黒トリガー『S』   作:コーエツニイサン

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時系列は原作前です。

やはり人型近界人との接触と言えばこの2隊〜。


第2話

「マモル、起きてください。玄界に着きましたよ」

 

まだウトウトして、目を擦る愛らしいマモルの車椅子を押して、星間船と玄界を結ぶゲートを抜ける。広がった世界で初めて感じたのは……警報音だった。

 

 

『ゲート発生!ゲート発生!近隣の皆様はご注意ください!繰り返します!ゲート発生!ゲート発生!近隣の皆様はご注意ください!』

 

まるでゴーストタウンのように人の気配を感じない町に響き渡る音。

 

「わわっ!……大丈夫かな?」

 

目覚ましには少し過激すぎるサイレンに、まどろみから叩き起されるマモル。

 

「わかってはいたことですが、あまり歓迎はされていませんね。問題は何がこの場に駆けつけてくるか、ですが……」

 

隠す気の無い気配が近づいてくる。数は……2人。マモルを隠すように前に立つと、気配を感じた先から数回の発砲音が聞こえる。どうやら建物の陰に隠れてこちらへ攻撃してきたようだ。手をかざし、それを反射する。

 

建物を貫通するように、反射するトリオンの弾丸にさらに私のトリオンを上乗せする。そして相手に当てないように微調整を施し、トリオン弾を返した。

 

「撃ち返してきた!やっぱり近界民だ!」

「本部!こちら茶野隊!ゲートより人型近界民を2体確認!現在交戦中!」

 

勝手に交戦中になってしまった。挨拶もできないまま。どうにかこちらに敵意は無いと伝えなくてはならないが……

 

「どうか話を。我々に、こちら側への害意はありません」

 

返答は再びの発砲。聞く耳を持たないと言うより、恐怖と焦りで声が届いてないといった感じでしょうか。まだ兵士になって新しいのかもしれません。

 

であれば一度武装解除させて、落ち着いていただくしかありませんね。

 

こちらに放たれた弾幕を再び反射する。今度は明確にトリオン体を解除させるために反射を補正する。

 

……トリオン体の構造は国によって異なりますが、大抵は頭と心臓でしょう。

 

補正され反射されたトリオン弾は、寸分の狂いなく2名の額とと胸の中心にのみ風穴を開ける。

 

「さて、これで少しは話を」

 

トリオン体の全体に罅が広がり、トリオンが漏れ出る。同時に軽い爆風と共に、トリオン体が空を飛んだ。

 

「……逃げられちゃったね」

 

「……逃げられてしまいましたね。いや、玄界のトリオン体の構造は興味深い。脱出機構が備わっているとは」

 

しかし、これでは交渉にもならない。次はトリオン体を壊さないようにしなければ、こちらの要望は聞いても貰えない。

 

「次は話せる方が来てくれるといいのですが……おや」

 

またもや気配を感じる。しかも、先程より薄い気配。

 

意図的に隠しているため、先程の2名よりは経験が豊富な方々が来られたのかもしれない。

 

「隠れる必要はありません。どうか話を聞いていただけませんか?」

 

警戒した足取りでこちらに近づいてくる2名。

 

「近界民と話すことなどない。本部、報告通り近界民を2名発見。処理を開始する」

 

一人は明確な拒絶の意志。黒髪に茶色がかった紫の目の少年。その瞳には明らかな憎しみが燃えている。拳銃の銃口は既にこちらを向いている。会話は期待できそうにない。

 

「初めての人型戦だな〜秀次。しかも雰囲気は凄そうだ」

 

もう片方は黒髪、切れ長の目で、槍を構えた少年。その瞳には強い興味と高揚感が溢れている。こちらは言葉を交わしてくれるでしょうか。

 

「気を抜くなよ。明確な人類の敵だ」

 

「どうか落ち着いてください。我々に害意は……」

 

重い発砲音が連続する。至近距離の弾丸だが、反射には問題無い。憎しみの少年は反射された弾を、予想していた様に回避する。

 

「茶野隊の報告通り、こちらの弾を反射するようだな」

 

「この距離でも対応されるとなると、遠距離は効きそうにないな〜。じゃあ、俺メインでやらせて貰うぜ」

 

拳銃を構えていた少年は拳銃をホルスターにしまい、剣型の武装に変更する。槍の少年はこちらに踏み込んでくる。

 

 

「仕方ありませんね。おいでなさい」

 

 

両腕を軽く広げ、まるで相手を迎え入れる体勢をとる。舐めているわけでも、無抵抗でもない。自然体こそが私の戦闘スタイル。

 

「やりにくいな……こうも構えないと」

 

ジリジリと私との距離を詰める槍の少年。おそらく接近戦での反射があるかを警戒しているのでしょう。警戒している今なら……

 

「そうですか。では、言葉を交わしませんか?私たちには戦闘の意思はないのです」

 

「へぇー、じゃあコッチに来た目的でも聞いちゃうか?」

 

「陽介!任務に集中しろ!」

 

「ヘイヘイ、すまんな。ウチの隊長、気が難しいんだ」

 

「そのようですね。しかし、困りました」

 

腕を組み、明らかに困ったポーズをとる。少しわざとらしいが、両手が塞がった状態。

 

そこで陽介と呼ばれていた槍の少年が、こちらに向けて一突きを放つ。狙いは私の首。

 

流石の私といえども、首と胴体が泣き別れたら、強制的にトリガーオフになってしまう。仕方なく反射を行う。

 

近接攻撃の反射とはつまり、衝撃を返すこと。槍先の一点に集中した力は逆に槍を伝い、相手の腕と肩、更には胴体ごと吹き飛ばす。

 

筈だったのだが……

 

確かに衝撃を跳ね返したのだが、手応えがまるで無い。つまり、この槍の少年は反射の前に急に力を抜いて、跳ね返しの衝撃を無くしたと思われる。

 

ふむ、だいぶ警戒されていますね。

 

「ちぇー、まさかとは思ったが、槍も反射するのかよ。どうするんだ、こんなの」

 

「ちっ!」

 

秀次と呼ばれた少年が苛立ちを隠さず舌打ちする。同時に拳銃を構え、数発トリオン弾を発砲した。

 

トリオン弾は効かないと理解していたはずですが……。

 

よく見ると、先程のトリオン弾と違いがありそうだ。弾速が遅い。そして何より色が黒い。特殊弾か何かでしょうか?

 

手をかざし、少年が避けそうな方向へ調整して反射する。しかし、返ってくると分かっている弾丸はもう通じないでしょう。

 

なので弾丸に私のトリオンを上乗せし跳ね返す。速度は元の弾丸のおよそ3倍。これには彼も驚いたようで、回避しきれないようだ。

 

黒い弾丸が一発、彼の腕を捉える。その瞬間、腕に鉛のブロックの塊が幾つも生えた。おそらくこの効果も、上乗せしたトリオン分上がっている。

 

「なにっ!?」

 

堪らず腕から地面に磔になる少年。これでようやく話を聞いて貰えそうですね。

 

「秀次!!鉛弾すら跳ね返すのかよ!」

 

レッドバレッド……これは予想外と言った感じで、槍の少年が、倒れた少年に意識を配る。

 

「さて、これでようやく」

 

遠くから2発の発砲音が響いた。そして、私の反射が自動で発動する。反射が発動したのは私を狙った弾丸でなく、マモルを狙った弾丸だった。

 

私は決して守護対象を無防備などにはしていないので、マモルのトリオン体に傷などは一つもない。マモルは驚いた様子で、跳ね返った弾丸の方向を見ていた。

 

何も思考すること無く、手を下手人の方向へ向け呟く。

 

「ホーリーショック」

 

衝撃波が数百メーター先の建物の屋上へ向けて、その道中の全てを吹き飛ばしながら直進した。徐々に範囲が広がりながら進んだ攻撃は、細長い扇状の爪痕を町に刻みつけた。

 

同時に、先程も見た、脱出機構の反応が2つ飛んでいった。

 

「狙撃手がいましたか……よりにもよってマモルを狙うとは」

 

声色はいつもと変わらない。しかし、目の前にいる2人は、私を見て驚愕の表情を浮かべている。

 

「お話ができるかと思ったのですが、人を変える必要がありますね。戻ったら、別の人を寄越してください。その時はお互いに有意義な時間にいたしましょう」

 

目の前に手をかざす。

 

「では、さようなら」

 

先程と同じ衝撃波が2人の少年を包み、脱出機構が発動した。

 

 

 

 

「マモル、大丈夫でしたか?怖かったでしょう?」

 

「ボクは大丈夫。驚きはしたけど。セレナードが守ってくれてたから、何も怖くなかったよ」

 

「ありがとうございます。私には最高の褒め言葉ですよ。ですが、流石に先程のはやり過ぎました。次はさらに強者が来るかもしれません。それこそ黒トリガーが来ては、守りながら戦うのは難しい」

 

私の防御範囲は限られている。集団で袋叩き、もしくは反射を超える威力を持つ黒トリガーがあれば守りきれない。

 

「マモル、申し訳ありませんが、私にトリオンの補充をお願いします。そして、しばらくは船の中に」

 

「うん、気をつけてね。セレナード」

 

マモルは、彼が両手で持つ丸い円盤状のトリガーに、トリオンを供給する。円盤のマークは、私のベルトに付いているマークと同じだ。

 

先程の戦闘で使用したトリオンの供給を受ける。力が回復していくことを実感する。そしてゲートを再び開き、船へマモルを戻した。

 

「さて、想定外ですが、薮を大きく荒らしました。一体何が出てくるでしょうか」

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