【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい 作:洩矢廻戦
創作意欲は作者に微笑んだ…禁断の新作投稿"二度打ち"
とりあえず軽く旅をしよう。
彼女は再び、ぺたんと石の上に座って、そう心の中で決心した。
「まずは情報収集…ここはどんな場所で、他にどんな生き物がいるのかとか…知るべきことはたくさんあるしね」
正直、負けという概念は存在しないと言っても過言ではない。
いくら精神が元一般人だろうとも、今の自分の身体は土着神の頂点、洩矢諏訪子だ。
それだけではない、何故か今の自分には、最初からミシャグジ様が支配下に置かれているし、坤を創造する力にも不具合はない。
更には――
「お前もいるしね」
『縺ェ縺ォ縺」』
足元で軍隊を成して、カサカサと規律の取れた動きで旋回し続ける百足を見て、彼女は再び笑みを零す。
偶然入手できた駒だが、これがなかなかどうして、かなり便利な祟り神だ。
――そう、
「ほら、行ってこーい」
『縺ェ繧薙□縺ゅ▲』
適当にその辺の石を投げ、そして宙高く舞い上がったそれに向け、手を拳銃の形にして、そう命じる。
すると足元で旋回を繰り返していた、無数の百足たちは一瞬で空へと駆け出して、そして体当たりで石を粉々にした。
「おぉ~」と、彼女が感心して手を叩くと、百足たちは一斉にこちらに身体を向けて、そして頭を下げて待機した。
『縺励c縺ゅ▲』
「いいね。なんだかんだで、君が一番重宝しそうだ」
新たに支配下に置いた…いや、作った祟り神の百足。
彼らは集団で個、個が集団そのものという珍しい生態を持っている。たとえどれだけ疲弊しようと、どれだけ身を削られようとも。
集団の中の
「でもなぁ…」
そんな便利で強力な祟り神の力を知っても、彼女の顔色は変わらない。
それどころか「でも…」と、まるで親に不満を漏らす幼子のような、ぷくりと膨れた頬を見せた。
「たとえばこういう…」
そう言いながら、彼女はガサガサと、目の前で揺れる木々に視線を向けながら、左手を掲げる。
しん…そう、突如音が止んだ後、しばらくその体勢のまま硬直、そして数秒後、彼女はぐんっと左手を振り下ろす。
それと同時に、木々から飛び出す、異形の妖が――
『×××!!』
白く、美しい牙に飲まれて消える。
「――ミシャグジ様」
バクンッ!
反撃も、反応も間に合わず、妖の目と意識が再び動き出した時には、既に白蛇の口の中。
『~♡!シャーッ…!』
「お疲れ、助かったよ」
もきゅもきゅと口を動かす白蛇の喉を撫で、彼女は満足そうに笑って、そう言った。
そう、たとえ新たな手数を、祟り神を作ったとしても、この白蛇、"ミシャグジ様"という祟り神の最上位に位置する存在がいれば、他に何もいらないのだ。
(まぁでも、ミシャグジ様に頼り切りで…なんとかなるほど甘くはないだろうし……)
そうしてしばらく、口を動かしていた白蛇の口から、紫の瘴気が漏れ出て、その口内から感じた妖力がバッタリと消えた。
彼女はそれを確認すると、「出して」と白蛇に命令し、そして口内で出来上がった"それ"を、地面に吐き出させて。
「…よし、問題なしだね」
地面に転がる、黒と黄が混じる球体を手に取って。
そしてそれを――
「んあ……っ」
飲み込んだ。
「っ、むぐ……ふむふむ、今日はべっこう飴か」
ぺろりと、彼女は艶やかに唇を舐めて、その出来上がった球体――名付けて祟り玉を賞味する。
どういう原理かは知らない。が、これが今の自分にとって、最も目的に近づけるショートカットなのだ。
そして、握った右手を開いて、前に向かって突き出しながら、命令する。
「来い」
『アイッ』
ボコボコッと、目の前の空間が捻じれ、そしてそこから新しく支配下に置いた、祟り神の姿が現れる。
それは赤子のような、しかし目がくり抜かれたかのような顔と、しかしその下に接合された、もう1人の人間の顔が身体を作っている、おぞましい姿。
絶句。
「…………」
『アーイアイアイアアアアアアアッ!イエ?ハイッ』
「…」
『フルルルルルルルルル…』
ぴちゃん。
彼女はすぐにサッ…と手をかざして、その祟り神の姿を消した。
訪れる静寂。そして彼女はスーーッ…と、思い切り息を吸ってから。
「…見なかったことにしよ」
そう呟いて、彼女は横に待機させていた、白蛇の頭に寝そべる形で脱力し、移動を任せて、再び祟り神を召喚する。
勿論、今回呼んだのはあの化け物ではなく、最初に入手した群の百足だ。
「やっぱり君はカッコいいねぇ」
空に手をかざし、その腕に纏わりつき、そして身体を擦らせる百足たちを、彼女はほっこりと見守った。
この数時間のうちに、彼女の苦手意識やその他の価値観は完全に進化を遂げ、この程度ではもはや動揺すらしなくなったらしい。
彼女は手を広げる。その隙間のできた指と指の間に、身体をねじ込ませ、嬉しそうに鳴き声を漏らす百足たち。
『縺ェ縺ォ縺」』
「他の祟り神も見習ってほしいよねぇ?みんな君みたいなら良かったのにさ」
人差し指で、優しく触れるように百足の顎を擦りながら、彼女はそう呟いて足をジタバタさせる。
しかし直に慣れるだろう。自身の目的のためには、あの戦神に勝つためには、我儘は言っていられない。
まず、今の自分が最優先でやるべきことは――
「戦力の補充…だね」
そこは、かつては人が住み、そして栄えていたのであろう廃墟。
ひび割れた、灰色の壁と、それらを覆いつくすように配置された、数mはあるであろう、巨大な雑草。
建物もそうだが、時代や世界観の差なのだろうか、"彼"の知識の中にあった雑草とは、あらゆる要素が違っていた。
――もちろん、目の前にいる彼らも違う。
『××…』
「多いね」
彼女が一歩、廃墟へ足を踏み入れながらそう呟くと、その音に反応して、彼らは一斉にこちらを向く。
血の匂いだ。それは彼らのむき出しになった牙、いいや、狩りに身を捧げ、血を浴びて飲むその一生が、身に染みたことによる死の気配。
数はおよそ20。その犬にも似た、狼のように巨大で、そして禍々しい牙を持つ妖怪たちは、侵入者に赤い目を向ける。
彼らが、一歩前へ。
「洩矢の鉄の輪」
手のひらを横に、彼女が腕を突き出すと同時に、重厚な金属の輝きが、妖怪たちの目を照らす。
鉄輪が回転を始める。そのあまりの速度に、彼女に向かって吸い込まれるような、風の流れが出来上がって、妖怪たちの毛が靡く。
互いに、まだ動かない。
「…………」
『…………』
キィイイイ…
空気が抉られ、削られ、ぐちゃぐちゃに潰される音が、両者の静寂を誤魔化すように響き渡る。
まだ、互いに動きはない。
「………」
『………』
じり…
まだ、動かない。
「……」
『……』
土が盛り上がる。
彼女たちの足が、身体を動かすその予兆を、大地に伝えて支えを作る。
「…」
『…』
そして。
『…××ッ!!』
「ほっ!」
疾駆。
その牙を、爪を、妖怪である己の武器を振り上げながら、彼らは駆け出し腐臭をまき散らす。
だがそれを上回る速度で、彼女は横に飛び出し、その背後に回る。
「あーらよっと」
下から掬いあげる形で、彼女が腕を振り上げ、そして手に持つ鉄輪を、目の前の妖怪の、無防備な背中に向かって投げた。
『×!?~~~ッ!×!!』
ギャリギャリと、骨と肉を抉る音が鳴り、そして鉄輪が更に、食い込んだ妖怪の背中で、回転する速度を上げる。
血飛沫が、悲鳴が、残酷なその処刑は続き、そして数秒後に、ザンッ!と、その身体を両断した。
しかし、まだ終わらない。
「ま~だまだっ」
彼女は再び行動を開始する。
左手に残る、もう1つの鉄輪を構え、そして妖怪の身体を両断し、飛び出したばかりの鉄輪に向けて、それを投げた。
妖怪の身体を挟み、少しだけとはいえ、速度の下がった鉄輪に、新たに放たれたばかりの、鉄輪の持つ初速が含む、最高速度の運動量が加算される。
――それは、まるで蛇のようだった。
「そ~れそれ」
物理法則を無視した、有り得ない軌道を描きながら、鉄輪たちは空中を駆けていく。
1匹、また1匹と、最初の犠牲者と同じように、身体を両断されて絶命する。
足を、腕を、口から裂かれる形で、その圧倒的な蹂躙が成された。
そうしてしばらくの間、彼女は自身の身体の周りに、まるで人工衛星のように鉄輪を配置、回転させて。
それらを仕舞って、戦いを終わらせた。
「ふふん、鉄輪だけでも大したもんだね」
ぐーっと両腕を伸ばして、終わった戦いの余韻に身を浸らせながら、彼女は目の前の死体の群れに、目を向けた。
「さてさて、今回のピックアップは~…」
そしてすぐに、右手をかざして、その出来上がった妖怪たちの死体に、ある変化が訪れた。
既に絶命し、そして妖力を失った哀れな骸たちが、たちまちその姿を変え、あの奇妙な色を持つ、味の変わる祟り玉へと変化した。
これは、彼女が試行錯誤を繰り返した結果、わかったある仕様だ。
最初に百足を取り込んだ時とは違い、今回は白蛇の…ミシャグジ様による瘴気ではなく、自身の神力と瘴気のみで作ったこの祟り玉。
おそらくは実力差によるものだろう。あの時、百足と自分には確かに実力差はあった、だが今回の妖怪と比べれば、まだ実力は近い。
…それでも微々たる差だが、しかし今回の妖怪は、あれよりも更に、自身と実力差が離れている。
故に、こうして今回は彼女だけで、祟り玉の生成を行った。
「んじゃ早速…」
まずは1つ、それを手に取って――
「ぅ…っ」
ごくんと、飲み込んだ。
「うーん…りんご?いや梨?なんか歯ごたえというか…喉を通る感触が…」
もきゅもきゅ。
既に飲み終えた後の、空っぽになった口内の余韻に浸りながら、彼女は自身の喉を摩りながら、そう呟く。
そしてもう一度、隣に転がっていた祟り玉を拾って、それも――
「んぐ…」
飲み込んだ。
「おっ?これはサイダー…?喉がパチパチして…あと冷たくて…」
再び賞味。そして感想を呟き、彼女は残る十数個もの祟り玉を、自由になった両腕と手で、器用に一か所に集める。
その間も、かつて"彼"も好きだった現代飲料の味を想起し、ニコニコと笑みを零しながら、その作業を終わらせた。
「さ~てさて、じゃあ…」
目の前には、一か所に纏まって置かれた数十の祟り玉。
しかしそれらが皆、赤だったり黄、緑に青といった色とりどりな見た目で、そしてどれもが食欲を唆る存在感を放っていた。
彼女は、両手を合わせて。
「いっただっきまーす!」
それらを、全て取り込んだ。
旅と言っても、それは別に心躍るとか、ワクワクするといった感情とは無縁だと、彼女はそう思っていた。
しかし違うのだ、ここはあの、アスファルトと電線に囲まれた、現代の汚れた景色とは違う。
自然、文字通りの、人の手がかかっていない、古来より存在していた、地球という大地そのものの美術品だ。
「あ、ミシャグジ様。もうちょい高く上がって」
『シャーッ』
器用に白蛇の額に座り、そして上手くバランスを取って、片足で「よっ!」と腕を伸ばして、木の上にある、目的のものを見る。
そこには、数十cmもの巨大な単眼と、そして木の枝にしがみつく様に、触手を絡ませる1匹の妖怪。
妖怪が彼女の接近に気づき、そして警戒の音を上げようとする前に、それが始まった。
「ほいっ」
『アイエエエ!』
ギギュウと鈍い音を立てながら、単眼の妖怪は一瞬で、白く輝く祟り玉へと変化し、そして彼女の口に放り込まれる。
ぷっくりと膨れた頬。そして彼女は両手で口を押え、首を上に、背を仰け反らせながら、ごくんっ!と、それを飲み込んだ。
「うめうめ…今回はバニラ?飽きがこないのはいいねぇ」
ぺろりと唇を舐め、そして白蛇の頭にドサッと倒れ込みながら、この優雅な旅を楽しんだ。
木々を見る、空を見る。そうして道中で、たまに出会う妖怪を祟り、そして自分が飲み込んで支配下に置く。
順調だ、順調すぎるくらいだ。だがそれでも不安は消えない。
「ま、この程度で全盛期の神奈子を倒せるわけないか…」
技術も、能力の規模も、相性もそうだ。
あの戦神、しかも全盛期の、列島を制圧せんと猛り狂う、八坂神奈子という宿敵には、これでは遠く及ばない。
だが、勿論勝機はある。
「八坂神奈子単体もそうだけど…私は"勝てば"いいんだから、戦争に」
戦争とは、質以上に数が全てを決めるものだ。
たとえ相手が人知を超えた武将だとしても、その配下を、民を全て制圧し返せるほどの、圧倒的な数の軍隊がいればいい。
それこそが神話戦争。たとえ神だけが残ろうと、それを恐れる民がいなければ、全てが無に帰すのが無常なこの世界の法則。
だが、彼女は違う。
「だからといって、タイマンを諦めるほど甘くはないよ、私は」
――両方だ。
数も、質も、そして他ならぬ己の実力の全てを使い、そして勝って未来を変える。
どうせなら徹底的に、祟り神として民に信仰され、そして取引に応じるといった甘えは、今の彼女にはない。
必ず勝つ、それだけだ。
『シャーッ!』
「ん?どうした?」
そして突然、動きを止めて前方の方に、白蛇は視線を向けて、目を細めていた。
白蛇のその様子に疑問を感じて、彼女は同じように身体を、顔を起き上がらせながら、視線をそちらに向ける。
――兎がいた。
「あら可愛い」
思わず、といった感じで零れた言葉。
しかしそんな呑気な様子も、目の前の光景の全容を把握した瞬間、すぐに消え失せた。
可愛らしい1匹の兎。しかしそれを追う形で、その後ろから巨大な影があった。
――妖気。
しかもこれは、今まで見た中でも一番強大なものだ。
単純な妖力だけなら、あの最初に出会った百足とは比べ物にならない。
直感でおよそ10倍。村どころか、下手をすれば国相手でも戦えそうなほどの、その暴力的な実力の気配。
「…っと、なるほど。第一関門が訪れたってワケ?」
笑う。
そうだ、たとえどれほど雑魚狩りを、収集活動を繰り返すのが楽しくとも、これだけでは飽きが来る。
口直しの、気分転換のデザート。それが目の前にやって来た。
「…いいね、さっさと取り込んであげよう」
ぺろり。
彼女が漏らした言葉と同時に、舌がその食欲を表現するように、彼女の唇を舐めた。
己は絶対の強者である。
その妖怪にとって、今では当たり前の自己評価、それが固まったのは、一体いつからだっただろうか。
記憶を遡る。赤と白の、腐臭と共に満たされる食欲と、そして耳に残る捕食された弱者の悲鳴。
妖怪、いや。今やその力は自然発生する妖怪の範疇には収まらず、もはや土地に根付く、神擬きのレベルにまで至っていた。
むき出しとなった歯茎。しかしその圧倒的な咬合力は、木や石では収まらず、あらゆる鉱石を噛み砕く。
己は強者である。
この、丸太のように太い腕で、あらゆる弱者を叩き潰した。
飛び散る臓物、そして鮮血。だがそれらが織りなす光景が、とても美しくてたまらない。
そして、その恐れが、更に自分を強者にする。
強者は、弱者を食いつぶす権利がある。
そう、強者は弱者を弄ぶ。
弱者は強者に、何も抵抗できずに弄ばれる。
「――こんにちは~」
そう、弱者は強者に。
「私と、遊ばない?」
――何も、できない。
「ささっ、いつでもいいよ?」
そう、無防備に両腕を広げて、そして首をこてんっ、と傾げて彼女は言う。
坤を操る力も、そして武器である鉄輪も、今の彼女は、使う気がなかった。
今回は、慣らし運転だ。
『おン?』
その様子に、目の前の妖怪はまず、そう声を漏らして、そしてすぐに目の色を変えた。
柔らかく、そして触り心地の良さそうな肌。芸術品のように、透き通って輝く金色の瞳と髪。そしてすらりとした、長く綺麗な足。
それらが、無防備にも目の前で。
『お、オおオオおム、おミャエ。美味、ウマそ…』
溢れる食欲。そしてそれを表現する涎が、ぽつりと地面を濡らす。
その間、両者は視線を向けあい、そして動かずに観察を続ける。
――しかし、すぐに均衡は破られた。
『――あア"ォおッ"!!』
ばちゅん!そんな水が膨れるような音が鳴り、妖怪の背中から、無数の触手が展開された。
それらがたちまち、目の前で1本の槍のような、先端に向かって鋭くなった形に練られ、そしてそれに妖力を籠め、放たれる。
正に、それは絶命の一撃。
「よっ」
ひらり。
目の前の妖怪が声を発し、そして触手を展開したと同時に、彼女は後方に飛躍すると同時に、身体を横に捻る。
まるでスケートリンクの上にいるかのように、イナバウアーの要領で身体を反って、触手が服に触れるかどうかの、そのギリギリの距離のまま回避をした。
そしてその一瞬の間で、彼女の力強く握られた右手、それが開かれ、黒い光が溢れ出す。
――神力。
妖怪がその気配の正体に勘付くと同時に、ギギュウと圧縮された黒く光るそれが、再び形を変化させる。
そして妖怪に襲い掛かるのは、黒から白へ、だが変化したそれは、妖怪にも負けない見た目をした化け物だった。
前方に飛び出た、一回り大きな鼻、老人の顔に角が生えたような、アンバランスで不気味な頭部と。それらを支える、団子のように連結された、球体のような腹部。
その、角の生えた祟り神が狙いを定め、妖怪の腹に向かって突進し、そして穿とうと更に加速する。
『おア"がッ…!』
その、あまりの衝撃に苦痛の声を漏らし、そしてなんとか両腕を間に挟むことで、妖怪は防御に成功した。
だが祟り神も負けずに、更に力を込めて、腕ごと腹を貫かんと身体を捻る。
『キ、さマ…!』
その貫通力に顔を歪ませ、そして邪魔者を始末しようと、その祟り神に怒りを向けた瞬間だった。
――ポコッ
『イイイイイセンザ!アリ…』
地面から生えた、新たな祟り神。
"参"と刻まれた巨大な単眼。そしてそれらを支えるように、地面から飛び出る触手たち。
妖怪が、その単眼の祟り神と目が合った瞬間、身体が脱力してしまう。
『…ッ!』
バクンッ!と、最初から突進を続けていた祟り神が、これを機に更に加速、そして腹を抉るに至る。
飛び出す鮮血、そして単眼の祟り神と、今負ったダメージによる全身の脱力。
それらが合わさり、膝を折り、前へ倒れそうになった瞬間。
妖怪は、それを見た。
「…ロックオ~ン」
手を拳銃の形にして、それを自分に向けながら。
そして、楽しそうに笑う彼女。
「――ばーんっ」
その言葉と同時に、彼女の指から大量に発生する百足の祟り神。
指揮に従い、規律の取れた動きで空中を疾駆し、倒れ込む妖怪の頭を、無常に齧り、破壊する。
そうして、一気に絶命状態となった、その妖怪の死体を、彼女は笑いながら見て。
「さて、お味はいかがかな」
ズズズ…と、かつて恐怖をまき散らした、元強者の妖怪は、白とピンクに輝く、可愛らしい色合いの祟り玉へと変化する。
彼女は、そうして手のひらに移動する形で変化を終えた、妖怪のことを思い返しながら、口を開けて。
「ん…っ」
ごくんと。
「…いいね」
飲み込んだ。
突進力に優れ、対象を貫くまで止まらない祟り神。
"目が合っている間限定"で、対象の動きを阻害する祟り神。
そして、今取り込んだ――
「来い」
『…ッ!』
でろり。
彼女が命じると同時に、目の前に現れた空間の亀裂。そしてそれをこじ開けるかのように、顕在化した巨大な手。
その巨大な手が、目の前の隙間に指をねじ込み、そしてそれを引っ張る形で、中に隠れる祟り神の姿を見せる。
広がる空間の隙間と、そこからこちらを覗く、血涙を流す巨大な目。
「ほお~?悪くない」
しかしそれでも、彼女のキラキラとした笑顔は変わらない。
それどころか「次はどんなのが来るかな」と、新たな犠牲者のことを考え、楽しみを抑えきれていない。
その笑みは、どこまでも純粋に輝いていた。
「でだ、君は可愛いねぇ~」
ぎゅーっ!と思い切り抱きしめながら、彼女は近くの木に隠れる形で、怯えていた兎を手に取って、そう呟く。
一方兎の方はというと、今目の前にいる土着神が、どれほどの高みにいる存在なのかを理解し、そして不快にさせるのは不味いと、無抵抗のまま、されるがままになっていた。
「か~わいいねぇ?」
「……………………」
足元の方で、カサカサと動く百足たちを見ながら、兎は「早く終われ」と願っているかのような。
死んだ目をしたまま、彼女に抱かれていた。
偽諏訪子「塵も積もれば…って言うでしょ?低級の祟り神も、私の神力で強化し、群れを成して指揮に従えば…」
的なことをやらせたい。
呪術廻戦はどこまで知ってる?
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アニメの内容(渋谷事変)まで
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あまり知らない(領域展開は知ってる)
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全部わかる