【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい 作:洩矢廻戦
エアライド発売時、作者はまだ生まれてすらいなかったですが…従兄の影響で意識ある頃からずっっと遊びまくってたので、世代ではなくともエアライドの亡霊ではありました。
これでやっと成仏できる…
呪いは廻る。
命は運び、運ばれる。
それ即ち。命を奪う、奪われること。
憎み、憎まれて、延々と同じことを繰り返すこと。
そんな、生き物が決して逃れることのできない、当たり前の関係性を変えられないか?
誰しもが一度は考え、そして例外なく無理だと、『そういうもの』だと受け入れたものを。
彼女は今も、受け入れずに抗い続ける。
「『巫女』」
必要なものは、三つある。
大妖怪、八雲紫は口にする。
己が欲するものを、目的を現実にする為に、必要不可欠なものたちを。
「そして『結界』」
妖怪と人間。
それらを、平等に閉じ込める為のものは、自分一人だけでは、どうしても根幹を成し得ない。
理外の存在が故に、理外の力しか振るえない妖怪では、人間という儚き存在と釣り合わない。
自然と命を落とす老いと、呪いの因果に巻き込まれるのを含めた、命の源流。
子を成し、継承するという『当たり前』。
たとえ一種族、唯一無二の大妖怪に区分されようと。
紫という妖怪は、ただの『スキマ妖怪』という、並以上に優れている『だけ』の妖怪でしかない。
自分は地獄の閻魔でも、天上の仙人でもなく、ましてや神でもないのだ。
当然の話だが、妖怪一匹ができることなど、限られていた。
だからこそ、『人間』の『巫女』が必要だった。
妖怪を恐れはしつつも、どこまでも中立に。
人々を人外の暴力から救済し、人々にとっての『縋る対象』にする。
変わる。代わる。
決して永遠を生きることができない、そんな儚き『人間』だからこそ。
――『幻想郷』という、これから生まれる楽園。
その土地から、絶え間のない『調和』を引き出せると。
「――紫様」
豪華絢爛、そんな言葉が似合う部屋を背後に。
従者たる九尾の式は、ただ『声』を出す。
「先ほど、例の巫女からの報告が」
「あの子はなんて?」
「『結界の基礎はできた、残りはそっちの仕事でしょ』――とだけ」
「そ、流石ね」
紫は笑った。
結果は期待以上であり、僅かな懸念すらもない。
着実と、自分が望む『楽園』が目前に迫ってきている。
大妖怪の、決して真意を悟らせない表情という名の仮面。それが僅かに綻ぶ程。
「残るは『箱庭』――」
たった一つ。
己の目指す楽園に必要な、それらを想起する。
――幻想の行き先。
永遠なんて存在しない。そんな至極当然なことを、改めて認識した紫は。
「いいえ、『空白の基盤』とも呼ぶべきかしらね」
今、
人間は強い。
勿論、ほとんどの者は戦う力を持っておらず、精々が自衛の、その日を生きる最低限の規模でしかない。
改めて。巫女や陰陽師のような者だけが例外で、人間は普通、『個』の強さではなく『群』で本当の力を発揮する。
原初。人は炎を知り、熱を知り、そうして『使い方』を学び、育っていった。
遥か遠い昔のこと。異能が今のように、本当に一部の者にしか与えられなかった時代。
あの頃と比べ、神秘を認める者の数は、果たして――
「藍」
「はっ」
広大な、純白の穢れなき大地。
紫にとって、そこは境界一つ弄るだけで、簡単に足を運べるだけの天上。
だがしかし。
そこは何百年も前からずっと。
『楽園』の創造のためだけに。自分が利用し、焚きつけて、数多の同胞の命が散った場所。
空にある、夜空に大きな孔を開けた月。
それを見上げながら、紫は従者たる、彼女に問う。
「まだ接触していない勢力は?」
「
「なら、彼らが今最も欲しているのは?」
「銀などの財宝。もしくは価値の高い織物等でしょう、彼らは天狗たちの中でも特に、人間らしい欲を抱えているので」
「なら簡単ね」
『目的』の為、月に攻め入る妖怪は多ければ多い程いい。
何より、月人の所有する戦力というのは、そのどれもが別次元であることは既に、数百年前に起こった、『四凶』の背景から知っている。
地上とは比べ物にならない程に発展した、人間の知恵という名の力――科学。
神秘を否定する力。それを持っておきながら、月人自身は『穢れ』が一切存在しないという、地上ではもはや見ることができない、最大級の神秘の体現者。
どこまでもふざけた話だが、それが月という、魔境の『常識』なのだから、失笑ものだ。
紫は続ける。
「次の満月、湖に彼らを集合させるわ」
「…………いよいよ、ですか」
「えぇ。全く…ここまでかなり長かったわねぇ」
月を攻める。
そのために兵力を集める。口では簡単なことだが、それがどれだけ大変なことか。
今日この日まで、こつこつと下準備を続けていたのは、藍だけではない。
時には紫自身が交渉に赴き。
時には言いくるめ、手先となった妖怪に交渉を任せる。
そうしてねずみ算式に、味方はどんどんと増えていき。
いつしか、最初は数匹だけだった妖怪は、今や数万を超える大群になっていた。
「どうやら今も、月人の一部は地上に残っているようだし…彼らはいい『餌』になるでしょう、とことん利用させてもらうわ」
「…しかし彼らは何故、まだ地上に…………」
「今もまだ『かぐや姫』を探しているのでしょうね。仕事熱心なこと」
まぁ、おかげで『餌』を用意できるのだから、こちらとしては何の問題もないが。
「それにどうやら、地上に残ってる『玉兎』は戦闘員ではないようだし。…全く、我ながら運がいいわね」
「銃…の存在を危惧して、ですか?」
「えぇ。当然の話だけど、鬼や天狗にとってそれは大した脅威ではないわ、巫女の札の方が何倍も効くしね。でも、木端の妖怪からすれば…」
「………なるほど」
簡単な話だ。
八雲紫が求めるものは、小賢しい策略や不安など度外視した、使い潰すだけの『駒』。
己の言葉に簡単に騙され、手のひらで踊る道化も、自分を警戒しつつも、退路を断たれたことで従う以外に道はない者も。
平等に、全員がその程度のものに過ぎない。
所詮使い潰すだけの彼ら。とはいえ、折角揃えた『数』の暴力を、いとも簡単に無力化されるというのは色々と都合が悪い。
極論。早く死ぬか、遅く死ぬかの違いであり。
要するに、彼ら月人と玉兎の一部が扱う武器は、あまりにも足切り性能が高すぎることが問題だった。
どうせ『戦争』を始めたら、彼らは全員月人によって殺される。
地上の妖怪と月の戦力。それらの差を理解できない紫ではない。
「『餌』は充分出揃った。後は彼らの本能を刺激するだけね」
「……………」
美しき幻想の戦い、なんて。
そんな言葉がどこまでも欺瞞であること。
自分たちの、真の目的を知っている者は、ここには――
「全く、お前も昔より悪くなったものだ」
紫、藍に続く共犯者が一人。
紫はその声がする方に、振り返りもせずに答えた。
「別に。あくまでも合理的に、物事が運ぶようにしているだけよ」
「妖怪の賢者と讃えられているお前が、『月面戦争』で何を企んでいるか。それを彼らが知れば…ははっ!想像するだけでもう面白い」
「……」
割り入ってきた者は、己の敬愛する主とほぼ同格。
従者の立場を弁え、八雲藍は静かに視線を下に、自身の存在感を限りなく零にし、口を噤む。
肯定したくはないものの。
藍からすれば。それは実際、そうなのだろうとは思う。
彼ら月人と対峙し、生き残った妖怪の数。
ここ数百年で集めた、月に関する情報の少なさが、それを裏付ける。
勿論。そんな裏の事情を知るものも、ここにしかいない。
もしも、自分たちの『本当の狙い』が、彼らに露呈したら。
あまつさえ、目先の利益で釣った彼らに、気づかれたら――?
「天狗はまだ分かる。何せ天魔に近い奴らを除けば、ほとんどがめつい性根で溢れかえっているからな、言いくるめるのも楽だろう」
「…」
「愚かなものだな、見下している人間と、ほぼ同じ形で同胞が滅びていく事に気づけんとは」
節操なく、数多の信仰を『重ねて』顕現する身として。
『後戸』からこちらを覗く彼女にとって、そんな物欲。顕示欲。数多の欲望は他人事ではないのだろう。
続いて。
「私が特に驚いたのは鬼だ。――山の四天王が、まさか月に喧嘩を売る我らに加担するとはなぁ、一体どうやって交渉を…」
「隠岐奈」
「…分かっているとも。あいつらは無駄に勘が鋭いからな…それに、元から会う機会なんて無いに等しかった。それは今も変わらんよ、無駄に勘ぐられないようこれからも、最低限距離はとる」
「ならいいわ」
「ふむ。では私はこれで………」
そっちこそしくじるなよ。
そう言い残してから、秘神・摩多羅隠岐奈は『後戸』ごと姿を消した。
再び、この場にいるのは八雲紫と、八雲藍の二人だけになった。
「『箱庭』…」
再び、紫の言葉は最初期に戻る。
「藍。あなたの見立てからして、今の仮結界で、一体どれくらいの人間を支えられる?」
「巫女による結界の基盤維持。それを度外視して、最低でも二百と少しでしょうか」
「なら妖怪を含めると?妖怪に向ける人間の畏怖、そして呪いの循環まで加算すると?」
「……………」
時間にして、約五秒と少し。
しかしその一瞬で、藍の脳内で築きあげられた、数百億にも及ぶ結界術の計算。
それを難なく終えた藍は、言った。
「……………人間が百数、妖怪はそれの倍です」
「そう、ならやっぱり。私たちの答えは変わらないわね」
「はい。
バチンッ。
力を込めて、紫は仕切るように扇を畳んで音を出す。
「故に、間引く」
刹那の沈黙の後に、紫は続けて。
「私たちの答えは、目的は変わらない」
「はっ」
「『人間の未来』、『妖怪たちのため』…そんな言葉で誤魔化すつもりは、今更ないけれど。…それでも、私はこの道を選ぶ」
「――――」
「藍。私に、これからも付いてきてくれる?」
「今更ですよ、紫様」
――間引き。
近い将来。妖怪は勿論、神を含めて、地上にある全ての『神秘』は否定され、『人間』だけが占めるようになるだろう。
そんな、紫の未来予知にも等しい推測は、この時代では当然、ただの妄言と切り捨てられるものであった。
神秘全盛、今もまだ陰陽師はいるし、何より『異能』が他と比べても発展している『諏訪大国』の存在が大きい。
列島を制覇した、今や世の絶頂そのものであるその国が、今でも衰え知らずに発展し続けているというのに、どうして近い将来、『妖怪』だけならまだしも、『神』まで消えてしまうというのか。
ありえない。
人間が、
そんな風に、高を括るのがほとんどな現在。
紫を含めた、妖怪の中でも最上位に位置する強者たちだけが、聡明に『次』を見据えている。
『幻想郷』の設立。
それは八雲藍にとっての、数ある誇りの中の一つであった。
丑三つ時。
「――繋ぎの時が、来ましたわ」
人は勿論のこと。
妖ですら活動を停止する程の、夜の帳が下りた時。
再び。
「…始めるわ」
八雲紫は、大胆不敵に笑う。
その視線が向けられる先は――当然、月。
「第一次月面戦争を」
美しき
「なんで紫さんは月面戦争なんかしたんだろう?」に対する答え…
というより作者の考察は「多分幻想郷に呼ぶ妖怪の選別(間引き)なんじゃね?」です。
なので月人さんを存分に利用する気の紫さん、尚この世界では超絶強化された依姫さんが待ち受けているので………
あと、アンケートの希望通りR18verも書きました。時間を確保でき次第、少しずつこっちの続きも書いていきます。
https://syosetu.org/novel/372369/
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