OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第14話

中央暦1639年 4月20日

-ロデニウス大陸 北方海域-

 

 日防軍はクワ・トイネからの軍事要請が入ってから派兵準備を行いつつ、最適な戦力投射を果たすべく哨戒機や無人機をロウリア王国の国境や沿岸へと展開させていた。

 

 ロデニウス大陸北方の海域。日防軍海上部隊所属の多用途哨戒機『UP-4』が飛行していた。

 

「……機長。ポイント4通過」

「了解。ポイント5に向かう……何か捕捉したか?」

「水上レーダーには何も映っていません」

FLIR(赤外線複合カメラ)には――機長。もう少し大陸寄りに針路を取れますか?」

「わかった。左旋回する」

 

 哨戒機は緩やかに左旋回すると、蒼海に多数の航跡を確認した。

 

「えらい数だな……。舛田(航空士)。相手の国籍は確認できたか?」

「――ロウリアの国旗を確認しました。東へ進んでいます」

「数は分かるか?」

「レーダーの映りが悪いので、正確な数は分かりません」

君塚(航空士)。司令部とHF通信を頼む」

「わかりました」

 

 君塚は哨戒機に積まれているHF無線機を起動させた。衛星があるならUHFを使ってカメラ映像も送れるのだが、転移によって全ての衛星が失われてから、長距離で安定して通信できるのはHF無線だけとなっている。

 

「機長。HF無線が繋がりました」

「那覇コントロール。こちらウィンドホバー43」

≪ウィンドホバー43。こちら那覇コントロール≫

「ロウリア国旗を掲げた大規模船団が東へ進んでいる。沖縄より南南西500海里の位置」

≪ウィンドホバー43。船団の数は分かるか?≫

「相手が木造船のためレーダーで捕捉困難。目視で1000や2000は確認できる」

≪那覇コントロール了解した。船団の監視を継続せよ≫

「ウィンドホバー43了解した」

 

 ウィンドホバー43はその後交代の無人機が来るまで船団を捕捉し続けた。

 

 

「……船長。見えたかね?」

「見えました提督。ワイバーンではないようです」

「ワイバーンでないのなら、あれは何だったのだ?」

「少なくとも、私は存じません」

「……そういえば、3か月前に巨大な鋼鉄船と接触した報告があったな」

「あぁ。ありましたな」

「あれと関りがあると思うか?」

「なんとも言えません。報告では“巨大な船を退散させた”という内容でしか記録されていませんので」

「より詳細を報告させる必要があるな」

「同感です」

「それにしても……」

 

 艦隊司令のシャークンは後ろを進む船団を眺めた。

 

「まさに壮観だな。これだけの船と兵がいれば、この作戦だけでクワ・トイネを征服できるのではないかね?」

「提督の仰る通りです。しかし、我々だけで征服してしまっては、他の指揮官に恨まれてしまいますよ」

 

 副官はにやけた顔でシャークンに答えた。

 

「フフン。確かにそうだな。ここはマイハーク制圧に注力しよう」

 

 4000隻を超える船団は5kt(時速約9km)で東へと進んだ。

 シャークンはクワ・トイネ程度の軍船程度なら圧勝できるだろうと考察した。しかし、この目論見が数日後に瓦解するとはこの時知る由もなかった。

 

 

中央暦1639年 4月20日

-OCU日本 防衛省-

 

「――沖縄海軍基地で臨時編成を実施。それを以て要撃する」

 

 防衛省の一室……海軍参謀長の岳田中将は他の艦隊司令や参謀に伝えた。

 事の始まりは同日午前に第4航空隊所属の哨戒機からの報告だった。

 “ロウリア軍の大船団を捕捉。船団は東に進行中”の報告は、クワ・トイネ向け部隊をマイハークへピストン輸送している日防軍海上部隊にとっては好ましくない報告となった。

 

「村河少将。沖縄海軍基地にいる部隊は?」

第22戦隊(第2艦隊第2戦隊)第33戦隊(第3艦隊第3戦隊)第96戦隊(地方隊第6戦隊)が待機しています」

「急ぎ各戦隊に出撃命令。艦隊司令部を編成する時間はない。最先任に指揮を取らせろ」

「沖縄海軍基地に伝えます」

 

 海軍参謀長の指示に従い、沖縄海軍基地に待機していた22戦隊。33戦隊。96戦隊から巡洋艦1隻。駆逐艦3隻。航洋哨戒艦(フリゲート)3隻。哨戒艦(コルベット)2隻の合計9隻による臨時艦隊が出港した。

 臨時艦隊司令は第33戦隊に籍を置く栗濱大佐が指定された。

 構成する戦力を以下に示す。

 

『緊急派遣艦隊』

 第33戦隊

 ↓→巡洋艦『茶臼』※旗艦

 ↓→駆逐艦『荒潮』

 ↓→フリゲート『真駒内』

 ↓

 第22戦隊

 ↓→駆逐艦『旗風』

 ↓→フリゲート『物部』『大栗』

 ↓

 第96戦隊

 ↓→駆逐艦『松風』

 ↓→コルベット『杉』『山茶花』

 

 CICでは栗濱が指揮下の艦艇情報を精査していた。

 

「まったく。まさかロウリアがここまで大規模な迂回機動を取るとは、やってくれる」

「しかし、第4航空隊の哨戒機には感謝しかありません。これだけの戦力を無視したら、クワ・トイネはほぼ敗北していた可能性が統合軍参謀部よりレポートが届いています」

「だろうな。4000隻を超えるガレオン船に10万以上の兵隊か……。これだけの規模はオーバーロード作戦(ノルマンディー上陸作戦)を除けば史上最大じゃないか?」

「栗濱指令。実は我が国ではかなり似通った作戦……戦役があります」

「太平洋戦争でこんな大規模な上陸作戦があったか?」

「いえ違います。日本史上における蒙古襲来……弘安の役に規模は匹敵します」

「……すまない、歴史は得意じゃなくてな」

「鎌倉時代の戦いですから、兵隊や船の数において現代より当時の方がインパクトがあります」

「だろうな。海が敵船で埋まりそうだ」

 

 栗濱と参謀は雑談を終えると、周辺海域の海図を睨みながら本題に入った。

 

「さて、ロウリア艦隊の戦力をどう見る。参謀」

「……数こそ多いですが、装備に大砲が確認できないので、古典的な敵船切込みが主流かと思います。バリスタなどに気を付ければ、1km程度の距離で応戦してもかなり余裕を持って戦えます」

「そうか。なら、奴らの目標はどこだと思う?」

「断定はできませんが、内陸寄りの公都(クワ・トイネ)より港を有するマイハークの可能性が高いと思われます」

「なるほど。合理的だな。仮にロウリア海軍の目標がマイハークだとして、到達するのは最短で何日だ?」

「……ロウリア艦隊の速度は凡そ5kt程度と報告が上がっています。風が味方すれば早くて10日程度で到達するかと」

「10日か。我々の足なら道中で要撃できるな」

 

 参謀は栗濱に肯定した。

 その時、通信士が栗濱に近づいた。

 

「栗濱司令。参謀部よりクワ・トイネ海軍士官の観戦武官受け入れ要請が入りました」

「観戦武官だと? これから奴ら(ロウリア艦隊)を沈めに行くっていうこの時にか?」

「何でも、クワ・トイネから“日本国の海軍力を見たい”という事らしく。参謀部は受け入れたそうです」

「……参謀。交戦前に武官受け入れは可能か?」

「相手の動きがこちらの予測通りなら十分時間はあります。しかし、武官をピックアップするためにマイハークへ寄る必要があります」

「わかった。マイハークへ針路修正するとして、到着はいつ頃になる?」

 

 参謀は素早く海図から必要な距離を算出した。

 

「今から巡航速度でマイハークに向かうと、明日の昼頃には到着します」

「よろしい。海軍参謀部に“艦隊はマイハークへ進路を変更する”と伝えてくれ」

「わかりました」

 

 こうして、臨時派遣艦隊は沖縄を出撃してから、南西からマイハークである南へと針路を向けた。

 

 

中央暦1639年 4月21日

-クワ・トイネ公国 マイハーク-

 

 マイハークの港には多数の帆船が繋がれている。いつもなら商船の荷役で活気に沸いているが、今回は事情が違っていた。

 クワ・トイネの国旗を掲げた軍用帆船が多く停泊しているのだ。

 クワ・トイネ海軍の水兵が切り込みようの縄梯子や弓矢、油入りの壺を軍船に積み込んでいる。

 その光景をクワ・トイネ海軍第2艦隊提督のパンカーレが眺めていた。

 

「うむ。兵の士気は上々だな」

 

 パンカーレは海軍軍人として戦場が与えられたことに喜びを感じていた。しかし、それ以上に憂鬱な気分がパンカーレの心を支配していた。

 

「並みの規模ならまだしも、4000を超える船団とは、ロウリアはどれだけ財を投じたのだ……」

 

 パンカーレは後ろに控える士官に聞こえるように愚痴を吐いた。

 

「心中お察しします。パンカーレ提督」

 

 パンカーレは控えている士官に向き直ると、参謀部からの辞令を伝えた。

 

「――ブルーアイ。日本国軍艦に観戦武官として乗り込み、日本国の海軍力をしかとその眼で確認せよ」

「お任せください提督」

 

 パンカーレはブルーアイに渋い顔を向けながら心の内を話始めた。

 

「まったく。援軍を派遣してくれるのは喜ばしいことだが、900でも90でもなくたった9隻しか艦艇を派遣せんとは……っ! ニホンはどれだけ戦う気がないのかっ!!」

「提督。少ない戦力でも迅速に我が国へ救援を派遣してくれたのです。私の前でならいざ知れず、あまり公に言わない方がよろしいかと」

「……わかっておる。だが、ロウリアは4000以上の軍船で攻めてきておるのだぞ? そこに観戦武官を派遣しろだなんて、上は何を考えているのかわからん」

「大丈夫です提督。私は士官学校での剣術教練で最高成績をたたき出しておりますので、白兵戦になれば一番生存する可能性があります」

「正直。本国の指示だから従わざる負えないが、貴官ほど前途有望な若者をよくわからん相手に預けるのは、老兵として心が痛む」

「……」

「あぁ。すまないなブルーアイ。老人の愚痴に付き合わせてしまったな。ニホンからの迎えがそろそろ来る頃だ。クワ・トイネ軍人として恥ずかしく無いよう心せよ」

「わかりました提督。失礼します」

 

 ブルーアイは執務室を後にすると、宿舎から荷物を手早くまとめ、日本が大馬力で建設している野戦飛行場に向かった。

 

 

「クワ・トイネ海軍のブルーアイさんですね。司令部より話は聞いております。迎えの航空機は後30分ほどで到着します。その間、こちらでお待ちください」

 

 ブルーアイは濃緑色のテントに案内された。道中。ダークオリーブや濃いレモン色のよくわからないモノが彼方此方で動き回っている。

 

 しばらく眺めていると、ゴ~という音とババババッという音が飛行場に近づいているのに気付いた。

 それとほぼ同時に、日防軍士官がブルーアイの元に訪れた。

 

「ブルーアイさんですか? まもなく迎えのヘリが到着します。準備をお願いします」

「わかりました」

 

 ブルーアイは日防軍士官の案内により、滑走路近くまで案内された。

 

「ブルーアイさん。こちらを装着してください」

 

 日防軍士官はブルーアイにある物を手渡した。

 

「すみません。こちらはなんでしょうか?」

「耳栓とライフジャケットになります。ヘリのエンジン音はかなりの轟音になります。ライフジャケットですが、洋上を飛行するということもあり、万が一着水した場合に備えて、体を浮かせるための装備になります」

「そうですか。ありがとうございます」

 

 ブルーアイは耳栓とライフジャケットを手早く装備すると、ヘリが近くまでやってきた。

 日防軍士官の言ったとおりかなりの轟音であり、さらに吹き付ける風(ダウンウォッシュ)はワイバーンのそれより遙かに強力だった。

 

(これがヘリという日本の飛竜か。飛竜というより巨大なトンボのような形をしているな)

 

 ブルーアイが乗り込んだのを確認すると、ヘリはゆっくりと浮かび上がり、日本艦隊が待機しているマイハークの北方へと向かった。

 

 2時間ほどヘリに揺られていくと、沖合で待機している日本艦隊が見えてきた。

 

(お……大きいっ!! たった9隻と聞いたときは心配したが、1隻1隻が我々の軍船の何倍もある。これだけ大きいなら、乗っている水兵もかなりの数になるだろう)

 

 ブルーアイは見当違いの推測をしながら、ヘリは臨時艦隊旗艦『茶臼』へと着艦した。

 

 ヘリから降り、甲板で待機していた『茶臼』副長の後ろを歩きながらブルーアイは質問した。

 

「失礼ですが、この軍艦には何人の水平が乗り込んでいるのですか?」

「水兵? あぁ。この船の乗員数は500人程度です」

「ごっ、500人っ!?」

「えぇ。500人です」

 

 ブルーアイはこれだけの大きさの軍艦にたった500人しかいないことに驚いた。

 

「ロウリアは4000隻以上の軍艦を引き連れてやってくるのです。たった500人では、撃退はおろか自身を守るのもかなり大変ではないでしょうか?」

 

 ブルーアイの指摘に副長は違和感を感じつつも、自らの軍事常識がブルーアイには無いということに気付き、回答した。

 

「ブルーアイさん。本艦を含め、我が艦隊は敵艦に対して切り込みや白兵戦を仕掛ける予定はありません」

「えっ!? 日本ではどのように敵艦隊と戦うのですか?」

「それはまぁ……ロウリア艦隊と戦う時見ることができますので、詳細はその時にしましょう」

 

 ブルーアイと副長は話をしながら、会議室へと案内された。

 

 会議室には、艦隊司令の栗濱と艦長の伊野瀬が待っていた。

 

「『茶臼』へようこそ。ブルーアイさん。艦隊司令の栗濱です」

「『茶臼』艦長の伊野瀬です」

「クワ・トイネ第2艦隊作戦参謀のブルーアイです。今回はよろしくお願いします」

 

 3人は軽く挨拶すると、席に着いた。

 最初に口火を切ったのは栗濱だった。

 

「早速ですが、我が国の哨戒機がロウリア艦隊4400隻を捕捉しています。敵艦隊は大陸沿岸をおよそ5kt程の速度で進んでおり、現在位置はマイハークより西方700kmです。我が艦隊は夕方にマイハークを出港。早ければ明日の昼には接触できるでしょう」

「明日の昼頃ですかっ!?」

 

 ブルーアイは栗濱の言葉に驚愕した。ブルーアイの認識だと、700kmを帆船で進もうと思ったら、最低でも3日間はかかる距離だ。それを経った1日で相手を捕捉できると言うのだ。

 

「そうです。戦いまで時間はあります。今夜は食事をとって明日に備えてください」

「わかりました。よろしくお願いします」

 

 話が終わると、ブルーアイは乗員に食堂へ案内され、夕食を取った。

 食事と聞いてブルーアイはビスケットと干し肉。エールを想像していたが、実際に出された食事は馴染みこそなかったものの、しっかり温食として調理されたものであり、ブルーアイは夕食に舌鼓を打ったのだった。

 

 食事に満足したブルーアイは居室に戻ると、寝具が吊床ではなくベッドであることに驚きながら横になると、ものの数分で睡魔に襲われ、眠りについた。




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