リコリコ店員のスター   作:官隆

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 喫茶リコリコで起こった小さな事件から一夜が経った。

時刻は集合の約束をした12時前、周囲には、祝日ということもあり、司たちと同年代の者や親子連れが多くみられ、平日よりは人の流れがある。

そのなかで、司は、駅前で二人のことを待っていた。普段であれば、スターらしいカッコいいポーズをとって人々の注目を集めるところだが、千束から、「絶対やるんじゃねえぞ?」と満面の笑みで言われたため、次のショーの台本を読んで大人しく待っている。そんな風にしていると、突如として、背後から視界が塞がれ、同時に聞きなれた声が耳元で囁いてきた。

 

「だ~れだ」

「…千束だろ」

「せいか~い!」

 

 軽やかな声と共に、目を覆っていた手が消える。振り向くと、私服姿の千束がいた。

 

「どう?似合ってる?」

 

 千束の服装は白のショートパンツに黒のインナー、その上に赤のコートを着ている。頭にはカチューシャが付いており、彼女らしさが出ている服装だった。

 

「あぁ、とても似合っているぞ」

「ほんと?」

「本当だ!未来のスターたるもの噓はつかん!」

「そっか~」

 

 そうして笑う千束を見て、司は自然と頬が緩んだ。

 

ここ最近、お互いに忙しくて、中々会うことができなかったからな。こんなやり取りも久しぶりだ。

 

そんなことを思っていると、千束が辺りを見回す。

 

「あれ、たきなはまだ来てないの?てっきりもう来て、2人で待ってるのかと思ったんだけど…」

「あぁ、たきななら少し前に『もう少しで到着します』と連絡があったぞ。多分、もうそろそろ−」

「―お待たせしました」

 

 来るんじゃないか?、と答えようとした時、横からたきなの声が来る。振り向くと、上はTシャツ、下はジャージと、年頃の女の子らしからぬ服装をしたたきながいた。

 

…普段は制服姿しか見ていないから、私服姿は新鮮だな…まぁ、年頃の少女の服装かと言われればあれだが…いや、そういえば以前、シブフェスにジャージ姿で出歩いていた女性がいたな。たまに見かけるが、いつもジャージ姿だったし…もしかして、そこまでおかしくはないのか?

 

「私服に問題はありますか?」

「おぉ〜なんか新鮮〜」

 

 そんなことを考える司を無視し、千束はたきなを下から上へと凝視する。しかし、彼女の背負うバッグを見ると、数秒固まり、その顔に満面の笑みを浮かべる。

 

「銃持ってきたな、貴様」

「…はぁ!?」

 

 そう言われて、たきなを見てみれば、彼女が背負っているバックが彼女達リコリスが、ふだん背負っているバッグであることに気づいた。

彼女たちリコリスが背負うバッグには、拳銃や弾丸といったリコリスが任務を行う際に必要な装備が入っている。しかし、制服を着ていなければ所持が許されておらず、見つかれば、問答無用でアウトである。そのことを千束から教えてもらっている司は、「何を考えているんだ、たきなは!?」と内心で叫びながら、頭を抱えていた。

 

「抜くんじゃねえぞ?」

「はい、ところで、千束と司さんはその衣装自分で?」

「衣装じゃねぇ」

「落ち着け、千束!気持ちは分かる!ほら、深呼吸、深呼吸しろ!」

「?」

 

 その後、キレかけている千束をなんとか落ち着かせると、三人は近くにあるショッピングモールへと向かい始めた。その間、たきなの服装に関して、千束は聞き始めた。

 

「たきな、一枚も持ってないの?スカート」

「制服だけですね、リコリスならそれが普通でしょう?」

「まぁ、リコリスならねぇ。ね~買おうよ!たきな絶対似合うから!」

「なら千束が選んでください。私、服のことは詳しくないので」

「え!いいの!?やった~!!テンション上がる~!!」

「……」

 

 それを聞いた千束は、テンションを上げて、走っていく。たきなはその背中を見送りながら、ポツリと司に尋ねる。

 

「司さん、千束なんであんなに嬉しそうなんですか?」

「それはもちろん、たきなの服を選べるからだろう?」

「いや、それだけでなんであんなに…」

 

 その疑問に、司は少し考える素振りを見せてから答える。

 

「…おそらくだが、青春っぽいからじゃないか?」

「青春?」

「あぁ!オレの妹も少し前まで入院をしていたんだが、学校に通えるようになってからは、幼馴染や学校の友達と服を選んだり、タピオカを買ったりと、学校生活を楽しんでいてな!そのたびに青春っぽいと喜んでいた。千束も同じなんだと思うぞ。あいつも同年代の女友達の服を選ぶということは初めてだからな」

「……なるほど」

「おぉい!はやくはやく!」

「まぁ、いささかテンションが上がりすぎだとは思うがな」

 

 たきなは千束のテンションについて、一応の納得をする。それと同時に、たきなもこの買い物が特別なものに思えた。思い返してみれば、幼い頃から、常に任務をこなし過ごし、死と隣り合わせな、青春とはかけ離れたところにいた。だが、今はこんな風に誰かと買い物に行くという、普通の学生がしていることができる。そう考えれば、彼女の頬は自然と上がっていた。

 

「おい、千束!テンションが上がる理由は分かるが、時間はまだまだあるんだぞ!もう少しゆっくりと―」

「司さん、はやく行きましょう」

「って、たきな!?いきなりどうし―」

「お、たきなもテンション上がってるね~!よ~し、このままショッピングモールまで、ダッシュで行くぞ~!」

「いや、まてまてまて!オレを置いていくなぁぁあ!!!」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

~ショッピングモール~

 

「これもいいなぁ!ああでもこれも!ん~たきなはどれも似合いそうだしな~!」

 

 ショッピングモールに到着し、服屋の中に入ると千束は、店の中の服を隅々まで見て、たきなに似合いそうな服を見繕っていた。その顔はとても生き生きとしていて、楽しんでいることが見て取れた。

 

「よし、たきな!これ着てみて!」

「わかりました」

 

 千束が選んだ服を素直に受け取ったたきな試着室へ向かっていく。司は試着室前でワクワクしながら待っている千束に声をかける。

 

「楽しそうだな」

「まぁね~今まで、同年代の女の子の服を選ぶとかやったことなかったからさ。テンション凄い上がっちゃった!」

「そうか、それは良かったな!」

「うん!あ、そうだ!司の服も久しぶりに選んであげようか?」

「オレのもか?」

「うん、最近の司の服って、マネキンコーデばっかでしょ?」

「……まぁ、そうだな」

 

 司は苦笑いを浮かべ答える。彼の服は千束に選んでもらったものかマネキンコーデのみである。しかし、最近は、千束と買い物に出かけることがなかったため、マネキンコーデばかりになっていた。

 

「まぁ、理由はなんとなくわかるけど、司もたきなと一緒で素材が良いんだからさ~マネキンコーデなんて勿体ない!千束さんに任せてみな~?」

「まぁ、新しい服を買おうと思っていたし、それは構わんが」

「よっしゃー!言質とった~!」

「そんなに喜ぶものか?」

 

 そんな風に楽しげに話しているうちに、試着室のカーテンが開き、たきなが出てくる。

 

「どうですか?」

 

 たきなの服装は、先程の部屋着と打って変わり、年頃の少女らしい、とてもおしゃれなものになっていた。

それを見た千束は目をぱっと輝かせる。

 

「おぉ、可愛い!!可愛いよたきな!!ね、司!」

「あぁ、先程のよりそっちの方が断然いい!とても似合っているぞ、たきな!」

「…ありがとうございます」

「じゃあ、次はこれ着てみて!」

 

 二人の感想を聞いたたきなは僅かに頬を顔を紅くさせた。

千束はすぐさま次の服を渡す。ここから、千束によるたきなファッションショーが始まった。

 

「…良い!!」

 

「良いねえ!」

 

「可愛いよ!たきなぁ!!」

 

 千束は次々と服を持ってきては、それを着たたきなを褒めちぎる。たきなも褒められて悪い気はしないのか、満更でもなさそうだ。最終的には、最後に着た服を買うことになった。

 

「じゃあ次は司ね~」

 

そう言って、千束は手元に持っていた服の中のいくつかを司に渡した。

 

「早く着替えて着替えて!」

 

促された司は千束から渡された服を手に持って更衣室に入っていく。

 

「千束は以前にも司さんに服を選んだことあるんですか?」

「そりゃ、もちろん!というか、司の私服のほとんどは私が選んでたし!まぁ、最近は一緒に出かけることもなくて、マネキンコーデばっか買ってるみたいだけど」

「マネキンコーデ…あぁ、だから見覚えが」

 

 司の服装を見た時から既視感があったが、思えば服屋のショーウインドウで観たものだった。

しかし、そうすると疑問が出てくる。

 

「でも、なんで司さんはマネキンコーデを?」

「あぁ、それはね―」

 

 千束が理由を話そうとすると同時に、目の前のカーテンが開く。

そこには、白のシャツの上に青のジャケット、そして濃い青緑のズボン。その姿は二人だけでなく、店内にいる店員や客が見惚れてしまうほどに似合っていた。司自身もそう思っているのか、自信満々といった様子だった。

 

「いいね~!カッコイイよ司!」

「そうですね、とても似合っていますよ」

「ふっ、やはりそうか!オレも鏡を見てそう思っていたのだ!流石だな、千束!」

「ふふ、そうでしょう!」

 

 千束は満足そうに、たきなはまじまじと司を見て、感想を告げる。司も、二人からの感想を聞き、誇らしげにし、千束のセンスを褒める。

そして、改めて自分の姿を確認すると、満足げに頷いた。

 

「では、これを買うとする―」

「いやいやいや、司くん。何言ってんのさ。まだまだ着てもらいたい服は沢山あるんだよ?」

「ん!?いや、千束?オレはもうこれで十分なんだが―」

「次はこれ着て、ね?あ、そうだ、たきなも一緒に選ぼー!」

「いいんですか?」

「もちろん!」

「いや、オレの許可を…いや、いいだろう!未来のスターがいくらでも着てやる!何着でも持って来い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえばたきな、リップグロス持ってる?」

 

 そこから数十分後、結局司は、最初に着た服を購入することになった。服屋から出ると、千束が、化粧品を買いに行こうとする様子を見て、たきな少し困った表情を浮かべる。

 

「……あの、千束。そろそろ本来の目的を」

「あ……」

「忘れてたな、千束」

「いや~ごめんごめん!そうだったこっちおまけだった!」

 

 千束は本来の目的を思い出したようで、慌てて謝り始める。

そう、服を買うのはあくまでおまけ。今日たきなを連れてきたのは彼女の下着を買うためだ。

司はそれを呆れながら見て、口を開いた。

 

「では暫くオレは、近くにある本屋で時間を潰してくるから、終わったら呼んでくれ」

「ごめん、司!すぐ買ってくるから!」

「え?司さんも行かないん―」

「はいはい、行こうね~!」

「え、あの―」

 

 とんでもないことを言おうとしたたきなを引っ張って、千束は店に向かっていった。

それを見届けた司は、ショーの参考になる本を買いに、本屋に向かって行った。

 

 


 

 

「……」

「どう?好きなのあった?」

 

 ランジェリーショップに入ったたきなは、ズラリと並んだ下着をじっと見て、黙り込んでしまっていた。

そんなたきなに近づき、話しかけると、たきなは顔を私の方に向け、口を開く。

 

「…好きなの、選ばなくちゃいけないんですか?」

「えっ?」

「それなら、仕事に向いてるのが欲しいですね」

「あぁ~戦闘向けのランジェリーですね~って、そんなのあるかぁ!」

 

 下着にまで仕事の話を持ち込むとは…年頃の少女がこれはどうなのか?肩を落としつつ、そんなことを思っていると、たきなは今履いている自身のトランクスのレビューを語り始めた。

 

「これいいんですけどね。通気性も良くて動きやすい。さすが店長だなって」

「いや、先生がそんなことを考えるわけないじゃん…大体、トランクスなんて、人に見せれたもんじゃないでしょ?」

「…パンツって人に見せるものじゃなくないですか?」

「いざって時どうすんのよ?」

「いざってどんな時です?」

「……」

 

 ここで気付いた。確かに見せるものでもないと。見せるとしたら、それは特別な仲で…

ふと脳裏に金髪の少年の姿が浮かぶ。彼はこちらを微笑み、そして―

 

「し、知るかっ!って、うわぁ!?」

 

 叫ぶと同時に、私はたきなに腕を掴まれ、試着室に連れてこられる。あまりの急展開に抵抗することできず、そのままカーテンを閉められてしまった。真剣な目でこちらを見るたきなに、私は嫌な予感を感じつつ、恐る恐る口を開く。

 

「な、なに?」

「千束のを見せてください」

「ふぁ!?」

「見られていいパンツか知りたいんです!」

 

 そう言って、しゃがみ込むたきな。私はそれで完全に思考を停止させてしまった。

そりゃたきなが、少し抜けていることはもちろん知ってた。だけど、こんな事を頼むだなんてことは想像もしていなかった。予想外の事態を前に、思わず、困惑の声を漏らしてしまう。

 

「ぅ、ぁ、ぇぇぇ…」

「早く!」

 

 しゃがみ込んでいるたきなが早くしろと圧を出しながら促してくる。思考が停止した私は、たきなの放つ謎の圧に耐えられず、ゆっくりとショートパンツを下ろし、下着を出した。たきなはそれを目を細めて真剣見る時間が数秒続く。

ほんと、なにこの時間?なんで私はこんなことを…

そんなことを考えていると、たきなが真面目な顔で言う。

 

「…これが私に似合うっていうと違いますね」

 

たきなからの言葉を聞き、私は叫ぶ。

 

「その通りだよ、何で見せたの私ぃ!?」

 

 店内に私の悲鳴が鳴り響いた。

その後、たきなには私が選んだ普通の下着を買わせるのだった。

 

 


 

 

「お待たせ~司~!」

 

 終わったという連絡を受けた司は本屋を出て、指定された場所に向かう。到着すると、やりきった感満載の千束が手に袋を持ったたきなと共にこちらに近づいてきていた。

 

「早かったな!ちゃんと目的のものは買えたか?」

「バッチリ!これでトランクスとはおさらば!男物の下着は全部処分するからね、たきな!」

「…わかりました」

 

 少しだけ残念そうにしているたきなを尻目に見ながら、千束はゴホンとわざとらしく咳をして、次の予定を告げる。

 

「え~では!次はお待ちかねのおやつタイムだ~!」

「…目的は完遂しましたし、私はお二人の邪魔にならないように帰った方いいのでは?」

 

 そう、本来なら今日は司と千束のデートであり、自分は急遽入ったお邪魔虫であるという自覚は、たきなにも存在している。

 

「そんなこと気にしないで大丈夫!ね。司?」

「あぁ、たきなが一緒だと、色々と新鮮でオレも楽しいぞ!」

「ですが―」

「今日ぐらい付き合ってよ~。司とたきなの親睦を深めるためにも、ね!」

「親睦…」

 

 司を見る。思えば、彼女自身は、声が大きい、千束と両片思い、ショーキャスト、リコリコの先輩であるということしか知らない。

 

「では、ご迷惑でないのであれば」

 

たきなは千束の提案に賛成した。そこから、千束が目を付けていた店に連れていかれ、現在は三人はテーブルに座り、店員に注文をしていた。

 

「フランボワーズ&ギリシャヨーグルトリコッタダッチベイビーケークとホールグレインハニーコームバターウィズジンジャーチップスで!」

 

 千束が商品名を言う。聞いている二人には呪文にしか聞こえない。

というか、どんな料理なのか想像もつかなかった。

 

「オレはコーヒーとフレンチトーストをお願いします!」

「かしこまりました」

 

 店員が頭を下げて厨房の方にに向かっていく。

それを見届けると、たきなは千束の方を向き、呆れたように言う。

 

「千束、今の名前からしてカロリー高そうですね」

「野暮なこと言わない!女子は甘いものに貪欲でいいんだよ」

「寮の食事もおいしいですけど…」

「あの料理長、元宮内庁の総料理長らしいよ?」

「……?」

 

 元宮内庁の総料理長について知らない司はスマホで調べてみるが、内容を見て絶句する。

たきなはそんな様子を見て、司に尋ねてみると、声を震わせながら答える。

 

「なんてあったんですか?」

「宮内庁の総料理長…主に天皇や皇族の食事を担当する、と」

「…それは確かに凄いですね」

 

 たきなも自分達が食べていた食事がどれだけ凄いかが分かり、僅かに驚いた反応を見せる。

 

「まぁ、スイーツ作ってくれないから、永遠にかりんとうなんだけどね~」

「私、あのかりんとう好きです」

「そりゃ、最近来たからでしょ?十年もかりんとうは飽きるよ~」

「いや、まぁ、それは飽きるだろうな」

 

 十年ずっとかりんとう。それはどれだけ凄い人でも、誰でも飽きると思う。

 

(しかし気になるな、元宮内庁の総料理長のかりんとう…今度、本部に行くようなことがあれば貰ってきてもらうか?)

 

 そんなことを考えていると、店員が注文したものを運んできて、司に前にはコーヒーとフレンチトーストが、千束とたきなの前には、パンケーキ状の馬鹿でかいスイーツが置かれた。

 

「うおぉおお!美味しそぉ~!!」

「…これは糖質の塊ですね」

「たきなっ!そんなことは言わない!人間一生に食べられる数は決まってるんだよ?全ての食事は美味しく楽しく幸せであれぇ~♪」

「リコリスとしては余分な糖質はデメリットになります!」

「その分走る!その価値がこれにはある!ん~♪美味しい~♪ほらほらたきなも食べて~!」

 

 たきなの忠告を無視して、千束は勢い良く食べる。

口の中に入れると、頬を綻ばせ、美味しそうにしている。たきなはそれをジト目で見ている。

すると、隣の方から聞きなれない言語が聞こえてきた。視線を向けると、外国人の夫婦が困ったようにメニューを見ていた。

 

「二人とも、ちょっと行ってくるね」

「あぁ」

 

 それを見た千束は席を立ち、困っている夫婦のもとに向かい、話しかける。

 

『お困りですか?』

『!、あなた言葉が分かるの?」

『はい、分かりますよ!』

『ちょうど良かった!注文の仕方が分からなくてね、助けてくれるかい?』

『もちろん!』

 

 外国人夫婦と会話をする千束を見て、司は、おぉと感嘆の言葉を漏らす。

 

「いつ見ても凄いな千束は…たきなもできるのか?」

「まぁ、DAで習いましたから、少しは」

「なるほどなぁ…なら他の所もちゃんと教育をしておいてほしかったな

「?今なにか?」

「いや、何でもないぞ!ハーハッハッハ!」

「はぁ…そういえば司さんは英語を話せるんですか?」

「オレか?まぁ、オレも昔から千束に教えてもらったていたからな!簡単な会話だったらできるぞ!つい先日もアメリカに行ったのだが、ある程度の会話はできた!」

「…え?」

 

 それを聞いたたきなは、驚きの反応を見せた。

 

「なんだ、その反応は?」

「いえ、聞いておいてなんですが、英語ができる印象がなかったので…つい」

「失礼なことを言うな、たきな」

「…すいません」

「いや、まぁ、アメリカで同じようなことを、仲間にも言われてるからな。気にしなくていい」

 

 司は苦笑いをして、たきなに言う。

 

「それより、たきなは食べないのか?それ」

「あ、いただきます」

 

 パクリと一口、パンケーキを口に入れる。

 

「おいしい……!」

「でしょ~!!」

 

 それを聞いた千束がこちらに声を出しながら近づいてくる。どうやら外国人夫婦の手伝いは終わったようだ。

 

「二人ともなんの話してたの?」

「大したことは話していないぞ。オレが英語を話せるという話をしたくらいだ」

「え?司って英語話せるの?」

「噓だろお前!?忘れたというのか!?お前が教えたのに!?」

 

 司が大声を出して言うと、千束はいたずら成功した子供のように笑いながら言う。

 

「噓で~す!あんなに教えるのを苦労した生徒のこと千束先生が忘れるわけないでしょうが」

「お前な~!」

「仲いいですね」

 

 二人の掛け合いを見たたきなはそう言うと、二人は顔を突き合わせて、クスッと笑った。

 

「まぁ、十年来の付き合いだしね~」

「自然とな!」

「そういうものですか」

「そういうもん、そういうもん!」

 

 そう言って、千束はパンケーキをパクリと食べると、なにかを思い出したのか、「あっ!」、と声を挙げる。

 

「そうだたきな!後でいいところ行きまーす!」

「いいところ?」

「おい、千束、良いところって―」

「は〜い!ネタバレ禁止!着いてからのお楽しみで~す!」

「やっぱりまたあそこか…まぁ、オレは久しぶりに行くしいいか」

 

 千束がどこに行こうとしているのかを知っている司は、口ではこう言っているが楽しみにしていることが感じ取れる。そんな二人を見て、今度は何処に連れていかれるのか?そんなことを思いつつ、たきなは微笑みながらパンケーキを食べるのであった。

 

 


 

~おまけ~

 

POP IN MY HEART『迷子を笑顔に』にて

 

『――そうか、それで迷子になっちゃったのか』

『うん……』

『じゃあ、お兄ちゃん達と一緒にお母さん達を探そうか!』

『!…うん!』

 

「お前たち!どうやら迷子で間違いないないようだ―って」

 

「「「……」」」

 

「どうした?そんな驚いた顔をして?」

 

「司くんが英語しゃべってる…」

「あの司くんが、本当に…」

「噓でしょ……あの司が…?信じらんない…」

 

「お前ら……」

「?」

 

 

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