【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい 作:洩矢廻戦
誤字報告いつも助かってます。
時代の変化。
長くこの地上を歩き、そして見てきたからこそ、それの『予兆』とやらは鋭敏に察知できた。
時代のうねり、人々の価値観やそれまでの常識が、文字通り一変する機会。
八意永琳は、数え切れない程にそれを見た。
政争、紛争。
地上の人間が作る数多の荒事は、今も尚『逃走』を続ける自分たちには何の関係もない、心底どうでもいい事だから。
人の目を掻い潜り、旅をする。
本来であればかなり目立つであろう、永琳の銀の髪色や服装も、今という、『異能』が受け入れられた時代であれば、人々はほとんど反応を見せない。
一目見て、「そういうものだ」と自分で納得し、そのまま視線と意識を元に戻す。
永琳にとっては、それが非常に好都合でありながら、同時に形容し難い、一抹の不安を煽らせる。
――あくまでも、『常識』に統合されたのは人間の異能。
妖怪。
かつて永琳を含めた、月人が地上に居を構えていた遥か古代。
地上を席捲した穢れの象徴。
恐れ、忌み、嫌われ。
ある意味で最も、月人が求める『永遠』に近かったモノ。
それが今や、もはや以前の勢いなど、どこにも――
「…………こんな場所があったとは」
永琳は今、竹林にいる。
夕日が沈み、魔の潜む夜の暗闇、その帳を下ろす時間。
己の優れた五感が、以前であればすぐに察知した腐臭の数々。
妖怪の持つ独特の気配が、今では一つも感じ取れず、姿も見当たらない。
――ここまで。
ここまで妖怪は、人々の興味を失ったというのか。
「……………………」
一学者として、妖怪の生態に関する論文は読んだ。
『月の頭脳』とまで称された、己の学習能力の高さは誇りの一つだが、こういった場合においては、逆にそれが仇ともなり得る。
今までに見たことのない、完全な
それは、妖怪への畏怖が薄れた今の時代に対するものか?
それとも、長く、永く生き続けたが故の、『気のせい』によるものか?
――その答えは、目の前にいた。
「こりゃ、珍しいお客が来たもんだ」
垂れ下がった兎耳。
自分の身長の半分か、もしくはそれ未満の少女。
だが、人外。
その顔には自分と同じ、決して『少女』の枠に囚われることのない。
老獪さすら宿る、侮れぬ者の瞳がある。
下手をすれば、食われるのはこちらの方。
少女の
問うのは一つ。
「…あなたはここの住民?」
「まぁね、ここはいいとこさ」
警戒心。
それの探り合いは、最初に目が合った時点でもう終えた。
互いに、『それなりに』長く生きた存在であることは、一目見た時にもう分かる。
腹の、それこそ上辺の探り合いなど、若い者同士でやっていればいい。
ここは率直に、そして『無駄』を挟まずに行くべきだ。
そう、永琳は察した。
「…………………」
住居。
一瞬、今も尚、終わりを見据えることのできない逃亡生活。
それを中断させられる、仮の『終わり』を幻視した。
視線を下に。
「ま、私はここの竹林の主だからね」
彼女は、こちらではなく。
背中に隠した右手を、見据えるように。
「…そう警戒しなくてもいいのに」
背後で携えた弓。
「
「――――」
それを持つ手が、自然と強く握られた。
「…………」
永琳は元々、仮の住居を探している所だった。
この竹林に入り、そしてしばらく歩いた場所にあった、
この兎耳の少女が言っているのは、間違いなくそこで待機を命じた、自分にとって、この世で最も大切な存在である――輝夜のことを言っているのだろう。
警戒を解いたつもりはない。
人のいない家屋とはいえ、普段通り警戒はした。
あの時周りからは、一切の視線は感じなかった。それは間違いない。
だが、少女はどういう理由か、自分の気配感知を掻い潜り…自分たちの事を観察していた。
この少女はそう、暗に告げているのだ。
警戒。
「…――」
それは、すぐにこれを『好機』と見る、己の『賭け』に変わった。
「ここに竹林は、特殊な地形をしていると聞いたわ」
「へぇ、今時ここを知ってる人間がいるとはね?」
「今はいないわ。それを私が聞いたのは、最低でも二百年は前だもの」
「…………」
質問はない。
代わりに、静観を続ける少女に、己の情報を開示する。
「詳細は
「へぇ、じゃあ偶然か」
「えぇ、偶然」
たとえ、蓬莱人としての『再生』があろうとも、精神の疲労は決して無視できぬもの。
走れば筋肉は疲れるし、胸も苦しくなる。
蓬莱人の肉体がそれをなかったことにしても――『疲れた』という記憶は魂に刻まれる。
肉体と精神は別々で、月人だろうが地上人だろうが、そこに違いは存在しない。
だからこそ永琳は、終わりのない逃亡生活で精神が摩耗しないように。
自分自身も、そして輝夜も労わって、適度な休息を挟んで生きてきた。
巡り。廻り。回り。
そう、何度も何度も繰り返し続け。
穢れた地上を、人間と人外が互いに憎み、呪い合う世界を。
永遠に、月から逃げ続ける為に。
「ま、ならこっちも都合がいいか」
深くは聞かない。
だがあんたからは――間違いのない『得』の香りがする。
少女は、続けて自分の名が、因幡てゐであると名乗り。
それに応じて、自分も八意永琳だと、名乗り返した時であった。
「まだ仮だけどね、屋敷が一つと
「…………外にある家屋とは違うと?」
「あー違う違う、あんなちっこいのと一緒にしないで欲しいね。…立派な一つの『屋敷』さ、掃除も大変でさ」
人間も妖怪も関係なく。
『術』や『能力』関係なく、純粋な地形の力で迷わせる秘境。
何より――竹。
こんなにも、『彼女』に似合う場所はないだろうと、そう永琳は確信した。
ここなら、きっと自分たちに釣り合うだろう。
「でも、それだけじゃ釣り合わないわね」
「へぇ?」
「私たちの方がよ。あなたは私たちに住居を与える。――なら、私たちはあなたに何をすればいい?」
等価交換。
交渉の基本中の基本である、認識の擦り合わせ。
"縛り"ほど厳粛で、そしてややこしいものではないものの、それでも、永琳は抜かりなどない。
だが、てゐの態度は変わらなかった。
「いらないっての。生憎、もう私は満たされてるからね」
「……………………」
永琳は『拒否』の沈黙を貫いた。
当然だろう、甘い話には裏が存在するか、もしくは、後から帳尻を合わせるように悪い『何か』が起こる。
てゐも、それを分かっているのか。
「納得してないって顔だね?」
困ったように、少し笑ってから。
「ならしょうがないか、ええと……ちょっと待て考える」
「…………」
「――そうだ。ならうちのイナバたち…部下の兎だけど、そいつらにちょっと『知恵』を与えてやってくれ」
――それなら、いいだろう。
今度は『拒否』の沈黙ではなく、『受諾』の意味での沈黙で返す。
外野からしてみれば、どんな会話かと首をかしげるものだろう。
しかし、取引を交わす当人同士で、無駄な言葉はいらなかった。
「――取引成立。ってことでいいかしら?」
「あんたが言うならそうだろうさ。"縛り"でも結ぶ?」
「……そうね、ならもう一度」
「①屋敷の所有権の委託と、『八意永琳』とそれに属する者の情報秘匿。②その対価として、イナバに教育を施す。――これでいい?」
「えぇ。――契約成立」
互いに合意を示し。
そうして互いに、互いの手を握ることでようやく、『他者間の"縛り"』が施される。
決して目で見えない、言葉による"呪縛"が身体にまとわりつく感覚。
何度経験しても、これは慣れないものだと、永琳は感じて。
「それで、あなたとはこれで協力関係になった訳だけど」
「ん?」
永琳の興味は、別にある。
それは当然、この『弱さ』を微塵も感じさせない兎妖怪の真名。
そこから推測できる過去。――因幡の白兎伝説、そして与えられた祝福。
妖怪でありながら、神聖そのものを背負う彼女に不釣り合いな――凄まじい瘴気の気配。
似たようなもので、この大陸に現存する九尾の狐。
八雲藍が存在する。
彼女は永琳を知らないし、容姿どころか名前も知らないだろう。
永琳もまた、彼女とそう親しい訳ではないし、会話なんてしたこともない。
だが一度だけ、長い逃亡生活の中で『それ』を見た。
それは、主と従者という『繋がり』がもたらすもの。
八雲藍の場合は、八雲紫の持つスキマの気配で。
――では、因幡てゐの『これ』は一体、何だというのか。
「あなた、
「………………」
永琳の予想に反し。
てゐはすぐに答えた。
「ダイコク様もびっくりな、こわいこわーい神様さ」
まるで、自慢でもするかのような。
そんな、悪戯な笑みだった。
ここに来るまでの間に、一体何人と出会っただろう。
道を尋ね、時には家に泊まらせてもらって。
そうやってできたいくつもの縁、それは一体、『今』はどれだけ残っているというのか。
何人が、まだ生きている?
巡り。廻り。回り。
夜明けを待ち。
朝日を出迎え。
歩き、逃げて、ずっと繰り返し。
巡り。廻り。回り。
出会い。
別れ。出会い…別れ。
得ては失い、失っては得て。
禍福は糾える縄の如し、そんな言葉の通りに、たくさんの困難と幸福が訪れて。
巡り。廻り。回り。
――そうして、何人を置いてけぼりにしたのか。
抗うことなどできない、命の終わり。
寿命。
月人が『穢れ』と忌避する概念、地上に生きる全ての者が持つそれ。
命を育み、次に継承する輪廻は、正に限られた時間しか持たない生命だからこその、美しい輝きと言えるだろう。
なら、自分は?
空を見れば、
「………………」
巡り。廻り。回り。
巡り。廻り。回り。
巡り巡り巡り巡り。廻り廻り廻り廻り廻り廻り。回り回り回り…
この繰り返しは、いつ終わる?
この『退屈』を、埋める術はないというのか――?
「………………」
相変わらず、忌々しく思える程に白く、当たり前に輝く月。
だが唯一、この地上で不変な個である
不老長寿を謳おうが、永久不変を名乗ろうが、真の意味で『不死』ではない自分たち。
それとは比べるに値しないモノが、この地上には溢れている。
――退屈。
そう、退屈なのだ。
この世に蔓延る『有象無象』は所詮、自分という『永遠』には程遠い。
あまりにも、吐き気すら覚える退屈という名の毒を、中和できる『何か』がない。
永遠に遊べる、都合の良い遊び道具――
彼女は考える。
自分にとって、唯一の『家族』とも呼べる者とはまた別の。
退屈させない、自分を永遠に想う『何か』がないものか――
「……………………」
寂しくはない。
辛くはない、家族がいるとはそういうことで、しかしだからこそ、『家族』では埋められない『退屈』の渇き、その苦痛に苛まれる。
この世界で真に、『永遠』を生きる
いいや、そういえば――と、そこで思考が加速する。
「…………まだ、あったわね」
己を地上に落とす要因となった。
『罪人』の称号を己に擦り付けた、他ならぬあの『禁薬』が。
そういえば、まだ地上には残っていた筈――
「
ほんの少しの寂しさ――
それから目を背けて、まだ星々が輝く夜の中。
静かに、一人。
蓬莱山輝夜は立ち上がった。
「となると、候補者は限られるわね」
新たな好奇。
己の『永遠』に釣り合う、『退屈』を埋めるモノを求めて。
月の姫は、妖の蔓延る夜を歩き出す。
それからしばらくして。
家屋には書き置きが一つ。
当然、家屋の中には、永琳たち以外誰もいない。
『ちょっと友達を探してきます』
「姫!!??」
しかもそれは、無駄に文字が綺麗で、かつて昔、時の帝に送ったものと、達筆さはそう変わらない。
いや、冷静に考えれば。
それはそうだろう、むしろ誇らしいだろう。そうだそうに決まっている。
月にいた時から、他ならぬ自分が彼女を教育してきたのだから――
「おい、しっかりしろ」
思考が脱線した永琳の腰を、てゐが軽く叩く。
家屋で「ここにいて」と言っておいたのに、いざ帰ってみれば誰もいない。
――まさか、あの子にも反抗期が…!?
「おい、だからしっかりしなさいってば」
再び、てゐが腰を叩いた。
そんなやり取りが三回ほど繰り返され、てゐの顔に苛立ちが浮かび始めた頃。
ようやく正気を取り戻した永琳が、馬もかくやと疾走し、夜の闇を切り裂いていく。
輝夜が『散歩』をして、十分が過ぎた頃である。
この時代に至るまで、一体何人と出会っただろう。
道を尋ね、時には家に泊まらせてもらって。
そうやってできたいくつもの縁、それは一体、『今』はどれだけ残っているというのか。
――どうだったか。
何人が、まだ生きている?
巡り。廻り。回り。
夜明けを彼女と共に待ち。
朝日を出迎え、彼女の顔を見る。
彼女と歩き、彼女と共に、それをずっと繰り返し。
巡り。廻り。回り。
誰かと出会い。
別れ。出会い…別れ。
得ては失い、失っては得て。
彼女と共に、たくさんの困難と幸福を経験して。
巡り。廻り。回り。
――そうして、縁を築いた何人が。
「慧音」
「…?うん」
小さな彼女の手を握る。
『死』の気配なんてない、若々しく柔らかい、少女の肌。
――だが、忘れるな。
抗うことなどできない、命の終わりは、彼女にも等しく訪れる。
「………なんでもない」
「……………?」
寿命。
『禁薬』を口にして、あさましく今も生き続ける自分とは違い。
彼女を含めた、地上に生きる全ての者が持つ『終わり』の権利。
命を育み、次に継承する輪廻は、正に限られた時間しか持たない生命だからこその、美しい輝きと言えるだろう。
なら、自分は?
空を見れば、
「………………」
過去にあった確執や執着。
『終わり』を失った蓬莱人だからこそ、次に見据えた『終わりなき目的』のそれ。
即ち、かつての『かぐや姫』――だった。
巡り。廻り。回り。
巡り。廻り。回り。
巡り巡り巡り巡り。廻り廻り廻り廻り廻り廻り。回り回り回り…
この繰り返しは、いつ終わる?
その答えを、もう藤原妹紅は見つけていた。
「今日は星が綺麗だね」
「…うん」
――生きた者。
今も尚、妹紅の脳内に焼き付いて消えない、意志を貫く人の強さ。
それを魅せた――聖白蓮の姿。
かつて、都を襲った未曾有の災害も、『四凶』ももう、誰も深く考えない。
妖怪と人間の関係も、それを変えようとした聖人、それの名前や生涯も、現在を生きる人間は、誰も。
――そう、妹紅以外。
自分だけが知っている。
死なない自分だけが、これからも
物が風化し、草木が枯れ。
人々がその土地からいなくなろうとも、そこにあった『記憶』を、妹紅は継いでいける。
――いつまで?
――それも結局、時の摩耗で忘れてしまうのではないか?
「妹紅」
「…ん?」
最初に出会ってから、もう三十年以上は経った。
普通なら、彼女はもう『少女』ではなく、『大人』になっているのだろう。
だが、彼女の身体に流れる血、それの半分は妖怪。
肉体の成長の遅さ。それに比例せず、彼女は聡明だ。
もしかしたら、自分よりもう頭がいいかもしれない、そんな子煩悩な親みたいなことを考え。
「…どうしたの?」
「……………」
両手で包み込むように、慧音は妹紅の右手を握る。
子供の体温は、大人と比べて高い方だと、昔聞いたことはあったが、どうやら後天性の半妖でも、それは変わらないらしい。
「寂しくないか?」
「…………そりゃあまた、どうして?」
「妹紅が意味もなく宙を見る時は、毎回そういう時だ」
あぁ…感嘆するような息を吐き、妹紅は笑う。
――本当に、この子は想像を超えて賢いな。
苦しさを感じる程ではないが、さっきから強く、ぎゅうっと自分の右手を握る慧音。
彼女と視線が合うように、しゃがみ込んでから。
「私が、マミゾウについて行かなかったこと?」
「…」
「自分の面倒を見る為に、同じ長寿仲間といられなかったんじゃ…とか思ってる?」
「…うん」
「そっか」
妹紅は優しく、慧音の頭を撫でた。
「私のせいで、妹紅の生き方を制限してるなら…って思ったから」
「うん」
「……もしそうなら、嫌だなって」
確かに、妹紅はマミゾウと別れたし、向こうからも、旅を一緒にするか?と提案もされた。
だが、それを拒んだのは確かに、慧音のことを思ってもあるが、それだけではないのも事実。
「もう、私がそんなこと思う訳ないでしょ」
慧音は"天与呪縛"によって、後天的にワーハクタクとなった。
それが理由で、実の両親からも忌み嫌われ、そして捨てられた。
満月の時いつだって、慧音は両親から否定された姿に、半獣に変化する度に泣いている。
それほどまでに、幼少期に刻まれた心の傷は大きく、深い。
それでも。
「だって、私
「……………………」
妹紅は断言できる。――彼女は、立派な人間なのだと。
そうして、彼女が満月の度に過去を思い出し、泣く度にそう言って聞かせてやるのだ。
「私はさ、元とはいえただの人間だし。色んな事を覚えては忘れちゃう」
「……………」
「慧音みたいに頭が良かったらなー…もっと色んな人の事、覚えていられた」
蓬莱人になった自分、それを恐れる者はいた。
妬む者も、吐き気のする悪意を孕んだ人間は、それはもうたくさん存在した。
慧音に魔の手が及びそうになって、なんとか守り、時には逃げて。
波乱万丈な人生だと、自分でも思う。
それでも、助けてくれる人はいた。
食事を分けてくれる人も、宿を貸してくれる人も。
自分たちの境遇を聞いて…心の底から悲しんでくれた者もいた。
時には、たとえお前にとっての刹那でもと――友人になってくれる者も。
「鎗田、神崎、あやめに六郎…それに甚さん。…………たっくさんいたね」
誰かと出会っては、別れ。
別れ。出会い…別れ。――そうして時の摩耗により、記憶は錆びつき、消えていく。
得ては失い、失っては得て。
彼女と共に、たくさんの困難と幸福を経験して。
「たとえ置いて行かれても、私たちだけが生きることになっても」
人と人の出会い、その繰り返し。
巡り。廻り。回り。
巡り。廻り。回り。
巡り巡り巡り巡り。廻り廻り廻り廻り廻り廻り。回り回り回り…
『死』のない自分は。
蓬莱人にとってのこれは。
この繰り返しは、いつ終わる?
その答えを、妹紅はもう決めている。
「――それでも、そこにあった『思い出』は無価値じゃない」
巡り。廻り。回り。
たとえ忘却の苦しみが待っていようとも、妹紅はずっと『生き続ける』道を選ぶ。
かつて考えた、そこにあった『記憶』を、不死の自分は継いでいけるが。――それも結局、時の摩耗で忘れてしまうのではないか?
そんな不安は、今も胸の奥で燻り続けている。
何より、今こうして人生を共にしている、上白沢慧音という少女。
彼女も、いつかは自分の前からいなくなり、そうしていつかは忘れられる。
その時、自分は耐えられるのだろうか?と。
だが、妹紅は思うのだ。
――それでも、いいんだと。
たとえ忘れられたとしても、忘れられたそのものに――
価値がないものはない。
この世に生まれ落ちたモノ、それは役割だとか目的だとか、そんなものに囚われず。
忘れられようが、永遠にこの世に抑留しようが。
この世を生きた、小さな記憶の欠片。――それが漂っているだけでいい。
それだけで、等しく命に価値はある。
「私は多分、これからもずっと『生き続ける』よ」
――永遠に。
「
「もう人間じゃあない癖に」
――月の輝く、夜の下。
――『月の姫』は、嘲笑を隠さずに言う。
「随分と、腑抜けた物の考え方じゃない?」
――意図しない邂逅が、両者に訪れた。
竹林の屋敷
後の『永遠亭』だが、この世界では屋敷の近くに『洩矢神社』の分社が設置されており、極論諏訪子はいつでもここにワープできるようになっている。
偶に暇な時、ここから一気にてゐの下へ駆けつけて、ウザ絡みをするまでが古代迷いの竹林の一興。
Normal End(妹紅は史実通り輝夜を恨み、殺し合いによる退屈の埋め合わせを選ぶ)
Hard End(白蓮の生き様を見たことで、記憶の欠片を重視する道を選び、『生き続ける』道を選ぶ)
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今ここ
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