【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい   作:洩矢廻戦

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 呪術あと3話ってマ…??


77話.「你好」

「ぶえっくしょい!!」

 

 飛沫を飛ばす、少女らしからぬ汚いくしゃみ。

 それがまさか、今やこの大陸、未来の日本をほぼ全て支配下に置いた土着神の頂点――洩矢諏訪子であると、一体誰が思うだろうか。

 少なくとも、律義に座って机の上に用意された、白米や魚という質素な食事に色めき立つ姿を見れば、その正体を知る者でさえ、首を捻るであろう。

 場所は諏訪大国、洩矢神社の最奥にある一室での、そんなひと時である。

 

「うっわ…」

 

 それに対し、一気に絶対零度の視線に変化したてゐ。

 彼女はサッと、器用に自分の前に置かれていた食器を動かし、諏訪子から距離を取り。

 諏訪子は思わず叫んだ。

 

「ちょっと!なんでそんな対応なのさ!」

「自分のさっきの姿を客観視して言いな。き――」

「やめて。それ以上言われると傷つくから、泣いちゃうから」

「汚い」

「言った!言ったな!?私と一緒の食事は嫌か?傷ついちゃおっかな?傷ついちゃうぞ?傷ついちゃおっかなー!!」

「分かった。これからは一人で食べるってことでいいんだね」

「スンマセン」

 

 平和なものである。

 時間の流れはあっという間で…と、このような表現は今までにも何回か使ってきたが、もう大分人外特有の時間間隔にも慣れてしまい、諏訪子は思わず苦笑する。

 人外魔境の決戦から、もう数百年は経過した。

 マエリベリー・ハーンとの別れ。そして戦の勝利を祝う宴も終わって、そこからは息を吐く暇もない開拓の日々だった。

 天弓千亦による戦いの配信もあり、諏訪大国への従属命令は、八割はいざこざがなく、スムーズに話を進めることができた。

 それでも、かの最古の武装国家である"砲鯨(ほうげい)"のような、神に戦いを挑む野蛮人の集まりもあったが、その末路は言うまでもない。

 住民の生活水準も、かつて自分が生きていた頃に比べれば物足りないが。確実に以前よりは高まっている。

 諏訪子からすれば、税や独占禁止法云々といった、そういう細かな社会のシステムはこれっぽっちも理解できていない為、そのほとんどを神社に住む上官、もしくは神奈子に丸投げしている。

 そもそも元の生態…つまり前世のこともあり、今の『洩矢諏訪子』はその他八百万の神々とは違い、信仰を失おうとも完全な消失は訪れない。

 更には神奈子との融合もあり、実質的な不老不死状態でもある為、余計に神としての最低限の仕事を…つまりは、あれだ。

 要は毎日が休日状態、といった感じを、もう数百年は続けていた。

 

「…こんなのが第二の列島制覇者…史上最強の神…?こんな食っちゃ寝を繰り返すやつが…?」

「てゐ?」

「土着神じゃなくて、これじゃあ寝肥(ねぶとり)じゃ…」

「おい」

「最近じゃ神奈子の方が、よっぽど諏訪大国を代表する神だって…」

「ちょっと待って。それ言ったの誰?処す?処す?祟る??」

「え、私だけど」

「お前かよ!」

 

 ビシッ!と、前世で培ったツッコミ芸を披露する諏訪子。

 なおこの時代では、そのような概念は普及していない為、本来であればただ滑るだけの、悲しい一人ボケである。

 が、目の前の相手は非常に優しかった。

 

「…ふふっ」

「……え、可愛い」

 

 ――ガンッ!と鈍い音を立てて、諏訪子の顔面に茶碗が突き刺さった。

 訂正、どうやら非常に、は言い過ぎたようである。

 「ぐぉぉぉぉ…!」と痛みで蹲りながらも、落下する茶碗は、器用にスライムのような形をした祟り神を召喚し、クッション代わりにして受け止めていた。

 その原因でもあるてゐは、僅かに赤くなったヒト耳を誤魔化すように、そっぽを向いていて。

 

「フンッ」

 

 幸運の兎、因幡てゐ。

 思い返せば、彼女との関係もかなり長い。というより、神奈子よりある意味、諏訪子にとっては思い入れのある存在とも言える。

 相変わらず、故郷である迷いの竹林は人の気が一切なく、数百年間一切変化のない、イナバたちの楽園が形成されているという。

 諏訪大国の…諏訪子直々の支配下に置かれているのもあって、その瘴気と、番人代わりの祟り神を恐れ、以前はいた妖怪も、バッタリと姿を消してしまったらしい。

 天敵がいなくなり、安寧を手に入れた結果から、どうやらてゐ曰く、竹林に生息するイナバの数は、以前の倍になっていると聞いた。

 人化の術が使える程に長生きしたイナバもいるらしいし、何よりイナバは、噂を聞いて竹林を訪れた人間から大絶賛される位の、ある種アイドル的人気を誇っている。

 ふとそのことを思いだし、諏訪子はてゐに聞く。

 

「そ、そういえば…最近竹林に人間がよく来るって言ってたじゃん…?」

「……まぁいいか。確かに、最近は都から人が来るさね」

「え、何今の間。……いや、何でもないっす」

 

 諏訪子が今気になっていること、それは時代である。

 てゐの推測は正しい。だがそれは九割。諏訪子が神としての、戦争を仕掛けてきた他国の制圧以外では動かない、その真の理由の九割。

 以前ほど、民の前に姿を見せず、代わりに神社に閉じ籠り、外に出るとしても、人化の術を使った変装ありき、八百万の神とは思えない、本来であれば命知らずな行動。

 その真意こそ、つまりは時代の変化。――原作キャラクターという概念である。

 諏訪大戦、人外魔境諏訪決戦が終わり、次にやってくるのは激闘の古代。

 神霊廟、星蓮船、永夜抄――

 土着神。それも今では、大陸全土に名が轟く大国の生みの親。

 もっとこの世界を見てみたい。この先を旅したい。

 そしていつか、夢にまで見た、神々が恋した幻想の――

 

「……その都の代表、なんだっけ?」

「大王。噂でしか聞いてないけど、どうやら神々の末裔だとか何とか言われてるらしい」

「信憑性は?」

「かなり。少なくとも、あんた(最強の神)がいるこの時代に神の末裔を名乗るなんて、よっぽど救いようのない馬鹿かそれ以外、本物だけだ」

「ふーん」

 

 実際。諏訪子が活動範囲を狭めたといっても、その名前と偉業は今も語られ続けている。

 逆に不明なのは、諏訪子の容姿や細かな能力、それこそ『洩矢の鉄の輪』や『(イグニ)』のような、程度の能力や奥義のみ。

 戦いでなければ姿を見せず、そして残酷な話だが、敵対した国家の兵士は、生存者全てが今も牢獄の中。

 そうでなくとも、軽い記憶操作を施している為、仮に人化の術を使わず、諏訪子が街中に出たとしても、それが『洩矢諏訪子』であると見抜ける者はほとんどいないだろう。

 

「行ってみようかな、その都ってとこ」

「……一応聞くけど、理由は?」

「楽しそう。あとはやっぱり…旅がしたいからかな、前にてゐと出会った時みたいなさ」

「…………なぁ、まさか数百年間まともに神社から出てこなかった理由って」

「……へへへへ」

 

 そうと決まれば、もう躊躇する必要もないだろう。

 諏訪大国も安定し、人間だけでも国が成り立つようになり、そのままあっという間に、幻想を否定する科学が現れることだろう。

 その僅かな間。その短い期間でしか見ることができない、古代の美しい自然の世界を、今だからこそ見に行きたい。

 国の面倒は、適当に神奈子にでも任せればいいだろう。と、諏訪子は未だ相手側に了承を得ずに、勝手に心の中で決めていた。

 立ち上がり、最早完全に使いこなした『()()()()』を発動させ、その肉体を変化させる。

 妖狐や化け狸が使うものとは違う。全身の筋肉、内臓も全て人間のものに、更に神力は、正真正銘の人であることを示す、霊力に切り替わる。

 神だからこそ使える、高次元の御業であった。

 

「それじゃ、行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい」

 

 駆け足で飛び出した諏訪子に、てゐは片手を振って、その場に座りながら見送った。

 数週間。下手をすれば、数年から数十年、数百年にも匹敵する長旅に出るというのに、諏訪子もてゐも、その態度はあまりにも軽い。

 だが、これでいいのだ。

 ――あいつは、こうでなくちゃ。

 どれだけ待たされるかは知らないが、その時は軽口を交えて、「おかえり」と言ってやろう。

 元気に飛び出した友達の背に、幸運の兎はささやかな餞別を送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てゐ!諏訪子の馬鹿はどこだ!どこへ行った!?」

「おかえり。まぁもうとっくに、都に着いてる頃だと思うよ。…追わないの?」

「感覚共有も切られてるんだよこっちは!ここ数百年はずっと大人しくして…ってまさか!」

「…お茶、うめー」

「顔を逸らすな!」

 

 旅立ちから数時間後の、神奈子たちの壮絶な会話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 文化や国が違おうとも、人が集まれば、生まれるものは変わらない。

 目の前に広がる、都の町並みに集まった人々の活気のある声は、諏訪大国のそれと変わらない。

 どの国、どの集落でも同じ。人が人を憂い、愛し、世を儚むのもきっと、その本質が孤独を紛らわせるからなのだろう。

 身に纏う衣服の華やかさこそ、諏訪大国のそれには及ばないものの、整備された町並み、そして鼻腔を擽る、食欲を唆る飲食店の匂いはたまらない。

 いや、それよりも、何か…

 

「今回は何が起こるやら」

 

 この世界は、既に本来(原作)から遠くかけ離れた新たな歴史。

 四季映姫が言っていた、数多に別れた平行世界のうち、最も希少な世界線。

 この先の歴史がどうなるかは、諏訪子自身も予想できないが、しかし現在、胸の内を満たす感情は、好奇。

 情報を集めるため、人だかりを通り抜けながら、都の町並みを頭に入れると同時に、耳からも情報を傍受する。

 完全に人と成り、ある意味で()()()とも言える今の状態で、周りから注がれる視線の数々。

 彼らは別に、諏訪子自身を見ているわけではない。ただ自分の知覚を通り過ぎた何かを、反射的に見てそれで終わり。

 人々の会話。そこにない交ぜにされた僅かな敵意、悪意から好意に至るまでの、人間的感情の波。一度神としての肉体を手にしてからか、そういった人々の感情に、諏訪子は過敏に反応するようになっていた。

 それと、僅かに甘い女の匂い。香木を焚き、衣服に纏わせた甘い香り、金銭に困っていない、裕福の象徴でもある匂いだった。

 香りに、そして人々の密集する圧迫感、視線の乱雑する意識の海に酔った諏訪子は、誰にも気にかけられることなく、路地裏に足を踏み入れる。

 

「ふぅ…」

 

 少しくらりとしたが、路地裏で軽く息を吐けば、それもだいぶマシになった。

 どうやら、この身体になるのもかなり久しい上に、そもそもの感覚を、人間としての五感を忘れて数百年。その衰え続けた期間を、どうにかして取り戻さなければいけない。

 

「ま、できるだけでもだいぶマシなんだけどね」

 

 人化の術。

 それは数百年前に、諏訪子がふと零した、人間に交じって遊びたい。という欲求を、たまたま近くで聞いた神奈子が理由であった。

 

 

 ――じゃあ作る?

 ――いいね作ろう

 

 あまりにも軽すぎる成り行きでいいのか…と、今思えば、当時はかなり困惑したのを覚えている。

 しかし、たとえその場での盛り上がり、お遊び半分での制作作業といっても、それを手掛けるのは、最強の名を文字通り自分のものにした、洩矢二柱。

 問題児二人。ただし最強。

 神奈子の神霊特有の肉体情報。諏訪子の元人間故の、唯一無二の特別な魂の構成。

 たまに顔を出しては、幸運によるステータスバフをもたらしてくれるてゐの三人で、そうして出来上がったのが、この人化の術である。

 妖怪が人に化ける、神が神力を抑えて地に降りる。そんな時代は終わった。

 前者は下手をすれば、妖力が人間の身体から溢れてしまうリスクがあるし、後者に至っては、未だ神の存在が頂点に陣取る神秘全盛の今では、ある意味妖怪よりも、人間は神の気配に敏感だ。

 そして何より致命的なのは。両者等しく、人が人であるが故の力。――霊力がない。

 見てくれだけを真似しようと、心臓から肺、そして内臓の一つ一つを、人間の規模に収めた、弱小な作りで再現するのはかなりの無理があった。

 鬼がいい例だが、萃香や勇儀、そして華扇のような古参の鬼たちは、角以外はほとんど人間と変わらない、内臓の作りもほとんどが似通ったものだ。

 しかし頑丈。あまりにも頑丈、その気になればトンレベルで酒を飲めるような種族、それが鬼である。

 妖怪というのは共通して、己の強さに自負があり、自ら弱くなる手段を選ぶのは、かなりの物好きしかいない。

 そういった背景もあって、人外が人間に化ける為の研究は、今まで全く進展がなかったのだ。

 奇しくも、その第一人者とも呼べる存在に、今やあらゆる国でその名を聞かないことはない程の存在である諏訪子がなるとは…と、諏訪子本人でさえ思っていた。

 

「にしても…」

 

 路地裏の陰に隠れて、人だかりのある方を見つめて思うのはやはり、違和感。

 耳を澄ましてみれば、聞こえてくるのは本当にそう、何気ない会話だ。

 

 隣の〇〇さんが、実は昨日こんなことが、明日の仕事は○○で…これから一緒に、〇〇へ飲みにいこう…と。

 

 怪しいところはどこにもない、むしろ健全な、人間らしい会話でしかない。…のだが。

 やはり、違和感がある。

 ではその違和感とは何か?と聞かれても、どう答えたものか…としか言えないくらいには、根拠も何もない違和感だった。

 例えば最初の、一番近くにいた女性が喋っていた、隣の〇〇さんが…という会話も、何度思い返しても、やはり変なところはない。

 だというのに、先ほどからずっと、諏訪子の中では、ずっと形容しがたい何かの衝動が、ぐるぐると存在を主張しているのだ。

 一体何か、それがやはりわからない。

 

(うーん…妖怪とかそういうのが混じってる気配はしないし…仮に人間の身体でも、そういうのはちゃんとわかるからね)

 

 人間の身体に変化した状態では、諏訪子は元と比べ、遥かに劣化した状態。

 瘴気は勿論、程度の能力さえ封じた状態で、精々できるのは祟り神を召喚し、操作するくらい。

 神故の身体能力や、恵まれた異能はどこにもない、そこにあるのは、まさに『人化の術』で手にした、仮初の人の身体なのだ。

 

(人が操られてるってわけでもない、本当に何なんだ…この違和感は)

 

 それに、ここは権力が集中する、神の末裔と謳われている大王のいる都。

 仮にそのような人外、妖怪関連の揉め事が発生するとなれば、ここまで人々が明るく騒げるのか?

 情報の規制…という線もあるが、それにしてはやはり、この違和感とは別に、都の空気が違うように思えた。

 身分の高低に関らず、不安気な表情とムラのある活気と、諏訪子の感じる謎の違和感。まるで大きな何かが、都という水の中で蠢いて居る様だった。

 近い内に、何か大きな、それこそ争い事が起こるのかもしれない。

 まずは情報だ。それが第一。

 そう思い、諏訪子は路地裏から出ようとして。

 

你好(ニーハオ)(こんにちは)」

 

 壁。正確には壁に空いた、人が抜けられる程の小さな穴。

 そこから聞こえた声に向かって、咄嗟に諏訪子は顔を向けた。

 

「誰」

 

 壁に穴が空いたというのに、物音の一つもしなかった。

 それに、穴の向こうには何もない、黒と青の絵の具が入り混じったような、渦のようにぐちゃぐちゃな、色彩の膜。

 覗き込んでも、向こう側の景色は何も見えない。だというのに、向こうからの声は、ハッキリと耳に入ってくる。

 

「お疲れですか?旅の御方」

 

 甘い。絡みつくような女の声。

 目の前に空いた穴は、先ほどから形を変えず、ずっとそこにあるだけで、穴の大きさが変わったりもせず、諏訪子の視線を、向こうに通さずそのままに。

 しかし女の声だけが、しっかりと通して、その愉しそうな声が続けて響く。

 

「もう、そう警戒しないで?」

 

 くすくすと、女は笑っている。

 壁に空いた穴と、そしてこの…男を知った女。とも言うべき、妖艶で妖しい喋り方。

 もしやと思い、諏訪子は目の前にある穴に、右手をおそるおそる伸ばす。

 それと同時に、開いた穴のサイズが二回りは大きく変化し、そこからにゅっと、その声の主が姿を現し――

 ふにんっ。

 

「あんっ」

「ぶえっ!?」

 

 ()()()()()()が右手にぶつかり、同時に聞こえた、あまりにも誤解を生みそうな声。

 咄嗟に左右の、路地裏とその向こうにある人だかりへ、諏訪子は必死に視線を走らせた。

 その態度が面白いと、そう言わんばかりに、くすくすくすと、女はまた笑った。

 

「初心で可愛い。私、()()()の方面は疎いのだけど…」

 

 何やらゾワゾワとした感覚が、諏訪子の全身を這うような気がした。

 壁から出てきたのは、思わず()()だと、それもかなりのだと思ってしまうような、麗しい少女であった。

 背丈や肌の潤い、単純な肉体年齢での若さで言うなら、それこそ諏訪子と同じかそれ以下の、れっきとした少女である。

 しかし、先ほどの諏訪子の反応を見て、満足そうな笑みと、流し目からは、年齢不相応の、色に慣れた熟女の気配があった。

 甘い。

 それも、毒々しい、蟲を殺す確殺の色気だ。

 きっと彼女の毒牙にかかった男の数は、二桁を超えているのだろう。そう察する程の、完成された『魅せる動作』だった。

 身体を硬直させた諏訪子へ、彼女は流れるような自己紹介をする。

 

「私。(かく)青娥(せいが)と申します。嗚呼なんて…」

 

 そして、僅かな呟き。

 路地裏の静寂ですら中和しきれぬ、聞き逃してしまいそうになる程の、本当に小さな声で。

 青娥は、唇を湿らせながら言った。

 思わずその仕草に見惚れるが、目の前にいる少女が、そのような手合いを相手にし続けてきた危険人物であると思い出し、煩悩を振り払うため、諏訪子はブンブンと頭を振った。

 まるで子供のようなその仕草に、青娥は、再び唇を舐め、両手で挟むように、諏訪子の顔に触れて。

 じっと、覗き込みながら言った。

 

「…なんて面白くなりそうな方」

 

 時代は620を少し過ぎ。

 星降る夜に、神霊廟がそびえ立つ日のことだった。




 エッチ

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