【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい   作:洩矢廻戦

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 ずっとこの話を書きたかった。なので初投稿です。
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2章:起首玄同
81話.哀情の摩天楼


 幼いころから、自分は外で遊ぶ方が好きだった。

 本を読んだり、縁側に座って時間を潰したり、それらが苦手という程ではないものの、やはり自分は、外の空気の方が性に合っていると思う。

 親に隠れて、こっそり山の頂点を目指して歩いたり、蝶などの虫の後を追い、ゆっくりと彼らの生涯の一片を、ずっと眺めるのも好きだった。

 結局。辺りが夕日で染まっていたのに気づいて、大慌てで家に帰って、こっぴどく怒られるまでが全て。

 その時はまだ、世の中の仕組みや、人の悩みといった複雑なことは、何も知らなかった。

 

 ただ目の前にある景色だけが、自分にとっての世界、そのものだった。

 

 流されるように、母は物語を通して言葉を教えた。

 疑問を持つこともなく、父から教わった仏の教えが、自分の中の指標となった。

 一年、十年。そうして時を経て、高くなった身長で、己以外の今まで信じていたものを見下ろせるようになった時。

 あれだけ大好きだった、強大で恐ろしく、魅力的だと思っていたあの山が。

 とてもみすぼらしい、どこにでもあるただの山の一つに過ぎないものであると、気づいてしまった時。

 自分の中で一つ、新たに生まれた疑問があった。

 

(妖怪とは…)

 

 ――人とは、本当にそれ程優れたものなのか?

 (ひじり)白蓮(びゃくれん)にとって、それはある種の天啓であった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 ――人は老いると、ここまで弱くなってしまうのか。

 白蓮が、人間の無常な時の流れを理解した時、既に血を分けた弟は、布団の上で、皮と骨だけの有り様だったから。

 かつて手を引っ張って、共に野原を駆けた弟の身体は、あの頃より、身長のみが勝っている状態だった。

 肋骨が、薄い肉と皮越しに浮きあがって、その輪郭をくっきりと主張していて、枯れ木のような腕も、老人と見間違う程の皴の数も。

 とても、同じ位の歳の、あの愛しい弟のそれだとは思いたくなかった。

 

 たった十数年。白蓮にとっては一瞬の、とても短いひと時であった。

 

 父と母から受け継がれた、仏の教えを軸にして、流されるように、弟と一緒に、白蓮は人を救う為の人生を選んだ。

 確固とした理想もない。ただ目の前にある悩みを、救いを求める手を優しく握る。それだけの話。

 かつては山を登り、素手で虫を捕まえるようなやんちゃ娘が、よくもまぁこんな、きちんとした僧になれたものだ。

 だが結果として、白蓮はその村の中心となる、名高き僧の一人となれたし、実際にそのおかげで、助かった命は数え切れない程存在する。

 だというのに。心の中にぽつりと開いた、虚無感に似たこの感触は何なのか。

 

「…………姉さん」

 

 弟は、まだ齢三十にも達していない。

 だというのに。まだまだこれから、もっと人を助けられるような、そんな優れた人間なのに。

 ――大好きな弟なのに、自分は何もできはしない。

 

「気分はどう?」

「大丈夫。昨日よりは大分マシ…かな」

「…良かった」

 

 ――悪人は嫌い。

 僧として、人が見せる醜い側面は、数え切れない程に処理してきた。

 無垢な子を貶め、辱めるような畜生もいた。

 自分に、世界を変えられるような大層な力なんてない癖に、そんな彼らのいない世界を、平和を作りたいと、時に夢想してしまう。

 

 ――救う価値もない悪人。

 それは、間違いなくこの世界にいるし、自分はそんな彼らが嫌い。そう白蓮は内心で思う。

 

 更地のような想像力と、そして貧相な想像力で、一丁前に息をする。

 そして、そんな彼らですら、時に許してしまう善人もまた、苦手だった。

 

「本当にごめん」

 

 弟は。命蓮(みょうれん)はいつも、自分と話す時には必ず、最後にその言葉を付け加える。

 苦しいことの何が悪いのか。

 満足に息も吸えない、動くことすらままならない。

 申し訳ない。手間をかけてごめんなさい。

 ――何故、善人というのは、当たり前で仕方のないことを、自分の欠点かのように受け止めるのか。

 どうして、もっと堂々としていられないのか。

 

「…………いいの、家族でしょ?」

 

 そう言うと、弟はまた申し訳なさそうな顔をして苦笑した。

 優しい弟の笑顔。愛おしい家族の見せる表情。

 なのに、僧としてずっと対面してきた、虐げられる弱者が共通して、己にぶつける謙譲の色。

 ――苦手な善人。その感情。

 それを、他ならぬ弟に対して、苦手だと一瞬でも感じてしまった自分が、とても、とても苦しかった。

 

「…………うん」

「今日はもう休みなさい、信徒たちの相手は私がするから」

「…ごめん」

 

 ずきりと、泣きそうな顔をした弟に胸が痛む。

 額を撫でて、辛そうにしていた呼吸音が安定し、一瞬で眠った命蓮。

 それを確認して、白蓮はゆっくりと、一切の雑音を立てることなく、速やかに部屋を出る。

 

 ――善人。

 

 救われるべき者。自分が、そして彼がこれまでに救い続けてきた者。

 

 ――命蓮は、典型的な善人。

 

 前に、彼は「悪人であろうと、救われる機会はある筈だから」と、控えめな笑顔で言っていた。

 誰であろうと救われる。勧善懲悪。因果応報を決めるのは仏様。

 ならせめて、現世にいる間だけでも、自分たちだけでも、彼らに対して、平等な手を差し伸べ続けるのだと。

 それを聞いて、余計に白蓮は思うのだ。

 ――誰が。

 

「おぉ…どうか…」

「僧侶様、先日から〇〇で負った怪我が…」

「白蓮様聞いてください、あの人はまた私を放って別の女と――」

「また妖怪が…」

「お聞きください。実は二日前、私はある重大な――」

「僧侶様」

「どうか救いを――」

 

 ――誰が、自分たちを助けるというのか。 

 白蓮が檀上から降りれば、寺に集まっていた里の人間たちは、我先にと悩みを、愚痴を吐いて縋る目を向ける。

 自分の悩みを押し付ける為に、自分の不幸を自慢して、救いの順番を早める為に、誇張した声と表現で、くだらない自尊心で、核心には触れずに言葉を紡ぐ。

 

(気持ち悪い…)

 

 他人と関わる上での、最低限の規則。

 法も浸透していない、数の多さが正義である、この小さな里において、ルールと呼べるもの。

 窃盗。暴力から色欲関係の問題、そして殺人――

 それら全てに共通する、たった一つの最低限。それは『しないで欲しい』という、謙譲の意識。

 「私はあなたを殺しません。だからあなたも、私を殺さないで下さい」、たったこれだけ、なのにそれすらまともに理解できない、薄汚い悪人が腐るほどいる。

 何に置き換えてもいい、盗難でも暴力沙汰でも、この単純明快な「しないで下さい」を。

 破って、威張って、腫れ物のように扱われることを、まるで勲章のように認識している者がいる。

 

 そんな奴らが反省もせず、今もどこかで息をしていると考えるだけで、横隔膜が痙攣するような、透明な苛立ちが止まらない。

 何故お前らのような人間が楽しく生きて、真に救われるべき善人は、苦しそうに「ごめん」と、謝り続けなければいけないのか。

 ――だから、善人(命蓮)は苦手なのだ。

 

 そんな悪人を許してしまう。

 そんな彼らも救われるべきだと、情けをかける自己犠牲が。

 そして、そんなくだらない許しを、格調高く捉えて、自分のことなど二の次な、そんな善人の姿勢に吐き気がする。

 ――そんなことを考える、自分自身にも吐き気がする。

 

 

 

 


 

 

 

 

 本当なら、命蓮だけの筈だった。

 行脚(あんぎゃ)の途中であったのであろう、他より整った、綺麗な布の服を着た男たちが、里に訪れた時だった。

 その日、白蓮は珍しく命蓮と共に行動していて、晩飯の為に米が必要だったから、それを洗うために水を汲みに行っていたのだ。

 がやがやと、里の大人たちは物珍しい客人に虜になっていて、元からお人好しで、気前のいい人達だったから。

 どうか泊まっていきなさい。そう提案して、里の長である老人の家に、申し訳なさそうに入っていくのを、白蓮は遠くから見ていた。

 その時は、本当にそれだけ。

 知りもしない、知りたくもない。どうでもいい第三の人間が、第四の人間と何かを話している。

 病で早死にした両親以外。唯一残った家族は、命蓮だけ。

 だから白蓮は、必死にその日を生きて、そして、決して身体が強くない弟に、もういない両親の代わりに、うんと楽をさせてあげたいと、そう思っていた。

 そんな日常が変わったのは、ある日ふと、命蓮の姿が見えなくて、それを探しに外へ出ようとしていた時。

 普段から、彼は外によく遊びに出かけていた自分の影を追い、走るとまでは行かなくとも、軽い散歩をすることがあった。

 やんちゃ娘。なんて呼ばれていた頃が懐かしい。生きる為に必死で、食事から洗濯まで、試行錯誤しながら続けてきたあの日の自分を、命蓮は今も覚えているのだろうか。

 そう遠くに行ってないといいけど…そう思い、扉に指をかけ――

 

「あ、姉さん」

「…命蓮?」

 

 弟を見つける目的は、あまりにも早く達成された。

 というのも、彼を探す為、里の中を一周する必要はなく、家の扉を開けてすぐ、彼の姿が遠目で確認できた。

 しかしその隣にいたのは、あの行脚の途中で、里を訪れた、あの男だった。

 命蓮の手には、隣に立つ男――僧のものであろう、使い古した経典があって。

 それをまるで、宝物でも見るかのように、輝いた目をして、命蓮は一つ一つ、書かれた文字に指を這わせて、男に意味を問いを投げかけていた。

 初めて。

 弟が初めて見せた、輝くような笑顔。

 詳しく聞けば、彼は遠くにある寺の修行僧であり、この里を訪れたのも、宿の確保もそうだが、一番の目的は、この布教活動であると、そう堂々と言った。

 互いに隠し事は無用。そう言わんばかりに、白蓮の次の言葉を待つことなく、彼は真っすぐな視線で、そして懇願の色を瞳に宿して、言った。

 

 ――そなたの弟。その才をどうか、人々を救うために活かしてはみないか?

 

 思えば、命蓮の答えは既に、白蓮があの僧と出会う前。

 自分の知らない内に、経典に記された教えを学んだあの時に、既に決まっていたのかもしれない。

 まだ危険だ。子供だからと、そんな使い古された常套句では無理だった。

 覚悟を決めた命蓮。その意思を、どうすれば否定できるかを考えようとして、すぐに、白蓮は首を振って、その邪な考えを頭から追い出した。

 己の才と向き合った弟。

 それの、尊重するべき善意と理想の傍に、家族である自分だけでも、せめているべきだと。

 同じく、覚悟を決めた白蓮もまた、仏の教えを広げる、その道を選ぶことを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白蓮が、弟と同じく僧になって約三年程が経って。

 命蓮はもう、そう長くは持たないことが判明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 法力と呼ばれる力がある。

 それは人間。特に巫女や陰陽師によく見られる、人が人である証明であり、誇り高き命の輝きそのものでもある。

 要は言い方の違い。都や、もっと人のいる大国では共通して『霊力』だが、白蓮がいた里のような、未だ前時代の名残がある場所では、『法力』の呼び方が残っている。

 己の中に眠る、一般人の範疇から外れた力。

 僧の彼が言っていた才能。そして弟の後を追いかける自分に、気味の悪いくらい戸惑うことなく、むしろ喜ばしいという表情を見せた理由が分かった。

 『法術』を使えば、文字通り何でも、あらゆる事象を己の手で再現できるのではないか。

 そう思うのも無理はない、そんな麻薬に近い感覚が白蓮を支配した。

 

 力を込めれば、自分の身体くらいの大木を一撃で倒せる。

 以前は無力だった野生動物相手にも、そして何より、悪人である大人たちに対しても、自分は優位に立つことができる。

 

 ――身に着けた技術は誇りに変わり。

 修行の果てにあった、教えと手にする力の因果が逆転して。

 しかしなけなしの理性と善性が、この身に持て余す力を、秩序側として振るうべきだと訴える。

 白蓮がそうである中、命蓮は変わらず、人を助け続けた。

 仕事を後回しにしがちになり、ただ『法術』を極めたい、知りたいと思い始め、大陸から伝わってきた、()()()と呼ばれる書物を、誰にもバレないよう、こっそりと手に入れて、それを夜な夜な解読している間も。

 命蓮はずっと、人を助け続けていた。

 

 

 

 

 増えた力が身体に合っていない。

 これ以上は何も分からない。

 ――それだけが分かって、命蓮は寝たきりになった。

 

 

 

 

 ――いつも笑って、綺麗事を吐いていた弟。

 

「姉さんは凄いな」

 

 ――力に慢心した自分の、腐った性根すらも肯定する。

 だというのに、そんな自分が一度、魔導書の解読に耽り過ぎた結果、体調を崩して倒れた時。

 彼は涙を浮かべながら。

 

「程々にしろって言ったでしょう!」

 

 ――と、こんな自分を怒ってくれた。

 外法の力に手を出して。

 その秘密を、肉親にすら隠していた自分が、どうしようもなく惨めに思えた。

 なのに、それを打ち明けることすらできずに、今も自分はのうのうと生きている。

 その上で、未だ無償の善意を信じ、悪人すら救われることを願った彼。

 

 ――今では、それが間違いだと言える。分かってる。

 

 因果応報は全自動じゃない。

 悪人というものは全て、その悪行が露見してから初めて裁かれる機会を貰う。

 報いも、復讐も、どれも人の力と、規則という光に照らされて初めて、被害者が救われる機会を貰う。

 

『不平等な現実のみが平等に与えられている』

 

 だからせめて、自分が選んだ人だけでも助けられるように。

 せめて、せめてこの人だけでも、そんな淡い幻想を、せめて自分だけでも肯定したくて。

 どうかこの人だけでも。――そう懇願する者が、否定されないよう。

 

 

 

 

「あなたは、私とは違う」

 

 握った手は、皴だらけで冷たい。

 ゆっくりと、先ほどまではあった筈の、血液が身体を流れる温かさも、命の熱も、最初からそこにはなかったかのようで。

 

「私が助ける人を選んだように。あなたは私を選んで、その後に、多くの人を、私より多く選んだ」

 

 ぽつり。

 もう、我慢できないと、涙腺が暴れて、最後の砦が崩壊する。

 

「ごめん…ごめん…………っ」

 

 ――私が悪かった。

 ――あなたより年上の癖に、あなたなんかよりよっぽど、私の方が子供だった。

 ――謝りたい。謝るから。

 ――今すぐに謝るから、お願いだから…

 

「起きて…命蓮…っ…!」

 

 静かに眠る弟は。

 

「う、ぅく…!うぅ…………っっ」

 

 弟は返事をしない。

 あの時のように、しなくてもいい謝罪すら。あの儚い笑顔もない。

 いつかのように、申し訳なさそうに、謝ることすらできなかった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 彼の遺品を整備して、その後、白蓮は旅に出ることにした。

 今までずっと、自分の世界だと思い込んでいた、里。

 たった十数件の、小さな家の集まりでしかない、小さな小さな箱庭。

 山道を進み、山頂にたどり着いてからふと、振り返った白蓮はその時、十数年ぶりの、あの幼少期に経験した、あの感覚を思い出した。

 がっかりしたのだ。

 自分の全ては、あの場所にあった。

 朝目が覚めて、食事をして、洗濯から信徒の悩みを聞いて。

 寺を建てるお金はなかったから、両親から引き継いだ、小さな家で布教活動をしていたけれど。

 それが、あんなにつまらないように見えると、そう思う。

 

「……」

 

 自分の世界は、もうない。

 あそこにはもう、過去の罪、己の慢心が生んだ、醜態の記憶しかない。

 あの場所にいると、自分はまた、取り返しのつかないことを――

 

「…………いや」

 

 いや、何を今更。

 本当に今更、何を常識人ぶったことを。

 

 ――死が、そこにあった。

 

 思い出す。あの日、どんどんと冷たくなる弟の身体。

 呼びかけても、返ってくる反応が段々と小さく、滅びに近づく姿。

 それを、今でも夢に見る。

 自分もいずれ、ああなるのか。

 ――弟と同じように、このまま無理をすれば、いずれ……

 

「…」

 

 ――だから、人の身を捨てた。

 あの日、外の国から来たという、怪しい謎に満ちた、()()の商人から、半ば押し付けられるように手にした、魔導書に記された禁術。

 それは、時の権力者ならば全員、喉から手が出る程に欲しいであろう『若返り』の法、そして『不老長寿』の儀式。

 疑心暗鬼だったが、実際に儀式は成功し、白蓮は己の全盛期とも呼べる、今より少し若い年齢に、肉体が逆戻りし、その後にやってきたのは、空腹感の削除。

 肉体を『魔法使い』のものとし、命の比重を精神に傾ける。

 

 たったそれだけ。しかしその最大の弱点が、――魔力。

 

 魔導書に記されている方法では、己の自己補完の範疇で使える魔力とは別に、若返りは勿論、肉体の不老長寿を維持する為には追加で、『外付け』の魔力補充の必要があると、そう記されていた。

 魔力とは、極論としては妖力、呪力と同じ『感情の力』だ。

 外付けのその力を得る為には、最も身近にあるのは妖力…つまり妖怪。

 呪力を主に扱う陰陽師。それを探す手段もあったが、今の時代、陰陽師はほとんどが、霊力を主に使用している。

 その原因は、ある一人の、天才の老陰陽師が立ち上げた、誰でも扱えるように改良された札や陰陽球を、商人を通して、国中に普及させたこと。

 習得難易度も高く、呪いという、外聞の悪い力である呪力を扱う者は、その数を更に激減させ、結果としては、大量の腕のある陰陽師が、全国各地に大量発生した…ということか。

 そのせいで、妖怪たちも今は数を減らし、あまり都を襲うことはなくなったとさえ聞く。

 

「…………行きますか」

 

 笠を被り、白蓮は歩き出す。

 まず最初に、今の自分にとっての唯一の生命線である、魔力。

 それを補充する目処と、そして過程を確認しなければ。

 ふと、もう一度足を止め。

 

「…………」

 

 かつて、自分がいた場所。

 あの日、幼い頃の自分が、強く恋焦がれた山の頂点。 

 思えば今、自分はそこに、なんてこともない、何の感動も達成感もなく、そこに立っているのだと気づいた。

 昔の自分。

 まだ、何も世間を知らず、両親の愛を享受するだけだった自分。

 取り壊された家の跡、そこに、過去の自分が立っているような、そんな気がした。

 

「――行ってきます」

 

 白蓮は歩き出す。

 今度の歩みには、何の迷いも葛藤もなく。

 生きる為。

 弟が成せなかった、自分では届かなかった志を、少しでも。

 こうして、彼女の旅は始まった。








 書きたい場所はあるのに時間は確保できない…
 なので当日に机に座って、ぶっ通しで書き始めてから出すまでやる必要があったんですね(尚そのせいで誤字率)






























「おい、いい加減にしろ」
「……まぁいいです。なんとなく、見せたいものは見せた気がしましたから」
「さっきからゴチャゴチャと気味が悪い。結局お前は何が言いたいんだ?■■■」
「…私は別に、仕事熱心なんて口が裂けても言えないし、言いたくないと思ってる」

「鬼も怨霊も、ただ仕事だから相手するだけだって。…でも今は、それは少し違う気がしてる」
「……」
「酒を飲む。温泉に浸かる。時折問題が起こっては解決する。なんでもいい、それがなくても、ただあの部屋で、あの場所で黄昏れる時間があれば、自分の時間の一部を、誰とも繋がらなくても、何も残らなかったとしても」
「……だから、何だ」

「何も感じないな。■■■、お前が言っていることは全て理解できる、その上で何の感情も湧かない」
「…………」
「お前がこの箱庭を、幻想郷をいくら肯定しようと、所詮は忘れられた者の、醜く生きる為に抗う、覆しようのない醜態はそこにある」
「…」
「だから。なんだ」

「やっぱり、駄目なのね」
「敢えて言うなら、お前の相変わらずの腰抜け具合に唖然としている。――■■■、お前の私に対する恐れや怯えは、その程度のものだったのか?」




「■■■。まさかお前――」
「…」
「私を見下しているのか………?」
「……」
「――私を、その有象無象の一部だと切り捨てようとしているのか……?」




「――そうだ■出■■霊。私はお前なんてどうでもいい」
「これは命令。さっさと地底に戻りなさい。――そうすれば、私はお前を殺さないでやる」










「――勘違いも甚だしいな。八つ裂きでは済まさんぞ、古■■■と■」
「貴様の首の前で。――貴様のいう価値のあるモノ(仲間)とやらを皆殺しにしてやる

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