【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい   作:洩矢廻戦

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 北へ。
 今週の呪術でテンション爆アゲしたので急遽仕上げました。


69話.⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎【伍】―間章―

「や」

「うっわ」

 

 目の前に立ち、手を振る神奈子。

 諏訪子はそれを見上げながら、顔を顰める。

 限界などない。無限に広がる青の世界で。

 

「ざけんな最悪だよ」

「失礼だな。人の顔を見るなり」

「あんたは神でしょうが」

 

 どっかりと腰を下ろし、神奈子は諏訪子の隣で笑った。

 諏訪子はあからさまに嫌な顔をした。

 

「…てゐとメリーに言っちゃったじゃんか。大丈夫だから心配するなって。…頼むから私の妄想であってくれよ」

「いいじゃん。どっちだって」

「よくない!」

 

 あの感触は忘れられない。

 今まで何度か、死にかけるという経験は味わったが、今回のは一線を越えている。

 本物の死。

 それは諏訪子が想像していた以上に、拍子抜けする程あっさりとしたものであり。

 そんな中である、手ずから葬った最強の亡霊、八坂神奈子が目の前に現れたのは。

 

「どうだった?私との戦いの感想は?」

「いやマジでつえーわ。もう二度と御免だねあんなの」

「ははっ」

 

 本心だ。

 確かに自分の実力、全力のその先をぶつけられる戦いというのは面白い。

 自分でも分からない。知れなかった自分の限界を知れた。

 痛みで鈍る肉体とは逆に、鮮明になる思考のちぐはぐさ、その心地良さ。

 戦闘狂とやらになったつもりはない。それでも楽しいと、もっともっとと確かにその時は思った。

 だが。

 

「…私もかな」

 

 意外にも。神奈子は諏訪子の言葉に同意した。

 そして語る。

 諏訪子の射抜くような視線を横から受けながら、胸中のモヤを吐き出すように。

 

「…へぇ、意外だ」

「出し切ったからね。それに…孤高の侘しさは誰よりも共感できるつもりだ。人も、鬼も、天狗も。……神も」

「………」

「…みんな大好きだよ。寂しくはなかった、でもどこかで線引きがあったのかな」

「………」

 

 花を咲かせることも愛でることもできる。

 花はそこにあるだけで、人にとっては意味のある尊いもの。

 だが結局、あまりにも大きくかけ離れた実力、生物、存在としての差異が、その心に孤独を生む。

 育ての親に対してすら、真の意味で対等に向き合えない、そんな矛盾を孕んだ価値観。

 それを、神奈子は初めて他者に零し、そして憂う。

 それに対し諏訪子の視線は冷たく、呆れたもので。

 

「今は?」

「今?」

「あんたは今も、私を慈しめる?」

「…私にそれを言わせる気?」

 

 一転し、悪戯っぽく笑う諏訪子に対して、神奈子もまた、明るく笑って言った。

 

「鍛えた肉体に身につけた技術。磨き上げた才能(センス)から場当たりの発想と瞬発力。全てぶつけた」

 

 あの時。神奈子は全てを出し切った。

 己の力を、運さえも手中に収めた、常識を逸脱した戦いの境地。

 技術も、持って生まれた力を出し切り、それでもなお成長を続け、そして一度は勝ちの状況にまで持ち込んだ。

 今までの作業とも、当然だった勝利とは違う。

 本気で、全力で掴み取った戦いの結果だ。

 

「あんたには全部ぶつけた。そして全部伝えられた」

 

 ――絶対的な強者、それ故の孤独。

 ――あなたに愛を教えるのは。

 

「本当に。……楽しかったな」

「……ま、あんたが満足したならそれでいいかな」

「私は、ね」

 

 波紋が広がる水面上。

 神奈子はそれを撫でながら続ける。

 

「ここは幻。夢と現実の狭間、人と妖怪。全ての命が通る場所」

「…ふーん?」

「てゐから聞いてない?まぁとにかく…私たちはまだギリギリ死んでないってこと」

 

 神が信仰を元に肉体を、魂を形成する時。

 人が恐れ、憎しみを向けると共に形作られ、育つ場所。

 ここはそういう場所なのだと、そう神奈子は言った。

 

「てゐと前に話した時かな。ここもついでに教えてもらったんだ、まぁ来るのは私も初めてだけど」

「……そっか」

「話を戻すけど」

 

 そう言って、神奈子は諏訪子と向き合った。

 あの戦いの中。諏訪子の攻撃を掻い潜りながら、神奈子は諏訪子に対して、ある違和感を覚えた。

 

「諏訪子。あんたさ、こうなることもわかってたんじゃないの?」

「……」

「私を"ここ"に呼び出して、何かをするつもりだった」

 

 ――神奈子は諏訪子から、本物の殺気を感じなかった。

 あの戦いで、一度も。

 何度も急所を狙い、何度も首を切ろうと、そして最後、あの御業を会得した時でさえ。

 神奈子の身体を両断する時にさえ、一切の殺気は存在しなかった。

 

「あの鉄輪…(ハチ)を心臓に食らってからだ。……触れるという縛り込みとはいえ、ただ衝撃で斬撃を飛ばすだけなら、あんなに威力が上がる筈がない」

「……」

 

 諏訪子は笑って返すだけだった。

 それ以上は何も言わない、聞いてやるから続けてみろと言わんばかりの、意味深な返しである。

 その意図を汲み取って、神奈子は素直に聞くことにした。

 

「あの鉄輪。まだ私の心臓にあるんだろ?」

「あぁ」

 

 諏訪子は同意した。

 そして、それ以上は言わないと言わんばかりに、諏訪子はおもむろに立ち上がり。

 

「こんな言葉がある。――"新しい自分になりたいなら北へ、昔の自分に戻りたいなら南へ行きなさい"ってね」

 

 ――既に繋がり(パイプ)はできている。

 ここからは彼女の意思。

 諏訪子ではなく、神奈子のこれからに委ねた、最後の決断。

 後悔。未練。何も無い、このまま終わりを迎えるだけだった彼女に向けた、誘いの言葉。

 

「神奈子。私と一緒にどっちに行きたい?」

 

 諏訪子は手を差し出した。

 最後の最後に、後世に、現世に残った者たちに委ねるのではない。

 後ろ向きではない。その思いを胸に。

 

「これが私の妄想じゃないことを祈るよ」

 

 神奈子は、差し出された手を握った。

 強く、しっかりと。

 

 

 

 


 

 

 

 

 地上203mより遥か上空、転移用の陣から飛び出す妖怪。

 伊吹萃香を含む、山の四天王が三人。

 反獄王はその魂。摩耗した人格にこびり付いた妖怪への憎しみを胸に、その乱入者を忌々しく見上げた。

 だが――

 

「約束だからね」

 

 伊吹萃香よりも更に早く。

 上空から落下を続け、反獄王の目前に浮かぶ市場の主。

 無主物の神、天弓千亦。

 

「悪いけど行かせないわ」

「知らんな。何もかも」

「そりゃあそうね…!」

 

 反獄王。八咫烏の肉体を包む半透明のベール。

 千亦もまた、再び落下を再開し、弁財天の掌印を結ぶ。

 

「焔星…」

 

 反獄王の迎撃が炸裂するよりも早く。

 千亦の心象風景が現実を凌駕する。

 

「領域展開」

 

()()(げん)(そう)(そう)

 

 そして反獄王の脳内に溢れ出す。千亦の定めた市場のルール。

 ――()()()()()()()

 

 千亦の定めた市場、領域内でのみ完全顕現できる『アビリティカード』の種類、そしてその効果。

 ①クールタイムこそあれ、一度手にすれば何度でも使える使用タイプのカード。

 ②カードを手に、その名を宣言するだけで浮遊物体が身体を守る装備タイプのカード。

 ()効果は絶大だが、その分カードを手にしたら即発動の消耗品、速攻タイプのカード。

 

 反獄王は既に、その力の全容は把握している。

 

「二番煎じの力で私を止められるとでも?」

 

 千亦が宙を漂うカードに手を伸ばすよりも早く、反獄王は八咫烏の身体能力を活用し、千亦の前に降り立つ。

 今の領域の主は千亦だ。

 千亦がいる限り、反獄王は『程度の能力』を使うことができず、必然的に肉弾戦を強いられることとなる。

 八咫烏の能力『核融合を操る程度の能力』は使えない。

 ――筈だった。

 

「っガ…ッ!?」

 

 次に、千亦の顔を襲ったのは痛み。

 熱が、太陽の力が鉤爪状に形成され、悪意と共に襲いかかる。

 咄嗟に反応して避けることはできたが、髪と皮膚が炭化し、崩れた。

 

「チィッ…!」

「初手領域展開は見事だと言ってやろう。だが私相手では分が悪いな」

 

 反獄王は、領域内にいるにも関わらず、その全身を赤い炎で纏い、光っていた。

 太陽の力。間違いなくあれは八咫烏の力、程度の能力そのもの。

 だが何故…その疑問を千亦が浮かべたのと、反獄王が喋ったのは同時だった。

 

 領域展開に巻き込まれた者は、領域の主を除き程度の能力の運用に制限がかかる。

 

 制限の程度に個人差はあるが、大半のケースは能力の発動自体ができなくなるものであり、仮に能力が使えるとしても、万全の頃に比べれば火を見るより明らかだ。

 ――だがもしも。

 ――もしも、領域に巻き込まれた者が『程度の能力』を二つ以上所持していれば。

 

「教えてやろうか?()()()()は他者の肉体を乗っ取る力だ」

「…!そういうことねクソッタレ!」

 

 ――『制限』は対象が二つ以上の能力を持っていた際、肉体ではなく魂に適用される。

 つまり今回の場合。無効化できたのは八咫烏の『核融合を操る程度の能力』ではなく。

 それを操る本体――魂の反獄王が持つ『他者を乗っ取る程度の能力』だった。

 

(それでも…まだ勝機はある…!)

 

 反獄王も気づいているであろう。敢えて用意したルール説明の穴。

 宙を乱反射するかのような軌道で走る。八咫烏の太陽のレーザーを避け続ける。

 カードを手に取り、領域内でのみ許された無法な力を使ってもなお、それでも肉を焼く太陽の力。

 装備カードを常に携帯し、レーザーを受け止め、オプションが損傷した瞬間にカードを使い、その耐久値をリセットする。

 降り注ぐレーザーの勢いは衰えず、それどころか攻撃の回数を増す度に、その速度、精密さは上がっていく。

 

(八咫烏の肉体に慣れ始めてきた…全く…かの怨霊が、まさか今日この日にでしゃばって来るなんてね…!)

 

 千亦は完全な回避、防御を諦める。

 身体をどれだけ長持ちさせられるか、急所は絶対に守ることを前提に、ダメージの少ないであろうその他の部位を使ってレーザーを受け流す。

 千亦は何かを狙っている。反獄王はそれを理解した。

 反獄王は今まで限定していたレーザーの本数、その縛りを破棄し、代わりに威力を捨てた数で攻めることにした。

 反獄王が右手を掲げる。

 『ERROR』と書かれた半透明な黄色のシールが一箇所に集まり、制御棒に似た何かを作り上げる。

 全身を守る熱。それらを一点に凝縮し。

 放った途端。熱と放射線の豪雨が千亦を襲った。

 千亦の全身を、太陽の力が包み込む。

 レーザーの音に紛れ、千亦の悲痛な叫びが聞こえて。

 反獄王は笑った。

 

「ははは!これはいいな!!」

 

 決して威力を緩めることなく、より一層力を増したレーザーの豪雨。

 アビリティカードによる守りも無意味な程に、その無慈悲な弾幕は千亦の身体を、魂を砕く。

 ――かに思えた。

 

「若造が…!」

「っ…まだ生きていたか」

 

 隙を晒し、高笑いを続ける反獄王の顔面を掴む。

 レーザーをくぐり抜け、全身に火傷を負った千亦が、左手で握るカードを掲げ、使用。

 ――残るアビリティカード、その③種類目。

 

()()()()

「ッ!?」

 

 その効果が解放されると同時に、反獄王の身体を雷が襲う。

 その技名、神力の波こそ違えど、威力から癖に至るまで、全てが神奈子のものと同じ――

 間違いなく。『乾』の力そのものだった。

 

(これは八坂神奈子の…!?)

「御柱」

 

 反獄王の脳内に浮かぶ、一か月前の会話。

 

 ――私の力を、魂を切り分けた御柱は合計で六本。…だが大陸全土を探そうとも、どうしても最後のだけ特別で、感知することもできなかった。でしょ?

 ――いーよ。そういうことするやつ、心当たりは一応あるからさ。

 ――まっ、どうせ高天原の誰かだろうけど。それに心配はいらない

 

 八咫烏の肉体に潜伏し、まだ正体を隠していた時の、あの言葉。

 どうでもいいと、つい先程まで記憶から抹消していた筈のそれが、答えだった。

 無くなった御柱。何に使われ、そして誰に持ち去られたのか――

 答えは、千亦の操る無限に近いアビリティカード。それこそがあの御柱だったのだ。

 そして一度、千亦は神奈子と戦った際、領域展開に巻き込み能力の模倣に成功している。

 これこそがアビリティカード三つ目のルール。

 能力タイプのカードである。

 

「最後の一本。見つからなかったでしょう?」

「そうか、お前だったのか」

 

 瞬間。反獄王を…否、八咫烏の魂に雨の源泉が炸裂する。

 領域展開という特別な空間、そして他者を乗っ取り、自らの身体のように操れる反獄王というイレギュラー。

 攻撃の必中対象を反獄王ではなく、操られている八咫烏のみに向ける蛮行。

 肉体と魂を引き剥がし、反獄王を無力化する。

 その為に、千亦は抵抗する反獄王、自分の身体を度外視し、雷を流し続けた。

 内に眠る、八咫烏を目覚めさせるために。

 わざわざ雨の源泉を使ったのも、その威力も理由ではあるが、一番の目的は『八坂神奈子の力』だからだ。

 神奈子の力に共鳴し、八咫烏を目覚めさせ、その肉体の支配度を下げる。

 ……筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いいんだ」

 

 だが、唯一の誤算。

 それは敬愛する主の死を目の当たりにしただけでなく。

 彼女の戦いに唾を吐き、漁夫の利によって汚して終わらせた、反獄王による精神の陵辱。

 八咫烏の魂には、もう。

 

「もういいんだ」

 

 生きる意思など――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諏訪子!諏訪子!!」

「出血がまずい…!それに魂が粉々だ…!クソッ…クソッ!」

 

 千亦が反獄王を抑えている間。

 マエリベリー・ハーン、伊吹萃香、因幡てゐの三人による、諏訪子の身体の回収作業が進んでいた。

 密と疎を操ることができる萃香が、できる限り諏訪子の身体をそれ以上の損壊から守り、血液を逃がさぬように動かし続ける。

 失った左腕、焼けて爛れた皮膚。

 そして反獄王によってズタズタにされた、顔と足の切り傷が痛々しい。

 諏訪子の瞳は、今はもう何も光を灯していない。

 そのあまりに惨い姿に、マエリベリーは涙を流す。

 

「おい」

 

 震える声で、てゐもまた諏訪子の右手を握った。

 

「起きろ、おい」

 

 唯一無事な右腕。

 多少の切り傷こそあれ、そこだけは生前の頃とそう変わらない、あの柔らかい手首のまま。

 だが残酷にも、その手首は氷のように冷たい。

 半開きになった口からは、半ば凝固した血液が今も、垂れ続けている。

 てゐは今も呆然としたままで、マエリベリーは半狂乱。

 だが気持ちはわかる。だからこそ萃香は冷静に、そして動揺を抑えて作業を続ける。

 

「おい…諏訪子……」

「てゐ。千亦のやつが抑えている間に早く行くぞ」

「助かるのよね…?ねぇ…?ねぇ!」

「…ッ」

 

 正直、助かるかどうかはかなり怪しい。

 萃香は過去の耐え難い屈辱を、かつて失った愛おしい彼の、傷ついた身体と諏訪子を重ねた。

 彼は人間だが、諏訪子は神。

 可能性は0じゃない。ただ小さな希望に縋りながら、萃香は立ち上がる。

 かつて助けられなかった彼とは違う。

 まだ希望を残した、そして彼女への恩を返す為に。

 

「焦るのは後にしろ!今はとにかくできる限り…」

 

 そんな時。

 

 

 

 

「一人目」

 

 

 

 

 業火。

 声すら出ない一瞬で、人型の炎が突如出現し、そして倒れる。

 マエリベリーの目の前で、萃香が燃やされた。

 その事を目が、脳が遅れて理解した時、マエリベリーは悲痛に叫ぶ。

 

「ッ萃香!!」

「二人目」

 

 次の魔の手は、マエリベリーの背後から。

 周りの全てがゆっくりに感じる。走馬灯が流れる際に起きる、超感覚による時の流れ。

 マエリベリーの身体を焼き尽くそうと、反獄王の手のひらから炎が出――

 

「三人目」

 

 る瞬間。反獄王の放つ炎は突如方向を変えて、マエリベリーの髪を少し焦がすのみで不発に終わる。

 因果律。確率の操作と誘導。

 その原因を解析した反獄王は、直ぐに振り向き、今度はてゐに向かって手のひらを向けた。

 その炎。本数を縛ることで威力を増した極太のレーザーが、咄嗟に駆け出したマエリベリーの背を、そしててゐを飲み込む。

 地面を溶かし、空気すら燃やす業火の咆哮。

 その数秒後。

 

「……フーッ…フーッ…!」

「…まだ生きていたか」

 

 炎が散り、霧の集合体が反獄王の背後に集まる。

 反獄王が能力を解除したからでは無い、その原因は目の前に立つ鬼が、伊吹萃香が原因なのは目に見える。

 先程成功したように思えた不意打ちの奇襲も、どうやら何らかの能力が作用し、充分に威力を発揮出来なかったらしい。

 振り向いた先には、先程燃やした筈の三人が、致命傷を負わずにそこにいた。

 不意打ちで完全に、骨まで燃やした筈の萃香の身体にも、軽度の火傷しかない。

 

(よく見れば…天弓千亦の命もまだ消えていない…効果範囲、影響はどれほどのものかは知らないが…)

 

 因幡の白兎。その幸運を司る力。

 反獄王が己の怨嗟を晴らす目的の為、一度は乗っ取ろうかとも考えたのがてゐだ。

 その力の厄介さ、そして面倒くささは知っていた筈だった。

 だがどこかで、八咫烏の力を手に入れて慢心し、その力の真髄を忘れていたのも事実。

 そして。それは対するてゐも例外ではなく。

 目の前に立つおぞましい、諏訪子程では無いものの、見るだけで吐き気を催す瘴気と、そして外付けされた八咫烏の力が、どうしようもなく恐怖心を揺する。

 呼吸が乱れ、しかし涙を流して蹲るマエリベリーだけは守ろうと、彼女を庇うように立つてゐ。

 それが虚勢なのは、簡単にわかった。

 

(だがこの脅え様…そう何度も防げまい)

 

 今度は確実に殺す。

 

「っ…!」

 

 より濃密に変化する、反獄王の殺意。

 隣に転がる諏訪子の死体を足でどかし、反獄王は黒い瞳の光を輝かせる。

 慢心はしない。

 最大出力、防ぎきれない熱で殺す。

 それを決定し、反獄王は太陽の力を込めながら。

 

「手間をかけさせるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 切断された右腕をかざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――洩矢諏訪子には反転術式(再生能力)以外に一度きりのみ、肉体を修復する術がある。

 それは、意図的に中断されていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい」

 

 それはかの、八岐大蛇が使ったものと同じ手法。

 八百万の神が、神霊を依代に個の存在を確立させる外法。

 記録することを禁じられ、そして一人の神を、神霊を消す代償に得る復活の方法。

 ――受肉による変身。その再開。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1秒やる」

 

 王が目覚める。

 ――地獄が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どけ」

 

土着(どちゃく)戴天(たいてん)【伍】









 第一章だけ何故か「間章」が用意されていないのと、タイトルの最後についていた数字は全てこの時の為です。
 約70話近くかけてやっと拾えました。
 次回が最後の戦闘シーンになると思います(お気に入り登録と評価気軽にお願いいたします)

呪術廻戦はどこまで知ってる?

  • 最新の単行本(人外魔境)まで
  • アニメの内容(渋谷事変)まで
  • あまり知らない(領域展開は知ってる)
  • 全部わかる
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