【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい   作:洩矢廻戦

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 昔の東方二次創作といえばやっぱり…「原作キャラの幼少期と遭遇」でしょう。
 あと、1話から今までの描写で伏線は張ってたんですが…祟り神たちの能力や姿は全員、元ネタのあれでして――


9話.星降る天魔の夜

 ――空気が変わった。

 その、山を覆いつくす程の、異常な気配が訪れる前。

 この山を根城とする、彼らは己の種族…天狗特有の本能に従い、彼らは意識を集中し、違和感を感じる方へ目を向ける。

 気のせいか、それともまたはぐれた妖怪が紛れ込んだか、疑問を感じながら、その侵入者の姿を遠目に見て――

 

 その濃密な死の気配に、吐いた。

 

 風を、空を、天を操る支配者たる、天狗のテリトリーであるはずの、この山を全て覆いつくすほどの、膨大な厄の気配。

 山の巡回をしていた、まだ比較的若い天狗たち数名は、一瞬で意識を失い、吐瀉物をまき散らしながら墜落した。

 呑気に山の景色を眺めていた、老天狗たちは皆一斉に、手に持つ盃を地面に落とし、わなわなと震えて、顔を青くする。

 誰がどう見ても、それは天変地異の前触れとしか思えない。そんな山の大混乱。

 何とか意識を保った、実力のある天狗たちは、皆が集まって議論を交わす。

 

「なんだあれは…!?妖怪…いや、大妖怪に分類されるものでも、あそこまでの気配は有り得ん…!」

「天魔様に判断を仰ぐべきか?それとも…」

「冗談じゃない!あんな不吉なものに、誰が好き好んで近づこうと言うのだ!」

「御免蒙りたいな。儂も流石に、あと数百年は生き続けたい」

「そうだ!ただでさえ、天魔様は()()を抑えているというのに…!」

 

 どう対処すべきか、誰があれに近づくべきか、そもそもあれは何なのか。

 互いに責任を、理由を押し付け合って、恐る恐る、今も山を歩く怪物を遠目で眺めて。そして息をするのも忘れ、恐怖し、そして逃げる。

 老天狗は長く生きたが故に、それらに比べてまだ若いが、幼少期から成長し、命の危機に過敏になった、大人に分類される天狗だからこそ、彼らはこうして恐怖する。

 ――そんな彼らの姿が、()()にとっては理解できないものだった。

 

(一体何が…)

 

 まだ命の危機も知らず、つい最近まで、空を飛ぶのにも一苦労だった。

 だからこそ、彼ら老天狗たちの会談を、不思議なものだと眺められる。天狗の少女は標的の恐ろしさも、その内に秘められた膨大な厄の本当の質量も…

 何も感じ取れないまま、見てしまったのだ。

 

(…あれが?)

 

 ――それが、失敗だった。

 距離にして数mほど、翼を、風を自在に操り、自身の移動音や気配を誤魔化しながら、山を歩くその化け物を見た。

 相手の視界に映らないよう、ゆっくりと高度を下げ、天狗の視力を用いて、遠距離から標的の全貌を把握する。

 ここから少し離れた湖、そこを領地としているはずの妖精と、見たことのない顔の兎、そして金髪の人間。

 ――それらを統括する、人間と同じ金色に輝く、その特異点。

 

(あれのどこが…)

 

 少女は観察を続ける。

 木の陰に隠れ、気配を殺し、視線を向けながら考察を続けて、じっとその場に待機する。

 彼女が呼び出した配下、周りが言うに、祟り神と呼ばれるそれが、四方八方に泳いで行く様子も、この目で()()

 突如地面を操作し、独り言を零しながら、空中浮遊を始めた彼女と、その右手に現れた祟り神も、同じように()()

 ――油断も、あった。

 

(…くそっ)

 

 その結果が、これだ。

 

(――しくじった…!)

 

 全身を強く押さえつける、祟り神の質量と、背筋の凍る、今の今まで気づけなかった、彼女たちの本当の不吉さを感じながら。

 天狗の少女はそう、内心で悔しそうに吐き捨て、目の前に立つ、監視対象の彼女を睨みつける。

 必死に妖力を滾らせ、侮られないように威勢を保つ。そして、視線を逸らさず真っすぐ向けて。

 ――しかし彼女は、それを笑って受け入れた。

 

「君、天狗だよね?もしかしてさぁ…ずっと見てた?」

「………」

 

 こてんと、まるで悪戯が露見した子供を戒めるかのような、そんな優しい雰囲気と仕草。

 だが、もう騙されない。目の前で笑う彼女は間違いなく、自身を含む、天狗という種を滅ぼしかねない…強大で恐ろしい存在。

 こうして、目の前で対峙して、それでやっとわかるほどの、薄く散布された、細く濃密な厄の気配たち。

 遅すぎる理解、少女は己の甘さを噛み締め、己の無力さを嫌悪した。

 

 しかしこれでも、祟り神を含め、彼女自身も無意識ながらに、厄の気配を抑え込んでいる状態だ。

 

 もしかつてのように、抑えが利かずに厄を解放していれば、間違いなく天狗の少女は、遠目で見た時点で気絶していたはずだ。

 それが、幸運なのかどうかは、今の少女にはわからない。

 

「皆、お前を恐れてまともに動けない…だから私がいる」

「ふぅん…そんな過敏になるほど?」

「当たり前だ。お前たちのような存在を、そう簡単に見逃せるものか」

「…え?別に何もしてなくない?ただ山道歩いてるだけじゃん!」

「……それが普通の人間や妖怪なら、な。お前は危険すぎる」

「…話違うじゃんかよぉ…てゐ~…」

 

 ――荒ぶる神の魂。

 こうして対峙してわかる。態度、言葉。それらは特筆することはない、人間とそう変わらない、温厚さを持ったものでありながら、その存在感が異質だった。

 歪み、捻じれ、混ざり、直視するだけで胃を掴まれるかのような、全身が鳥肌を立てる恐ろしい気配。

 妖怪、それも空を統べる天狗、その頂点である存在…天魔を超える、圧倒的な、強者に分類される者が共通して持つ、膨大な死の香り。

 それらが、僅かながらも、そしてそれでも充分すぎるほど漂い、彼女が強者であることを証明していた。

 

「にしても…監視、か…それさぁ、本当に天狗の総意?」

「…どういう意味だ」

「いやさ、他には気配を感じないから…もしかして、君1人だけで突っ走ってこうなったんじゃ…とか思ったり?」

「………」

 

 図星である。

 

「…そんなわけあるか」

「あーはいはい、そーですねー…不味ったなぁ…下手に気配を抑えすぎるのも考え物だね」

「おい、知らないと言っている」

「うーん…それとも人間レベルに気配を抑えるべき?いやそれでも面倒なことが…」

 

 苦虫を嚙み潰したような顔で、なんとか言葉を続けた少女を見下ろし、彼女は「さて…」と切り出した。

 

「ま、いいや。とりあえず事情聴取…はさせてもらうからね」

 

 彼女は頭を掻きながら、面倒臭そうにそう呟く。

 少女はせめて、他の仲間に、この山に危害を及ばせないためにはどうするべきかを考え、歯を食いしばって睨み続ける。

 あくまでも冷静に、目の前に君臨する彼女を包む、その異様な気配を見やり、そして吠えた。

 

「言っておくが、私はお前などには屈しないぞ」

「いや、あからさまなフラグ…」

「我ら天狗を…恐怖程度で飼い慣らせると思ったら大間違いだ」

 

 キッと、その赤い光を両目から放ちながら、少女は果敢に言い切る。

 その、幼さの残る顔と、そして生意気な態度を見て、彼女はニヤリと笑って。

 

「へぇ~~?屈しないって?」

 

 すっと、少女の顎を軽く持ち上げ、覗き込む姿勢になりながら、その金色の眼を、妖しく光らせる。

 その、吸い込まれそうな目の光に、一瞬目を奪われたのも束の間。

 自身の顎に添えられた、彼女の手をブンッと、首を捻って振り払う。

 

「どんなことでも?」

「…ッ、勿論」

「かなりキツイよ~?」

「二度も言わせるな…私は屈しない!」

「言質取ったり!じゃあ早速…」

 

 ――ギギュウ

 今までのとは違う、大きさは約1mほど、今も少女を押さえつける、巨大な金魚よりも小さい、その新たに現れた祟り神。

 最初、どんな恐ろしいものが出るのかと警戒した少女は、その予想に反した大きさの祟り神に、拍子抜けをした。

 ――が、それも最初だけ。

 

『ぢ…いう…』

 

 モコモコと、形が変化し現れる、全身桃一色の祟り神。

 地面から生える形で、木の幹のような太い土台と、それに寄生する菌糸類のような形をした、祟り神の身体の一部。

 ――そして数個もの頭が、一斉に少女に目を向けて。

 

『しよ…しよ……』

 

 それと同時に、少女の身体を押さえつけていた金魚の祟り神が姿を消し、代わりにその、菌糸類の祟り神が、少女の身体を持ち上げた。

 無数の丸い頭が、器用に少女の翼、そして四肢を押さえ込み、そしてみるみるうちに、その身体の中に取り込んで、少女の動きを抑える。

 

『ち…ちう…』

「…ッ!」

 

 ぐるん。

 四方八方に視線を向けていた、その祟り神の無数の頭が、一斉に少女に目を向けて、そして歯茎を剥き出しにして笑う。

 一瞬。恐怖で震える身体をなんとか誤魔化し、負けじと視線を返し、睨みつけながら言葉を紡ごうとして――

 

『ちゅーしよ?』

「…………はっ?」

 

 ――むちゅ

 人肌のように生暖かく、そして柔らかくしっとりと…

 言葉で表しきれない、そんな絶妙な感触が頬を襲って、その矛先は唇へ――

 

『ちゅ、ちゅーしよ…』

「ちょ!ま…待っ!?」

『ちゅーしよーよー』

 

 ぶちゅっ!そんな音を立てて、少女の頬が軽く押され。

 ぐるんと、少女の身体の向きを横に、その祟り神の唇が、少女の唇と向かい合い、ゆっくりと近づいて――

 

『ちゅー!』

「いやあああああああああっ!!!!!」

 

 唇が触れる、およそ数cmほど手前で。

 少女は、"その後"の恐怖に屈して、気絶した。

 

 

 

 

 

『ちゅーしよー?ちゅー…』

「あらら、気絶しちゃった…悪いけど、ここまでね」

『ちゅー…』

 

 完全に意識を失い、力なく倒れる天狗の少女。

 それの身体を持ち、ゆっくりと首を支えながら、彼女は祟り神に話しかける。

 

「ごめんねー?流石にファーストキス?が君になるのは可哀想だからさ」

『ちゅ、ちゅー…』

 

 実際、この少女が接吻を経験していない…と決まったわけではないが、それにしても少し、意地悪が過ぎるというもの。

 彼女の言葉に、祟り神は心なしか、どこか残念という風の顔を見せて、どんよりとした空気を醸し出す。

 それを見て、彼女はいたずらっぽく笑って、自身の唇に指を重ねて――

 

「はいはい、また今度ね」

『ちゅー!』

 

 その指を、祟り神の口に向けて近づけて、リップ音を指で表現して「ばいばい」と、別れの挨拶を交わしてから、その祟り神を仕舞った。

 

「さて…問題はここからだよねぇ…」

 

 視線を下に、完全に意識を失い、倒れ込む天狗の少女に腕を伸ばし、首を支えながら持ち上げる。

 同時に鉄輪を生成し、飛行の準備を終えてから、彼女はふわりと宙に浮く。

 そして、少女の寝顔を眺めながら、彼女は呟いた。

 

「この子…どっかで見たような……」

 

 

 

 


 

 

 

 

「ただいまー」

「おっ!帰って来たぞ!」

「おうおう、もう終わったのかい」

「まぁねー、それでさ?ちょっと聞きたいことが…」

 

 最初に反応したのは、白蛇の頭上に鎮座する姿勢のチルノだ。その隣で浮遊していた大妖精も、すぐに彼女に気づいて、顔を綻ばせた。

 それに続いて、万が一のために、白蛇の身に隠れる形で待機をさせていた、てゐとマエリベリーもまた、高度を下げて着地する彼女に気づき、視線を向ける。

 そしてすぐ、彼女が腕に抱えている少女、天狗の象徴である立派な羽を見た途端に、てゐは一気に面倒臭そうな顔へ――

 

「あー…あんた、また厄介事を持ち込んで来たのか」

「ちょ、今回ばかりは違うって!寧ろこの子が持って来た…というかやって来た?っていうか…」

「ふぅん…」

 

 じとー…そんな効果音が聞こえそうな、何かを訴える半目のてゐ。

 それに、彼女は頬を掻きながら、ぼそりと返す。

 

「いやぁ…中途半端な気配の抑え方はよくないね、次は人間に擬態する勢いでやるよ」

「あー…うん、なるほど?大体わかったわ、災難な奴だね…そいつも」

「まぁ見た感じ…結構若いらしいし?勘違いも仕方ないっちゃ仕方ないけど…」

「う、うぅん…」

 

 彼女の腕の中で、少女が動く。

 それに気づき、てゐやマエリベリーは軽い警戒の体勢を保ちながら、その顔を観察する。

 もぞもぞと、彼女の腕の中で身体を横に、数回捻り、そしてハッと目を開けて。

 

「あ、起きた」

「ッ!」

 

 彼女と目が合い、硬直する。

 そして、今の自分の立ち位置を理解して、すぐに翼を動かし、垂直に飛び立とうと力を込めて――

 

「洩矢の鉄の輪」

「ぐっ!」

 

 すぐに、彼女があらかじめ用意していた、直径10数cmほどの小型の鉄輪。

 それを2つ、それぞれ少女の足、手に放ち、そして締め付けることで、一瞬で身動きを封じる。

 バランスを失い、少女は墜落。まだ低空とはいえ、自由の利かない姿勢で落下したせいで生じる痛みに、顔を顰めて、忌々しく言い放つ。

 

「…兎、妖精に人間までも…何の用でここに」

「あれっ、気絶してる間にメンタル回復した?」

「うへぇ~…天狗らしい、仕事熱心なことで」

 

 呆ける彼女。頭を振りながら「はー全く…」と、呆れたように言うてゐ。

 そんな2人の視線に、不愉快だと眉を顰め、少女は更に怒りで皴を深くする。

 両手足を縛られ、身動きの取れない…そんな少女の姿を、今まで状況を見守っていたマエリベリーが、そっと近づいて、覗き込みながら言う。

 

「天狗…凄いわ、本当に羽が生えてるのね」

「綺麗な羽だよね~、これ手入れしてるの?」

「くっ…触るな!」

「うわっ!めっちゃフワフワ!」

「ひゃ…っ、さ!触るな!」

 

 つんつん、まるで猫を触るかのような、絶妙な力加減で翼を触り、そして感心した声を漏らす2人。

 それにシャーッ!と、まるで威嚇する猫のような形相で、睨み続ける少女に、てゐは「あー、はいはい」と、両手で音を鳴らしながら、切り出した。

 

「2人とも、弱いもの苛めはそこまで、とりあえず事情聴取だろ?」

「苛めてないもーん、ちょっと脅かしただけだもーん」

「…どうだか」

 

 ぴゅーっと口笛を吹きながら、そう返す彼女を、てゐは再び半目で睨む。

 そして、じろりと少女に視線を向けて、聞く。

 

「で、とりあえず…あんた名前は?」

 

 てゐの問いに、少女はしばらく考え込み、そして己の視線を、てゐの視線と合わせて、そして沈黙を降ろす。

 そうしてしばらくして、本当に小さくだが、少女は自身の名を、零した。

 

「めぐむ…(めぐむ)だ」

「へぇ、龍か。それだけじゃないだろう?」

飯綱丸(いいずなまる)…飯綱丸龍だ。これでいいか?」

「…!」

 

 ――飯綱丸龍

 その名を聞いた瞬間、ブワッと彼女の気配が膨らんだ。

 それに気づいたてゐやマエリベリー、天狗の少女――龍自身も、一気に冷や汗をかきながら、息を吞んだ。

 

「あ、ごめんごめん。ちょっとびっくりしちゃった」

「…それはこっちの台詞だっての」

「ごめんね、てゐ」

「肌がブワッって来たぞ!」

「ごめんよチルノ~?」

 

 調子よくそう返す彼女と、先ほど一瞬あふれ出した、あの厄の気配に一切臆さず、ケラケラと笑うチルノだが、隣では大妖精が気絶している。

 恐れなどない。種族、実力といったあらゆる壁を超える、純粋なる友好関係の成す会話。

 天狗という、上下関係に重きを置く種族故に、彼女たちの持つ空気、そして交わされる言葉が、不思議なもので――

 

「お前、神なのだろう?」

「んん?まぁね?祟り神やらせてもらってるよ~ん」

「妖精だろう、そいつは」

「んんん?でも年上だし…あといい子だし…」

「……」

 

 随分と、掴み所のない神だ…と、龍はそう思う。

 いるだけで鳥肌の立つ、恐ろしいでは言い表せない気配と、それに見合う実力を持っているだろうに。

 あろうことか、神という存在に比べれば弱小で、そして惨めな存在であるはずの人間、更に兎や妖精と、対等な立ち位置で会話をしている。

 恐れている…のは確かだろう(チルノは例外だが)しかし、それを大幅に上回るほどの、彼女たちから放たれる、信頼の矢印。

 ――この旅で築かれた、友愛と呼ばれるそれが。

 

「てゐはね、私が初めて出会った人…じゃなくて兎でねぇ」

「おい、目の前でいきなり何を話すんだあんたは…」

「私がいつか国を作ってね、その時は絶対、彼女を呼ぶって決めてて〜」

「おい、それ今言っていいのか?」

 

 てゐの言葉を無視して、そうしゃがみ込みながら、龍の顔を覗いて、続ける。

 

「まぁとりあえず、皆私の大事な旅仲間、だから神に跪けー!とか、そーゆーのはナシ」

「…変な奴だな」

「愛嬌のある神様、目指してますから」

 

 危険度は依然として変わらない、だが少なくとも、龍が最初に持っていた警戒心は、少しずつだが、晴れていった。

 さてと、彼女が両手を腰に置いて。

 

「んじゃ誤解も晴れたことだし…これで解け…」

「いや、それは違うだろ…」

 

 ふんすっ!そんな音が聞こえるような、彼女のドヤ顔に対して、いやいやと、てゐが反論する。

 

「あんたの気配に騙されたこの子と違って…残りの大天狗たちは、ちゃんとあんたの実力や危険性を感知してる、だから今も停戦…というか、無干渉を決め込んでるんだろ?」

「え?うん多分」

「縄張り意識と仲間意識の高いあいつらだ、いくら子供とはいえ、自分の仲間がみすみす捕まって…黙って放っておくと思うのかい?」

「いや、あなたも子供じゃ…」

 

 思わず口に出してしまった、マエリベリーのその言葉に、てゐはじろりと、軽く睨みを利かせてから、フンッと鼻を鳴らす。

 そして、くいくいっと、自分の方へ手招いて、「こっちに来い」と暗に伝えた。

 彼女もそれに気づき、頬と頬が触れそうなほど、接近してから、話す。

 

「天狗の厄介なところは数、もそうだけど統率だ」

「う、うん?」

「わかってる?あぁ…最悪立ち向かえばいい…なんて思ってたんだろうね、その顔じゃ」

「…あはは」

 

 気恥ずかしそうに、彼女は笑って、視線を泳がせる。

 だが、それを戒めるように、てゐの目が強く、そして鋭く光って。

 そして続く言葉に、彼女は顔を呆けさせた。

 

「最悪、私のことは気にするな。マエリベリーとチルノ、あと大妖精は絶対に最優先で」

「…え?」

「最悪って言ってるだろ。これでも長生きなんだ、もしもの想定くらいは既に終わってる」

 

 天狗とは、山…いや、文字通り天を操るに至る、空の支配者というべき種族。

 神々にすら匹敵するほどの、その圧倒的な個の強さと、そしてそれが束ねる無数の群。

 いくら、洩矢諏訪子という祟り神が特異とはいえ、"数"というものに対しては、どれほど抗えるかはわからない。

 ――しかし、彼女は笑う。

 

「何言ってんのさ。私は、君が一番大事(最優先)だよ」

 

 あまりにも真っすぐな、その好意。

 

「…あ~~っ…あんたって奴は…ホント調子狂うわ…」

「ふふ~ん、心配してくれてありがと、でもね…」

 

 ――ズアッ!

 彼女の足、そして影から這い出る、無数の腕、百足、蛇、犬のような形をした、無数の祟り神たち。

 足元だけではない、彼女の髪が靡き、その背後から現れる、亀裂の入った空間から見える、血涙を流す巨大な単眼。

 それら全てが、社に祀られるほどの神力と、圧倒的な存在感を持っている。

 

「"私たち"は最強だから」

 

 驕り、過信、しかしそれが問題にならない、確立された実力の全て。

 どこまでも彼女らしい、その自信に溢れた立ち姿に、てゐは満足そうに微笑んで、そして話を終わらせた。

 

「…うそ」

 

 ――だが、1人は違う。

 その、沸き立つ祟り神たちを見て、龍はありえないとばかりに、呟いた。

 

「そんな、まさか…神格を分け与えて…?」

 

 しかしその言葉は、龍以外の誰にも聞こえず、虚空に溶けていった。




 オリキャラは複数出さない主義ですので、天魔の設定とかもある程度ぼかして行きます。
 鬼子母神とかも…出す予定はないですね、やはり原作キャラが一番ですので。

呪術廻戦はどこまで知ってる?

  • 最新の単行本(人外魔境)まで
  • アニメの内容(渋谷事変)まで
  • あまり知らない(領域展開は知ってる)
  • 全部わかる
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