OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第1話

西暦2096年 1月6日

-OCU 日本-

 

 新年を迎えてから数日。丁度0時0分になった瞬間。闇夜に包まれた一帯が眩い光に覆われた。

 大半の人々は就寝していたため気付くことはなかったが、仕事などで起きていた人はその現象を眺めることとなった。

 

「何だ何だっ!?」

「日防軍の演習か?」

「イルミネーションにしてはえらい大規模だな」

 

 暢気な人々は空を見上げて事態を見守った。

 

 数分後、闇夜を照らす光は静かに、そして何事もなかったように消え去った。

 

 異変に気が付いたのは夜を徹して仕事をしていた人々だった。

 外国との通信が一斉に途切れたのだ。それぞれ契約している通信会社に問い合わせたところ、予想以上の事態が起きていた。

 どの通信会社も、衛星や海底ケーブルを介した外国との通信が全て取れないというのだ。通信会社は鋭意調査中だが、通信が何時頃回復するか未定だった。

 

 永田町の首相官邸では緊急事態会合(国家安全保障会議)…NSCが招集され、首相。官房長官。防衛大臣。外務大臣の4名と国交大臣が指定され、出席していた。

 最初に口を開いたのは首相の枢木だった。

 

「緊急で集まったのは他でもない。凡そ1時間前、おそらく午前零時をもって国外との通信障害が生じている。原因はひとまず横に置き、行動と優先順位を取り決めたい」

 

 枢木の言葉に4人が頷いた。

 

「防衛大臣に聞きたいのだが、零時のタイミングで生じた閃光は核攻撃か?」

「何かしらの攻撃の可能性はあります。しかし、核攻撃の可能性は低いかと思われます。国内の日防軍基地において放射線量の測定を命じましたが、速報で届いている分ではどの地点でも放射線量が高いところは確認されていません」

「そもそも、何処か被害が生じている所はあるのか?」

「速報分では目立った被害は生じていません。念のため、国内の各部隊に非常招集を命じています」

「わかった。それでいい。では外務大臣。他国が我が国に対して何かしらの軍事的行動をとる旨を聞いているか?」

「事前通告も事後宣言も報告されていません。さらに悪いことですが、連絡を取った在外大使館との通信が1つも取れません」

「大使館すべてだとっ!?」

「そうです……といっても、OCU加盟国とUSNだけですが。他の大使館についても状況をまとめている最中です」

「……わかった。そのまま続けてくれ」

「総理。今起きている問題がわが国だけなのか、OCU各国やそれ以外の国家においても同様なのか……。情報がまとまるのはかなり先でしょう」

「……明日の昼に現状を国会や国民に報告する必要がある。情報を可能な限りまとめてくれ官房長官」

「わかりました」

 

 丑三つ時。緊急事態会合は解散した。

 

 その日の昼時、再度NSCが招集された。前の5人を含め、さらに総務大臣と経済産業大臣が参加していた。

 今度は官房長官が口を開いた。

 

「現状我が国の状態は昼に説明した通りです。ただし、それ以上の問題も噴出しています」

「現状でも国籍関係なく全ての人工衛星と通信不能。外国との海底ケーブルはおそらくすべて断線。領海外を航行していた船舶と複数の通信手段を用いても連絡が取れません」

「石油をはじめ、輸入に頼る品目の供給の遅れ……。いえ、入ってこないと考えた方がよろしいでしょう」

「総理。状況が状況です。特災時物資統制法と特災時配給法を稼働させましょう。時間は稼げます」

「そうだな。急ぎ国会での議決を図ろう」

「総理。防衛省の報告がまとまりました」

「聞きたくはないが。教えてくれ」

「はい。他国に展開。もしくは排他的経済水域外で活動する全部隊と完全に通信途絶を確認しました」

「……日防軍全体でどれだけの戦力だ?」

「まず海上部隊ですが、戦闘艦103隻のうち18隻が他国に展開。もしくは駐留していたため、ほぼ損失状態です。ただし、OCU加盟国向けに国内の造船所にて24隻が建造中です。人員の補填さえどうにかなれば戦力回復は比較的容易です。次に航空部隊ですが、作戦稼働機約900機のうち60機弱が他国に駐留していたので、こちらも全損となります。ただ、順次新造機を供給しているので、緊急予算を組めば2年程度で補填は可能です。最後に陸上部隊ですが、海空部隊同様。総戦力14個師団5個旅団のうち、国外展開していた4個師団相当の戦力を損失しました。こちらは重装備もそうですが将官級をはじめ末端の人員を含んでいるため、損失がとても大きく。緊急予算を組んでも戦力回復は最短で4年程度かかります」

「……ハフマン紛争より酷くないか?」

「仰る通りです総理。市ヶ谷の国防省はお通夜状態です。……国内に残存している部隊ですが、緊急招集は完了。全力発揮可能状態です」

「日防軍に関しては……財務省をどうにか説得しよう」

「ありがとうございます」

「ところで、周辺の他国軍の動きはどうだ?」

「ーー正直申しますと、とてつもなく静かという状態です」

「静か、というのは?」

「いつもならどこかしらの警戒レーダーが他国軍艦や航空機を捕捉するのですが、現状1つも確認できません」

「1つもかね?」

「年末年始なので活動が低調ではあります。しかし、それを差し引いても何も捕捉していないという状態です」

「総理。動きがないのは大規模作戦の兆候かもしれません。日防軍は現状即応待機を維持するということでよろしいですか?」

「そうだな……1週間ほど待機を継続してくれ。あと、哨戒機による本土周辺の哨戒任務も実施してほしい」

「わかりました。準備が整い次第実施します」

「頼んだ。国交大臣。国内の状態はどうだ?」

「状況が状況なのでかなりの混乱が生じていますが、この状態が続けば治安の悪化は明確かと思います」

「治安の悪化程度ならまだいいが……」

「公安の要監視対象に関してですが、こちらは組織内部でかなり混乱しているようです」

「すぐに行動を起こす様子はないか?」

「おそらくですが、能動的な活動は困難な状況かと……」

「それは本当かね?」

「推測を含みますが、パトロンとの連絡が途切れたので、支援を受けられず活動の低下。状況次第では組織が瓦解するかと思われます」

「自暴自棄になって動く可能性は?」

「もちろん可能性としてありますので、監視を強化する予定です」

「わかった。各省庁は事態に備えて連絡を密にするように」

 

 こうして、この日のNSCは解散した。

 

――――――翌日

 

「――国民の皆さん。昨日から起きている異常事態ですが、現在内閣及び各省で状況把握に努めております。ただ、悲しいことに今後他国との貿易が停止する可能性が高く、断腸の思いでありますが、ここに内閣として特殊災害事態を発令し、物資統制法及び配給法を稼働させることで内閣は一致しました。

全国の国民並びに外国から来られている市民の皆様にも苦しい状態でありますが、どうかご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします……」

 

 謎の発光現象から2日目。前日の会見からさらに事態を重く見た内閣の決定に殆どの国民は理解を示した。




用語解説

『OCU』…オシアナ共同連合
東南アジアを中心に、日本やオーストラリアが加わった国家共同体。
地球圏において西太平洋域を領域としているが、加盟国間に経済格差があり、度々独立紛争が生じている。軍事面においては、USNと2度のハフマン紛争を行ったことにより、純軍事力において1、2を争っている。

『USN』…ニューコンチネンタル合衆国
南北中アメリカ大陸(一部除く)を領域とする国家共同体。

『日防軍』…日本国防軍
FM世界2046年に自衛隊から改名。本土防衛型から広域防衛型に体制に移行させる。なお、階級は諸外国と同様(1佐なら大佐等)である。

『特殊災害事態』
独自の用語。非常事態宣言だけでは国家の状態に応じて組織運用の優先順位が変わることが指摘された。その齟齬をなるべく減らすため国家の状態を『平時』『災時』『戦時』『特災時』と規定している。

お詫び
作中の名称が設定資料と違っていたので修正しました。
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