OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第15話

中央暦1639年 4月22日

-ロデニウス大陸 北方海域-

 

 総員起こしのラッパを聞いたブルーアイは急いで身支度を整えて士官室へと向かった。

 ブルーアイの慌てようとは別に、落ちついて応対したのは艦長の伊野瀬だった。

 

「おはようございますブルーアイさん。昨日はよく眠れましたか?」

「おかげさまで、ぐっすり眠ることができました」

「それはよかった」

 

 士官室に栗濱が入り、雑談を交えながら朝食を手早く済ませると、航海長が資料を運んできた。

 

「栗濱司令。監視中の哨戒機からの最新情報です」

 

 広げられた資料にはロウリア艦隊の構成。陣形に針路が記載されていた。

 

「やはり、マイハークへ向かっているのは間違いないか」

「そのようです」

 

 机に広げられた写真には、海面を埋め尽くすほどのロウリア艦隊が映っていた。目の前に巨大な艦隊が迫っているという現実に、ブルーアイは愕然とした。

 対して、何の脅威も感じていないのか栗濱と伊野瀬は話を続けた。

 

「艦長。1000(午前10時0分)に哨戒ヘリを飛ばしてくれ。予測通りならロウリア艦隊は200km先にいる筈だ」

「わかりました。飛行隊長と各艦に伝えます」

 

 艦長が士官室を後にすると、別の日防軍士官がブルーアイを艦橋に案内した。

 

「こちらが我が艦の艦橋になります」

 

 艦橋からは艦の正面と側面が一望できる構造となっており、配置された乗員は舵輪を握る操舵手のほか、(しき)りに双眼鏡やガラス製の円盤(デジタルスコープ)を覗いていた。

 

「これは皆さん何を見ているのですか?」

「こちらのスコープですか? こちらは艦のレーダー……索敵情報を表示しています。我が艦の最大探知能力は、水上目標であれば70km。対空であれば500kmは発揮できます」

「70kmっ!? まったく想像できないのですけど……」

「そうですね。電波の性質を学べば理解はできると思います」

「そ。そうですか……」

「CICより報告。ダイアモンド5(有人哨戒ヘリ)がロウリア艦隊を捕捉。方位350°(正面=0°)。距離730(73km)!」

「「「ッ!!」」」

 

 電測員の報告が入ると、艦橋内の空気が一気に緊張した。

 

「――総員。戦闘配置っ!」

 

 艦長の号令が入ると、艦内にけたたましくブザーが鳴り響いた。

 乗員は慌ただしく装備を整え、配置に着いた。

 

「艦長。各部戦闘配置に就きました」

「よろしい。航海長。私はCICに降りる」

「わかりました」

 

 艦長が艦橋から降りると、

 ブルーアイはものの数分で配置に就いた日防軍将兵の錬度の高さに驚愕させられた。

 

「よく訓練されていますね」

「それが仕事ですから」

 

 

 戦闘態勢が整ってから約1時間。水平線に茶色い線が薄すらと浮かび上がってきた。

 

「CICより艦橋。敵艦隊との距離が150(15,000m)を切ったら方位275に変針。左砲戦を行う」

「艦橋了解」

 

 ブルーアイは聞き慣れない言葉を質問した。

 

「航海長。ホウセンとは何ですか?」

「それは……。本艦(茶臼)の艦首には160mm連装滑腔砲が2基装備されています。それを用いた戦い方が砲戦……砲撃戦です」

「よくわかりませんが、それだけでロウリア軍の帆船を破壊できるのですか?」

「相手は木造ですから、1発でも十分撃沈できると思います」

 

 ブルーアイは航海長の言っている意味がよく理解できなかった。第3文明圏外における水上戦と言えば、距離があるうちは火矢やバリスタを使い。近づいたら切り込んで白兵戦を仕掛けるというのが主流なのだ。

 対して日本は砲撃戦だけでロウリアの軍船を沈めるというのだ。

 

 ブルーアイが思考に耽っていると、茶臼は緩やかに左へと傾いた。

 知らないうちにロウリア艦隊との距離が15kmを切っていたようだ。

 

 茶臼が変針し終えると、航海長から説明された160mm連装滑空砲が稼働した。

 先端の細い筒が角度をつけたかと思うと、ピタッと静止した。

 ピーッという警報が鳴り始めると、ブルーアイは航海長ではなく、近くにいた乗員に質問した。

 

「すみません。あの筒(160mm砲)を相手に向けて、何が始まるのですか?」

「あぁ。ブルーアイさん。大きな音がなるので、心構えだけお願いします」

「心構え……ですか?」

 

 呆けると警報が鳴り響き、止まったかと思ったらマイクから音声が流れた。

 

≪撃ちぃ方ぁはじめっ!!≫

 

 声が聞こえなくなった瞬間。艦首の160mm連装滑腔砲が轟音を立てて火を噴いた。

 

 日本艦隊の最後尾。第96戦隊に属するコルベット『杉』の艦橋では茶臼の攻撃開始を受信した。

 茶臼と杉は目視で確認できる距離ではなかった。しかし、通常(現代海戦)なら1隻1隻の間隔が10km以上離れていることはざらだ。しかし、今回は近代的な砲撃戦を選択したため、茶臼は無理でもその後を進む駆逐艦やフリゲートを視認する程度の距離を維持していた。

 杉の艦橋で指揮を執る宇賀田は戦域チャートを眺めていた。

 

「……羨ましいな。我々も砲撃に参加したいものだ」

「仕方ありません艦長。本艦にある最大の火砲は35mm重機関砲だけです。せめて5km程度は距離を詰めないと届きませんよ」

「まぁいいさ。獲物があれだけとは限らないし、あれだけ的があれば後半戦は活躍できるだろうよ」

「そうですな。目の前の敵だけであればよいのですが……」

 

 茶臼が砲撃を始めると、後続の駆逐艦やフリゲートも砲撃を開始した。

 

 

 ロウリア艦隊からも、茶臼の砲撃ははっきりと見て取れた。

 

「なんだっ? 奴ら勝手に爆発しおったぞっ!?」

 

 シャークンは望遠鏡で日本艦隊を観察していると、先頭を進む最も大きな軍船が突如爆発(=発砲炎)したのだ。

 

「参謀。奴らはーー」

 

 シャークンは参謀に質問しようとしたが、空の方からヒューという音が聞こえてきた。

 音の正体を探ろうと耳を澄ませていると、後方を進んでいた軍船数隻が轟音と共に吹き飛んだ。

 

「なんだっ!? 何が起きたっ!?」

「提督。後方の軍船が沈められましたっ!」

「バカモンッ! 見ればわかるわっ!!」

 

 シャークンは再度日本艦隊に視線を移すと、後続の船も艦首辺りを爆発させている。しかも、その間隔はバリスタの発射速度より圧倒的に早く感じた。

 

「ギャアアァァァーー……」

「来るな来るな来るなっ!!」

「やってられるかっ! 俺は逃げるぜっ!!」

 

 轟音と水柱が生まれると、味方の軍船が1隻。また1隻と沈められていく。

 

「何なんだっ? これはいったい何だというのだっ!?」

 

 シャークンの乗る旗艦は辛うじて砲撃を免れているが、周辺で爆発が起きると、同じ数だけ味方が沈んでいった。

 何十と沈められても、相手の謎の攻撃に対応策は思いつかない。

 そこに、ハッと思い出したように参謀が口を開いた。

 

「提督。恐らくですが、これは魔導砲による砲撃ですっ!」

「何っ! 魔導砲だとっ?」

「はいっ! パーパルディア皇国の戦列艦は全てその魔導砲が装備されており、日本艦隊の攻撃はその魔導砲によく似ていますっ!」

「だが待て、我が方と日本艦隊とは15km近くも離れているんだぞっ!! パーパルディアの魔導砲もそれだけ遠距離から攻撃できるのか!?」

「いえ、私の記憶では戦列艦の砲撃は1km程度しかできないかと記憶しています」

「しかし、奴らはあれだけの距離から、我が方の軍船を次々と血祭りに揚げているぞっ!」

「それはそうですが……それより提督。相手の上空にはワイバーンの影も形もありません。東方征伐軍から飛竜隊の支援を受けましょう!!」

「背に腹は代えられんか……っ! 魔導通信士!! 東方征伐軍に我が艦隊の状況を報告し、飛竜隊の支援を行うよう要請っ! さらに、各軍船は敵の攻撃を回避できるよう最善を尽くすよう伝えるのだっ!!」

「了解しましたっーー東方征伐軍。こちら征伐艦隊っ!! 応答されたしっ!」

 

 シャークンは半ば狂乱状態で矢継ぎ早に指示を出した。勝てないと本能で分かっていても……。

 




兵器解説

『160mm連装滑腔砲』
 軍艦用の標準的な127mm砲より、さらに射程と破壊力を強化するために開発された艦砲。元々巡洋艦向けに203mm砲が計画されたが、コストの関係から陸軍で使う155mm砲の砲弾を使う方向で決定する。しかし、自走砲で使われる155mm砲では破壊力はともかく射程に大きく不満があった。そこで155mm榴弾の外側にAPDS弾のような装弾筒を被せるという案が提唱された。この装弾筒付155mm砲弾が160mm砲開発のきっかけとなり、発射試験の結果、威力不足が指摘されたがそれ以外は概ね良好な結果を出した。また、それ以上に野戦砲の砲弾を用いているということもあり、陸軍と海軍の補給上の融通ができるという点で財務省が高評価を示している。
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