【本編完結】諏訪子様になった、負け戦を回避したい 作:洩矢廻戦
「"
東風谷が刀を抜く。
倒壊した土壁の上で、禍々しい虎の身体が一際大きく、その肉を膨張させる。
満月による特殊環境。そこから配給される、文字通り肉体を作り替える程の、凄まじい量の妖力。
まるで猪のように、鋭く大きな牙が、人間の顔から突き出している異形。
それが見せる、愉悦と感心。そして傲慢が入り混じった視線。
【
檮杌は知っている。
彼女は陰陽師、人間でも類を見ない異能。妖怪の無条件調伏ができることは知っていた。
取り込んだ妖怪は、この世とは違う亜空間に送られ、いつでも彼女の命令、意志一つで、一瞬で、しかも媒介を必要とせずに繰り出せることも。
だが、今はその心配はいらない。
その数は1000万。集めた妖怪はどれも木端の、それこそ等級で表しても、せいぜいが3~4級に過ぎない、烏合の衆。
ただ攻めるだけなら、それこそ、これがただの戦いなら、それらはいとも簡単に、彼ら陰陽師によって簡単に、討ち滅ぼされていただろう。
だから、待った。
満月という、妖怪にとって最高の場と空間を。
だから、選んだ。
――都という、人間共の急所を狙うやり方を。
絶対的な個には、どれだけ数を揃えようと敵うことはない。
認めたくはないが、特にこの陰陽師は、絶対的な個の力を秘めておきながらも、その実数すらも持っている、正に例外。
檮杌は悩み、そしてその両方を削ぐやり方を、最適な戦い方を選んだのだ――
「ッ…!」
【どうした、気分が悪そうだな?】
檮杌の笑みは、それはもう醜く歪んでいて。
成功した作戦。そして知恵比べで上回るという、最初の勝負の勝ちという美酒に酔う。
「っせぇな…!さっきから…!」
【人間風情。それもあれだけの量の駒を操作するのは堪えるだろう?無理をするな。脳が焼き切れるぞ】
「そうしたら…さっさと帰ってくれるっての…?」
【いいや、殺すさ】
髪を掻き毟る勢いで、頭を必死に押さえて苦しむ東風谷が、更に顔を顰めたのが見える。
陰陽師とは皆、これだから簡単に扱える。
檮杌は笑って。
【そうだな…今、東の方には野犬から妖怪になった者が多くいる。彼らは小さく俊敏でな、お前が一体でも駒の顕現を解除すれば、そこを狙う】
「…!」
【お前が一匹、苦痛から逃れる為に能力の使用を止めれば、何も知らぬ哀れな人間を二人殺す。どれだけ必死に守ろうと、殺して殺して、それが無理でも、腕か足でも捥いでやろうか】
「このっ…」
【そうして痛めつけて、『貴様のせいだ』と嘲笑う。お前のせいで死んだのだと、そうして永遠に勝ち誇ってやるわ――!】
「はっ…クソが」
――とことん悪趣味だ。
そう付け加えて、東風谷はふらつく身体を何とか、意志の力で奮い立たせ、目前の邪心を見る。
檮杌は文字通り、
四凶。つまり最悪なことに、彼と同格の存在はあと、三匹この国に来ているということで。
(渾敦と窮奇は…詳しく知らないからパス。となると…最後に残ってるのは饕餮だけど、これも今は除外)
残る邪神がどこにいるか。
新たな騒動の種であるが、今、それを憂うような余裕はない。
そもそも――
「お前、一体どうやって身体を治した?」
懐疑があった。
【何のことだ?】
「…お前の身体、妖力の流れが不自然なところがある。多分、前に怪我をした場所だろうね」
【……ほう】
「そこだけ、痛みや違和感を庇うように、妖力が過剰に纏ってある。――でも、
満月による、妖力の外付け配給。
それを除けば、よく見るとそこには、平常通りの総量を保ったままの、邪神特有の、膨大な妖力が感じ取れる。
妖怪は人間と違って、自己補完の妖力が少なく、そして回復速度も、非常にゆったりとしたもの。
彼らは最初から、生まれた時から膨大な量の妖力を持てる代償に、一度消費した場合の、自然回復する速度のみ、釣り合いを取るかのように遅いというのが、最近の研究で分かったのだ。
その最たる例が領域展開。
彼らが一度領域を展開すれば、平常時の総量に戻るのに、約十日はかかるとさえ言われている。
だが、今の檮杌は違う。
身体を治した形跡も、そして今の反応から見れば、それなりの重傷であったのも確か。
それはつまり――
「
彼に、協力した者がいる。
視線を鋭くして、東風谷がそう問うと、彼は。
【…さぁな】
あくまでも、とぼけてみせた。
【それより、今の貴様にお喋りをする暇があるのか?こうしている間にも、我が同胞は人間を襲い続けているぞ?】
「……だね」
――そう、今はそんなことどうでもいい。
痛みで思考が回らない今、するべきことはそれじゃない。
とにかく最優先。最短で、そして最善の行動とは。
東風谷は刀を構え、同時に隣に立っている、矢を番える協力者に話しかける。
「ねぇ、君の名前聞かせて」
「八意■■。地上の発音で永琳よ」
永琳は、先ほどの会話の最中も、決して隙を見せることなく、檮杌の額に矢先を向けていた。
空気が凍てつき、破裂しそうな拮抗。
檮杌は全身に妖力を。
両者、人間の彼女らは武器に霊力を込め。
そして、最低限の言葉を交わし。
「封印の結界が通じるくらいには弱らせる。――行くよ」
「了解」
弓と矢。刀一本で、彼女たちは邪神に戦いを挑む。
最初に動いたのは檮杌。
【消えろッ!】
巨腕を振り下ろし、地面を揺らす。
【~~――ッ■■。――行け】
それと同時に、巻き上げた砂利に向かって、耳で聞きとれぬ程の高音で、何かを叫ぶ檮杌。
次の瞬間、空中を舞っていた砂利が、透明な風の刃に向かって、収束する。
そして、それを纏った、真の風の刃が、檮杌の合図で再び疾走する。
ただの風ではなく、砂利を混ぜて殺傷能力を上げた風。
霊力の強化を施したとしても、下手をすれば肉を抉られ、骨が露出するであろう、その威力。
一歩、東風谷が前に出る。
「永琳、後ろに」
それを信じ、永琳が走る速度を僅かに落とす。
ちょうど、東風谷の背中に隠れる位置をキープし、一定の速度を保ちながら。
風の刃が襲い掛かる、その直前。
東風谷が刀を、縦に構える。
それと共に、彼女の霊力が具現化し、そして気質を象徴する赤い蛇が、己の尻尾に顔を近づける。
それは異国の、ギリシャで伝わるシンボルの一つ、ウロボロスを模した動き。
だが、それともう一つ、それが意味するシンボルは――
「"
東風谷、そして永琳の身体を包むように、巨大な輪となった赤い蛇。
それが銀色の光を放つと共に、その身体を高速で回転させ。
目前に迫った風の刃。その全てをぐるんと、
【何…!?】
「――っ!あれは…」
唯一、永琳のみが、周りを漂う赤い蛇の正体に気づいた。
能力による物質・生命の具現化。それらと簡単な結界術、追加で空性結界や浄界のような、高度な結界術で行える物質の形成。
それの材料は主に霊力で、そしてこの蛇もまた、それらとそう違いはない、霊力によって具現化したもの。
だが、これはそれより遥かに上。
霊力を体外で物質化するというプロセスを必要としない、あれは
人体では生成・保持できない程に、高密度に練り上げられた力。
ただでさえ、霊力とは妖怪、そして檮杌のような"
それを、更に何十倍、何百何千倍にも練り上げたそれは――
「"
【ッ!?】
再び、輪の規模を小さく、そしてそれに比例して加速する、赤い蛇が織りなす
東風谷が刀を、上から下に振ると同時に、霊力そのものである、その肉体を飛ばす。
それは奇しくも、本来の
一瞬、反応が遅れた檮杌の左前足が、根本から切断され。
【その呪具、厄介だ――!?】
横に跳んだ彼が見たのは、こちらを
妖力の過剰生成、人間が使う反転術式の原理を、咄嗟に再現し、自然治癒力を高めることで、檮杌はすぐに足を治す。
そして、取り戻した身体能力による踏み込みで、再び、真上に跳ぶ。
歯車もまた、直角に軌道を変更して、追う。
檮杌はそれに、深く息を吸ってから――
【――消えろ!】
自身の鼓膜を震わせ、破る程の大音量。
そこに妖力を上乗せした、古代に君臨する最悪の音響兵器が顕現した。
そのあまりの声量に、歯車は形を維持できず、空中で霊力が飽和し、分解され。
味方の筈の、今も都で暴れている妖怪たちも、その場で蹲る程で――
【ここからなら…ッ!?】
「滞空できるんだもんなぁ」
視線の先。
先ほど自分がいた地上に見えたのは、弓矢を両手に、依然として戦闘態勢を崩さない、永琳。
だが、その前にいた筈の、彼女の姿が見えず。
檮杌が聞いたのは、彼女が頭上から、こちらに話しかける声で。
「私でも上に逃げる」
【貴――】
――呪具・
【――様ァアア!】
――"
――"
「遅い」
檮杌が再び、息を吸って二発目の攻撃を放つ直前。
空中を蹴るように加速した東風谷が、刀を垂直に、檮杌の額に向ける。
――その足元には、小さな歯車。
激しい霊力を代償に、肉体に『"
空気の"面"を打ち、蹴り、回転する歯車を押し付けることにより、東風谷は踏ん張りの利かない空中と言う戦場でも、地上と変わらない機動力を手にした。
そして、最後の――
「"
それは、残された三つ目の能力。
歯車が持つ回転、そして熱も全て、刀身の先に集中させる。
火力以外の全てを捨て、応用性・攻撃範囲・インターバルの短さを全て犠牲に、全てを乗せた一撃を体現する。
赤く、霊力が織りなす赤い蛇のそれと同じ、真っ赤に燃える刀身が、その攻撃力を物語る。
『"
人間が使える最大最強の一撃――!
「――これでちょっとは弱ってくれ」
【ッがぁァアああアアアッ!!??】
刀を突き立てた瞬間。
檮杌の、音響兵器として機能はしないものの、それでも、思わず耳を塞ぎたくなるような、大音量の叫びがこだまする。
落下の勢いに身を任せ、戦いが終わった後、これから後の自分の状態を、今だけは勘定から省く。
身体許容量、それの三倍である膨大な霊力を身体に、刀に流し込みながら、墜落。
それと共に、今も尚並行で進めている、都の防衛戦。
戦いが始まり、およそ2分。
1000万はいた筈の妖怪の群れが、今ではもう、半分を切っているのが見える。
檮杌の評価である「烏合の衆」は、どうやら間違ってはいないようだ。
この調子なら、このまま檮杌を弱らせ、プラン通りに封印作業を開始する。
――だが。
(ッ…!?――~~~!!!)
しかし――
(ふざけんなよ…!嘘だろこいつ…!?)
それでも、彼は――
【陰陽師ィイイイイイッッ!!!!!】
――檮杌は、致命傷には至っていない。
妖怪だろうと、心臓もそうだが、"核"と呼ばれる、人間にとっての脳にあたる部位が存在する。
東風谷は今、最大速度で突っ込んだのにも関わらず、決して手元が狂わないよう、全力で刀身を片手で支え、寸分の狂いなく核を貫いた。――筈だった。
それでも、彼は今も、消失反応を見せるどころか、核を潰されたことで弱る様子も見せていない。
一体なぜ、そう思ったのは一瞬だけで、檮杌の怨嗟の叫びと連動・共鳴し、貫いた場所にあった、他と比べて濃くなっていた妖力が消え。
――代わりに、そのすぐ隣から、正真正銘の核、妖力の強い反応が見えた。
(こいつ…!妖力操作で核の位置にブラフを…!?)
想定するべきだった。
最初から、こいつは木端の妖怪とは違う、別の国から来た邪神なのだ。
この程度、基礎的な技術である妖力操作くらい、考えて警戒するべきだった。
(不味い、意識が…!)
身体許容量を超えた、力の運用と並列演算。
逆に、今も脳が焼き切れていない方が奇跡とも言える、それ程までに、東風谷の肉体と精神は限界であった。
フュオオ…と、何かが吸い込まれる音が、東風谷の耳に入る。
【今度こそ…】
「ぅぐ…!?」
落下に身を任せている現状、刀を檮杌の頭から抜くのに、東風谷は苦戦してしまう。
ただでさえ、疲労で力が入らないというのに、既に『"
檮杌が口を開く。
その喉奥から、再びあの音が――
【貴様をご子rぉス――!?】
聞こえる直前。
檮杌が紡いだ言葉が、喉からの出血と共に汚濁に汚される。
溜めと共に、再び大気を割る程の威力を秘めた、あの叫びが来る代わりに、東風谷の頬の傍を通り過ぎたのは、――矢。
落下の勢いで、貫かれ、穴を開けた檮杌の喉に血が溜まることはなく、その穴から、地上の様子が覗いて見える程。
東風谷は見た。
今の今まで、自身の持つ霊力をずっと、ずっと一本の矢に集中し、流し込んでいた彼女、永琳が。
ようやく、その最終兵器を、檮杌の喉に放ったのだと。
「――風、そして最初に砂利を纏わせたのを見れば、ある程度は予想できるわ」
ずっと、永琳は檮杌の
檮杌が、そして東風谷が、必ず互いに致命的な隙を晒す、作ることを確信し。
風の抵抗、そして物理法則の全てを、一瞬で暗算し、待機。
そして永琳は、――その賭けに勝った。
「核は無理だったけど。――喉を抉れれば充分かしら?」
永琳はすぐに、弓矢を放り投げ、代わりに両手で印を結ぶ。
科学の発展した月では、もはや滅多に見ることはなくなった、人間が使う原初の結界術。
『浄界』と呼ばれる、地上の人間にとっては、最高難易度のものとされる、魔を封じ、弱体化させる結界術の頂点。
それが、落下する檮杌の身体に纏わりつき。
「期日は一週間。――それまでの間に、何とかしてみなさい」
【――人間ンンンンッッ!!!】
唯一、人間の東風谷のみが弾かれ。
正八面体の結界、それに封じられた檮杌は、叫ぶ。
「後は、地上の人間たちが上手くやってくれるでしょう」
【…!】
「私が出しゃばる必要はなく、あなたは地上の聖人に、討ち滅ぼされるでしょう」
【…ククク】
結界の純度が高まり、既に檮杌は、意識を失ってもおかしくはない。
だが、永琳のその言葉を聞き、それでも、彼は意識を失うことなく、むしろ邪悪に、笑った。
【ク、ククク…!ククッ】
「……」
【クハハハハハ!!】
そこに、驕りや小細工はなく。
檮杌は、ギラついた目を大きく広げ。
血を吐きながら。
【『地上の人間が上手くやる』…貴様はそう言ったな】
「…?」
【この俺に歯向かった罰だ】
ただ、純粋に。
空洞のできた喉、それが痛むのもお構いなしに。
笑った。
【その望みを……絶つ……!!】
息を吸い、大声で。
【聞けェ!人間共!!】
「――!?」
永琳の用意した浄界は、閉じ込めた者の声を封じる機能はデフォルトでは備わっていない。
喉を穿ち、声による攻撃はなく、仮にできたとしても、あの怪我でできることなど、限られていると思ったから。
――だが、月の賢者唯一の誤算。
――恨みが、憎しみが、精神が、彼の肉体を凌駕していた。
【不思議だと思わなかったか?何故俺が、一度は人間に
攻撃性を捨てた、ただの叫び。
これといった処置、対策など必要としない、ただの負け惜しみの叫び。
――永琳にとって
【教えてやる!!】
都中に響く声。
陰陽師も、一般人も、老若男女問わずがそれを聞く。
檮杌が一度、ある人間と戦い、そして敗れたことなど、都の人間たちからすれば、知ったことではない。
だが、
【
無視できないものだった。
妖怪が、都を襲った。
「…ぇ」
――都の犠牲者は、ゼロ。
その噂を聞いた時、白蓮は、ただ純粋に安心した。
東風谷、そして崔爾の二人が、山から土砂崩れのようになだれ込む妖怪と、それの首謀者である、凶悪な妖怪の相手をした。
特に東風谷に関しては、彼女が持つ能力もあって、都で壊滅的な被害を受けたのが、建築物だけで済んだ理由の大半を占めている。
それ以外の、一般人の避難や護衛、そして他陰陽師の助力に、崔爾もとても活躍した。
良かったと。そう思った。
「――なんで」
家を失い、迷う人がいる。
それなら、自分も力になれるのでは。そう思った白蓮は、村紗や一輪に内緒で、こっそりと都に下りて、道を歩いた。
ついでに、以前依頼で世話になった、都から外れた位置にある、あの村を――
「…なんで」
――都
白蓮の目の前に広がる、血と臓物の海。
倒れた民家の残骸からは、縦に裂かれた人間の腕が。
その隣には、無造作に齧られ、半分も原形を残していない、老人の遺体。
下半身を無くし、胸を齧られ、肺や胃を露出したままで放置されている、子供の死体。
ぐちゃぐちゃ。どれも、全てが。
かつての優しい空気も、笑い声がこだまするあの村は。もう、ここにはない。
地面一帯、もはや赤くない場所など存在しない。
それは、正に地獄絵図であった。
「聖」
背後に、いつの間にかナズーリンが立っていた。
今も尚、目の前の惨状を受け入れ切れていない、白蓮に、彼女は話しかける。
「……なんで」
「聖」
「どうして、なんで、犠牲者は、いないって…」
「…聖」
「なんで、それに、こんなの――」
「――聖」
だが、言わねばなるまい。
ナズーリンとて、聖白蓮という人間が好きだ。
監視、毘沙門天の使いとして、地上に降りたのがきっかけだった。最初はそれだけだった。
だが、ナズーリンとて命を持っている。生きている。
毎日、彼女と会話を交わし、その儚い理想と、厳しい現実の狭間で生きる彼女が、大好きだった。
――だが、それでも。
「君は以前、虎の妖怪を助けたと言ったね?」
「……」
「……都を襲い、そしてこの村を滅ぼした妖怪は、檮杌。人間の顔と、猪みたいな牙を持った…――虎の身体をした邪神だ」
「…………………………ぇ」
以前に助けた。
虎の、虎――
「…そいつは今、都ごと結界で封じられている。……だが、ご丁寧に最後に、都中に響く大声で、君のことを喋ったよ」
「……ぇ」
「俺はそいつに助けられた、あいつが俺の身体を治した。…あいつのおかげで、俺はこうして人間に復讐を……」
「……は?」
白蓮の顔は、引き攣っていた。
ナズーリンは、血が出るくらいに拳を握りしめていて。
絞り出すように、続けた。
「……………………最後に、俺に恥をかかせた
――以前も、あの子が使い終わった後の退治道具を片手にやって来て、何があったの?って聞いたんです。そしたら…
――…そしたら?
――あの子、これがあるから大丈夫って。そう言うんですよ、それに、私はもう妖怪を倒せるんだって…
「既に、讃岐造含む、崔爾を中心とした征伐部隊が結成された」
血と腐臭。
ぴちゃりと、土に染みた血液が、足にくっつく音のみがある世界で。
ナズーリンの声が、残酷に響き渡る。
「――聖白蓮。人でありながら妖怪に加担し、妖怪との共生を望む、極悪人。…そして、魔法という力に魅入られた、重罪人の処刑」
――妖怪と共に過ごしたい。
――自分は純粋な人間ではなく、魔法使いである。
そのどれも、あの日に救った虎妖怪に語った、自分の情報だった。
「なん、で……」
――違うだろう。
「…聖」
「なんで、なんで……」
「聖…君は」
「なんで!?なんで!!」
白蓮は、首を振って喚くだけ。
なんで?そんな台詞を、――自分が吐ける価値などない癖に。
覚悟したはずだ。
自分が救った人が、妖怪が誰かを傷つけても、それが己の罪だと。
それでも、自分は彼らを救ってみせると。
「なんで、こんな…!?」
「…」
ナズーリンは、何も言わない。
何も言えない。これは、白蓮の罪と、いつかは崩れる予定だった、張りぼての達観であるから。
痛ましくて、見ていられない。
今の白蓮は、泣くことすらもできずに、首を振って、現実を直視できない。
何度も、何度も喚いて、否定して、目を逸らして。
ふと。
「――あ」
見えた、死体。
比較的、他の人間のとは違って、欠損している箇所も、血に濡れている面積も小さい。
――少女。
それが、うつ伏せの体勢で。そこに。
「――ッ!」
もしかしたら。
もしかしたら、まだ息があるのかもしれない。
白蓮は、もう必死だった。
その、うつ伏せの少女の肩を掴み、ゆっくりと持ち上げ。
「大丈」
――ゴトッ…
持ち上がったのは、
鼻から上の、一刀両断された少女の頭が、切断面に
「………あ」
――おもくない?
――重くないですよ、大丈夫大丈夫。
あの子だ。
「………う」
――んー…
――それじゃ、早く帰りましょうか。
あの、小さな村の子供だ。
「うう"う"う"う"ううう"うううう"う"う"ううう"う"え"っ」
胃の中にあったものを、白蓮は全て吐いた。
血で真っ赤に染まる地面を、己の吐瀉物が上書きする。
――私は、死がとても恐ろしい。だから、自分が死んだ時のことなんて、想像だってしたくないし、できない。
――だからこそ。生き様で後悔はしたくない。
「…死ね」
――お前だけ。
「死ねっ…死ね…!死ね死ね死ね死ね!ッ!死ね!!死んでしまえ!!!」
――この人たちの代わりに。
今すぐに。
「………死んでよ」
自分だけ――
"U R MY SPECIAL"
以下、没にしたカグラバチネタのサルベージもとい作者のネタ帳。
『
刀モチーフ→ギア・歯車。
技モチーフ→歯車に関連した数学関連の単語→"球"体・"円"形(球体の半径)・"点"(球体の接地面積)。
球は防御と受け流し、円は飛んで追尾する斬撃、点は火力メインの一点集中攻撃。
カグラバチ原作がもっと進んだら↑のでいつかは書くかもしれない。
評価とお気に入り気軽にお願いします。
投稿時間は何時がいいか
-
7:00~9:00
-
10:00~12:00
-
13:00~15:00
-
16:00~18:00
-
19:00~21:00
-
22:00~0:00