バクラの旅立ち
世界規模で発動していた、闇の力が消滅していく。
どうやら、遊戯達は勝ったようだ。
そうでなくては困る。これで心置きなく究極の闇のゲームを始めることが出来る。
そのためにも、日本へ帰国して遊戯達の動向を監視しておかねばならない。最悪、千年パズルにパラサイト・マインドしていた分身体が居る。
いざとなれば、そちらを使えばいい。
今まで自分を追い回していたサーリーンという小娘も、ダーツとやらが敗れた事で支部へ撤退したようだ。
とはいえ、当面の宿と旅費が必要。そのために、バクラは行動を開始する。
―――――
「ヒャーハハハハハッ!首なし騎士を攻撃表示に変更!死者蘇生を発動!死霊伯爵を特殊召喚!バトルだ、首無し騎士で古代のトカゲ戦士を攻撃!さらに死霊伯爵でダイレクトアタック!」
「うわぁああああああっ!」
ヴェルデン共和国のチンピラや犯罪者くずれ。そういった連中を始末して、財布の中身とデッキのレアカードをバクラは回収する。
(あの小娘のせいで、とんだ回り道を食った。早いところ遊戯達と合流しねぇと究極の闇のゲームに遅れるかもしれねぇ。)
戦術的勝利をつかんだが、足止めされた挙句…ドーマとの最終決戦の場にバクラは間に合わなかった。
戦略的敗北を喫した事もあり、勝利の美酒に酔うにはいささか不純物が多すぎる。
「おい、そこのよそ者!」
「あん?」
制服を纏った5人の集団。先頭の茶髪で大柄な男は嘲った感じでバクラを見下ろす。
「俺様に何の用だ?」
「善良な市民から金とカードを奪った強盗罪で逮捕だ。最も、お前が金とカードを全て渡すなら、多少考えてやる。」
「俺様から上前をはねようってか。大したお役人サマだなぁ、おい。奪いたければ、力づくで来な。」
バクラがデュエルディスクを構えると、ジャンゴは怒りを滲ませる。
「身の程しらずが!力の差を思い知らせてやる!」
「先輩、どうしたんだろう?」
「デュエルせずに捕まえちゃえばいいのに。」
「みんな、何を言っているの?やばいわよアイツ!」
「どうしたんだ?顔色が悪いぞ?」
後ろに控えているのは新人なのか、真新しい制服を着ている。
金髪の青年は首を傾げ、同じく金髪ツインテールの女は同調。
黒髪でおかっぱ頭の女はバクラを見て露骨におびえ、モヒカンの青年はそんな同僚を心配する。
―――――
「「デュエルッ!!」」
バクラ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
ジャンゴ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻は俺だ、ドロー!俺はジャイアント・オークを召喚!カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
バクラ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
ジャンゴ ライフ4000
手3 フィールド ジャイアント・オーク
魔法・罠 伏せ2
「俺様のターン、ドロー!フン、モンスターをセット、リバースカードを2枚セットし!さらに永続魔法、魔力の枷を発動!これで貴様は、手札のカードを発動するたびに、500ポイントのライフを失う!ターンエンドだ!」
「こざかしい真似を…。」
バクラ ライフ4000
手2 フィールド セットモンスター
魔法・罠 伏せ2 魔力の枷
ジャンゴ ライフ4000
手3 フィールド ジャイアント・オーク
魔法・罠 伏せ2
「俺のターン、ドロー!魔法カード、撲滅の使徒!右の伏せカードを破壊して除外してやる!」ライフ4000から3500
「ふん…八式対魔法多重結界だ。」
「カウンター罠だとっ!良いカードを持っているな!俺は、ゴブリンエリート部隊を召喚!」ライフ3500から3000
「またか。」
「さらに永続罠、血の代償を発動!ライフを500払い、モンスターを召喚!ヘル・ドラゴン!」ライフ3000から2500、2500から2000
「おいおい。」
「永続罠、血の代償を発動!ライフを500払い、ダーク・ヒーローゾンバイアを召喚!!」ライフ2000から1500、1500から1000
場に並ぶ4体のモンスター。デメリット効果があるが、アタッカーとして及第点なモンスターの群れ。
「ライフを削られたが、このターンで終わりだな!」
「終わるのは貴様の方だ。罠発動!自業自得!」
「な、なにぃ?!」
「これで貴様は2000ポイントのダメージを受ける!」
「うわぁああああああ!」ライフ0
―――――
敗北したジャンゴは、黒い泥のような物体に包みこまれてその場から消滅。
「さて、次は誰だ?」
バクラが周りを見渡すと、残りの新人たちは即座に回れ右して逃亡する。
警戒していた一人はもとより、残りの三人もここに至ってバクラが普通ではない事を本能で理解した。
残ったジャンゴの分厚い財布から現金を奪うバクラ。
「まぁ、これで旅費は貯まった。釣りもあるぐらいだ…あん?」
バクラは手近なブティックに入る。バクラを見た従業員が顔を引きつらせる中、バクラは黒いコートに目をつける。
「おい、こいつを買う。」
「お、おつつみ致します!」
「いらねぇ、直ぐに着る。」
気に入った黒いコートを買って着込んだバクラは、街中を散策する。
「…美術館?」
何かに呼ばれている。これだ。オレイカルコスの力が世界中を覆いつくしていたから気づけなかったが…。
自分がこの国に来なければならない。そう感じた『何か』が、今、この場にある。
訪れた当初は閉まっていたが、今は開館している事で何かに導かれるように、入館するバクラ。
ヴェルデン王国の第一王子の妃に、と望まれた公爵令嬢に贈られたネックレス。
彼女が婚約破棄された上に第一王子の独断で処刑されたことで起きた大規模な内乱。その内乱を平定し、妹の仇を討った公爵家当主に捧げられた漆黒のマント。
帝政に移行するも、重要な政略結婚がいくつも破綻したために帝政が崩壊。その混迷期に統率力を発揮し、王政復古を果たした王女が王配から送られたベルト。
その後もたびたび変化する政体。その度に頭角を現した勝者が使っていたとされる煌びやかな美術品の数々。
その全てにバクラは一切目もくれず、ただ、進み続ける。
「…こいつは。」
それを見た瞬間。バクラは自分を呼んでいた『何か』がこの石板であると、魂で理解する。
「ディアバウンド・カーネル。俺様の、精霊獣…。」
バクラはコートの内ポケットを探る。そこにはまだ何も入れていないはずだったが。
何故か、カードが入っていた。レベル5の闇属性・悪魔族モンスター。
「…少しだけ。少しだけ思い出せたぜ。」
バクラはそのモンスターカードをデッキに入れると、美術館を後にして、当面のアジトにしているホテルへ戻る。
―――――
観光客向けのホテル、『黄金の羽飾り』にて。
入口から入ったバクラに気づいた従業員がすぐさま歩み寄る。
「お帰りなさいませ。」
「飯だ。」
「かしこまりました。お席にご案内します。」
バクラの好物は肉だ。
この国には、比較的未知の肉料理がある。
別にグルメ、というわけではない。だが、どうせ食べるなら良いものを食べたい。
日替わりメニューが運ばれてくる。
薄切り肉によく知らない果物のソースをかけ、そこにハーブが添えられた上品な肉料理を堪能。
バクラは部屋に入り、食後のコーヒーを啜りながら備え付けのテレビをつける。
『次のニュースです。日本に展示されていた古代エジプトの石板ですが、この度、エジプト本国へ返還されることとなりました』
「…チッ。もうひと稼ぎしねぇとな」
バクラは悪態をつくと、立ち上がって歩き出す。
バクラは知らない。
フローラがバクラをヴェルデン共和国へ引き込んで足止めする計画を立案したのは、ダーツ様の計画が成功すればそれでよし。
万が一ダーツ様の計画が失敗し、パラディウス社が危うくなれば…
ヴェルデン共和国内の小悪党をバクラに始末させ、腐敗した共和国議員の手駒を可能な限り減らす意図があったことを。
バクラが腐敗した共和国議員の手駒になって、パラディウス社支部の財産を奪おうとすることはないとフローラは読んでいた。
あのバクラが、誰かの下につくなどありえない。その推察は正しく。
バクラが究極の闇のゲームに敗北し、闇のゲームで葬られた悪人が解放されるまでの間。ヴェルデン共和国の犯罪者達はなりを潜めることになる…。
というわけで、記憶編で着ていたブラック・コートとディアバウンド・カーネルを入手。
ディアバウンドの石板についてですが。ダーツは3000年前の古代エジプトで起きた事件を知っているので、バクラをおびき出せるエサとして配置させていました。
この後、神のカードを盗み出した羽蛾と竜崎を制裁、そしてバクラVS海馬につながっていきます。
フローラが祖国にバクラを引きずり込んだのは星の救済が失敗しても、バクラが日本へ帰国するか遊戯と合流するための旅費が必要になるため、小悪党を襲うだろうと考えての計略です。
遊戯王シリーズのラスボスが、章ボスでしかないフローラの思惑に乗せられていますが、これはフローラに「ダーツが作り上げた組織」と「千年アイテムを上回る闇の力」があるからです。
それら無しであれば、バクラを思惑に乗せることは出来ませんでした。
バクラがかかわる話はここでひとまず終了となります。