【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい   作:洩矢廻戦

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 今更ですが『カービィのエアライド』新作のエアライダーが本当に楽しみです。
 エアライド発売時、作者はまだ生まれてすらいなかったですが…従兄の影響で意識ある頃からずっっと遊びまくってたので、世代ではなくともエアライドの亡霊ではありました。
 これでやっと成仏できる…


113話.賢者アンノウン―間章―

 呪いは廻る。

 命は運び、運ばれる。

 

 それ即ち。命を奪う、奪われること。

 憎み、憎まれて、延々と同じことを繰り返すこと。

 

 そんな、生き物が決して逃れることのできない、当たり前の関係性を変えられないか?

 誰しもが一度は考え、そして例外なく無理だと、『そういうもの』だと受け入れたものを。

 彼女は今も、受け入れずに抗い続ける。

 

「『巫女』」

 

 必要なものは、三つある。

 大妖怪、八雲紫は口にする。

 己が欲するものを、目的を現実にする為に、必要不可欠なものたちを。

 

「そして『結界』」

 

 妖怪と人間。

 それらを、平等に閉じ込める為のものは、自分一人だけでは、どうしても根幹を成し得ない。

 理外の存在が故に、理外の力しか振るえない妖怪では、人間という儚き存在と釣り合わない。

 自然と命を落とす老いと、呪いの因果に巻き込まれるのを含めた、命の源流。

 

 子を成し、継承するという『当たり前』。

 

 たとえ一種族、唯一無二の大妖怪に区分されようと。

 紫という妖怪は、ただの『スキマ妖怪』という、並以上に優れている『だけ』の妖怪でしかない。

 自分は地獄の閻魔でも、天上の仙人でもなく、ましてや神でもないのだ。

 当然の話だが、妖怪一匹ができることなど、限られていた。

 

 だからこそ、『人間』の『巫女』が必要だった。

 

 妖怪を恐れはしつつも、どこまでも中立に。

 人々を人外の暴力から救済し、人々にとっての『縋る対象』にする。

 

 変わる。代わる。

 

 決して永遠を生きることができない、そんな儚き『人間』だからこそ。

 ――『幻想郷』という、これから生まれる楽園。

 その土地から、絶え間のない『調和』を引き出せると。

 

「――紫様」

 

 豪華絢爛、そんな言葉が似合う部屋を背後に。

 従者たる九尾の式は、ただ『声』を出す。

 

「先ほど、例の巫女からの報告が」

「あの子はなんて?」

「『結界の基礎はできた、残りはそっちの仕事でしょ』――とだけ」

「そ、流石ね」

 

 紫は笑った。

 結果は期待以上であり、僅かな懸念すらもない。

 着実と、自分が望む『楽園』が目前に迫ってきている。

 大妖怪の、決して真意を悟らせない表情という名の仮面。それが僅かに綻ぶ程。

 

「残るは『箱庭』――」

 

 たった一つ。

 己の目指す楽園に必要な、それらを想起する。

 

 ――幻想の行き先。

 

 永遠なんて存在しない。そんな至極当然なことを、改めて認識した紫は。

 

「いいえ、『空白の基盤』とも呼ぶべきかしらね」

 

 今、()()()()()()()()()()()()を口にする。

 

 人間は強い。

 

 勿論、ほとんどの者は戦う力を持っておらず、精々が自衛の、その日を生きる最低限の規模でしかない。

 改めて。巫女や陰陽師のような者だけが例外で、人間は普通、『個』の強さではなく『群』で本当の力を発揮する。

 原初。人は炎を知り、熱を知り、そうして『使い方』を学び、育っていった。

 遥か遠い昔のこと。異能が今のように、本当に一部の者にしか与えられなかった時代。

 あの頃と比べ、神秘を認める者の数は、果たして――

 

「藍」

「はっ」

 

 広大な、純白の穢れなき大地。

 紫にとって、そこは境界一つ弄るだけで、簡単に足を運べるだけの天上。

 

 だがしかし。

 そこは何百年も前からずっと。

 『楽園』の創造のためだけに。自分が利用し、焚きつけて、数多の同胞の命が散った場所。

 

 空にある、夜空に大きな孔を開けた月。

 それを見上げながら、紫は従者たる、彼女に問う。

 

「まだ接触していない勢力は?」

刳哭(くれなき)山、そこにいる数個の天狗による軍。それ以外のは既に懐柔済みです」

「なら、彼らが今最も欲しているのは?」

「銀などの財宝。もしくは価値の高い織物等でしょう、彼らは天狗たちの中でも特に、人間らしい欲を抱えているので」

「なら簡単ね」

 

 『目的』の為、月に攻め入る妖怪は多ければ多い程いい。

 何より、月人の所有する戦力というのは、そのどれもが別次元であることは既に、数百年前に起こった、『四凶』の背景から知っている。

 地上とは比べ物にならない程に発展した、人間の知恵という名の力――科学。

 神秘を否定する力。それを持っておきながら、月人自身は『穢れ』が一切存在しないという、地上ではもはや見ることができない、最大級の神秘の体現者。

 どこまでもふざけた話だが、それが月という、魔境の『常識』なのだから、失笑ものだ。

 紫は続ける。

 

「次の満月、湖に彼らを集合させるわ」

「…………いよいよ、ですか」

「えぇ。全く…ここまでかなり長かったわねぇ」

 

 月を攻める。

 そのために兵力を集める。口では簡単なことだが、それがどれだけ大変なことか。

 今日この日まで、こつこつと下準備を続けていたのは、藍だけではない。

 

 時には紫自身が交渉に赴き。

 時には言いくるめ、手先となった妖怪に交渉を任せる。

 

 そうしてねずみ算式に、味方はどんどんと増えていき。

 いつしか、最初は数匹だけだった妖怪は、今や数万を超える大群になっていた。

 

「どうやら今も、月人の一部は地上に残っているようだし…彼らはいい『餌』になるでしょう、とことん利用させてもらうわ」

「…しかし彼らは何故、まだ地上に…………」

「今もまだ『かぐや姫』を探しているのでしょうね。仕事熱心なこと」

 

 まぁ、おかげで『餌』を用意できるのだから、こちらとしては何の問題もないが。

 

「それにどうやら、地上に残ってる『玉兎』は戦闘員ではないようだし。…全く、我ながら運がいいわね」

「銃…の存在を危惧して、ですか?」

「えぇ。当然の話だけど、鬼や天狗にとってそれは大した脅威ではないわ、巫女の札の方が何倍も効くしね。でも、木端の妖怪からすれば…」

「………なるほど」

 

 簡単な話だ。

 八雲紫が求めるものは、小賢しい策略や不安など度外視した、使い潰すだけの『駒』。

 己の言葉に簡単に騙され、手のひらで踊る道化も、自分を警戒しつつも、退路を断たれたことで従う以外に道はない者も。

 平等に、全員がその程度のものに過ぎない。

 所詮使い潰すだけの彼ら。とはいえ、折角揃えた『数』の暴力を、いとも簡単に無力化されるというのは色々と都合が悪い。

 

 極論。早く死ぬか、遅く死ぬかの違いであり。

 要するに、彼ら月人と玉兎の一部が扱う武器は、あまりにも足切り性能が高すぎることが問題だった。

 

 どうせ『戦争』を始めたら、彼らは全員月人によって殺される。

 地上の妖怪と月の戦力。それらの差を理解できない紫ではない。

 

「『餌』は充分出揃った。後は彼らの本能を刺激するだけね」

「……………」

 

 美しき幻想の戦い、なんて。

 そんな言葉がどこまでも欺瞞であること。

 自分たちの、真の目的を知っている者は、ここには――

 

「全く、お前も昔より悪くなったものだ」

 

 ()()から聞こえた声。

 

 紫、藍に続く共犯者が一人。

 

 紫はその声がする方に、振り返りもせずに答えた。

 

「別に。あくまでも合理的に、物事が運ぶようにしているだけよ」

「妖怪の賢者と讃えられているお前が、『月面戦争』で何を企んでいるか。それを彼らが知れば…ははっ!想像するだけでもう面白い」

「……」

 

 割り入ってきた者は、己の敬愛する主とほぼ同格。

 従者の立場を弁え、八雲藍は静かに視線を下に、自身の存在感を限りなく零にし、口を噤む。

 

 肯定したくはないものの。

 藍からすれば。それは実際、そうなのだろうとは思う。

 

 彼ら月人と対峙し、生き残った妖怪の数。

 ここ数百年で集めた、月に関する情報の少なさが、それを裏付ける。

 勿論。そんな裏の事情を知るものも、ここにしかいない。

 もしも、自分たちの『本当の狙い』が、彼らに露呈したら。

 あまつさえ、目先の利益で釣った彼らに、気づかれたら――?

 

「天狗はまだ分かる。何せ天魔に近い奴らを除けば、ほとんどがめつい性根で溢れかえっているからな、言いくるめるのも楽だろう」

「…」

「愚かなものだな、見下している人間と、ほぼ同じ形で同胞が滅びていく事に気づけんとは」

 

 節操なく、数多の信仰を『重ねて』顕現する身として。

 『後戸』からこちらを覗く彼女にとって、そんな物欲。顕示欲。数多の欲望は他人事ではないのだろう。

 続いて。

 

「私が特に驚いたのは鬼だ。――山の四天王が、まさか月に喧嘩を売る我らに加担するとはなぁ、一体どうやって交渉を…」

「隠岐奈」

「…分かっているとも。あいつらは無駄に勘が鋭いからな…それに、元から会う機会なんて無いに等しかった。それは今も変わらんよ、無駄に勘ぐられないようこれからも、最低限距離はとる」

「ならいいわ」

「ふむ。では私はこれで………」

 

 そっちこそしくじるなよ。

 そう言い残してから、秘神・摩多羅隠岐奈は『後戸』ごと姿を消した。

 再び、この場にいるのは八雲紫と、八雲藍の二人だけになった。

 

「『箱庭』…」

 

 再び、紫の言葉は最初期に戻る。

 

「藍。あなたの見立てからして、今の仮結界で、一体どれくらいの人間を支えられる?」

「巫女による結界の基盤維持。それを度外視して、最低でも二百と少しでしょうか」

「なら妖怪を含めると?妖怪に向ける人間の畏怖、そして呪いの循環まで加算すると?」

「……………」

 

 時間にして、約五秒と少し。

 しかしその一瞬で、藍の脳内で築きあげられた、数百億にも及ぶ結界術の計算。

 それを難なく終えた藍は、言った。

 

「……………人間が百数、妖怪はそれの倍です」

「そう、ならやっぱり。私たちの答えは変わらないわね」

「はい。()()()()()()()()()()()

 

 バチンッ。

 力を込めて、紫は仕切るように扇を畳んで音を出す。

 

「故に、間引く」

 

 刹那の沈黙の後に、紫は続けて。

 

「私たちの答えは、目的は変わらない」

「はっ」

「『人間の未来』、『妖怪たちのため』…そんな言葉で誤魔化すつもりは、今更ないけれど。…それでも、私はこの道を選ぶ」

「――――」

「藍。私に、これからも付いてきてくれる?」

「今更ですよ、紫様」

 

 ――間引き。

 近い将来。妖怪は勿論、神を含めて、地上にある全ての『神秘』は否定され、『人間』だけが占めるようになるだろう。

 そんな、紫の未来予知にも等しい推測は、この時代では当然、ただの妄言と切り捨てられるものであった。

 神秘全盛、今もまだ陰陽師はいるし、何より『異能』が他と比べても発展している『諏訪大国』の存在が大きい。

 列島を制覇した、今や世の絶頂そのものであるその国が、今でも衰え知らずに発展し続けているというのに、どうして近い将来、『妖怪』だけならまだしも、『神』まで消えてしまうというのか。

 

 ありえない。

 人間が、妖怪(自分たち)を忘れるなどありえない。

 

 そんな風に、高を括るのがほとんどな現在。

 紫を含めた、妖怪の中でも最上位に位置する強者たちだけが、聡明に『次』を見据えている。

 『幻想郷』の設立。

 それは八雲藍にとっての、数ある誇りの中の一つであった。

 丑三つ時。

 

「――繋ぎの時が、来ましたわ」

 

 人は勿論のこと。

 妖ですら活動を停止する程の、夜の帳が下りた時。

 再び。

 

「…始めるわ」

 

 八雲紫は、大胆不敵に笑う。

 その視線が向けられる先は――当然、月。

 

「第一次月面戦争を」

 

 美しき妖怪(幻想)の戦いまで、残り――




 「なんで紫さんは月面戦争なんかしたんだろう?」に対する答え…
 というより作者の考察は「多分幻想郷に呼ぶ妖怪の選別(間引き)なんじゃね?」です。
 なので月人さんを存分に利用する気の紫さん、尚この世界では超絶強化された依姫さんが待ち受けているので………


 あと、アンケートの希望通りR18verも書きました。時間を確保でき次第、少しずつこっちの続きも書いていきます。
https://syosetu.org/novel/372369/

投稿時間は何時がいいか

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