【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい   作:洩矢廻戦

6 / 147
 博麗大結界の周期を普通に把握してる妖精…それがチルノです。
 うーん今回もギリギリ…ちょっと少なめ7000文字です(後で加筆するかも)
 うえーーこ…怖いよーーっ7000〜8000文字で毎日投稿はキツすぎるよーーっ
 ……しばらく休憩します。


6話.秘封スキマハザマ

「で、この子は私が支配下に置いた祟り神…ってわけよ」

「おーっ!ひんやりしてて気持ちいいぞ!」

「氷の妖精がそれ言っちゃうんだ?」

『も も も も …』

 

 ぷにぷに、つんつん。

 禍々しい気配を必死に抑えているからか、心なしか身体が強張り、地面に腹をつけた姿勢。そんな金魚の祟り神の身体を、チルノは恐れることなく、背中に飛び込んで、指で突いて遊ぶ。

 たまに力加減に失敗してしまうのか、チルノの指が必要以上に深く食い込み、その度に、祟り神は『ぐえっ!』とうめき声を上げる。

 それに、チルノは大笑いして。

 

「おーっ!こいつ身体ぶよぶよだぞ!」

「おっホントだ、外から触るのも悪くないねぇ」

『も も … お" っ』

「あはは!こいつ面白いぞ!」

 

 ぼよん、ぽよん。

 2人で仲良く、祟り神の背に座り、そして寝転んで遊ぶその姿。

 だが、チルノという妖精はまだともかく、今こうして笑っている彼女は、何を隠そう土着神。

 その危険な組み合わせを、ドキドキしながら心配そうに、見守っているのは大妖精だ。

 

「あわわわ…チルノちゃん大丈夫かな…怒ってバクンッて食べられなきゃいいけど…」

「あ、アレの中は結構快適だからさ、食べられても別に気にしなくていいよ」

「食べられるかもしれないんですか!?」

「お~っ!大ちゃん見てよこれ!手突っ込んだら外から見えない!」

「あああああ言った傍からあああああっ!!」

 

 わいわいぎゃーぎゃー。

 祟り神の口に右腕だけを突き刺して、大妖精にキラキラとした目を向けるチルノと、そして再び叫ぶ大妖精。

 声を張り上げて騒ぐ、妖精2人を眺めながら、彼女は右手で、祟り神の頭を撫でながら、微笑ましいものを見るような顔をしていて。

 それらを、賑やかなものだと、てゐは隣で慌てふためく大妖精に、目線を向けて話しかける。

 

「ま、あいつは見ての通りさ。めちゃくちゃ物騒だろう?」

「あ、はい…正直鳥肌がちょっと…」

「同感」

 

 二の腕を摩りながら、大妖精はチラリと、控えめな視線を前方に向ける。

 その先では、祟り神の口を両手で開き、その内側を、歓声を上げながら観察しているチルノ。

 

 ――それを真横で観察している、あの土着神。

 

 顔、そして態度や言葉の節々に悪意はなく、本心から向き合おうとしているのは事実だろう。

 だが、自然の生命力を知覚し、そしてそれから生まれた妖精からすれば、それでも恐ろしいことに変わりはない。

 現に今も、自分たち以外の妖精は、1匹も姿を見せていない。

 

「悪い人…じゃないのは、なんとなく…わかるんですけど」

「ま、それはそれとして存在が不吉すぎるんだよって話よ」

「あ、はい…」

 

 ――意外とバッサリ言うなぁ。

 大妖精は、今も腕組をしながら、目の前の土着神に文句を垂れ流す、兎少女の横顔を見ながらそう思う。

 妖精。それは自然の持つ力そのものだったり、太古の昔から、妖怪が存在するよりも前から地上に居たり…など。

 人によって、その認識が異なる…強いて言えばよくわからない、でも身近な存在だ。

 だが、大妖精、そしてチルノとてゐは、別に印象に残る出会いをしたとか、そういうのがあったりはしない。

 気づいたら顔見知りだった、所詮はこの程度であり、会ったらあいさつをして話をする…それくらいの関係だ。

 すると。

 

「おーい、一応それ祟り神だからね、調子乗りすぎるんじゃないよ」

 

 そう、てゐが声をかけると、チルノはバッと顔を上げて、今更てゐの存在に気づき、「あーっ!」と声を上げた。

 その騒がしい様子に、てゐは片手を上げた、適当な仕草で返しながら、話しかける。

 

「やっ、久しいね」

「お前!海渡れない兎じゃん!お前も一緒にいたのか!」

「てゐだよてゐ、因幡てゐだ。いい加減覚えな」

「渡れなゐ!」

「ひっぱたくよ?」

 

 ――そういえば、いつ会ったっけ。

 言葉には出さないが、チルノもてゐも、他ならない大妖精も、この関係図の始まりを知らない。

 だがそれでも、互いのことはそれなりに知っている。特に忘れっぽいチルノと違い、大妖精は今のてゐに、ある違和感を覚えた。

 こうして、チルノと適当に話す彼女も、いつかは覚えていないが、確かに数回ほどだったが、大妖精が見た、ありふれた会話と同じもの。

 あれほど、厄介事と危険が嫌いだった彼女が、だ。

 ――竹林に籠り、静かに暮らすのが好きだった彼女がだ。

 

「そういえば、どうして竹林から出たんですか?」

「ん?あぁ、あいつの散歩に付き合ってやってんの」

「へぇ、散歩…………散歩?」

 

 ――え?本当に?

 そんな言葉と表情を仕舞い込んでから、大妖精はゴホンと咳を1つ零して。

 聞きたいことはある…が、あくまでも間接的に、大妖精はあくまでも冷静に、そして平然とした態度で、てゐに聞き返す。

 にこりと、笑いながら。

 

「へぇ~、散歩ですか~?珍しいですねぇ~」

「いや演技下手。普通に聞いてもいいから」

「うっ…」

 

 そうだ、腹の探り合いで、彼女には一切敵わない。

 寿命、そして純粋な生命力。それを差し引いてもなお、そこに存在する確かな経験値の差。

 大妖精がこっそり、彼女を慕う理由の1つで。

 てゐは、大妖精の顔を見て、話す。

 

「気まぐれ…かねぇ、あいつの力があれば、置いてきた兎たちの安全の心配もいらないしね」

「は、はぁ…」

「たまには身体をしっかり動かさないとね、あぁでも…」

 

 てゐは、そう言葉を濁した後に。

 気恥ずかしそうにポリポリと、頭を掻きながら、続けた。

 

「…ま、気まぐれってのもあるけどさ。純粋に…」

「純粋に…?」

「あいつ、国を作りたいんだって」

 

 その、てゐが彼女を見つめる視線には。

 どこか、優しい期待に満ちた、柔らかい光が宿っていて。

 

「面白そうだって、思ったからさ」

 

 初めて見たその表情に、大妖精は、言葉を失うしかできなかった。

 あの、国津神からの祝福を受けた、あの因幡てゐがだ、これから生まれるという国に、期待の目を向けるなど。

 

「知ってる?あいつ祟り神を文字通りさ、道具としてガンガン打ち付けて使うんだよ」

「は、はぁ…?」

「あいつのことだから…祟り神に農作業をやらせてもおかしくないかもねぇ」

「え、えぇ…」

 

 流石にそれは…と言いかけたところで、大妖精は現在進行形で、自分に忠誠を誓っているであろう祟り神の、その背中の上で飛び跳ねている様子を見て、あぁ…と声を漏らした。

 本当に、彼女ならやりそうで怖いなぁ。と、大妖精は思う。

 だが、もしてゐの想像するそれ、彼女が作る国とやらが本当に君臨したら――

 

(…まぁ、ちょっと気になるけど…)

 

 でも、それはそれとして怖いなぁ…と、再三。それを考えながら首を振って。

 

「でも…その、祟り神なんですよね…?」

「まぁね。あいつの中に…本当に大量にいるよ、大量に」

「…………」

 

 ばいんばいんと、その弾力性のある身体を持った、目の前の巨大な金魚。

 それでも、目の前にいるのは神。災いをおびき寄せ、そして人を呪う陰の厄災そのもの。

 流石に、八百万の神々の神格には程遠い、が。それでも並みの妖怪を超えた、圧倒的な存在感を持っている。

 それを支配する彼女もそうだが、いくら敵意がなく、笑って受け入れてるとはいえ、これ以上ぞんざいに扱うことは――

 そう、思っていた時だった。

 

「ねぇねぇ!」

 

 ぽよんぽよん…

 段々と弾性による勢いをなくし、そしてぺたんと座り込むチルノが、隣に座る彼女に向かって、話しかける。

 

「アタイもこいつの中入りたい!」

「あ、いいよー」

 

 ――軽っ!?

 その、あまりにもあっさりとした承諾と態度に、大妖精は声を抑えきれず、そう吹きだした。

 

 

 

 


 

 

 

 

 金魚の祟り神は、その身体が水で構成されている。

 一見透明で、そして水特有の屈折した、向こう側の景色が見えるような仕組みになってはいる…が、それは内側からの話だ。

 この祟り神の口内は、外からはまるで見えず、祟り神の身体の向こうを、口内の様子は見せずに、その景色のみを第三者に見せる。

 そして、何より温度が心地よい。

 

『も も も も …』

「おーっ!やっぱり中はひんやりしてるんだな!」

「そうそう、快適でしょ?」

 

 頭上から差し込む、オレンジに輝く夕日の光。

 祟り神の口内、その心地よい温度に調整された空間から見える、通常よりも高い視点で、そして地面を見下ろす形で景色を楽しむ2人。

 チルノは地面に穴をあける勢いで、両手を置いてじーっと硬直状態になっていた。

 

「羽も使わず、ここまで飛んだのは初めてだぞ!あんなにちっちゃいんだな!」

「そっか、楽しい?」

「楽しい!」

「ならよかった」

 

 ニコニコと、彼女は楽しそうにはしゃぐチルノの姿を見つめながら、その笑みを更に柔らかいものにする。

 勿論、これは"彼"の知識の中に、強く根付いていたが故、チルノのことを事前に知り、そして思い出して感慨深くなっているからである。

 しかし、それは第三者からすれば、やはり奇妙に映るもので。

 

「…チルノちゃんのこと、気に入ってるんですかね?」

「あー、やっぱあそこまで…何も恐れずにキラキラ目を輝かせてたせい…かねぇ?」

「うーん…」

 

 そんな2人の様子を、もう自分たちの定位置として受け入れてしまったのか。

 大妖精とてゐは、それぞれ。きっちりとした正座をしながら、そして身体を横に、無防備に脱力した寝姿に分かれて、駄弁る。

 その仕草には、見た目の少女らしさは欠片もない。

 

「そういや、チルノはともかくあんたは…ってそうか、チルノ1人置いていけないか」

「ま、まぁそれもあるんですけど…少し興味が湧いて、付いて行ってみたいなぁ…と思ったのも事実ですし」

「まぁ、見てくれは悪いけど、あいつの召喚は見ていて飽きないよ、見てくれは悪いけどね」

『も も も …』

「…はは」

 

 時折、こうして耳に入る、金魚の祟り神が放つうめき声。

 最初こそ、その奇妙な仕様に苦笑いを零すしかできなかった大妖精だが、数分ですぐに慣れた。

 ちなみにチルノは最初から聞こえていない、というより完全に無視…頭にそもそも概念を入れていないらしい。

 祟り神の声に、眉すら動かさないノーリアクションだ。

 

「私ゃあいつのあーいうとこが羨ましいよ、本当に」

「あ、あはは…」

 

 はぁ…とため息を吐きながら、てゐはある意味、この空間を一番堪能しているであろうチルノに、そう零す。

 隣で困ったように笑う大妖精に視線を向け、そしてすぐに、前方に向けてから話す。

 

「で、結局どうすんのさ?」

「どうって?」

 

 くるりと、身体の向きを変えて、てゐに向かってそう聞き返す彼女。

 再び、てゐは腰に置いていた右手を上に、そして続けた。

 

「散歩つったって、理由は国作りだろう?まずやるべきこととか…」

「そ、まずは人間を探さなきゃね」

「そうそう、人間よ」

 

 ――人間。

 そうだ、この世界で目を覚まし、そして意識がハッキリしたあの日から、彼女は未だ、人間に会ったことがない。

 会う必要もなかった…というのもある、そもそも今の彼女は、土着神洩矢諏訪子でありながら、()()()()()()()()()()

 本来信者を増やし、信仰されることで実体化するはずの神なのに、今の彼女は、何故か最初から確固とした"洩矢諏訪子"として生きている。

 おそらくは"彼"の魂やら意識やら、それらが原因といったところか…と、呑気にそんなことを考えていたのだが――

 

「信仰深い人間をゲットしたいからね、まずは今の人間たちが"何を"求めているのか…それを収集する」

「まぁ、今なら…そうさね、無難に集落を妖怪から守る…だろうけど」

 

 そこまで続けてから、てゐは「これ以上は流石にわかるでしょ?」と言わんばかりに、首を捻って言葉を終わらせる。

 それに、心底わからないといった様子のチルノと、うんうんと頷く彼女。

 ――そう、それでは足りないのだ。

 

「その程度、ちょーっと鍛えた人間がいればどうとでもなる、それに私が支配下に置いた祟り神を…だとしても」

「あの物騒な見た目じゃねぇ…恐怖による民の支配…その第一歩だね」

「そう、つまりは"富"が必要なのよ!」

 

 キランッと、星が輝くかのような、そんな綺麗な瞳を閉じて、器用にウィンクをしながら、彼女は語る。

 勿論、それに対するてゐの反応は、無表情という冷たいもので。

 そんなことは気にしないと、彼女は大げさに手を振って、そして続けた。

 

「農業!天候!食べ物と惰眠が嫌いな人間はいない!まずはそこを狙います」

「あまりにも雑過ぎないかい?」

「え?昼寝嫌い?」

「いや好きだけど」

「なら問題なし!」

 

 ムフフ…と悪い顔を隠さないまま、ニヤニヤと笑う彼女。

 その隣では、先ほどから内容をわかっていないのか、チルノは頭から煙を出して、目をぐるぐるにしていた。

 そんな時だった。

 

「あの…」

 

 ひょいと、少し控えめに上げられた腕。

 てゐの隣で、先ほどからその会話を、静かに見守っていた大妖精が、おずおずと聞く。

 それに、彼女が反応して。

 

「おっ、どしたー?」

「その…人間さんが今、何を欲しがっているか…でしたよね?」

「そうだよー」

「…そもそも、"村"の場所知ってるんですか?」

 

 ――空気が凍る。

 チルノは相変わらずフリーズしており、その変化が顕著に現れたのは、てゐと他ならぬ彼女だ。

 人間の欲を暴く?その嗜好や規則を知る?だがそもそもどうやって?

 今の今まで、人間に会ったことがないのに?

 てゐ?竹林に隠れ住んで数千年。

 彼女は?言うまでもない、つい最近ここに誕生したばかりだ。

 

「…おい諏訪子」

「なんだいてゐ」

 

 てゐの、その表情は冷たい。

 じろりと、祟り神と、そして彼女自身に目を向けて、問う。

 

「…村、1個でも見つかったっけ?」

「…」

「今の今まで、空を優雅に飛んでたよね?」

「…………」

 

 彼女は、ぷいっと顔を背けた。

 てゐはやっぱり…と、ため息を吐き、大妖精に話しかけながら、再び横になる。

 

「…らしいよ、ここから面倒臭いことになりそうだ…」

「あ、はい…」

 

 はああー…と、もう一度大きく、そして彼女に嫌というほど聞こえるように、そうため息を吐く。

 そして。

 

「…大妖精、あんた近くにある村とか知らない?」

「あっ知ってます」

「まぁ知ってるか…仕方ないからもう少しこのまま…は?」

 

 その行動は、一瞬だった。

 

「大ちゃ~ん?」

 

 ――ガシッ。

 彼女の細い腕が、大妖精の肩を。

 

「大ちゃん、マジかい?」

「それ、本当かい?」

 

 ――ガシッ。

 彼女の問い、それと同時に、もう片方の肩に置かれた、てゐの腕。

 

「どこに」

「いる?」

「あ、あの…2人とも…近…」

 

 ――目が、目がギラギラしてる…!

 ぐっと近づく2人の距離に、大妖精は両手をあげながら、なんとか抵抗の意を見せる。

 そして、更に近づく2人。

 

「てゐ、やっぱり付いてきてくれてよかったね」

「同感、これでかなり楽になる」

 

 ニッコリと、2人で顔を合わせた後、大妖精の顔を覗き込みながら、そして笑う。

 嗚呼、逃げられないな…そう確信して、大妖精は乾いた笑いを漏らしながら、諦めて抵抗を止める。

 ――その時だった。

 

『シャーッ』

 

 あの白蛇、ミシャグジ様が。

 何かを伝えようと、彼女たちの足元に現れたのは。

 

 

 

 


 

 

 

 

 月が、空に。

 

「もう…駄目かも……」

 

 いつまで、歩き続ければいいのだろうか。

 

「はぁ…はぁ……」

 

 いつまで、この竹林を彷徨わないといけないのか。

 

「はぁ……は、ぁ…」

 

 いつまで、歩かないといけないのか。

 

「っ、あ…はぁっ!…は」

 

 ――いつまで?

 足にもはや感覚はなく、極度の疲労と、そして空腹による弊害か。

 ついに、視界そのものに影響が出始めた。

 

「っ…ぁ…」

 

 ドサッ。

 なんとか、前に倒れるのを防いで、少女は膝立ちで身体を支え、そして結局耐えきれず、背中から地面に落ちた。

 頭を軽く打ち、それでも、うめき声しか漏らせずに、痛みにのたうち回ることもできない。

 ――嗚呼、土の匂いがすぐそこに。

 

「いつに、なったら…」

 

 ――これは、夢なのだろうか。

 あの時、生じたその疑問が、今や悲しいまでに、有力でかつ残酷な、この現在を証明していた。

 もしかして、ずっとこのままなのではないだろうか。もう二度と、元の場所に戻ることはできないのではないか。

 ――帰りたい。

 

「だれ、か…」

 

 ――もう、気づいている癖に。

 誰もいない、独りぼっちで、今の今までずっと、こうして歩き続けていたじゃないか。

 今更、誰に頼ろうというのか。

 

「…蓮、子」

 

 竹林の中、少女は意識を手放しかける。

 そうしてゆっくりと、目を閉じようとした時だった。

 

 

 

 

「ごめんね」

 

 

 

 

 夜の闇に溶け込むように、その金色の髪が。

 目が、暗い光を放ちながら、妖しく存在感を放っていた。

 ――自分の持つ髪とは、まるで違う。

 

「やっと気づいたよ、随分弱ってるねぇ」

 

 目も、作り物めいたその肌も。

 そして何より、それが放つ濃密な存在感そのものが。

 

「…だ、れ」

「ずうっと迷って、同じ場所を行き来してたんだね。道理で…配置した祟り神たちが、妙な情報伝達をしてくると思ったんだ」

 

 あくまでも淡々と、それどころか、まるで今のこの状況を楽しんでいるかのように、目の前の彼女はそう語る。

 ゆっくり、なんとか力を込めて、少女は右腕を上に。

 目線の先にいる、謎の存在に触れようと、足掻きだす。

 

「あな、た…」

「なに?」

 

 倒れている人間に、この人を迷わせる、恐ろしい竹林に。

 全てが異質、全てが異端。少女は既に理解している、今自分がいる場所が、かつて迷い込んだ夢とは、違うことに。

 それでも、確信が欲しかった。

 

「こ、こは…」

 

 それでも、聞くしかなかった。

 彼女なら知っているだろうか、彼女なら、自分が求めるべきものと、帰るべき場所のことも、知っているのではないか。

 ただの希望的観測、憶測を超えた、ただ縋るだけの、愚かな考え。

 

「ここは…夢の中、なの?」

「夢…そうだね、ある意味。私からすれば幻想(ゆめ)かもね」

 

 ――暗闇が降りる。

 その、少女の視界を覆うように立つ、彼女の金色の目と髪が、更に妖しく輝きだす。

 彼女は、手を差し出しながら、言う。

 

「夢と現実の(はざま)(まじな)いさ」

 

 ――なーんてね。

 彼女は、そう笑いながら続けて、少女の手を取る。

 そして、その身体を、黒い光が包み込む。

 

「気をつけて。外にはもう、気の早い連中がいる」

 

 限界を迎え、少女はとうとう意識を失う。

 だがほんの数秒前に、彼女が紡ぐその言葉の続きと。

 

「歓迎するよ、マエリベリー・ハーン」

 

 その笑みを、最後にして。




 ちょっと早めのご招待。
 あとそろそろ大学の課題がヤバいんで、しばらく投稿お休みです。

呪術廻戦はどこまで知ってる?

  • 最新の単行本(人外魔境)まで
  • アニメの内容(渋谷事変)まで
  • あまり知らない(領域展開は知ってる)
  • 全部わかる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。