骨塚を倒したものの、収穫がさほど得られずバクラは戻る。
「お疲れ様。今日は収穫があったようですね?」
「ヘボデュエリストがオレイカルコスの力に頼って仕掛けてきたくらいだ。」
「そうですか…。別動隊は近日中には帰還するはずです。そちらもご紹介できるかと…お腹が空きましたか?」
「…ああ。」
「であれば、ご用意します。」
色んな野菜を煮込んだスープと硬めのパン。
茹でた海産物と芋に、多肉植物を合わせ、辛くて酸っぱいドレッシングがかかったサラダに、
野菜とひき肉が入ったキッシュ。
初めて見る異国の料理が取り分けられ、バクラはやや戸惑いつつ渡された取り皿を受け取る。
スープを一口のみ、数秒後。
「…うめぇな」
とバクラは呟く。
「お口にあったようで何よりですわ。さぁ、皆も食べましょう。」
各々、料理をバイキング形式で平らげ。その日はそれぞれ休む事になった。
―――――
バクラがぐっすりと眠っている頃。
防音対策が施された一室で、二人の女性が向き合う。
青い服を纏い、赤いズボンを履き、長い金髪を後ろでまとめている妙齢の女性。
もう片方は、紫色の髪の女性だ。
「何が、ありましたか?」
「…よくない知らせよ。名もなきファラオをラフェール殿が打ち破るも、奪えたのは器の魂。そしてアメルダ殿が海馬に敗れ、遊戯達と合流…。」
「カードの貴公子が相手では、アメルダ様でも荷が重かったようですね。」
「敗れるにしても、時間稼ぎをすればジェット機の墜落に海馬を巻き込めると思ったのだけど。」
それはバクラ相手に行おうとしたが、気づかれれば足止めすらできなくなると判断した計略。
「恐れながら。そもそもなぜバクラの足止めを?始末してしまえば」
「そういうわけにはいかなかった。千年アイテムの中でも、リングには厄介な能力がある」
「厄介、ですか?」
「パラサイト・マインド。バクラは複数の人間や物体に魂の分身体を潜り込ませている。今のバクラに宿っている意思が本元ではあるけれど、我々でさえ全ての分身の所在は把握出来ていない。」
「つまり、本元の魂を奪ったところで」
「別のパラサイト・マインドの分身が動き始める。私が彼の立場なら、千年パズルのピースにでもパラサイト・マインドを仕掛けるけれど…その事は可能な限り隠す。バクラも同じでしょうが、そこまで追い詰めてしまったら、彼も手段を選ばなくなるわ。」
「…では、どうやって彼を倒すのですか?」
「オレイカルコスの力は千年アイテムの力を上回っている。ダーツ様による星の救済は世界中に対して行われるわ。」
「?!分身体も本元も、まとめて葬り去れる?!」
「そういうこと。ゆえに、時間を稼ぐのが私たちの役割。とはいえ、状況が変わった。まもなく星の救済が始まる以上、時間稼ぎは十分。バクラを、処理するわよ。」
「かしこまりました。」
―――――
翌日。
朝食を終え、現地産の茶をバクラが飲んでいると。
「フローラ様!別動部隊の反応が途絶えました!!」
「落ち着きなさい。」
「何度通信を入れても応答がありません。おそらく…」
「場所を教えろ。」
「?!オブデニー地区です、バクラ様。」
「俺様が行く。手がかりがあるかもしれねぇからな。」
―――――
地図を暗記したバクラは、別動隊が最後にいたという地点に到着する。
「…あん?こいつは…」
ふと、カードが落ちている事に気づき、その中の一枚を拾い上げる。
オレイカルコスの結界に魂が封印されていた。
「すでにやられたか。だらしねぇ。さぁて、と。」
バクラは臨戦態勢に入り、そっと後ろを振り返る。
筋肉質な男がドーマのデュエルディスクを所持している。
「やったのはてめぇか?」
「いかにも。我が名はビンクス。ドーマのデュエリスト。」
「そうかい。だったらとっとと始めようぜ!」
「デュエルの前に聞いておこう。バクラよ、ドーマの軍門に下る気は無いか?」
「あ?」
「お前は、名もなきファラオと敵対している。神のカードを持たないにも関わらず、名もなきファラオをあと一歩のところまで追いつめた。今、名もなきファラオの手に神のカードは無い。ここでお前がオレイカルコスの結界を使えば、ファラオを倒せる。」
「俺様は、誰かの下につくつもりはねぇ。」
それは、バクラの信念。
千年アイテムの所持者であり、グールズという組織を纏めて神のカードを所持していたマリクであろうと、バクラは下につかなかった。
そもそも。千年アイテムを上回る闇の力を持つ組織の下について、名もなきファラオを始末すれば…次に始末されるのが誰なのか、答えは明白。
「ならばその魂、もらい受けるまで。」
「やれるもんならやってみな!」
―――――
「「デュエルッ!!」」
バクラ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
ビンクス ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
静かに闘志を高ぶらせるビンクスは初手にあった一枚のカードを手に取る。
「フィールド魔法、オレイカルコスの結界、発動!」
「ちっ、どいつもこいつも、順当に引き当てやがる。」
「モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
バクラ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
ビンクス ライフ4000
手2 フィールド セットモンスター
魔法・罠 オレイカルコスの結界 伏せ2
「俺様のターン、ドロー!魔法カード、苦渋の選択を発動!俺様はデッキからカードを5枚選択。その中の一枚をてめぇが選ぶ。さぁ、選びやがれ!」
「レッド・サイクロプス、夢魔の亡霊、絵画に潜む者、首なし騎士、死霊伯爵…悪魔族の通常モンスターばかりだな…。絵画に潜む者を手札に加えろ。」
「クククッ、俺様は墓地に眠る三体の悪魔族モンスター、夢魔の亡霊、絵画に潜む者、首なし騎士を除外!ダーク・ネクロフィアを特殊召喚!」
「来たか。お前のエースモンスターが。」
「さらにライフを800ポイント支払い、早すぎた埋葬を発動!墓地の死霊伯爵を復活させる!」ライフ4000から3200
「一気に上級モンスターが二体か。」
「バトル!行け、ダーク・ネクロフィア!そのセットモンスターを八つ裂きにしろ!念眼殺!」
「人造人間―サイコ・ジャッカー、守備力は2000、破壊される。」
「やれ、死霊伯爵!プレイヤーに、ダイレクトアタック!」
振り下ろされる剣をデュエルディスクで止めるビンクス。
「今、我を仕留められなかった事を後悔するがいい。」ライフ4000から2000
「俺様はモンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンドだ」
バクラ ライフ3200
手2 フィールド ダーク・ネクロフィア 死霊伯爵 セットモンスター
魔法・罠 早すぎた埋葬 伏せ1
ビンクス ライフ2000
手2 フィールド
魔法・罠 オレイカルコスの結界 伏せ2
「我のターン、ドロー!魔法カード、強欲な壺を発動!カードを2枚、ドローする。おろかな埋葬を発動!デッキから人造人間―サイコ・リターナーを墓地に送る。」
「リターナー…。」
「ここで人造人間―サイコ・リターナーの効果発動!人造人間―サイコ・ショッカーを墓地から特殊召喚する!」
「けっ、てめぇの墓地にそのモンスターはいねぇだろうが!」
「サイコ・ジャッカーはフィールドか墓地に存在する限り、カード名を人造人間-サイコ・ショッカーとして扱う!よって、人造人間-サイコ・ジャッカーを特殊召喚!」
後衛に呼び出されるサイコ・ジャッカー。
「ここで伏せておいた速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動する!我の場に攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚された時、同じ名前のモンスターをデッキ・手札・墓地から特殊召喚できる!」
「ちいっ!場でサイコ・ショッカーで扱われるって事は…!罠発動!陽動作戦!これでお互いにこのターン、セットモンスターへの攻撃はできない!地獄の暴走召喚の対象で俺様は死霊伯爵を選択するが、俺様のデッキに死霊伯爵は一枚だけ…!」
「デッキから現れろ、三体の人造人間-サイコ・ショッカー!オレイカルコスの力をえよ!」
攻撃力2900になった三体のサイコ・ショッカー。
「けっ。三体も入れていやがるのか」
「手札を一枚捨て、装備魔法、破邪の大剣-バオウを中央のサイコ・ショッカーに装備させる。これで攻撃力は3400!バトルだ、バオウを装備したサイコ・ショッカーでダーク・ネクロフィアを攻撃!破邪の一閃!」
「ちいっ!」ライフ3200から2000
「破邪の大剣-バオウを装備しているサイコ・ショッカーが破壊したモンスター効果は無効となる!さらにサイコ・ショッカーで死霊伯爵を攻撃!サイバー・エナジー・ショック!」
「ぐおおおっ!」ライフ2000から1100
「メインフェイズ2。中央のサイコ・ショッカーに装備魔法、レアゴールド・アーマーを装備。これで次のターン、お前がカース・ネクロフィアを引き当てて場に出したところで、中央のサイコ・ショッカーにしか攻撃できず、自滅覚悟で攻撃した所でカース・ネクロフィアの効果は無効になる。」
「……」
「勝敗は決したようだな。ターンエンド。さぁ、最後のカードを引け。」
バクラ ライフ1100
手2 フィールド セットモンスター
魔法・罠
ビンクス ライフ2000
手0 フィールド 人造人間-サイコ・ショッカー 人造人間-サイコ・ショッカー 人造人間-サイコ・ショッカー
魔法・罠 オレイカルコスの結界 人造人間-サイコ・ジャッカー レアゴールド・アーマー 破邪の大剣-バオウ 伏せ1
「クッククク、ヒャーッハハハハハハ!」
「何がおかしい?」
「てめぇはもう終わっているんだよ!俺様がドローせずともな!」
「ここから勝敗を覆せるとでも?」
「見せてやる!俺様のターン、ドロー!こいつを反転召喚だ!X・E・N・O!」
「先ほど、伏せカードで守ったモンスター…。だが、攻撃力200だと?」
「リバース効果だ!相手モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る!大層なモンスターじゃねぇか、中央のサイコ・ショッカーを頂く!」
「破邪の大剣-バオウを装備しているから攻撃力は3400だが…。お前の場に移動したことで、オレイカルコスの力は失われる。相打ちするつもりか?」
「相打ちだぁ?X・E・N・Oでコントロールを得たモンスターは、プレイヤーに直接攻撃ができるんだよ!」
敗北を悟ったビンクスは、バクラを睨んでいたが…。ややあって肩を落とす。
「…ふん。ライフを削り切ったわけでもないのに驕った結果がこれか。トドメを刺せ。己の不甲斐なさが腹立たしいが…悔いはない。」
「随分と殊勝じゃねぇか。バトルだ!やれ、サイコ・ショッカー!プレイヤーに、ダイレクトアタック!サイバー・エナジー・ショック!」
「……」ライフ0
オレイカルコスの結界が収縮し、魂が奪われる中。ビンクスは悲鳴一つ上げなかった。
―――――
バクラはぐるりと周囲を見渡す。
見知らぬ男女だ。敵意と恐れが半々、といった感じだ。
「お、お前は…。ドーマと戦っているのか?」
「まぁな。それで、貴様らは何者だ?」
「わ、我々はライカ同盟だ。」
「おいおい、別動隊ってのは貴様らか?」
「違う!別動隊なんていない!リーダーも、ドーマと戦えるデュエリストも、全滅してしまった…。」
「はぁ?フローラっていう女が、お前たちのリーダーなんだろう?」
「な、なにを言っているんだ。あの女は十数年前まで、ドーマの幹部だった女だぞ!」
「何だと?」
考え込むバクラ。
それに対し、ドーマと戦っているようだが善良ではないと判断し、蜘蛛の子を散らすように去っていく一団。
その後、アジトへ戻ったバクラは先ほど見かけた一団のが一人もいないことに気づく。
バクラの中で、疑念が確信に変わっていく。
オリジナルキャラクター紹介
ビンクス
ドーマの武闘派幹部。デュエル前にファラオとバクラの確執を理由にドーマに入るようバクラを勧誘するも拒絶。
バクラ相手に直接勝負を挑み、罠メタである【サイコ・ショッカー】で挑む。
バクラのエースである二種類のネクロフィア対策として破邪の大剣-バオウを投入して追い詰めるが敗北。