが獣の気配もない」
「…?」
頭に疑問を浮かべつつも、ぬえは静かに聞く。
「今はない。しかし先ほど、この森には獣道があった。…つまりここには、ちゃんと生き物がいるということ」
「あのねぇ…森の中なんだから動物なんていて当然でしょ?というか何を…」
「妖怪もいない」
「…………――」
――野良妖怪の一匹も、存在しないのだ。
いや、正確には気配自体は感じる。だがまるで煙に巻かれたかのように、もしくは
ぬえとて、何度も低級の妖怪に絡まれたことはある。力も不十分で、理性なく本能のまま、己の悪意と飢餓感に従って生きる、文字通り獣そのもの。
知性を会得していれば、己の力を弁えて、じっと草むらにでも隠れるのだろうが、そこまで考える力を持たぬ妖怪たちは、性懲りもなく襲い掛かってくる。
つまり、この森でもそれは例外ではない筈で――
「まるで避けられているようだ。視線こそ感じるが…おそらく
――
まるで流れるように省かれたその選択肢に、ぬえは少しだけ機嫌を悪くして、頬を膨らませて抗議した。
勿論、頼政はそれに気づいていない。
「思えば。ここは静かに暮らすには最適だな」
一際大きな声。
ぬえは、頼政が今までとは違い、少し上方向に寄った虚空を見つめる仕草と、声の抑揚から察する。
彼は、自分でも、ましてやぬえにでもない。別の誰かに問い掛けているのだと。
「安心しろ。俺たちはお前を害す気はない、むしろ無理と言える。連れは療養中でまともに飛べぬし、俺も矢の備蓄が完全になくなった」
――何を言ってるこの馬鹿は!?
思わず叫びそうになるのを、ぬえは両手を使って無理やり塞ぐ。
相手の正体も分からぬまま、自分たちの現状のみを一方的に開示する、その賭けにもならない行動。
反応は返って来ないが、それでも頼政は構わず続けた。
「一番強い俺ですらこうなのだ。お前たちをどうこうできるとは思えんだろう?」
「ちょ、ちょっとあんた何を…」
「武具もまともに扱えぬ人間が一人。どうだ?悪くないだろう」
「何が"悪く"ないのよ!?」
頼政の服、その袖を思いっ切り掴んで、上下にブンブンと動かす。
もはや抑える必要はない。そう言わんばかりの、ぬえによる必死の抵抗運動である。
霧が充満する森の中。頼政のも、ぬえの声も充分過ぎる程に響いている為、聞こえていないという選択肢はないだろう。
だが、無言。
暫く、相手の反応を待っていた頼政。
その空白時間が数十秒から、数分に至った辺りで、ようやく新たな変化が訪れることとなった。
「…誰?」
ぬえの眼前に現れた、その一人の少女。
背丈は自分とそう変わらない。だが内包された妖力…妖怪としての格で比べるならば、圧倒的に下の存在。
その実力は、大きくかけ離れていることだろう。
たとえ、本来の実力の八割も発揮できない今の状態でも、赤子の手をひねるように倒せるとさえ思える。
そう
「はぁ、かの大妖怪"鵺"も人間に負けるものなんですね、しかもコテンパンに」
「なっ――」
「しかも矢を…なんですかこれ?足で引いて近距離で?気色悪いですね、こんなの人間じゃないですよ。っとそこのあなた、『俺は人間なのだが…』ではなく、見れば分かるんですよ見れば、そういう話じゃないんです分かってます?どうやらそうやって言葉のやり取りに苦戦していたようですね。ちなみにあなたが思っている通り、原因は全てあなたにあります。もう少しちゃんと客観的に自分の発言を見直したらどうですか?『言葉にせずとも伝わる』?『これはこれで便利』?ぶっ飛ばしますよ、いやできませんけど」
「ちょっと」
「大体あなた分かってます?そうですあなたですよ
言葉を失うぬえとは対極的に、頼政はほう…と目を奪われる。
くすんだ桃色の髪と、憂鬱げな表情とは正反対。
まるで機関銃の如く、その可愛らしい顔と口から溢れるのは、凄まじい量の、文字通り一方通行の会話であった。
見たことのない顔、そして森の中という、異常と静けさで満ちた空間の中、ブツブツブツと、彼女のみが言葉を発し続けていた。
頼政はすぐ、その少女の正体に気づいた。
身体に纏わりつく管のようなもの、そしてその先に接続されている――第三の目。
先ほどの、自分の内心を正確に読み解き、言葉に発するより前から返答をした流れからも、彼女の正体は一つしかない。
『
あくまでも伝承、そして眉唾ものの目撃情報のみではあったが、どうやらそれは正しかったらしい。
誰も詳細を知らぬ、珍しい妖怪の容姿をこの目で見れた。それに頼政は、小さな感動を覚えた。
――が、それも既に、彼女にはお見通しであり。
「そうです。私があの"覚"です。もっと崇めてもいいんですよ?」
フッ…と、凄まじい程の
頼政はそれを見て、「あぁ、確かにこれは…」と、これまた内心で思考のみの言葉を紡ぐ。
そう、伝承にはいくつもの顔があった、そしてその中の一つは――
「なんです?『覚妖怪がというより、おそらく原因は』ですって?失礼なことを考えますねあなたは、大体私がというより、私程度の存在に簡単に言い負かされる方が悪いんですよ分かってます?人間の癖に心が貧弱、全く情けないったらありゃしないわ。っと失礼、言葉遣いが…」
覚妖怪が最初に目撃されたのは、聞いた話によると飛騨の辺りであったという。
頼政はその時、覚妖怪の容姿も聞いていたが、今ではそれをあまり信頼していない。
そもそも、妖怪とは人の思念。恐怖を糧に形を成し、肉と骨になるのだ。
ヒトとアヤカシ。それは正に表裏一体の鏡とも呼べる。
片方が変われば、もう片方も変化し、うつろう。
最初の知識である「全身毛むくじゃらで人の心を読む妖怪」は、もうとっくに間違いのものとして、頼政は忘れることにした。
そもそも最初に、ぬえという存在と整った容姿を見た経験がある…というのも大きいだろう。
「…えぇ、正気ですかあなた」
自然な流れで、脳内でぬえのことを考えた。
だがそれを、第三の目――サードアイで覗いた少女の反応は――ドン引きであった。
「『それを言われると困る』ですか。しかし」
「それを言われると困る」
「…私が言ったんだから控えなさいよ」
「………」
「『お前が――…』」
「お前が勝手に言ったんだろう(お前が勝手に言ったんだろう)」
「あーもう、これだから口と脳が直結してる馬鹿は…」
凄まじく失礼な罵倒であったが、頼政は特に気にしていない。
それが強がりでも何でもなく、本心から、本気でどうでもいいということが分かっているのだろう。
覚妖怪としての矜持。それもあって「ぐぬぬー」と、口先だけの悔しがりを見せて。
「フン、まぁいいです。いちいち突っかかる馬鹿と比べれば、こうして受け流す馬鹿の方がマシですから」
相も変わらず口は悪いが、それに反応する者はいない。
むしろ、あの頼政がここまでボロクソに言われているという事実に、隣に立っているぬえは先ほどから、ずっと両手で口を塞いで、ぷくくと笑いを堪えていた。
覚妖怪は、人間の心を読んで驚かすという言い伝えがある一方、基本的には無害であり、中には人間と共存していた個体すらいた。…という伝承もある。
しかもその中には、人間を驚かせるどころかむしろ、
はて。そこで今一度、頼政は目前の覚妖怪の少女を見る。
くすんだ桃色の髪と同じく、桃色のセミロングスカート。
どこからどう見ても「全身毛むくじゃら」の要素はない。…いや、癖のある髪はその名残だろうか?
だが一番の要素は、この相手の心を一方的に読み、見下し、嘲笑う態度だろう。
実際、最初の方はあれだけ一方的にまくし立て、会話のペースを握っていたが、今では自然なものとなっていた。
あれはただ、覚妖怪としての本能である、「相手の心を読んで揶揄う」が先走っただけで、この少女本来の性格は、この物静かな態度なのだろう。
「あぁ、私は別に喋るのが嫌いって訳じゃありませんよ。ほら、人間も足元に虫が湧いたらそれなりに気が逸れるでしょう?私もそれと似た感じなので」
彼女からすれば、人間は所詮その程度らしい。
だがむしろ、その強気な態度はある意味、彼女という種族にとっては理想そのものなのではないだろうか?そう頼政は考える。
覚妖怪は忌み嫌われる。当然の話だ。
むしろ、心を読まれて気を良くする者など数える程しかいない、というより、いないと断言できる。
鬼でさえ、己の腹にため込んだ本音――つまり嘘を、覚妖怪には暴かれる。
嘘を嫌い、たとえ表面上だけであろうと、真っすぐに生きることを美学とする彼らにとって、その相反する感情を無理やり、表に曝け出されるのは憤慨ものであろう。
同じ仲間である筈の妖怪からも、避けられ、嫌われて、関わりを持たない。
思えば、この森に妖怪が全くいないのも、元からこの場所に妖怪が住んでいなかったのもあるが、この少女が理由なのだろう。
――と、これまでと同じく、ここまでの考えを全て読んだ少女は、ケラケラと笑って。
「えぇそうよ、おかげで静かで快適だわ。――心を読む能力は本当に素晴らしい。どんな相手にも通用する最高の力だもの」
ヒトや、仲間であるアヤカシから向けられる悪感情。
それをまるで気にしないと、むしろ褒め言葉に近いものだと、少女は笑って言う。
そんな様子を見て思わず、頼政は「天邪鬼みたいだ」と呟いた。
「む…それはちょっと心外ですね」
内心と言葉、両方で思った頼政。
だが想像と違い、なんと少女は初めて、明確な嫌悪感を示し、「うげえ」と吐くようなジェスチャーをして。
心外だと。そう言いながら少女は、少し興奮した様子で――
「あんな不器用な雑魚と一緒にしないで欲しいわね、どこが似てるって言うのよ、あんなのと――」
「口調、崩れてるけどいいのか?」
「…これは失礼」
頼政がそう言うと、ようやく少女も興奮が収まったらしい。
コホンと、仕切り直しの咳ばらいを一つ零して、改めて。
「…私は"覚"妖怪の"さとり"、古明地さとりと言います」
「…種族名がそのまま個体名になってるのか?」
「いいでしょう?唯一名に使う事を許された存在として、それなりの箔が付くというものです」
少女、さとりはそう言って、片手にサードアイを乗せて、それを顔の前に持ってきて。
まるでそこから、目前にいる二人を、文字通り覗き込むように――
「答えは不要です。私が一方的に答えを知るだけですから」
「何を――」
「そうですね、ではあなた達に問いましょう――」
サードアイが妖しい光を放つ。
その光の彩度と共に、彼女の読心能力の精度が、最高潮に達した、その瞬間。
「――
――互いの物語が、交差する時が始まった。
負け戦最終部(5部)の主人公、さとり参戦。
周りから嫌われるホントは優しいさとり?相手の心を読んで恥ずかしがったりするさとり?
そんなもの…ウチ(本作)にはいないよ……
本作は特定のキャラ以外は全員原作基準です。
キャッキャウフフな無邪気ロリではなく、代わりにインテリ厄介オタクなフランや。
心を読んで褒められて顔を赤くする可愛いやつではなく、代わりにゲラゲラ「こいつめっちゃおもろいでェ!」する自己評価11点のさとり野郎がこの世界の基準です。
投稿時間は何時がいいか
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