【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい 作:洩矢廻戦
①憑依!諏訪子様に転生!以上!(前世とか本来の人格とかクソ程興味ないので書きません)
②なんか敵と戦って過去編開始(古代スタートと言えば天狗の山)
③そして現代へ→ネットも介さずある噂だけが独り歩き?怪しい…突撃ィ(深く考えなくていいです)
④噂は本物でした!苦戦したけど強敵に勝ったぜやったぜ(深く考えなくていいです)
⑤神奈子「私復活ゥ」雑魚鬼「うーっ戦らせろ」萃香「殺す…」
⑥出会って5秒でバトル(とにかくバトル) そして諏訪子様VS神奈子様へ
⑦神奈子様は何故時を渡った?何故鬼たちは戦った?(動機はあえて明確にしてないので読者の想像に委ねます)
⑧結論「細かいことは気にせずバトルを楽しめ」以上!
あと誤字報告毎回助かってます
――あーこりゃ凄いね、瘴気というか恨みというか…なんというか食欲が。
――グ。ルル。ルルル…!
――あはは…その顔で言語能力を失ってるのすっごいギャップだわ、ウケる。
――私ハ…血ノ、味ガ…!
――…天魔。こいつさっきからずっと同じ事しか言ってないんだけど??
――千亦の様子を見に行く前、拘束はキツめに設定したのですが…それでもお構いなしに這って来る程です。よほど空腹に耐えられないのでしょう。
――ふーん…まぁいいや、とりあえず…
――…お願いします、諏訪子様。
――私からも頼…お、お願いします。その…百々世は、親友なので。
――…オッケー!じゃあ早速やっちゃおうか!習得したてほやほや、対神奈子にとっておいた技を…
――血ノ味ガ!好…
――洩矢の鉄の輪・??…
「申し訳ございません、神奈子様」
洩矢諏訪子との
その最初の会話は、八咫烏の謝罪から始まった。
跪き、頭を下げて八咫烏は言う。
「あと一本…どうしても儀式に相応しい"
「そうか」
「…罰は如何様にも受けます。御許しを」
「いい、私もなんとなくわかってたからね」
「…それは」
神奈子と諏訪子の契約。
その内容は、決戦の時まで互いに不干渉を貫き、そして器となっていた妖精…チルノと人質であるマエリベリー・ハーンの解放である。
勿論縛りは成立し、そして破られることは万が一にもありえない。
八坂神奈子の恩恵は「この場を見逃し一か月の猶予を貰う」。
洩矢諏訪子はそれに対し「八坂神奈子を見逃す代わりに、チルノとマエリベリーを返してもらう」という対価を求めた。
そして契約は成立し、互いの首に鎖を巻き付けた現状が完成した。
ありえない話だが、もしも諏訪子が縛りを破り、この与えられた猶予の間、一か月の間に神奈子を害そうとすれば、その代償としてチルノは勿論、マエリベリーも死亡する。
それは神奈子も同じで、仮にチルノを諏訪子に返さなかった場合、神奈子はこれから先の一生。文字通り永遠の時を不完全な身体で生きることが確定する。
どれだけ準備をしようと、どれだけ努力をしようと決して、かつての身体を手にすることは叶わない。
それが縛り。
それが、互いの命を懸けた契約の楔である。
「諏訪子にはああ言ったが、正確には復活の為の時間…ではなく、この御柱を用意する為、見つける為の時間だ」
「…それは」
「そう、だからこそ君がこうして、たった数日で見つけてくれたのは…いい意味で裏切られたよ」
神奈子の身体を中心とした儀式の場。
それが行われているのは、奇しくも洩矢諏訪子が、チルノと初めて出会ったあの場所、霧の湖である。
六芒星の形で神力を練り上げ、線を作り、そして点は御柱を利用することで効力を発揮。
「線」と「点」だけでは儀式は完成しない。
最後のピースである「円」は、この湖で補う。
だが八咫烏が懸念するのは、最後の一本が足りないこと。
「私の力を、魂を切り分けた御柱は合計で六本。…だが大陸全土を探そうとも、どうしても最後のだけ特別で、感知することもできなかった。でしょ?」
「…はい、申し訳ありません」
「いーよ。そういうことするやつ、心当たりは一応あるからさ」
「…何ですって?」
「まっ、どうせ高天原の誰かだろうけど。それに心配はいらない」
そう言って、神奈子は笑いながら右手に握っていた"それ"を、八咫烏がよく見えるように掲げた。
「一本分程度なら、
最初こそ困惑を隠し切れていなかった八咫烏だったが、神奈子の言わんとすることをすぐに理解し、なるほどと納得の反応を見せる。
それが持つ凄まじい威圧感。秘められた純粋な力の塊、そして
苦笑。
「…皮肉なものだ」
神奈子はそう言って、右手に握るそれを、最後の御柱の代わりとして突き刺した。
「邪龍を滅ぼし、英雄を作った
――神奈子の推測は正しい。
かつて彼女が姿を消した時、大陸全土に分散した御柱。それは合計で六本だが、その内の一本は高天原に置かれている。
神奈子の力が宿るそれは、たった一本あるだけで結界の基礎にできる程の潜在能力がある。
――目が眩んだのだ。
恐れられ、目を逸らしていたというのに、その本人が姿を消した途端に、その凄まじい力の一端を利用しようと、盗もうと企んだ。
だがどうしても切り離せない"万が一"のこともあり、彼らが盗んだ御柱は一本のみ。
しかし一本のみ、八咫烏の気配感知すら届かない天上の世界。それは地上とは訳が違う。
地上で見つけられた一本は、天上では。
八咫烏でも見つけられないのは必然とも言えるだろう。
「…八咫烏。お前は…」
「私は待っています」
神奈子は問う。
この先始まる戦いに向けた準備を、契約を守る為に意識が消える前に。
だが八咫烏は、彼女の答えは既に決まっていた。
――心配は無用。
それは皮肉にも、神奈子と諏訪子の、両者が共通する信頼の形だった。
「…見届けさせてください。あなたの戦いを」
――違和感。
「私ゃ何も言わないよ。あんたも言いたくないだろうしね」
「……でも」
「言わなかった…というか聞かなかったが正しいか。…チルノと神奈子の関係、知らなかったんだろ?」
「…はい」
諏訪大国、
目の前で繰り広げられる徒手空拳。その一連のやり取りを眺めながら、縁側でてゐは続けた。
その相手は、先に神奈子が縛りを成立させる為の材料として、マエリベリーよりも早くに返した大妖精である。
「驚いたか?」
「はい。それは…本当に」
「私も驚いたさ、確かにチルノは特別な妖精だが。…まさか器として神奈子に適応できる程とは」
「あの…私、本当に…」
「わかってるっての、あんたが白なのは悩む必要もない、確定事項。チルノもどうせ細かいことは考えず神奈子の…"友達"のお願いを聞いただけだろうからね、だからはい!この話は終わり」
隣で今も申し訳なさそうに、顔を俯かせたままの大妖精を無視し、てゐは話を終わらせた。
そして再び視線を前に、神社の敷地内中央で殴り合いを続ける、二人の姿に集中する。
最初に片方の一人。――諏訪子が飛び出し、まだ甘さの残る未熟な踏み込みと固めた拳で相手を襲う。
そして、相手は既に最初の踏み込みの時点で、諏訪子の視線や肉体の予兆等から未来予知に近い見切りを見せ、その振り抜いた腕を掴み、投げ飛ばす。
ぴゅーんと軽快な音が聞こえそうな程、諏訪子はそのまま投げ飛ばされ、敷地内の大木に頭からぶつかった。
そして愚痴は続く。
「踏み込みも駄目、殴りも話にならないわね。あんた舐めてんの?」
「うっせー!いいから次!次は当てるから!」
「阿呆。今のあんたじゃ何万回やっても無駄よ、まずは基礎の勉強から、身体を動かす前にまともな知識を付けなさい」
「はい!千亦先生!」
「うっざ」
なんで私が…という誰にも聞こえない愚痴を零し。もう片方――天弓千亦は再び諏訪子と向き合った。
賭け試合の為の広告活動帰り、慣れない作業と疲労の溜まる身体を無理やり動かした代償でへとへとになっていたというのに、やっと休めると思った直後に諏訪子がやって来て、修行に付き合えと命令されたのだ。
勿論キレた。
が。神奈子との戦いを見ていた天魔が、必然的に諏訪子にバレないよう、千亦がこっそりと布教していたアビリティカード云々の話も露呈した結果、それを許す代わりに修行に付き合うこととなった。
正直千亦のやったことは、八百万の神々を遠い未来で滅ぼす、つまり将来諏訪子ですらも消滅するであろう凄まじい計画の為、秘匿死刑案件ではあるのだ。
だが、ぶっちゃけ諏訪子からすればどうでもいい話であり。実際彼女は他の八百万の神と違い、信仰を失うことでは
前世が人間だったからなのか、魂の形が違う結果なのか。
謎は残るが、しかし今はそれほど気にすることではない。
「ほら、まずは最初の踏み込みから…」
「う、うん…」
いくら面倒くさくとも、契約は契約である。
石畳の敷かれた平坦な場所で、千亦は諏訪子の手を握り、そして最初の殴り合いの途中で作った体勢を再現。
顔を近づけ、足を動かしゆっくりと勉強を始める。
「ここ、あんたそれじゃあすぐに倒れるじゃないの。もっと体重移動を意識して」
「えっと…こう?」
「そうそう、その後の択はあなた次第ね、ここで追撃がしたいなら前に…ちょっと行き過ぎ、いつでも痛みを堪えられるようにここは…」
互いの鼻がくっつくレベルで密着し、千亦による戦いのレクチャーは続く。
それを少しだけ、本人も自覚できない程度には機嫌を悪くしたてゐが、ため息を混ぜた言葉を吐く。
「諏訪子。殴り合いの練習もいいけどさ」
「んー?なにー?」
「祟り神は?ハッキリ言ってあんたは、その得意の方を集中して伸ばす方がいいと思うんだけど?」
「確かにそうですね…」
「それは同感だわ、私も」
その言葉に同意したのは、横から聞いていた大妖精だけでなく千亦もだった。
てゐの言葉に続く形で、千亦も聞く。
「そこんとこどうなの?あんたのことだしまぁ…兵力も充分揃ってるとは思ってるけど」
「うーん…そうだね」
千亦の推測は正しく、実際諏訪子は今こうしている間にも、大陸全土に散布させた祟り神を利用し、恐れを集めて兵力を増やし続けている。
だが結局は、兵力と言っても元は妖怪。
しかも相手はあの八坂神奈子であって、そんじょそこらの妖怪を集め、強化したとしてもまともに活躍できるとは思えない。
それこそ虹龍や
そしてそれは、諏訪子も同じことを考えていたようで。
「正直どれも役に立たない」
「遠慮なしに言うわねあんた」
「一番強いのはミシャグジだし…それでも私のサポート…補助くらいが限界かな。だから一応考えたのよ、どうすれば神奈子との戦いで有利を取れるかって」
「それで?」
「まぁ一番いいのは…第二のミシャグジをどこかで捕まえることで」
「は?無理でしょ」
千亦は即座に言い切った。
「あんたさぁ…あんな規格外の祟り神を完全に調伏させてるってのもかなりおかしな話だけど。あれを更にもう一体?まだ元気に生きてるそれを新しく見つけるとか本気で言ってんの?」
「だよねぇ」
感覚が麻痺してしまっているが、改めて考えても「ミシャグジ様」という祟り神はおかしい。
諏訪子の性格や戦闘時の趣味嗜好もあり、彼が本気で戦う機会はかなり少ないが、それでもやはりおかしいのは事実。
何度も言うが、ミシャグジとは中東地方を中心に、現代の世界でも高い知名度を誇る民間信仰の王であり、それを無条件で、
そしてそんなミシャグジでも、神奈子との戦いでは良くて共闘、最悪は終始サポートに徹することしかできないことも、予測のうちであり作戦にも組み込んである。
ミシャグジに代わる、それに続く強い"何か"が欲しい――
そして、諏訪子は既にそれを手に入れていたのだ。
「……でも、何かあるのね?」
「…千亦、そこに立って、百聞は一見に如かずだからさ」
「はいはい。あんま痛いのはやめてよね」
諏訪子が指を向けた先に千亦は移動する。
敷地内の装飾である池や植木から更に離れた、先ほどよりも広い場所に千亦は立つ。
先程の場所でも、人間二人が充分動き回って「取っ組み合える」ような場所だったが、ここはそれより更に広い。
まるで今から、
「よし、じゃあ早速本気で殴りかかって来て」
「…はぁ?本気で言ってるの?」
「いいから早く、本当に大丈夫だから早くかかって来て」
挑発とも取れる台詞である。
先程まで上から目線で戦いを教えていたのもあって、その大胆不敵とも言える態度に、少しだけ千亦は顔を面白くなさそうに歪めた。
「…わかったわ。じゃあ何を合図に始める?」
千亦が尋ねる。
「――もう始まってるよ」
諏訪子が答える。
その顔には、相変わらずの微笑。
だが千亦は諏訪子とは違う。
既に。――その顔には一切の表情が宿っていなかった。
一切の躊躇なく踏み込み、そして遠慮などしない全力の一撃を、顔面に向けて放つところだった。
勿論今までの訓練と同じで、今の諏訪子にこれを避ける技術はない。
千亦の腕が動く直前の加速、諏訪子の顔面に向け、肩を動かすことによる更なる加速、そして最後に腕を振り抜いた直後の、合計三つの加速。
数秒もかからず、諏訪子の顔面を貫――
「あまり近づかないでもらおうか」
貫くよりも前に。
ほんの数秒の間に一瞬見えた。
諏訪子の頭上の空間を。
上空にある何もなかった筈の空間を裂くように現れた、巨大な二つの手が。
千亦に向けて光を放った途端。
――千亦の身体は宙を舞っていた。
投げ飛ばされた?
いや違う。もしそうであるなら、今頃千亦の身体にはそれ相応の触感が、触れられた余韻が残っている筈だ。
そうなると十中八九あの謎の力、謎の手がもたらした結果だろう。
地上から何十mと離れた上空で、自然落下を続けたままの千亦はくるりと回転し、難なく着地してから言う。
「…なるほど、これがあんたの新しい力ね」
「そーそー!どうよ?
「悪くないわ。確かにこれなら充分役立つでしょうね」
「प्रशंसा के लिए धन्यवाद」
「え、何???」
「"褒めてくれてありがとう"だよ」
「…あっそ」
諏訪子のしてやったりという笑み。
そして先ほど披露された力といい、まんまとしてやられた現実に僅かな苛立ちを、そしてそれ以上の期待を込めて。
来たる一か月後に向けて、できる限りの協力をするのだ。
「まっ、準備運動はこれくらいでいいでしょ。…そろそろ掴みなさいよ、諏訪子」
「…押忍!」
決戦は、近い。
風が吹く。
嵐が巻き起こる。波が逆巻く。
夜の帳のその上に、分厚い布を被せたような、視界を遮る濁った膜。
風だ。
嵐だ。
それは天変地異そのもの。
歴史に記されたものの中で、史上最強と称される程の凄まじい変化だった。
――誰が?
彼女しかいない。
湖の中央に、五本の御柱と一本の――によって作られた六芒星と円の儀式。
その中央に佇む、その者しか考えられなかった。
彼女こそが、史上最強の――
「あぁ…ようやく…!ようやく…!」
その変化を、誰よりも早く察知した者がいた。
その少女は――八咫烏は二対の翼を躍動させ、逆巻く風の防御網を突き破り、その嵐を生んだ者の前に跪く。
震える声で、感動を隠し切れない笑みのまま、ただ祝福の言葉を贈った。
復活を遂げた、偉大なる主に向けて。
「…お久しうございます。――神奈子様…!」
その姿は、数週間前の――否。一か月前とは違う。
器として共生していた妖精に引っ張られた、透き通る青髪ではなく、紫に近い。
紫がかった青髪も、そして服も。全てがあの頃のまま。
赤色の半袖、白の長袖も同じだ。
かつて自分を真正面から破り、そして一度列島を制覇した、王としての風格を放つ姿。
胸で輝く「真澄の鏡」も、全てがあの頃から戻って来た。
――八坂神奈子、完全復活。
「………………」
神奈子はゆっくりと瞼を開く。
茶に近い赤眼が、復活を遂げた「乾」を纏った覇王の威圧が。
再び風を巻き起こし、神奈子の身体を覆い尽くす。
笑った。
「っはは…!懐かしいなぁこの感覚…!」
神奈子は笑う。
「やはり、光は生で感じるに限るな!」
最初に、風と雨が止んだ。
何の前触れもなく突如、大地を削り、海を割る程の大音量の轟きが消えた。
そして、それは破壊力を、切断力のみを更に凝縮、圧縮した透明な鎌となり、神奈子と八咫烏以外の広範囲を襲う。
無風地帯となった神奈子の周りに、先ほどまで儀式として使っていた御柱、その搾りかすとなった物が破壊され、そして細かな粉塵となって集まっていく。
そしてそれは、一層強い光を放つと共に、神奈子の神力が注がれたことによって、再びある姿に形成された。
――それは、四本の小さな御柱であった。
儀式で使われた物と比べればかなり小さい。全長は約1m程だが、その分神奈子の神力が凄まじい密度で凝縮されている。
あれを壊す、傷つけるのはかなり骨が折れ…いや、不可能だ。
ましてや、
「…む。チルノはもう行ったか」
「はい。…凄まじい速度で身体から抜けていきました」
「そっか、なんかちょっとだけ寂しいかも」
「……神奈子様、決戦は本日…正確には日が昇ってからですが、場所は…」
「いや、そんなの決める必要はないよ」
「…?」
神奈子は風を巧みに操り、身体を浮かせて湖の面を歩く。
原子レベルの風操作。それは天狗すらも凌駕する神業であり。普通に飛ぶのとは訳が違う。
水面を揺らさず、波紋すら生まずに文字通り水の上を歩く。
ただ自然と行うそれは、決して誰にも真似できない領域のもの。
自然と、一見すると無駄にしかならない行動の全てが、史上最強に相応しい技術の下に成り立っている。
湖を渡り、神奈子は更にある場所に向かって歩く。
その一歩が、足を運ぶ度に、これから始まる至上の戦いを、その愉悦を心待ちにする己を焦らすようで、くすぐったい。
だが、その焦らしすらも心地良いと思えるくらいには、今の神奈子は期待で満ちた表情をしていた。
「わかる。自然とね」
「…左様でございますか」
「…くっくっ。やっとこの時が来た、本当に楽しみだ」
「……」
神奈子はある山の頂上に立つ。
そして、その場に座り込んで一息つくと同時に、その笑みを更に深くする。
目前の山、距離にしておよそ数百m程先の、うっすらと見える小さな影。
「――噂をすれば……だな」
神奈子もまた、これから始まる戦いの火蓋を、心待ちにして待っていた。
「"頑張れ"?」
まず最初に言ったのはマエリベリー。
「"死ぬな"?」
続いてそう言ったのは、てゐ。
「なんかこう…しっくりと来ないわね……」
「今まで何だかんだで、勝つのが当たり前だったからねあいつは」
なんと言おうか、どのような言葉を贈ろうか。
そう悩むマエリベリーとてゐに、苦言を呈する者はいない。
口には出さないが、皆思うことは同じなのだろう。
唯一二人の言葉に同意を示したのは、
「心配しよう、応援しようって感じねぇんだよな、俺」
「…それは確かに」
決戦の時。
日が昇り、縛りによる停戦が終わる数時間前に洩矢神社で行われた、ある会話である。
すっかり憑き物が落ちた表情で、首を傾げる百々世と、その隣に立つ、すっかり傷の癒えた龍。
そして、そんな彼女たちの背後に立ちながら、不機嫌そうに千亦は言う。
「何言ってもあいつは喜ぶわよ。皮肉も効かないだろうしね」
「俺も思う。どうせ何かキツイこと言っても"ニヤニヤ"して終わるだろうな」
「フンッ、どこまであいつのことを舐めてるのか…」
「アッハッハッハ!行き過ぎた緊張をしないのはいいことだ、そうだろ?」
百々世に続き、華扇は千亦よりも更に不機嫌な顔のままに言う。
が、それの背中をバシン!と強く叩きながら、勇儀は面白そうに笑って言った。
僅かながらに怪力乱神が混じったその衝撃に、華扇は表情を歪めて勇儀を睨んだ。
――そして、同時に神社の扉が開き、彼女が姿を見せた。
「…………」
短い一か月だった。
だがその濃密な一か月で、彼女は更に変わったと、てゐは思う。
服も、髪も今までと変わらないが、その身に纏う空気には、以前の緩んだような、油断と慢心が見せる隙がない。
――成長したな。
空気がピリ…と僅かに軋み、千亦や勇儀でさえも気圧される。
段差を下り、ただ無言で歩く諏訪子の前に、てゐのみが立ち向かった。
そして一言。
「諏訪子。少ししゃがめ」
諏訪子は無言のまま、膝を曲げた。
てゐの頭よりも下、畳の香りを纏った諏訪子の髪が揺れて、てゐの鼻腔を擽った。
目を閉じた彼女は、何を思っているのか。
いや、てゐはわかる。
「…
そう言って、てゐは諏訪子の頭にある物を乗せた。
それは、諏訪子の頭をすっぽりと包み込む帽子、市女笠であった。
しかしその上部には、蛙のような目玉が二つ付いており、何とも言えない愛嬌がある。
以前と違い、ミシャグジを本格的に使う国の運営方針に切り替えた一か月。それの猶予は諏訪子に、正確には信仰のブレによる副産物。
ミシャグジの見た目は白蛇である為、蛇といえば蛙という、人間の思い込みによって生まれてしまったのだろう。
諏訪子よりも早くにそれを見つけ、大切に保管していたてゐは、この日初めて、彼女に見せることにした。
「…ははっ」
しばらくポカンと口を開いていた諏訪子。
だがすぐに、帽子を軽く動かし、頭に馴染ませてから、てゐの身体に抱き着いて。
「――行って来る!」
そして、ぐるりと持ち上げてピッタリ三回転を終えてから、再びぎゅーっと抱きしめた。
一か月の、あのお気楽な表情と空気だ。
緊張も程よく、漲る戦意とやる気を込めた歩みを、再び始める。
それに気づいたマエリベリー、百々世、龍と天魔。
続いて人里から洩矢神社へ繋がる巨大な階段、そこで待っていた残りの仲間が。
新たな友達たちが声を上げた。
萃香が、勇儀が、華扇が。
千亦が、袿姫が、そしてチルノが。
大妖精から、諏訪大国に住む全ての人間が。
一斉に。
「行ってこい!諏訪子!」
「アッハッハッハ!しんどくなったら私が代わってやろうか!?」
「フン!負けなど認めないぞ。…もし負ければ勇儀の代わりに私が戦る」
「まっ精々頑張ることね」
「どっちも応援してるわよー!」
「おーい!よくわかんないけど頑張れよー!」
「が…頑張ってください!」
「応援してるわよん」
「Fooooooooo!!!!!!行けーっ!マイ・シスター!」
その声援を。
そして、胸の中で燻る戦いへの愉悦を。
力の発露を求める心を、期待を背負い。
諏訪子は背後にいる彼女たちに、ただ一言返して歩く。
「――応!!」
人外魔境諏訪決戦、その開幕。
――始まる、最強のタイマン!!
洩矢諏訪子
原作諏訪子が鉄輪(50)坤を含む神様特有の力(50)だとするなら。
本作の偽諏訪子は鉄輪(99)坤を含む神様特有の力(1)というクソ脳筋ビルド。
神の恵み不要ッこの非人道的"圧倒的戦闘能力"があればいいっ
ケロちゃんハットを被った「あの姿」で本気バトル。
八坂神奈子
完全復活。皆が知るあの姿で完全復活ッ!
伏黒宿儺しかりチルノ乗っ取り状態で戦わないです、ちゃんと本気の姿で(皆もこれが見たいってわかってる)
注連縄と御柱を背負って「あの姿」で本気バトル
今回のこの話の伸び具合によって、次の投稿時間が6時か10時のどちらかになるかもしれない(伸びなかったら10時投稿、伸びたら変わらず6時に投稿)
ランキング1位取りたいなぁ…
呪術廻戦はどこまで知ってる?
-
最新の単行本(人外魔境)まで
-
アニメの内容(渋谷事変)まで
-
あまり知らない(領域展開は知ってる)
-
全部わかる