【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい 作:洩矢廻戦
改めて、10評価の力ってホントに凄いんだなぁ……と。
白一面。しかし確かに広大な大地にある影は三つ。
その二つの影には角が生えていて、しかしもう一つの影に角はない。
角が生えた二つの影は、その一つの影を言葉なく見つめ、闘魂を滾らせていた。
妖怪の頂点。最強種族が一つ――『鬼』。
伊吹萃香と星熊勇儀が作る、影二つが、同時に動く。
「――――シッ!」
言葉などなく、その必要性すらなく。
速やかな戦いの決着を求めて、言語能力による対話を放棄した鬼二匹は、跳んだ。
跳んで、足が地面から離れたその次にはもう。萃香の足は、角が生えていない影の首を刈る寸前にまで行動を終えていた。
両者の距離は一〇メートル。
人間が気合いを入れれば、約四歩で踏破可能な距離は、鬼にとってはもっと簡単。
一〇メートルの距離を、一呼吸の隙すら与えずに縮める。攻撃するという一瞬。
その一瞬を掻い潜り、人間が右手に持つ剣を振るう。その剣速は、萃香の身体能力による移動速度をも凌駕する、正に刹那の出来事だった。
「はあ――――ッ!」
「ぐぅ……!」
続けて、勇儀の足が振り下ろされる。
この間は、時間にして僅か二秒。
轟音が鳴り響き、辺りが砂埃で埋め尽くされる。
だが、その音に『手ごたえ』の感触はなかった。
萃香の背筋に冷たいものが走るよりも先に、修羅場を潜った肉体が自動で動く。
「くっ……!?」
咄嗟に両腕を組み、防御態勢に移ったのは狙ってではない。
だが、その時に『密と疎を操る程度の能力』によって、肉体の硬度を底上げしたのにも関わらず、鋭い痛みが走った。
堪える為の足場のない空中では、その衝撃を受け止めきる事など不可能。
萃香は剣の刀身が腕の肉にめり込む、不愉快な感覚を鮮明に味わいながら、元居た場所へ飛ばされた。
振り出しに戻る。
「チッ」
萃香は身体を捻って着地する。
腕を見れば、まるでそこが避雷針にでもなったかのように、萃香の斬りつけられた腕には、紫色の光が纏わりついている。
そして、一筋の裂傷も――。
「鈍ったか?萃香」
「馬鹿言え。まだそんな歳じゃないっての」
遅れて、隣に着地した勇儀にそう返す。
確かに最近はここまで、自ら本気を出して身体を動かす機会などなかった。しかし『山の四天王』として築き上げた『強さ』が、そんな程度で鈍る筈がない。
間違いなく
だが現にこうして、自分の身体には傷がついている。
それが、どうにも気にかかる。
(『密』の硬化が解除された…どういう理屈だ……?)
鬼の堅剛な肉体の内、人と変わらない心臓が鼓動を早める。
戦いによる緊張感は当然として、しかし萃香はその緊張よりもむしろ、対面する謎への『不可解』の意味で鼓動を高めていた。
腕には依然として、煙のように輪郭がはっきりとしていない、紫の光がある。
そして、そこから中心に、
「それより勇儀。そっちこそ鈍ったんじゃないのか?」
「馬鹿言え、手加減のない全力の蹴りをぶち込んでやったっての。ちゃんと『怪力乱神』込みでね」
「んじゃやっぱり」
「あぁ。しっかりと効いてない」
視線を下に向けると、やはり予想通りと言うべきか。
勇儀の右足、そこから太ももにかけて萃香が先ほど喰らったのと同じ、謎の光が纏わりついていた。
色もちゃんと、萃香と同じ紫色だ。
萃香は腕の傷を舐め。
「ん。……多分こりゃ無効化って感じじゃないな、水の中で息止めてる時の感覚に近い。後は領域の押し合いに負けた時のやつ」
「
「あぁ面倒だ」
だが。
萃香と勇儀は笑う。
「でも、それだけだな」
「あぁ、それだけだ」
「――随分と余裕だな。地上の穢れ共」
その時、声が響いた。
砂埃の向こうから、それは忌々しそうに続けて言う。
「以前より月の大地を汚す貴様らの『本隊』。一体どのようなものかと警戒してみれば……」
角の生えていない一つの影。
二メートルはある巨大な体躯。
それに見合う、赤い重厚な鎧を身に纏った、一人の男。
砂埃という実体のないものをまるで、野菜でも切るかのような軽い所作で剣を振るい、砂埃を消し去った。
『人間』――細愛親王は口の端を歪め。
「まるで期待外れで……いや、この場合は貴様らを過剰評価していたと己を恥ずべきだな。所詮は『穢れ』に過ぎんのだ、その事を失念していたかもしれぬ」
「にしては、ちゃんと
「まさか」
細愛は大して興味もなさそうに。
「これは『罰』だ」
剣の切っ先を向けて、侮蔑の声色で言う。
「思い上がり、調子に乗った貴様たち地上の穢れに、これまで与えられた不愉快の分、生き地獄を見せてやる。四肢を斬り落としても足りぬ、生きたまま焼いたとしても足りぬ。貴様らの肉体から魂。全ての汚らわしい汚濁をこの世から完全に消すことで、我々は再び安眠の時を得るのだ」
「へいへい、嫌よ嫌よも好きのうちってか?」
「貴様らに慈悲など与えん。『万が一』も許さん。一片の憂いすら残さず完全に消し去る為に、こうして兵を集めただけだ。――それだけだ、思い上がるなよ」
「あっそ」
萃香は気だるそうに返した。
細愛の言い分からして、月の都に攻め入ろうとした妖怪とやらは今回だけでなく、以前から存在していた事は分かる。
分かるが、それだけだ。むしろそれ以上に、どんな感情を抱けばいいのか分からないというのが事実。
実際、勇儀も隣で心底どうでも良さそうに、小指で耳をほじっている。
「見れば分かる。貴様ら以外の戦力とやらは、我ら月軍のそれより遥かに劣るものだ」
否定はしない。
実際月の兵器を相手にして
引き金一つ、取り出した札の一枚、そのどれもが妖怪にとっては致命傷でありながら。しかし月人たちからすればそれは、ただの通常攻撃の一つに過ぎないのだ。
現に今も、数多の妖怪が月人の兵器の前に手も足も出せていない。
肉と臓物を飛び散らせ、木の葉同然に宙を舞っている。
侮蔑。
「だがまさか……我も玉兎が乗った『バラバルジュラ』で圧勝できる程に、貴様らが弱いとは思っていなかったがな」
「ばらばる……?それ、あのでっかい巨人のことか?随分と洒落た名前じゃないか」
「『巨人』か。――地上の知識は
搭乗型の決戦兵器。
――それが地上で実用化されるのは、数千か数万年が経ってからのこと。
「やはり話にならんな」
細愛のそれは、今まで以上の嘲りの声で。
「いやむしろ、これ以上我を際限なく失望させ続けるとは……ある意味で誇るべきだろう。穢れには分相応の評価だ」
「おいおい。もう勝ったつもりなのかい?まだお前は私たち片方の誰も殺せてないぞ?」
「そーだそーだ」
萃香の言葉が終わり次第に、勇儀が適当な語彙で口を挟んできた。
再び、発言権は萃香に戻る。
「舌戦も悪くないが、いい加減こっちは身体が鈍って仕方ないんだ。……早く続きを始めようか?」
「……――」
沈黙。
『人間』は萃香の言葉に、ほんの僅かに眉を動かし、そして。
「……くだらぬ」
呟く。
その声は、先ほどから変わらぬ嘲りの声。
しかし、先ほどとは違いその瞳にはもう――侮蔑の光すらも失せていた。
「戦い?殺し合い?面白くないことを言う。我ら人間と、貴様ら穢れの価値観は違う。――貴様らは足元を這う虫を潰すことを、ご丁寧に『勝負事』とでも言うのか?」
「……虫扱いとはいい度胸だ。んじゃお前にとって、私たちとの戦いは何だってのさ」
「俄然――」
細愛は動かない。
むしろ、まるで反撃も何も恐れていないように――剣を鞘に戻して。
「
「……?」
細愛の言葉に、萃香は形容し難い違和感を覚えた。
人間同士の戦いにおいては、単純明快に『数』が勝率に直結するものだ。
しかし、これが妖怪や『異能』に目覚めた人間といった、常人の枠組みから外れたものが混じった場合、その勝率を大きく引き上げるものは『質』に他ならない。
確かに月の兵器とやらは恐ろしいし、実際に多くの妖怪が死に、今も敗走を続けている。
有象無象の妖怪が相手なら、あの『バラバルジュラ』なる巨人で一捻りして、それで終わりだろう。
だが、それでは
『至った』者には、それだけでは敵わない。
萃香も勇儀も、依然として
そして、月人に限った場合。より
だが何よりも。
「それにお前。未知への警戒心ってのが欠けてるんじゃないか?」
それ以上の疑問。
萃香がそれを問う背景。それは八雲紫の持つ『
細愛は先ほど『本隊』と、そう言っていた。
この『月面戦争』に対する違和感の内一つ、それは紫が月の都に『スキマ』を繋げる際、
紫が萃香を誘うよりも前。細愛ら『月人』の寿命や年齢の平均値を考えれば、それも数百年か数千年のレベルで、月に何十匹もの妖怪が訪れたであろう事が容易に想像できる。
先ほど見せていた怒りも、正直納得する程だ。
今まで月の都を脅かして来たもの。それを
――この世界で唯一単体、八雲紫が操れる『スキマ』に勝てるのか?と。
だが、細愛は間をあけず。
「――言っただろう」
萃香の、旧友への無意識下での信頼を。
勇儀が纏う、未だ不明瞭な
それら全てを切り裂く――刃物のような細愛の視線。
まるで、萃香たちの『その後』を楽しみにするかのように、小さく笑って言った。
「
辺りから音は消えていた。
「――――」
萃香は慌てて辺りを見回した。
景色は既に、夜の闇に沈んでいる。――だが、足元に広がる白一面の大地は変わっていない。
悲鳴。怒号。
妖怪たちの阿鼻叫喚の悲鳴はまるで、そんなものは最初からなかったかのように、現在進行形で静寂と虚無が続いている。
最初、萃香は別の星にでも飛ばされたのかと、そう思った。
しかし。大地の白に満天の星と、更には太陽の威光と星々の輝きが両立する、月の都の当たり前を見て、その予想を捨てる。
ここは変わらず月のままだ。
月でありながら、
「萃香、こりゃあ……」
振り返れば、勇儀の顔にはもう余裕はなく。
代わりに、その瞳が見据えている――新たな刺客の影に。
胸の奥から、絞り出すような声で言う。
「……ちと本気でやばいかもな」
それは、あからさまな足音を鳴らしていた。
急いでいるわけでもない。それは決して、足音を殺して気配を沈めようとしているのではない。
最初から隠れる気も、自身の存在を隠す気すらもなく。
殺意を滲ませる訳でも、先手必勝の暗殺を披露するつもりでもない。
それは大胆かつ不敵、絶対的な自信の有り様。
――圧勝の確信を匂わせる『勝ち』そのもの。
「――Freeze」
足音の主の言葉。
それがどういう意味を持つ言葉なのかを、萃香たちが知る筈もない。
足音は、萃香から一〇メートルほど離れた先で止まった。
ごくりと、隣で勇儀が唾を飲み込む音が、萃香に聞こえる。
頬が自然と吊り上がり。――それから、は。と、乾いた音を口端から零して、正面を見据えた。
だが、その眼は微塵も笑っていない――いや、むしろ笑えない。
「多少時間はかかったけれど。――
足音の正体は、青いサロペットスカートとお揃いの、青い革靴の底が奏でる音。
萃香のように少女体形に内包された鬼の剛力のような気配もない。ただの『人間』の少女。
柔らかく小さな身体には釣り合わない、鬼のような『実力者』としての風格。
けれど少女の亜麻色の髪と金色の瞳という風貌、その美貌によって、さも当然と変換されていた。
「『月は穢れを持ち込まれるのを嫌う』――だから妖怪側は、月の都近くで戦えばいい。なんて」
『月人』に対して唯一『妖怪』が持つ有利。
穢れによる浄土の汚染を、改めて少女は口にする。
それの意味は、一つだった。
「そう思っていたのでしょう?実際、先ほどの戦場では我先にと逃げ出す妖怪より、こちらに向かってくる妖怪の方が多かったから」
「……――まさか」
「何を……いえ、どうせ
萃香は言葉が出ない。
傍から見れば『理不尽』に分類される力である『疎と密』。
それを宿す萃香ですら、疑う余地なく『理不尽』と断言できる力、八雲紫の『スキマ』の力を、この少女は『無効化』したというのか。
『妨害』や『阻害』でもなく『無効化』。
数多の同系統の能力者を相手にし、そして一度も負けたことがない紫を相手に。
地上の誰もが届かなかった、異次元空間の極地に。
「レイセン、
『了解。システムチェックに移ります』
「そのままサポートをお願い」
この少女は――上を行ったのだ。
「――『
す、と虚空から無数の『+』と『-』の模様が描かれた正六面体が出現する。
音も気配もない突然の変化。
最初に月軍が姿を見せた時のと同じ、瞬間移動に近い謎の力。その原因こそ、彼女だった。
彼女こそ、この数千に及ぶ月の兵力の根幹にして。
――戦争における『最強の群』そのもの。
「穢なき地上の妖怪ども」
愕然に凍る『山の四天王』を相手に。
触れればそれだけで、閃光が迸りそうな威圧感を纏い。
「ここからはもう。――お前たちは何もできないぞ」
月の『最強』綿月豊姫の声で、言った。
辺りに光源はない。
見上げれば、そこにある筈の満天の星も、それと並列して輝く太陽もない。だというのに、視界は良好というちぐはぐな場所。
そこは文字通りの『別次元』。
『スキマ』の干渉すらままならない、『正体不明』の空間に紫たちはいた。
声。
「『量子的に物事を見た時起こり得る事象は必ず起こる』……師の教えです」
理屈よりも、身体が無意識に力を込めた。
集中に沈み、身体に流れる血液の音を感じる程。
直感、本能的に。――目前に立つ少女の『脅威』を理解する。
「『山』と『海』の繋がりは虚無ではなく『トンネル』だと解釈し。中断ではなく持続の要領で異次元間を繋ぐ。……あなた達には分からないでしょう?だからここから逃げられない」
少女は襟の広い、半袖の白いシャツに、右肩にだけ紐のある赤いサロペットスカートに近い服装だった。
服装と少女の肉体。その二つの要素だけを見れば、まぁ普通の範疇に収まるだろう。
だが、普通の少女が持つには似つかわしくない無骨な日本刀が、彼女を『脅威』として飾り立てる。
柄を含めれば、その全長はおよそ一メートル程で。
素人目線でもそれなりの重量を秘めていると、紫には分かった。
「鬼も、天狗も駒の一つに過ぎないと言うのなら」
だと言うのに、少女は緊張した様子を見せず。まるで世間話でもしているかのような気楽さで。
その異質さが余計、留まることを知らない警戒心の後押しの要素となっていた。
「あなた達二人を倒してしまえば、残りは容易く済みそうです」
「……、…………」
ある程度予想していたとはいえ、それでも背筋に冷たいものが走る。
目の前の『脅威』に対する無意識の強ばりと、妖怪の『賢者』としての
その結果として、紫は動いて――否、動けていない。
思わず、一歩後ろへ下がる醜態。それを晒すことなく立っているだけ。
「あなたなのでしょう?以前からずっと、月の都に妖怪を送り続けてきた元凶は」
紫は答えない。
時を遡ること数千年、いつか訪れる忘却の滅びから妖怪たちを守る為、辿り着いた一つの選択肢。それの足掛かりにか過ぎなかった筈の『月人』。
――戦争における『最強の個』綿月依姫は。
「率直に言って――」
言葉を待たず、紫は能力を使った。
依姫の死角から襲い掛かったのは、『スキマ』から放出された弾幕だった。
空隙を裂いて生まれたそれと依姫との間の距離は、およそ一〇メートル。しかし紫がこの距離を設定した理由はあくまでも、『
理屈ではないのだ。例え一〇メートルの距離があろうと、標的に弾幕が当たるまでのタイムラグはないに等しく、紫が生み出し、操作する単純な妖力による弾幕と、シンプルが故に強力な攻撃。
一〇メートル離れていようと、それが炸裂するのは時間にして一秒もない。つまり可能性として一番避けるべき事態とは、無理に『スキマ』を形成する距離を縮めて、結果それの
『
紫の『当たり前』とはそれだった。
それが今までの『最適』だったから、今回もその技を選択した。
だが、消えた。
シュンと、ほんの一瞬依姫の右腕が蜃気楼のように歪み、ブレた。
その次にはもう、紫が放った弾幕は消えていて。やっと斬られた事に気づいた空気が、遅れて断絶の悲鳴を轟!とあげる。
片目を閉じて、まるで近くを飛ぶ虫を払うように。
依姫は、右手を刀の柄に触れたまま。
「……、っ」
「あなた達を下すのは、それ程難しくはありません」
憎悪でもなく、ましてや蔑みでもない。ただの『声』を出した。
チン、という刀が鞘に収まる音すらしない、正に神速の抜刀。
たった一度の。『刀が削った空間の軌跡』はおろか、刀の残像すら捉えられない事実。
紫は無言で。
しかし、それでも紫は勝利の可能性を見据えたままだった。
微笑み。
「――
腕を振るう必要もなく、再び虚空に切れ目が生じた。
紫の意思に呼応するように、新たに形成された、先ほどより二回りほど大きい『スキマ』から、弾幕が
先ほどのとは違い、速度はない。
ノロノロと、まるで木の葉が上から落ちてきているかのような動き。
依姫は最初、呆れよりもむしろ、哀れみの色が強いため息を吐いて。
この期に及んで、
「何を意味の……」
――
その時の依姫にはきっと、そんなノイズのような心の声が滑り込んで来たのだろう。
「――、ッ!?」
反応は早く。
再び右腕がブレる。
また、轟!と空気が断絶されて悲鳴を上げた。
着地し。その時にやはり、依姫のその直感は間違っていなかったのだと、目前の光景が証明する。
それを斬り裂いた変化。
依姫の刀には――『穢れ』が付着していた。
「あなた達月人は、穢れなきこの浄土に穢れを持ち込まれるのを極端に嫌う」
紫は楽しそうに。
「生と死の境界を操作して抽出した特殊な弾幕よ。お気に召したかしら?」
「…………」
依姫はつまらなさそうに、穢れで汚染された愛刀を見つめていた。
「ただ生物を殺す、死体を放置しておく事で生まれる穢れとは純度が違う。――放っておけば一瞬で月に寿命をもたらすわ。弾を一つ一つ潰さないと、月は地上と変わらなくなるかもね?」
「……」
「これであなたは、私の弾をしっかり斬らないといけなくなった」
「――」
「その上で、私たちと戦えるつもり?」
それは『正々堂々』をこれから放棄するという宣言に近い。
実力の差は未知数。依姫が持つ技とやらも不明瞭。
だがそれらをひっくるめて尚、絶対的有利を保つ紫の秘策――。
依姫は、何かを思案するかのように両目を閉じていて。
暫く。
「――『
刀を掲げると同時に、依姫の身体に神性の光が満ちる。
両の目を開き、細めながら。
やはり、憎悪も怒りもなく。
「結論は変わりません」
音すら置き去りにした、神速の居合と共に。
「――あなた達を下すのは、それ程難しくはない……」
ほんの小さな金属音。
それは、今になってやっと聞こえた鞘に刀を納めた音――辺りの穢れが全て、既に祓われた事の証明。
愕然に凍る妖怪の『賢者』と『九尾』を相手に。
触れればそれだけで、肌が引き裂かれる殺傷能力を纏い。
再び、鞘から刀を抜き。剥き出しとなった銀色の輝き――それに劣らない、絶対零度の強者の視線で。
「ここからはもう。――あなた達は何もできません」
月の『最強』綿月依姫の声で、言った。
バラバルジュラ
元ネタは芥見先生の読み切り漫画『二界梵骸バラバルジュラ』。
□×9
元ネタは芥見先生の読み切り漫画『No.9』。
お気に入り、感想、評価をいただけると色々頑張れます(誤字報告いつも助かってます)。
投稿時間は何時がいいか
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