【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい   作:洩矢廻戦

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 サマーウォーズのラブマシーンの背中にあるアレ、カッコいいですよね。


8話.方陣飛行

「洩矢の鉄の輪…っと」

 

 ――ジャキンッ!

 それぞれが単独行動を開始し、こうして1人きりとなった彼女は、数日前から考えていた、ある事を試そうとしていた。

 片手を地面に向け、数日振りに鉄輪を召喚、そしてそれを、目の前の宙に浮かせながら「ふむ…」と、顎を摩って考える。

 そう、この鉄輪だ。

 

「…これの法則を理解しないとねぇ」

 

 くるくると自身の周りを、さながら人工衛星のように周回する鉄輪を眺めながら、彼女はそう呟いて、首を捻る。

 物理法則だとか質量保存の法則だとか、もはや過去の常識を持ち込むのは、あまりにも馬鹿らしいことなのは理解している。

 しかしそんな奇天烈な鉄輪でも、彼女が唯一疑問に感じたのが、これだ。

 

「行ってこ~い」

 

 そう言いながら、彼女は右手をサッと振り下ろし、右で浮く鉄輪に命令しながら、そして動かし始める。

 投げはしない、あくまでも目の前に浮かせる時の、あくまでも緩やかに動くあの挙動を意識し、ゆっくりと操作する。

 そして。

 

「ゆ~っくり…ゆ~っくり…」

 

 ふよふよ…

 鉄輪が上下運動をしながら、前方へ進んでいく。

 

「ゆ~~っくり…」

 

 ぷかぷか…

 細かい操作に慣れ始め、少しずつ動きのブレがなくなって。

 

「………」

 

 ――ピタッ

 鉄輪が、完全に停止した。

 

「…なるほど?」

 

 距離にしておよそ3m…といったところだろうか。

 完全に所有権を放棄した、投擲を行わない素の操作範囲、それの限界がこれだ。

 試しに、もう少し力を込めてみても、やはりうんともすんとも言わない。

 

「じゃあ次は…こっち」

 

 そして再び、彼女は鉄輪を地面から創造、召喚して、宙に浮かせてそれを操作する。

 しかし先ほどと違い、新たに創造した鉄輪のサイズは、前方で停止しているそれより、遥かに大きいものだ。

 

「スケールはざっと2倍…これなら…」

 

 そしてもう一度、彼女は右手を振り下ろして、新たな鉄輪を操作して、前方に向かって動かしていく。

 数回の操作で慣れたのか、空中を移動する際の、上下のブレはもはや完全に消え、安定した軌道に乗っている。

 ぷかぷか、ふよふよと動きを続けて。

 

「………」

 

 新たな鉄輪が、最初の()()()()()()()()()――

 

「……あっ」

 

 ――ピタリと、静止した。

 

「…そういうことね、ちょっとわかったかも」

 

 最初に呼び出した、小さく作った鉄輪と、後から作った大きめの鉄輪。

 まず、彼女の身体から離れて3mほどの距離を保ち、ぐるりと周る小さな鉄輪。

 そして更に距離を離し、7mほど先の位置で浮かぶ、大きめの鉄輪を操作する。

 

「ほーん…ほほーん?」

 

 くるくる。

 時計回りに回転し、素早い動きで回る小さめの鉄輪。

 

「ふふーん?」

 

 ぐるぐる。

 反時計回りに回転し、少し遅めに回る大きめの鉄輪。

 それらを交互に観察して、彼女はキラリと目を光らせた。

 

「つまり、鉄輪にはある一定の操作範囲が…大きさごとに決まってる?ってこと?」

 

 体積?質量?もしくは両方…?

 とりあえず言えるのは、作り出した鉄輪はそれぞれ、大きさに応じた、操縦範囲が決まっている…ということか。

 つまり。

 

「これ以上広げようとすると…」

 

 操縦範囲ギリギリ、その位置で固定された鉄輪を、更にその向こうへ動かすイメージで、念じて操作する。

 すると、小さめの鉄輪が更に、前方に向かって進むと同時に、彼女自身の身体も引っ張られる。

 ぐっと、背中を押される時のそれに近いような、そんな感覚が全身を包む。

 

「っととと…なるほど、これは使えそうだ」

 

 パシャッと、宙に浮かぶ2つの鉄輪を消滅させてから、彼女は深く息を吸い込む。

 そして、彼女は両手を地面に向けて、再び能力を発動した。

 

「洩矢の鉄の輪…ver2」

 

 ――今度は、()()()()

 ボコボコと地面が変形し、そして四角形にくり抜かれ、彼女の目の前に浮き上がる。

 そして目の前に浮かぶ、四角形の大地のブロックを右へ、左へと回転させながら、彼女はより意識を集中させる――

 そのイメージは、先ほどよりも繊細に――

 

「重く…小さく…」

 

 ミヂリと、金属が捻じれ、歪み…圧縮される鈍い音が、耳を通して脳を揺らす。

 プラスチックを曲げるような軽やかさで、本来傷一つ付けられないはずの、鋼鉄の塊であるそれが、少しずつ縮小されていく。

 そして、目の前に浮かぶのは――

 

「お~…ちゃんと浮力も強くなる…」

 

 直径はおよそ30cm、本来攻撃用に出す、鉄輪をそのまま縮小したような見た目だが、その秘められた質量は膨大なもの。

 無理やり押さえ込み、形を作る鉄輪は、もし今操縦の力を破棄すれば、地面を抉って潜り込むほどだろう。

 それほどまでの、圧倒的な重量を秘めていた。

 

「これを…こうかなっ?」

 

 ぐわんぐわんと身体が揺れる。

 体積、質量、あらゆる要素が黄金比で安定し、そして彼女の"目的"に適した、ある距離を作り出した。

 彼女が試しに、その鉄輪を動かして、自身の身体が引っ張られない絶妙な距離を維持したまま、頭の後ろに配置し、更に調整。

 再びうねる鉄輪。再び形を変え、ボコボコと更にサイズを大きく、小さくしてを繰り返し、元に戻る。

 そして、さながら仏像の光背のように配置された、後頭部の近くに配置されたそれを、上空に向けて動かすと同時に――

 

「ほっ!」

 

 身体が、()()()()()()()()()浮き上がる。

 

「よしっ()()成功!」

 

 少しずつだが、ゆっくりと確実に動きが安定し、真上に向かって浮き上がり、上空で停止する。

 そして緊張で強張った身体を、足から順に力を抜いて、リラックスした姿勢を保ちながら、彼女はうんと頷いて。

 

「祟り神に乗る以外…素で飛べるようになる。は…これでオッケーかな」

 

 ――()()()()

 それは、非現実こそが現実の世界、幻想郷では当たり前のこと。

 巫女も、魔法使いも、従者に吸血鬼も、兎も人間も妖怪も、"彼"の知るあの世界では、皆平等に空を飛ぶ。

 それはまだ、この時代では存在しない、あの楽園だからこそで――

 

「まだないもんねぇ、幻想郷」

 

 ――幻想郷。

 消えゆく神々、そして妖怪たちを囲う偽りの楽園、そして箱庭。

 それを支え、そして確立させる巨大な結界…"博麗大結界"による、現実の否定によって築き上げられた、幻想たちの生きる世界。

 あらゆる非現実を、あらゆる現実の境界を曖昧に、そして幻想を具現化させ、本来の時間軸から離れた、隠れたもう一つの世界で。

 ()()()()()()、皆は平等に空を飛ぶ。

 

「これで、私もチルノと一緒に空飛べるかな」

 

 しばらく静止して慣れたのか、彼女はそう呟きながら、平行にスイーッと浮遊しながら移動して、停止する。

 目の前には、葉の生い茂る、先ほど見つけた木の頂上付近。

 

「っとと…目に葉が…」

 

 まだ細かい旋回が利かないせいか、生い茂る葉に突っ込んでしまい、全身を葉の先端が刺激し、こそばゆい。

 なんとか薄目のまま、手探りで中を探索し、先ほど地上から見えた、目的のものに指を向ける。

 そして、それに指先を触れさせ――

 

「見つけた…っと」

『イヤアアアアアアアア』

 

 ()()()。本来指を襲うであろうその痛みは、瞬時に召喚した祟り神で作ったグローブで防ぐ。

 掴んだそれを、握り、そして思いっ切り力を込めて引っ張る。勿論その動作によって、手を襲う痛みも倍化するものだが――

 

『ウアアアアアッ』

「よっしゃあゲットォ!!」

 

 彼女はおかまいなしに、それを数回繰り返した。

 

「ふんふふーん…♪」

『イヤアアアアッ…』

 

 ガシッ、ブチ、ポーイ。

 リズムよく繰り返し、そして目的の()()を採集する。

 …その結果、2体の祟り神が犠牲になったのは、彼女以外は誰も知らない。

 

 

 

 


 

 

 

 

「さぁさ皆さんお立合いっ!」

「うるさっ」

 

 ――パチパチパチ

 日も完全に落ちて、夜の帳が下りた山の暗闇。

 その、目の前で赤く燃える、熱く輝く火を囲う形で、彼女たちは座って話す。

 勿論、その中でも一番盛り上がっているのは、彼女とてゐによる、2人きりの会話だ。

 

「まさかてゐが魚を持ってくるとは…意外だったね」

「もう海は勘弁だけどね、川ならまぁ…それにもう、かなり昔の話だってのもあるしさ」

「いつか一緒に海に行ってみる?私なら、多分安全に海水浴もできるけど」

「…ま、期待してるよ」

 

 彼女の提案に、てゐはふんと笑って、手に持った木の棒を揺らし、その先端を炎に近づける。

 じゅわりと、魚の肉が焼ける匂いが、辺り一帯に充満し、そして、それによる煙がより濃くなった。

 それを眺めながら、体育座りの姿勢で、マエリベリーは言葉を漏らす。

 

「"因幡の白兎"…なのよね、多分…」

「へぇ?遠い未来でも、私のことは載ってるのかい?」

「え、えぇ…やっぱり、古事記は今でも価値あるものだから…」

「へー…少なくとも、古事記はまだある時代なんだね」

 

 てゐの呟きに反応し、更にそれに反応する形で、彼女たちは談笑する。

 未来のことをある程度知っている彼女と違い、てゐは意外だと、ほんの少しの驚愕を顔に表して、そして笑う。

 マエリベリーは、目の前で加熱される食べ物を観察しながら、続けた。

 

「私…こういうサバイバル初めてだわ、今まではそういう、空腹とかが起こる前に起きてたから…」

「いい機会じゃん!それに、みんなで集めたのを分け合って食べるのも楽しいしね…はいチルノ」

「おお!やっと焼けたのか!?」

「元気だねぇ」

 

 程よく火が通り、完全に焼きあがった魚を手に取って、彼女は上空で火の周りを飛行していたチルノに向ける。

 すぐにその香りと正体に気づき、急降下して受け取って、一口齧って顔を綻ばせた。

 

「~~っ!美味いぞ!」

「良かった良かった、はい大妖精も」

「あ、ありがとうございます…!」

「メリーも、お腹空いてるでしょ?」

「え、えぇ…」

 

 隣で飛翔する大妖精に、魚を渡しながら、彼女はマエリベリーにそう問い、そして同じように渡す。

 その辺で拾った木の棒を、水で洗ってから加熱し、下準備を終えてから、魚の口に突き刺して、火で炙る。

 たったこれだけ。しかし、"彼"を超える現代にある、高度な文明の利器の数々によって、苦労を知らないマエリベリーにとっては、どれもが新鮮なものだった。

 焦げた魚の皮と肉、そして零れる熱い肉汁が、空腹だったマエリベリーの食欲を唆る。

 一口、齧って――

 

「…美味しい」

 

 味付けもない、火の通りも、マエリベリーがよく行っていた、あのレストランのものとは比べられるものではない。

 無駄に零れた肉汁、ただ木の棒を突き刺しただけで、フォークもナイフもない、不便で食べにくい…

 だが、それが今は。

 

「魚って、こんなに美味しいものだったのね」

「私も、同じ気持ちを今味わってるとこだよ」

 

 ――自分も、現代出身だったから。

 そう心で付け足して、彼女は笑いながら、その焼き魚を口にしながら、顔を合わせて笑う。

 塩もない、ドレッシングなどもってのほかだ。しかしこの不便が、物足りなさが心地よい。

 きっと、現代でもサバイバル趣味の人間がいたのも、こういうことなのだろうと、彼女はしみじみとして。

 

「う~ん美味しい!やっぱ神だしさぁ…信仰以外は、腹の足しにはならないかな~って思ってたんだけど…」

「祟り神と信仰を共有してるくせに」

「なんか言った?」

「…別に」

 

 器用に骨を取り除き、目の前の火に投げ捨てながら、てゐの言葉に反応する。

 しかしすぐに興味を失って、彼女はニコニコと、思わせぶりな仕草と表情をしながら、右手をあげた。

 その予備動作に、この数日間で慣れてしまったてゐ、そしてマエリベリーたちは、すぐにその行動の正体を見破った。

 ――祟り神の、召喚だ。

 

「魚もいいけどさ、やっぱ山といえばこれでしょ!」

『は…いる?』

 

 そして、彼女の右手から呼び出されたのは、かつて、てゐが見て絶句した、あの祟り神だ。

 人間の口を縦に配置し、そこから手足が生えたような、気味の悪い見た目と、キラキラと輝く一つ目の、あの祟り神。

 それが、自分の身体である口を、横いっぱいに広げて、その口内に仕舞ったものを、一気にあふれ出させた。

 ゴロゴロと転がって、祟り神の口から零れるそれを見て、まず最初に声を上げたのはチルノだ。

 

「うおっ!なんだこれ!?」

「…これって、まさか…」

「そ、そのまさかさ」

 

 地面を埋め尽くす、茶色く輝くその正体。

 それに気づいたマエリベリーが、心底驚いた顔を見せて、その反応を見て満足そうに、彼女が得意げに笑う。

 ほのかに香る、その果実の放つ特殊な匂いと、そして形状から、その正体は、"彼"もすぐに分かったものだ。

 ――栗だ。

 

「えっ?栗!?」

「そーそー、意外だよねぇ、まさかこんなとこに生えてるなんてさ」

「なんで栗がここに…!?そもそも、この時代は一体いつ頃…?それに確か…野生の栗が確認されたのは縄文時代で…」

「おーい?」

「ここは縄文時代、もしくはそれよりも後?いいえ、そもそもこの世界の成り立ちが、私の生きてた地球とは別なのかもしれないし…それに確証がないわ、縄文時代にしては、人の気配が少なすぎるし…」

「聞いてるー?」

「もしかして、栗は本当は縄文時代よりも前にあった…?だとすれば大発見だわ…!ここが縄文時代より前という確証はないけど…もしそれを証明する、何かを見つけることが出来れば…!」

「いらないの?」

「いるわ」

 

 既に剥き終えてある栗を、両手でかき集めるように拾いながら、「あれ?」と、彼女は首を傾げて、動きを止める。

 彼女の行動に釣られて、地面に転がる栗を拾っていた最中の、てゐとマエリベリーはそれに気づき、同じように動きを止めた。

 うーん…と、彼女は唸って。

 

「あれぇ…?栗ってさ、どうやって調理すればいいんだっけ?」

「…?普通に焼けばいいんじゃないかしら?燃えない何か…鉄板か何かに置いて…」

「栗って、そのまま加熱しても大丈夫なの?破裂したりしない?」

「…怖いこと言うのやめて」

 

 ――圧倒的、知識不足。

 手元には、かつての現代の便利道具であるスマートフォンも、それこそ料理の指南書もない。

 完全な開拓、無知の状態から一歩一歩、手探りで調べていくのも、魅力の一つなのだろうが…

 

「そうだ!確か昔…一度鉄串に刺して焼いてるのを見たわ!」

「で、私にそれを作れと?」

「………」

「ちょっと?いきなり無音でこっち見ないで?」

「神様でしょ?きっと作れるわ…だから…!」

「やるしか、ないのか…!?ここで、私が…っ!?」

「そんな迫真の表情するなっての」

 

 わなわなと震える彼女たちに、てゐは呆れ顔で、やれやれと言わんばかりに、首を振った。

 しかしてゐや、今も上空でちまちまと焼き魚を齧っているチルノと大妖精はともかく、これはマエリベリーにとっても死活問題。

 全てが未知と、そして恐怖で溢れたこの世界で、唯一自分の居た時代にもあった、あの果物。

 ――失敗は、許されないのだ。

 

「最悪の場合は…祟り神をこう…細長く変形させて?」

「あんた一回さぁ、本気で報復された方がいいんじゃない?」

「いやでも…」

 

 彼女の出したあんまりな提案に、てゐは絶対零度の視線を向けて、そして再び口を開こうとする。

 それと同時に風が吹き、風音に紛れる形で鳴った、もう1つの音を、彼女は聞いた。

 

 ――バサッ

 

「…ミシャグジ様」

『シャーッ…!』

 

 ――()()()()

 間違いなく、今の音は鳥でも、耳の錯覚でもない、第三者によって生まれた音だ。

 風、それも自然に吹いた、先ほどのものとは違う、作られた、何者かの手が入った風だ。

 彼女の、"彼"の、洩矢諏訪子としての肉体が、その違和感の正体を予測する。

 そして何より、あらゆる妖怪を警戒し、意識を張り巡らしていた自分の、その感覚を通り抜けてきた標的の脅威。

 

「諏訪子?」

「てゐ。まぁ無いだろうけど…万が一でチルノたちをお願い、ミシャグジ様はメリーを」

『シャーッ!』

 

 流れる動作で、白蛇を呼び出し、それと同時に、足元の地面から鉄を創造。

 白蛇にてゐ、そしてマエリベリーの保護を命令し、目の前に浮かぶ、小型の鉄輪を後頭部に配置し、そして飛行準備を終える。

 ――()()()()()は、もう済んだ。

 

「洩矢の鉄の輪…」

 

 鉄輪の操作。そしてそれに付随する己の身体、その2つの感覚を把握し、そして完全な飛行をものにする。

 瞬きする間に、木々を越え、そのはるか上空に身を置いて、違和感を感じる暗闇に、目を向けて駆け出した。

 ブォン。文字で表すとそうだろう、空間を削るような、空気を滑るような、そんな音を身に纏って、彼女は飛行速度を上げる。

 ――標的は、目の前に。

 

「甘いよっと」

 

 空いた両手、そこから新たに、自身の忠実な僕である祟り神を召喚し、そして向かわせる。

 一角獣のような、細く立派な角を携え、そして空気抵抗を感じない、シャープな形をした、装甲のような身体を持ったそれ。

 たちまち速度を上げ、彼女自身すら追いつけない程の、圧倒的なスピードを維持したまま、祟り神は前方の標的を追い越し、そして方向を変える。

 

「~っと!?」

 

 ぐわん!と、前後を挟まれたことに気づいた標的が、すぐに高度を下げ、彼女の下をくぐるように、低空飛行を開始した。

 一瞬反応が遅れ、再び追う形になった彼女も、高度を下げながら飛行を続けた。

 

「イチかバチか…」

 

 じりじりと、少しずつ高度と距離の両方を近づけて、標的の逃走範囲を狭くし、追い詰めていく。

 そして、彼女の狙い通り、木々の上空からその下へと、高度を下げた影響で、木々の間を通り抜けるように飛行する標的。

 しかし、その影響でスピードが落ち、上への警戒が和らいだのを確認してから、再び祟り神を召喚し、そして()()

 

「いーち…にー…!」

 

 一角の祟り神たちが、2体で協力して速度を上げて、新たに呼び出した祟り神を押し出して、標的の進路へ先回りする。

 後は、罠にかかるのを待つだけだ。

 飛行、接近、飛行…それを数度繰り返し、そして――

 

「――今ッ!」

『も も" ッ』

「~っが…ッ!?」

 

 ――ドポンッ!

 上空から落下した、金魚の祟り神が、その巨体でボディプレスを行って、標的を捉える。

 いくら身体が水で出来ているとはいえ、その攻撃力はかなりのものだ。

 その衝撃に、捉えられた標的は顔を顰めて、そして何とか逃げ出そうと、必死に暴れだした。

 

「~~ッ!~~~ッ!!」

「ほらほら、暴れない」

 

 トサッ。そんな軽やかな音を立てながら、目の前に着地する彼女の姿を見て、標的はぐっと目を険しくする。

 先ほどの衝撃で外れてしまったのだろう、黄色の服の装飾を、なんとか自由になった右手で握りしめて、その標的はこちらを睨む。

 その態度。しかし何より、少女というべき幼い姿もだが、彼女が真に驚いたのは――

 

「…天狗?」

 

 標的…少女の背中に生える、立派な翼。

 少女の美しい、夜空を思わせる青の髪と同じ、その天狗特有の立派な翼を見て。

 彼女は、呆けた言葉を漏らすことしかできなかった。




(バカ通信のMVを見た作者)

 うぁぁぁ き…鬼龍がボカロMVに練り出演している

呪術廻戦はどこまで知ってる?

  • 最新の単行本(人外魔境)まで
  • アニメの内容(渋谷事変)まで
  • あまり知らない(領域展開は知ってる)
  • 全部わかる
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