【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい   作:洩矢廻戦

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 誇張抜きで本当に終わりが近づいてきた…
 だってもうこの戦いが終わったら、次からいよいよ最終決戦ですよ?
 もう諏訪子VS神奈子の話が始まるんですよ?怖い…時の流れが怖い…
 どうか最後までお付き合い下さい(明日も夕方に出します)


56話.欲①神さびた虹市場

 星空を見上げながら、勇儀は冗談を交えて言う。

 

「首でも"獲る"か?」

「はっ、やなこった。どうして同じ鬼同士でそんなこと(鬼退治)しなきゃいけないのさ」

「それ私も思った」

「なら言うなよ」

 

 死闘の末の敗者。

 そんな言葉が相応しいくらいにボロボロの、しかしとても満足そうな表情だ。

 互いに妖力こそ枯渇したままで、全快とは言えないが。しかし肉体の損傷は既にない。

 萃香は失った右腕の再生を終えており、勇儀もまた、背中まで開いた穴を塞いでただ、全力の喧嘩、その余韻に浸っていた。

 

「だが…甘すぎだ、萃香」

「何が」

「自分で言うのもあれだが、お前は"国を守る"って義の下に私たちと戦った。なら私はまだしも、百鬼夜行を引き起こした華扇はどうなる?お前はこの後どうするつもりだ?」

「別に、何も」

「…おいおい、そりゃあ」

 

 甘いだろう。

 勇儀は空を見上げ、体育座りのままぼけっとする萃香を見て、喉まで出掛かったその言葉を飲み込んだ。

 人間と鬼、その鬼退治という古来からのコミュニケーションにも共通する、勝者の言い分を敗者は黙って聞く。その理を思い出したから。

 萃香の言葉を肯定も、否定もせず。

 胸から今も発せられる、鈍い痛みに浸りながら、ただ負けた自分の立場を弁え、そして時に身を任せた。

 今の萃香には、彼女らをどうこうする権利こそあれ、それをする動機は既になくなっている。

 激しすぎた、楽しすぎた喧嘩の後に、恨みつらみを持ち込むのは無粋だと、そう思ったから。

 萃香は問う。

 

「そういや勇儀。お前は何で華扇についてここに来たんだ?」

「……さぁ、ね」

 

 それは、三重奏(領域展開)を始める直前にも言っていた「漠然とした渇き」だった。

 萃香からすれば、肯定こそしないものの、華扇の行動理由、そして彼女がいつの間にか「人間嫌い」になっていたのも、理解ができる範囲だった。

 いや、今だからこそ理解できる。と言った方が正しいだろう。

 昔、まだ山に閉じこもり、鬼としての力に酔いしれていた頃の自分であれば、きっとその苦しみに共感することはできなかった。

 変わったやつだと、そう切り捨てて終わらせてしまっていた。

 人を知り、愛を知り、弱さを知った自分だからこそ、寿命に、そして短いながらも星のように輝き、鬼の魂を焼き焦がす意思の強さへの憧れも。

 それすらも忘れさせてしまう、無常な時の摩耗も。

 

「華扇は私たちよりも賢いからな。きっとその分私たちより長く考えて、やけになったんだろ」

「そういうもんか」

「お前もだぞ勇儀。ただ華扇と違って、お前は考えるよりも先に身体が動くってだけで」

「はははっ、否定はしないよ。それに…」

「それに?」

「甘えたのさ、私も」

 

 自虐の色を浮かべて、勇儀は言った。

 

「あいつが何百年ぶりに国を落とすと聞いて、私は正直どうでもよかった。…いや、だがそれによる変化は…混沌の奥にある何かは求めていたかもしれない」

「混沌?」

「変化さ」

「変化。変化ねぇ…」

「可能性という名のさ」

 

 不気味過ぎる程に、辺り一帯は静かなものだった。

 本来は湧いて出る筈の妖怪も、そしてそれ以外の生き物も一匹も姿を見せず、足元に虫すらも這っていない。

 山の四天王による戦闘の跡、妖力の残穢が彼らの生存本能を刺激し、一切が寄り付こうとは思えないようになっているからだ。

 

「答えは何時だって、混沌の中で黒く輝いているものさ」

「その結果がこれか」

「ん~…小難しい言葉ばっかで疲れてくるな、あーなんというか。理由というか目的というか、別に明確な何かがあってここに来たというよりかは…」

 

 上手く舌が回らない。

 それは殴られた衝撃が今も、頬からジンジンと熱く伝わるせいなのか。

 あるいは、殴られ折れた歯のせいなのか。

 勇儀は自分の動機でさえ、用意していた筈だった大義名分でさえ、上手く言い表すことができずにいた。

 

「…理由など必要ない」

 

 そんな勇儀に対し、吐き捨てるように彼女は言う。

 萃香を挟んだその隣、勇儀とは正反対の位置に、頬を赤く腫らし、不機嫌そうな態度のまま、今の今まで無言を貫いていた四天王。

 華扇だった。

 

「戦いへの期待も、それで得られる見分も、結局は後付けの遺言だ。虚勢もあった」

「そういうもんかね」

「結局はそうだ。戦う理由など作るだけ無駄、目的も過程もだ。ただ鬼は…私たちは…今この場では"鬼同士で戦った"という事実のみがあればいい」

「…ふーん?」

「…だから。だから人間なんて嫌いなんだ」

 

 勇儀はよくわからないと。

 萃香は反応をせずに、不貞腐れたような華扇の姿を、静かに見つめていた。

 

「血縁者の復讐。武の頂を目指した者、腕をもがれようとも諦めない、百折不撓の輝きも、結局時が過ぎれば消えていく、忘れてしまう。だから嫌いなんだ、無駄に命を捨てる人間が、何かを残す為に、託す為に死ぬ愚か者が」

「……」

「何人いた?何人と共に酒を、拳を分かち合った?…その内、何人を今でも覚えていられるというのか」

「ははっ、なんだ。お前人間がそんなに好きなのか」

「…うるさいぞ萃香」

「っはははは!」

「勇儀!お前は笑うな!!」

 

 理由なんて無粋だ。

 華扇の吐き出した言葉を揶揄い、萃香は改めてそう思う。

 義のぶつかり合い、本能のぶつかり合いと渇きによる熱で浮かれた理性も。――倫理も、整合性も必要ないと思っている。

 ただ喧嘩をした。

 殴り合って、本気をぶつけ合って。

 互いにボロボロになって、そしてこうして笑い合う、それだけでいいのだ。

 

 気持ちをぶつけ合う。

 

 人間が誰でもできる、拳なんて使わずとも交わせる絆を、今日この日にやっとそれができた。

 不器用なくらいに乱暴で、愚直で自由に生きてきた。そんな鬼が、この日にやっと変わることができたのかもしれない。

 変わっていないと断言するには、あの喧嘩は楽しすぎた。

 その目的がどれほど、悪意に満ちたものであったとしてもだ。

 ただ、こうして山の四天王伊吹萃香が勝利した。

 その事実のみが答えであり、今日の問題の解答でもあった。

 ――ただまぁ。

 

「流石にそれなりのツケは払わなきゃなぁ?華扇?」

「…チッ、あの殴りで済ませてもいいだろ」

「いーや駄目だ。言ったろ?私は義の下にお前と戦ったんだ、ならそれ相応のことは…詫びってもんをしないとな?」

「…フン。わかってる、それに勝者はお前だ、敗者の私に命令する権利がある。お前の命令なら、泥でも足でも啜って舐めてやるよ」

「よし」

 

 華扇は鼻を鳴らしつつも、萃香の言葉を受け入れた。

 奸佞邪智の生き様を貫こうとも、たとえ悪鬼としての矜持があろうとも「敗者」として、ちゃんと弁えていた。

 そして、萃香は今まで以上の笑みを。

 ニタァという効果音の付きそうな凄まじい笑みを浮かべて。

 

「ちなみにお前もだぞ?勇儀」

「はははは…は?え。いや待てその右手は何だ?まさかとは思うが」

「ハハハ」

「…あ、拒否権ない感じ?そういうやつ?でもちょっと待てまだ治りかけの胸は不味」

「――フンッ!」

「はうっ」

 

 治りかけの胸に一閃。

 全快の状態のそれとは比べ物にならない程、威力もお粗末な拳骨擬きが炸裂する。

 角と同じかそれ以上、一時的とはいえ新たに生まれた弱点を突かれ、勇儀はあっという間に失神した。

 その様子を、華扇は自分の事など忘れてゲラゲラと笑っている。

 数百年ぶりの、親友という関係の三つ巴の再会。

 戦場の静けさはそのままに。

 

「…おや」

 

 凄まじい重圧が肌を刺す。

 ある方向から感じる僅かな違和感。

 それを、彼女たちは他人事のように見ていた。

 

「…チッ、弱体化していても相変わらずか」

 

 華扇はその気配――八坂神奈子の神力に、再び不満そうな顔をして。

 

「…頼んだぞ」

 

 萃香はそれと相対する神の気配――天弓千亦。

 ではなく。

 ――今も()()()()をしているであろう、あの土着神に向けて、そう呟いた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 実のところ、千亦がわざわざ神奈子と戦う理由はない。

 ――いや、正確にはなかったと言えるだろう。

 千亦は市場の神であり、物質に宿る「所有権」を司り、そしてその委託によって信仰を得るという、他の神々とは違った方法で力をつける。

 神代の者でありながら、神秘で溢れた古代ではなく、魑魅魍魎で溢れた神代でもなく。

 信仰が薄れ、幻想の否定が働く現代に近づく、つまり文明が発展するにつれて成長を続ける「市場」という箱庭に閉じ込められた神。

 それが天弓千亦。

 故に、聡明な彼女は考えた。

 今のまま、現状に甘えた停滞の状態を続けていれば、きっとそのうち自分には終わりが来る。

 人々が市場から離れ、個人間での契約と売買によって、千亦の根幹である「所有権」の変化はなくなってしまう。

 だから考えた。

 だから、作った――

 

「それがこれか」

 

 こちらを見下ろし、その手に持った小さな絵札。

 厚さは数mmで、そしてその絵札には間違いなく自分自身の、千亦の神力が込められた品。

 神奈子はそれを、面白そうに笑いながら――握り潰した。

 

「くだらん。先見の明があるのか、それともないのかはっきりしろ。無力な民に異能を与えることが、一体どれほど危険かわかっているのか?」

「"月を指さすようなもの"よ。あなたはそれを、人間が必要以上に力をつける未来を不安に思ったのでしょうけど。――私からすれば些末なこと、むしろ杞憂に終わると断言するわ」

「――なに?」

 

 天弓千亦の最高傑作である新通貨、アビリティカード。

 それはこの世に存在する生き物全て、妖怪から神、そして人間の異能(程度の能力)を模倣し、蓄え、いつでも使えるようにすると同時に"通貨"としても機能する新システム。

 勿論このことを諏訪子は知らず、千亦が彼女の見ていない隙に、こっそりと人間たちに広めていたものだ。

 本来は妖怪を恐れ、そして対峙しただ食われるのみの、あまりにも無力で醜い生き物。

 人間はだからこそ、妖怪や災害から身を守る為、守ってもらう為に神を信仰する。

 しかし力を手にした後は、自分で敵と戦う力を手にしてしまえばどうだろうか。

 人間は神に頼るよりも先に、持っている力を振るって問題を解決しようと動き出す。

 果たして、そこに「人間から神への信仰」とやらは存在するのか?

 

 否。断じて否。

 

 そんなのは早すぎる。

 何百年と何千年をかけて、やっと滅びる神という上位者の絶対が、アビリティカードによってあまりにも早い末路をもたらすことになる。

 神霊である神奈子はまだしも、もしそのような未来が訪れれば、八百万の神々は皆が例外なく、その存在を完全な無に戻してしまうだろう。

 しかしあくまでも、神霊も結局は「死なない」だけで、消えてしまうことに変わりはない。

 風に吹かれて消えそうになり。

 誰にも見られることなく、知られることなく薄らと、惨めに孤独に生きていく。

 それが、果たして本当に「神」と呼べるのだろうか?

 それは千亦も同――

 

「…あぁ、なるほど」

 

 いや、違う。

 千亦は違う、市場を司る彼女だけは違う。

 神でありながら、幻想に位置する超常の者でありながら、誰よりも人間に近い位置に存在する彼女だけは別だ。

 神奈子でさえ逃れられぬ、信仰を失うという衰弱の未来は、人から忘れられるという破滅は彼女にはない。

 千亦は「市場」そのもの。

 人が人と物品を交換し、売買というコミュニケーションを取るだけで、彼女はずっと生きて居られる。

 つまり、そういうことだ。

 

「洩矢諏訪子も…いや、私も弱体化…もしくは消失させるのも目的か」

「言ったでしょう?"月を指さすのと同じ"だって」

 

 神奈子の言葉を否定せず、千亦は続ける。

 

「異能を手にし、増長した人間たちの反乱。混沌で満ちる世界は不安でしょう、でもそれは一時的なもの。暴力で物を支配できる時代は終わり、市場のみがそれから解放された、唯一の安寧の地に変化する」

 

 アビリティカードで溢れた世界は、今の時代とは比べ物にならない混沌で満ちることだろう。

 妖怪が人間を襲い、人間は妖怪を恐怖する勢力図。

 それが変化し、むしろ妖怪たちは逆に狩られる立場に追いやられることとなる。

 神は介入する余地をなくし、人は神を必要としない。

 いや、それだけで済むならどれほどマシだろうか。

 力を手にした人間、それがもたらす悲劇は想像もできないものだ。

 ――絶対に戦争が起こる。

 手にした異能を見せびらかしたいと、愉悦のままに暴れ出す人間も、絶対に現れる筈だ。

 その小さな火種を元に、その争いの業火は千亦にも止められない。

 ………

 …いや、違う。

 ()()()()()()()()()

 

「アビリティカードは決して暴力では奪えない。私の監視下において、市場という唯一認められた安寧の地において、唯一それを手に入れることができる新たな命綱。決して奪えず、決して奪われず。利害の一致によって敵も味方も、全ての生物が市場を訪れ、その場でのみ争いを忘れることができるのだから」

自作自演(マッチポンプ)か。自分で争いの火種を撒き散らしておいて、後から自分の下なら大丈夫だと囁くつもりか?」

「後々の話よ。今はその必要がないからね」

 

 ――彼女は危険だ。

 

「後々……」

 

 神奈子は千亦の言葉を、まるで理解していない。

 後々。そう何度も呟いて、首を傾げてうんうんと唸り続け、そして獰猛に笑う。

 

この後があると思っているのか?

 

 それを、神奈子の身体から溢れる神力を前にしても、千亦は彼女に負けぬ獰猛な笑みを浮かべて、言う。

 

「はっ。――調子に乗るなよ若造

 

 次の瞬間、千亦の立っていた場所を巨大な()()が貫いた。

 千亦はそれを難なく避け、マントを翻しながら跳躍。

 その瞬間、地面に突き刺さった氷柱に亀裂が入り、バラバラに砕け散った途端、それが再び形を作る。

 神奈子の身体を乗せた、蛇のようにうねるその動作。

 千亦はそれを見切り、再び空中で回転すると共に真横に回避。

 マントが空気を裂き、音を奏でながら再び千亦は着地。

 蛇のように動く氷柱の上から、再び千亦を追うように飛び降りた神奈子はそのまま、飛び出した勢いに任せた蹴りを放つ。

 頭と胴体を切り離す勢いのハイキック。

 それを千亦はしゃがむように避け、そして隙を突いた足技を繰り出した。

 神奈子の胴体、人間であれば肋骨を砕き、心臓と肺を木っ端みじんにする、玉蹴り(サッカー)で使われるフロントキックに近い形のその技を。

 だが。

 

「べっ」

 

 神奈子は舌を出して笑う。

 間違いなく胴体を狙った。

 だが実際に千亦の足が発する感触は、まるで柔らかい鉄。

 固く、しかし布のように相手を包む矛盾した性質を持った何か。

 そして見てみれば、神奈子が先ほど操作していた氷柱、それを再び分解し、そして正方形に再構築していたのだ。

 

「全く面倒ったらありゃしない…」

 

 たとえ本来の肉体を失おうと、それでも彼女は軍神。

 その戦闘技術も、神力も、全ては据え置きのもの、決して簡単に決まる勝負ではない。

 ならば、唯一の勝機は――

 

「ごめんあそばせ」

 

 千亦の両手から次々と現れるカード。

 それは先ほど神奈子が持っていた物、アビリティカードの原型である「空白のカード」である。

 模倣した力も、属性も宿っていない未完成のもの。

 それが何百、何千と増殖を繰り返していく。

 津波が神奈子を襲う。

 津波という名の、千亦の神力を纏った殺傷力の高まったカードだ。

 一見すると、それには抜け道など存在しないように思える。

 だが相手は神。

 そしてそれは、本能と敵意に理性を焦がされた並の妖怪と違う、思考という名の下に放たれた攻撃。

 必ずそこには穴がある。

 本人でさえ自覚できていない、無意識の攻撃密度の偏り。

 そこを突く。

 神奈子は距離を取る為、後方に跳ぶ。

 しかし千亦もすぐにそれに気づき、カードの弾幕を更に強めた。

 それは威力ではなく、速度。

 神奈子に決して回避という選択を取らせないよう、速度を上げたカードたちは、神奈子に向かって一直線に駆けていく。

 

「――フロストカーム」

 

 神奈子が右手で神力を練り上げ、そしてそれをチルノの持つ異能「冷気を操る程度の能力」で限界以上に冷やし、過冷却状態にする。

 いくら妖精の中でも最強とはいえ、しかし妖精でしかないチルノの力では、神奈子の練り上げた神力を凍らせるのは不可能だ。

 だが神奈子は、自身の莫大な神力量と出力でそれをカバーしていた。

 本来であれば必要のない、能力の発動にも神力を使い、更にそれとは別に攻撃用にも神力を練る、無駄の多い戦い方。

 しかしその無駄でさえ、戦術として成り立つのが…この八坂神奈子という神の持つ、多すぎる神力の恐ろしさ。

 同時にその無駄は、戦いにおいて必要ではないそれを"儀式"として昇華し、その出力を更に練り上げるまでに至る。

 神奈子の身体に触れるその瞬間。

 目前に広がるカードの弾幕のほとんどが凍り、一切の機能を停止した。

 それでもまだ完全には凍り切っていない、神奈子から遠く離れた位置にあるカードが震え。

 

「…待ちなさい」

 

 そして、消えた。

 カードが限界を迎えたわけでも、神奈子が消したわけでもなく。

 千亦が自分でカードの弾幕を仕舞った影響だ。

 突然の行動、しかし神奈子には思い当たる節はない。

 千亦は問う。

 

「何それ?その子(チルノ)の能力?」

「ああ」

「乾は?」

「乾()使わん」

「………」

 

 表情が消えた。

 今までの、得意げな笑みも挑発するような色もなく。

 

「………」

 

 目の前に立つのが、あの千亦だとは思えないくらいの。

 

舐めてんの?

 

 同時に、千亦は駆け出す。

 その突然の変わりように、一瞬反応が遅れた神奈子は、それを迎え撃とうと右手を振り――

 

「手ェ抜いた状態で、そんな舐めた態度で――!」

 

 それよりも早く、千亦は神奈子の背後に立っており。

 

「――私に勝てると思ってるの!?」

 

 その蹴りが、神奈子の背中に直撃した。

 反応が遅れただけではない。

 背中に迸る痛み、そしてピシッと何かが壊れたような音がする。

 それが、背中に切り傷ができた故だと気づいたのは、何mも吹っ飛ばされ、やっと受け身を取って立ち上がった頃であった。

 

(油断していたとはいえ…いや違う、ただ力を無防備に喰らったからじゃない)

 

 違和感を覚えるその攻撃。

 それに推測を続けながらも、再び目の前で津波のように襲い掛かるカードの群れを、神奈子は見る。

 しかしそれが罠であることを、彼女の長い記憶が、戦闘で培った勘が叫んでいた。

 そして案の定、津波の上から突き破るように、千亦が飛び立ち、そして落下の勢いに任せた蹴りを放つ。

 両腕を交差させ、防ぐ。

 反撃の為に掴もうとして――蹴りの反動を利用し、空中できりもみ回転をする千亦の姿が見えた。

 

 その刹那。

 千亦の紫色のブーツが。

 その回転を利用し。

 

「よそ見」

 

 神奈子の顔面をぶち抜いた。

 今までの神奈子の蹴りが巨大な槌だとするなら、今の千亦の蹴りは鋭利な刃と言えるだろう。

 普通に蹴っても起きないそれ。

 絶対にありえない筈の、刃物での切り傷と全く同じ痛みの、深さの頬の傷が、ただのブーツの風圧で再現されていた。

 ――軍神・八坂神奈子に1000年ぶりの緊張が走る。

 

(こいつ…体術もいけるクチか!いや――体術だけなら()()()()()…!)

 

 千亦の蹴りを喰らい、頬から血を流しながら。

 神奈子は笑った。

 それは、先ほどまで見下していた己への戒めも込めた。

 そして、自分に対し一つの分野で、届くどころか超えてみせた目の前の敵に。

 

「あぁ…本当に悔しいよ」

 

 もし本来の肉体があれば。

 もし自分の身体で、慣れた身体で動ける状態であれば。

 もし。――能力が使()()()()

 

「でも、今この光景が現実だ」

 

 もしもなどありえない。

 神奈子は今、自分の意思で、自分の目的の為に動き、そしてこうして対峙しているのだ。

 そこに言い訳など必要ない。

 ただ、勝つ。

 今の不利も。

 相手にのみ与えられたアドバンテージも。

 慣れない身体、慣れない能力のみで、ただ挑戦者として勝つのみ。

 神奈子は両腕を動かし。

 

「アビリティカードも、市場の存続も。解決するべきことは山ほどある…が」

 

 左腕を上に。

 右腕を下に。

 拳を強く握りしめ、そして何かを回すかのように。

 腕を引き、拳を握る動作と連動させて。

 

「――慣らし運転にはちょうどいい」

 

 パチチッ――

 命が。妖精の個で完結した輪廻転生そのものが。

 ――妖精の復活能力そのものが。

 神奈子の頭上で氷となり、方陣として浮かんでいた。




 天弓千亦
市場の神という特性上、神様への信仰ではなく「市場での取引」さえあればいくらでも生きていられる
つまりアビリティカードを発展させて人間を強くすると

①アビリティカードを皆が使う
「暴力では奪えない」特性上、必然的に市場が活性化するのでちまたんは無限に強くなる

②アビリティカードが流行る
力を手にした人間はあらゆる神に頼ることがなくなる。つまりちまたん以外の神、一言で表せば「邪魔者」も信仰不足で始末できる

③万が一は「所有権を失わせる程度の能力」でカバー
力を手にし思い上がった人間の反乱も、千亦の能力があれば簡単に抑えられる。アビリティカードに依存する人間では、素の実力も大したことはない

という正に一石三鳥なのだ
自分で書いててあれだけど滅茶苦茶物騒な計画過ぎる()

 八坂神奈子
アビリティカード
"紙"は駄目だろ(ガッ
危険な大百足倒しにやって来たらもっとやべーのがいた
ちなみに乾は使わないじゃなくて「使えない」使わない発言はブラフ

 適応はないです(ナズーリン並感)安心してください(蘇生しないとは言ってない)
 明日は五時半に出せるかも

呪術廻戦はどこまで知ってる?

  • 最新の単行本(人外魔境)まで
  • アニメの内容(渋谷事変)まで
  • あまり知らない(領域展開は知ってる)
  • 全部わかる
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