【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい 作:洩矢廻戦
その数分後にリクエストが承諾されて「いやいつまで起きてんすか…」と戦慄していました(ブーメラン)。
あとお待たせしました、第2部のメインディッシュの始まりです。
昔では信じられない話だが。
現在、この
冷夏や暖冬。冬の終わりから春までの、人々が抱える陰気と呼ばれるもの。
恐怖から生まれた妖怪たちにとって、そんな人間の『負の感情』もまた、自身の存在感を強める貴重な養分であり。
かつての『人間』は、ただ生きているだけで感じる不快感の、一つ一つを丁寧に汲み取り、そしてその『負の感情』を、妖怪たちに注ぎ続けた。
暴風雨や地震のような自然災害。
疫病、飢饉、戦争。――科学では証明できない災難を、全て『魔の者』による仕業だと考えた。
恐れて、妖怪たちはより強く、恐ろしくなっていった。
だから、『人間』は弱かった。
対極的に、妖怪たち――通称『魔の者』たちは強かった。
そして、そんな弱かった筈の彼らはいつしか、その力関係を逆転させていった。
なんてことはない、来るべき時が来ただけだ。
潮が満ちれば、その後に潮が引く事が必然であるように。
恐れ、畏れ。――そんな、ただ『一方的に恐怖されてきた妖怪』という名の、長い天下が終わるだけ。
かつて、大陸を襲う数多の異常気象に苦しみながらも、人々は決して諦めなかった。
その後の飢饉によって、多くの人々が飢えながら死んでいっても、それでも生きる者がいた。
多くの人が死に、それでも諦めずに生きようとした。
その日の食事すら満足に集められない彼ら。それに対し、妖怪たちは慈悲の一つも見せずに襲い、そして殺し続けた。
だが、それは決して罪ではない。
この世界の
人を襲い、殺すことは悪ではないのだ。
例え、人々が災難に苦しむ最中であっても、決して止まらない妖怪の暴虐は、正にこの世の理であり。
それは閻魔ですら肯定し、認める所業なのである。
で、あれば。
誰にも否定できない。――むしろ否定など許されない、命の廻りであろう。
異常気象を乗り越え、飢饉すらも乗り越えて、『人間』は強くなったのだ。
数多の災難が渦中にあった時、人々の『負の感情』で、妖怪たちは強くなった。
だが、自然災害や飢饉のような、己の肉体ではどうしようもないそれらの、圧倒的な『理不尽』を見た『人間』からすれば。
もう。――妖怪たちが自分たちに向ける『理不尽』とは。直接的な被害を出してくる分、自然のそれに遥かに劣るものであると認識してしまったのだ。
そうして、まるで裏を返すが如く。
以前は、どれだけ暴れても満たされない、どうしようもない力を持て余していた筈の妖怪たちは。
もう今では、以前のような存在感は影も形も残っておらず。
まるで、野生動物のそれと同じ、矮小な存在感に成り下がってしまっていた。
だが、それはある意味当然だ。
そんな当たり前の事に、彼らは気づけなかった。
気づけなかったからこそ、かつての栄華を忘れられないからこそ。
彼らは今も、日々衰えていく自分自身を嫌悪し、見当違いな憎悪を滾らせ、不満を抱え続ける。
そうして妖怪たちは、かつての栄華を取り戻す起死回生の一手を求め。――
何を考えている?と、伊吹萃香は思う。
僅かの思案。そして自分の丁度向かい側にいる、友人の顔を見て。
「どう思う?勇儀」
「怪しさ満点。胡散臭さ満点」
「だよなぁ」
そんな理路整然とした簡潔な言葉を、友人である星熊勇儀は、首を動かさずに告げた。
萃香もまた、同じく首を動かさずに目だけを巡らせ。
「月っていやぁ……あの月だろ?」
曖昧な問いだが、勇儀にはしっかりと通じた。
「飽きる程に見てるあの月だねぇ、萃香。お前は知ってるのかい?」
「まぁそりゃあ」
「おっ、もしかしてもうあそこに『昇った』ってオチかい?」
「馬鹿言え、いくら私でも星の向こう側には行けないっての。精々が天界だね」
ほう?と、勇儀の目が細くなる。
「天界かぁ……確か天人ってのがいる世界だったね。雲の上にある一場所に『世界』ってのは、少し変な感じはするが」
「ま、確かに雲の上にはあるが……地上の奴らからは普通、あそこが見えないらしいけど」
「畜生界と似たようなもんか?」
「まぁそんなもんだろ。それに『天人』の中身とやらも、思ってた倍以上に期待外れだったしさ」
「ほぉ」
興味深そうに、勇儀はより大きく眉を動かした。
「天人ってのは確か……かなり厳しい修行を経るか、功績を認められるか、後は悟りを開いたりするかでなれるモンだろう?」
「悟りってのは少し違うけどね、本当の意味で悟りを開いたのは『仏陀』だけだろ?あいつらはその一歩手前さ」
「ふぅん……」
原理としては、八坂神奈子のような国津神。その信仰と同じ様なものだ。
天人とは、神霊化した人々が成るものであり、地上とは隔離された雲の上。そこに住む在り方からも、神々と呼んで相違ない存在である。
であれば、勇儀が次に選ぶ言葉は、当然。
「ま、確かにつまらなそうだな」
天人とは不老長寿。
空を飛ぶのは当然、それ以外の『神通力』が使えるだけではなく。
快楽に満ちた天界では、誰も苦しみ等を感じることはない。
日々を遊んで、歌い、酒を飲んで暮らすだけとされている。
その為に、天人は人々の羨望の的であり、寿命の克服を目的に修行する者の中には、天人になりたがるものも少なくない。
だが、並大抵の修行で天人に至る資格は得られない。
身を削る修行を終えても尚、多くの場合、彼らは『天人』になり損ねて、『仙人』になるというのだ。
「安寧ってのはいいもんだが。かと言って刺激もない生活ってのは心が『腐る』。特にお前みたいな鬼からすれば、天界ってのは確かに期待外れだろうさ」
「それだけなら良かったんだけどね」
萃香はつまらなそうに。
「……あいつら、地上の人間と何も変わってなかったよ」
思い出す。
悩みから、刺激から、地上にある数多の『当たり前』を捨てて、皆が憧れる身分に成ったにも関わらず。
『悟り』という言葉を鼻で笑うような。彼らの見るに堪えない、落ちぶれた精神を。
「差別して、見下して、自分が上だと言い聞かせて、それで安堵するって感じ」
「…………なるほど、訳ありか」
「
『月』には、
萃香がそれを知ったのは偶然で、その情報の出自は他ならぬ、その月の世界に住んでいるとされる『月人』そのものであった。
『かぐや姫』を探し、今でも地上を彷徨う彼ら。
それをちょうど、自身の身体を霧にし、意識を散らしていた萃香が発見したというのが、事の顛末だ。
穢れているだの、邪魔だのと言って、彼らは近くにいた人間を殺そうとしていたので、一発ぶん殴って事件を解決。
その後は意識を取り戻した彼ら一人一人に、能力を使ったのだ。
『意識・心』に対して『密と疎』の力を注ぎ、心の距離を操ることで、自白させる。
そうして、萃香は鬼の中で初めて、『月』の情報を知った存在となった。
だからこそ。
「勇儀」
萃香は小さく息を吐き。
「
最初は違った。
妖怪の中でも、空に浮かぶ『月』にある別世界を知るものなど、本当にひと握りのものだった。
かの八雲紫ですらそうだった。
萃香の知る限りでは、彼女が月の情勢を知ったのは『最近』の話であったから。
鬼には嘘が分かる。
どのような、何を腹に隠しているかまでは見抜けない。
しかし、こちらから言葉を投げかけ、それへの答えを聞くだけで、鬼はその者が『心を偽ったかどうか』が分かる。
萃香にとって、紫は友人だ。
萃香にとって紫とは、鬼以外の種族で『対等』と認めた唯一の妖怪。
天狗は部下のようなものだったし、何より彼らは本心から、自分を含めた鬼を敬っている訳では無い。
洩矢諏訪子も違う、彼女は間違いなく最強で、自分ではどう足掻いても『対等』にはなり得ない。
諏訪子の『対等』とは、神奈子のみであろう。
だからこそ、度し難い。
――策謀。その言葉が脳裏を過ぎる。
納得できない、そして何より――疑いたくない。
「『力を振るう機会が欲しいでしょう?』だってさ」
勇儀はどこか、冷めたような顔で。
「人間は妖怪を忘れ……いいや、もう『そこまで脅威ではない』と思い始めた。だから恐れが足りず、妖怪は弱体化し続けてるんだと」
「……まぁ一理ある」
鬼は強い。
それは今日、この日に至るまでの幾星霜。
人間と鬼の関係性『鬼退治』を含めて、自分たちが根強い恐怖を植え付けたからだ。
『妖怪』という、漠然とした存在への恐怖が薄れようと。
『鬼』という一種族、そして一個体それぞれへ注がれた畏怖は、確かにある。
弱体化をしていないと言えば嘘になる。
だが、だからといって明確に『弱く』なったか?と、そう聞かれれば答えは否だ。
鉄に勝る肉体も、山を動かす剛力も健在。
だが、もうそれを以前のように、自由に振るえないのだ。
時代が変わり、より強く感じる窮屈さを、勇儀は声色に乗せて。
「『思う存分暴れられる最高の戦場』とやらを用意するってさ」
「それが『月』……」
理屈としては、分かる。
分かるからこそ、萃香は解せない。
妖怪にとって人間とは、確かに本能のままに襲う対象であり、悪意の矛先でもあるが、そこには限度がある。
神々の妨害や、他種族の妖怪からの反発を度外視して、考えるとしよう。
その場合、今この山にいる『鬼』が全員で協力し、四方八方本気で暴れるとすれば、きっと約数週間で、この大陸にいる全ての人間を殺せるだろう。
だが、それをすれば『鬼』は
肉体的な死ではなく、存在そのものがこの世界から抹消される。
そんな、本物の死。
妖怪は恐れによって生まれ、生きられる。
だが、自分たちを恐れる『誰か』がいない限り、その命は有限。
妖怪の抑圧された本能は、ただひたすらに力を振るいたいと叫ぶ。
だが、そんな本能に身を任せれば、待っているのは破滅のみ。
二律背反の現実。
だが、その矛先が『地上の人間』ではなかったら?
恐怖の供給源である『人間』とはまた別の、『月人』なら?
「実際、下の連中は大盛り上がりだ。久しぶりに暴れられる機会が来たってね」
ただ。
勇儀は僅かに言葉を詰まらせ。
「なんだか、なぁ」
――違和感。
「萃香、他の連中はどうなんだ?」
「他の?」
「そうだ。噂によれば、天魔のやつとは別の、他集落の天狗も出てくるって話だ。その時の『誘い文句』ってやつ、お前なら知ってるんじゃないかと思ってね」
「――そうだな」
萃香はそれを否定しない。
というのも、萃香は四六時中、己の身体を『密と疎を操る程度の能力』を応用し、大陸全土に『散布』している。
だがだからといって、今起こっている全ての事柄を、正確に把握できる訳ではないのだ。
当然の話だ。森の木々、そこに生い茂る葉っぱ一枚一枚の形から、町を歩く人間の顔。
この世界に溢れる『情報』というのは、あまりにも膨大で、底なしだ。
それに、身体を霧に変化させ、『散布』しているからといって、感覚を共有しているとは限らない。
仮に感覚を共有しているからと言って、勇儀が求める情報を、萃香が狙って収集しているとは断言できず。
それを抜きにしても。勇儀が欲しがっている情報を偶然、萃香が所持しているとも限らない。そんな可能性なんて、あまりにも低い部類に入るだろう。
しかしその上で、勇儀は聞いてきたのだ。
それは、広大な砂漠の中で、砂金一つを狙って摘まむようなものであると言うのに。
――それ即ち。萃香が既に、その『情報』を持っていると。旧知の仲から確信したが故。
そして、それは正しかった。
「
――萃香は度し難い。
「倭国があった場所には、『他の増長してる妖怪たちに、この戦で力の差を見せつけてみないか』とさ」
納得できない。
そして何より――どうしても、疑いたくなかった。
だから、萃香はここ最近の紫の動き全てを監視していた。
「勇儀。どう思う?」
「見事に『黒』だね」
勇儀は即答した。
萃香もまた、同じく即答した。
「でも、
「あぁ、嘘じゃなかった」
状況が。
集めた情報の一つ一つが、八雲紫を『黒』だと断ずる。
しかし。
「だが、以前
「私も同じ思いさ」
たった一つの、自分たちの
何が正しい?
自分にとっての、心地の良い『真実』とはどちらだ?
鬼は、自分たちは理論と本能。どちらを信じればいい?
どちらを切り捨てれば、自分たちは迷いから解放される?
答えは、出なかった。
「華扇のやつなら、きっぱりと選べたんだろうけどね」
ぽつりと。
そう呟いた勇儀の顔はまるで、解けない難問にぶち当たった、学者のそれであった。
「皮肉なもんだね」
勇儀は呆れたように。
「人間と鬼。寿命差で置いて行かれるが故の苦しみに、誰よりも悩んだあいつなら、きっと」
勇儀はその先を言わなかった。
だが不思議と、勇儀の言わんとすることを理解した。
あの、奸佞邪智の鬼なら。
茨木華扇なら。この選択への答えを、悩まずに即決できたのだろうか?
「……そうだな」
萃香は、懐かしい気持ちになった。
神代の時からの関係だった。萃香と勇儀、そして華扇の三竦み。
皆同じ『山の四天王』でありながら、その後の在り方には、大きな差が生じてしまった。
今から約数百年前の話だ。
華扇は
鬼同士の"共振"のおかげで、華扇が今でも生きている事は分かるが、それだけだ。
萃香は、ため息をつく。
「――『月面戦争』とやらで、あんたは何を企んでるんだ?」
ため息をつきながら、そして。
「
背後から、声。
振り返り、そこにいたのは、西洋と中華の良い所を掛け合わせたような、特別なドレスに身を包む少女であり。
そして、つい先ほどまで、萃香と勇儀の話題の中心に立っていた、妖怪の『賢者』。
八雲紫は、笑っていた。
「『鬼』に対して送ったのとは別に、私は『あなた達』の力を借りたいの」
裂けて。
「私の目的は月。ただの月じゃないわ、月の『裏』にあるとされる『月の都』……」
溶けて。
「その最奥に、
引き伸ばされたような、賢者の笑み。
萃香の、鬼としての本能が告げる。
――
「だから、協力して欲しいのよ」
「…………」
「準備はできているわ、始めましょう」
――
――
「第一次月面戦争を」
――八雲紫に、
萃香は気づかない。
勇儀もまた、萃香の身体が視界を遮っているせいで、気づかない。
八雲紫の背後、そこにひっそりと佇む空隙、『スキマ』の中にある。
『………………』
『スキマ』を構成するものとは違う。
赤い目玉――サードアイを。
その屋敷の造りは、簡素なものであった。
室内には、赤く大きな絨毯が一枚のみ敷かれているだけで、それ以外の装飾品は、『部屋』として成り立つ最低限が用意されているだけである。
更には、家具も装飾のない質素な椅子と、机が複数置かれているのみ。
そんな部屋の中には、現在男が二人いた。
一人は、二メートルはあるだろう巨大な体躯を、赤い鎧で包んだ男。
人々が彼を一言で表すとするならば――『武人』。
「…………」
月の都『防衛大臣』
彼は静かに、自身の体躯に釣り合う巨大な剣を握り、瞑想を続けていた。
そして、もう一人の男もまた。
「…………」
茶を一口運び。目を閉じ、細愛と同じく瞑想を続けている。
そんな彼こそが、この屋敷の他ならぬ主その人である。
『月の都』の絶対的な王である月夜見。
その直系後嗣の中で、ここは最も地位が高い、この男の為だけに与えられた特別な屋敷なのだ。
武力こそ、細愛には劣るものの。彼が持つ月での権威は、他に並ぶものはなし。
屋敷の主。そして偉大なる月の王の血を引く男は、ゆっくりと目を開く。
「…………」
月の都『法務大臣』
「――やはり来たか」
都久は茶を飲む手を止め、眉を顰めた。
たった一つだけ。部屋の空間を彩る、太陽と月が描き込まれた大きな屏風を背に。
忌々しいと、その思いを隠すことなく声色に乗せて、そして部屋の扉の方を見る。
扉の向こうからは、足音が聞こえた。
背丈の似た、二人の少女の足音だ。
そして、今しがた感じた"穢れ"の
次に来るであろう『報告』も、既に都久は察していた。
ガタ……と。
「御二方に報告致します」
重厚な扉を、共同で押し開けて入って来たのは、二人の少女であった。
二人に共通するのは、腰ほどの長さの髪。
しかし、妹である少女の髪色は薄紫色であるのに対し、姉の髪色は亜麻色である。
月の都の『最強姉妹』、綿月依姫と綿月豊姫である。
先に口を開いたのは、薄紫色の髪の少女、依姫で。
「地上の妖怪が満月の道を通り、月の裏側に侵入しました」
「妖怪たちは、月の都に攻め入るつもりかと」
依姫の言葉を補完するように、豊姫が続ける。
そして当然ながら。
その報告は、都久にとっては想定の範囲内であった。
「そうですか。それで?」
「既に彼らは、月の防御結界まで迫ってきました。……以前より
豊姫が言い終わるよりも前。
都久は、はっきりと聞こえる声で呟いた。
「――『本隊』が来た、という事か」
「はい、恐らくは」
以前より、月の都に侵攻を続けてきた妖怪。
角が生えたものから、翼が生えたものと、その容姿は千差万別。
正に魑魅魍魎の、忌々しい"穢れ"の体現者が、また。
「細愛殿」
「……ああ。分かっている」
都久の言葉に、細愛はすぐに応えた。
「速やかに兵を召集しよう。お前たちは先に準備を整えるんだ」
『はっ』
瞑想から覚めた細愛の命令に、綿月姉妹は空白を挟む事なく応える。
そして、一度頭を下げてから、背を向けて屋敷を出ていく。
都久は、機を見計らって言う。
「地上の妖怪の動向を確認する役目を、本来担っていた八意思兼が裏切って数百年……」
既に冷めきって、味の落ちた茶を置いて。
数多の懸念を飲み込み、都久は続けた。
「彼女の後継者である綿月姉妹は、私たちの想像を遥かに超えた怪物となった」
「…………」
「地上の妖怪たちの侵攻も、彼女たちなら問題ないだろう」
都久の呟きに、細愛は不服そうに、一度だけ眉を動かした。
だが、それだけだった。
都久は続けて。
「何より、彼女たちが成長したこの時に。愚かにもこうして、彼らの『本隊』が来た。……こんな絶好の機会を、みすみす見逃す訳にはいかないだろう」
「…………」
どのような原理かは知らないが、地上と月を。そして月の『表』と『裏』の垣根を飛び越え、彼らはしつこくやって来た。
結界によって、本来は分け隔てられている筈の月の都に、一体どうやって、こちらの干渉と妨害を跳ね除け、妖怪たちは侵入してきたのか。
その答えと、そして忌々しい彼らの侵略行為に、ようやく終止符を打てる時が来たのだ。
ならば、こちらも注げる戦力は全て注ぐべきだと、そう判断する。
「今回は、貴方が直に迎撃部隊を率いて下さい」
「――ああ」
細愛は兜を手に取り、厳然たる態度で。
「月の都には、一片たりとも"穢れ"を入れさせはしない……!」
そう言って、立ち去っていく。
その一瞬。前と後で、都久は細愛が身に纏う気配を変えたのを、見逃すことはなかった。
それが意味することは、決して依姫程ではなかったとしても。
――彼もまた、成長を続けているという事。
「フッ……勝ち戦とやらも悪くはない」
都久は笑う。
――月の『最強』が三人動く。
それによる約束された勝利に、年甲斐もなく心が浮き足立つのを自覚して。
妖怪たち「多勢に無勢だいっけぇ」
ゆかりん「月軍を存分に利用してやるぜブヘヘヘへ」
月人たち「殺す……」
綿月姉妹「殺す……」
ゆかりんの明日はいかに。
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