OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第17話

中央暦1639年 4月26日

-クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ-

 

「……ブルーアイ。この報告書の内容は真なのか?」

「閣下と主に誓って真実であります」

 

 クワ・トイネの政治部会は戦時に入ったということもあり、軍と政府上層部のみの部会がかなりの頻度で実施されている。

 そして、ロウリア艦隊がマイハークへ海上侵攻を画策しているという日本からの情報が入ったその直後。臨時部会を開いたがとてつもなく紛糾した。しかし、日本が苦も無くロウリア艦隊の撃退に成功したということは、マイハークもだがクワ・トイネという国家も救われたことを意味していた。

 

 政治部会の面々は日本艦隊の戦い方を知るため、出席という名の出頭をブルーアイに命令したのである。ただ、直接の報告とは別に報告書の内容に軍上層部の面々は頭痛を覚えた。早い話が理解できないからだ。

 

「……では、日本艦隊は一切被害が無いのだな?」

「はい。ワイバーン300騎が来襲してきたときは肝を冷やしましたが、日本艦隊はまるでお遊戯のように撃滅した次第です」

「……日本が味方で本当によかった」

「同感です」

 

 カナタは自然と口を開いたが、気持ちを切り替えてブルーアイの言葉に耳を傾けつつ、報告書を読み進めた。

 

「ブルーアイ君。今後海上の戦いはおそらくないでしょうから、このまま引き続き日本艦隊の観戦武官をしてくれませんか?」

「引き続きですか?」

「そうです。おそらくですが、我が海軍は日本国防軍を参考に大きく変革すると私は考えています。貴方には海軍の未来のために日本海軍から多くの知見を学んでもらいたいのです。よろしいですか軍務卿」

「ーー首相の慧眼には適いませんな。私も同意見です。許可しましょう」

「ありがとうございます首相。その大命。しっかり果たします」

 

 ブルーアイはカナタに敬礼して政治部会を退席すると、カナタは別の懸念を質問し始めた。

 

「軍務卿。ギムを制圧したロウリア軍の動きはどうですか?」

「ギムの周りですか? 入っている報告ではギム周辺の制圧に勤しんでいると……」

「エジェイの防衛体制はどうですか?」

「エジェイ防衛騎士団は全兵力が招集済みです」

「……防衛は可能なのですか?」

「ロウリア軍主力がエジェイの攻略を目指しているなら、数か月から半年は耐えることができます。しかし、留意すべきことがあります」

「留意すべきこととは?」

「日本との軍連絡室にて出たのですが、ロウリア軍がエジェイを包囲に留め、公都や他の都市への迂回機動する可能性があると……」

「……現に大量の軍船を用いてマイハークへ攻撃しようとしたわけですからね。軍としての対策は?」

「正直申しますと、全軍のうち4割がエジェイに集結しており、それを包囲下に置かれたまま別の都市を攻撃されては、防衛不可能です」

「そこは……仕方ありませんね。そもそも戦力差が10倍近くありますから。日本の援護は当てにできますか?」

「そちらですが、マイハークに提供した土地を利用して巨大な飛行場のようなものを設営。多数の戦力を集めています」

「そうですか。どのような戦力を集めているのですか?」

「私も直接見ておりませんので説明できないのですが、警備を行う兵から金属を纏ったナニカらしいのです」

「金属を纏ったナニカですか……」

「どうも、形でいうなら鉄板を張り合わせた巨大な荷馬車とのことです」

「ああ。たしか条約で多数のバスとかトラックを供与してもらいましたね。軍用のものがあるのも、自然なことなのでしょう」

「おそらくは……。日本の連絡武官から5月中旬に救援部隊の第1陣が集結するとのことです」

「5月中旬……それまで我々だけでなんとか踏ん張らないといけませんね」

「軍としても、威信をかけて防衛に当たります」

 

 カナタと軍務卿の話はここで終わり、各々の職務へと戻った。

 

 

中央暦1639年 4月27日

-ロウリア王国 北の港-

 

 日本艦隊との戦いで大打撃を受けたロウリア艦隊は這う這うの体で港へと戻ってきた。

 出港したときは4000を超える陣容を誇った艦隊が、戻ってきた艦隊は1500を切っていた。

 

「……そんな馬鹿な」

「あれだけの艦隊をこんな状態にするなんて」

「いったい何があったんだ?」

 

 入港する軍船に港湾職員はそれぞれ口にした。

 

 軍船から降りてくる水兵は出港した時のような陽気さは無く、殆どがまるで悪夢を見たような一様に暗い表情を浮かべていた。

 とぼとぼ歩く水兵に親しい職員が声をかけた。

 

「いったいどうしちまったんだ? 海獣とでも出会ったのか?」

「……海獣? いや、あれは海獣なんて表現は生ぬるい。あんなのが戦いかと言われたそんなもんじゃない。あれは正に虐殺としか言えねぇヤバいもんだった」

「クワ・トイネがすごい魔導でも開発したのか?」

「魔導? あぁ。あれは確かに魔導だったんだろうな。俺たちが理解できないようなとんでもねぇ奴なんだろうよ」

「どんな魔導だったんだ? 詳しく教えてくれよ」

「すまねぇが気分が悪い。その話はまた今度でいいか?」

「そうか。すまないな。ゆっくり休んでくれ」

 

 肩を落としたロウリア軍水兵の歩みは、まるで野に幽霊が闊歩する様のようだった。

 

 同日。海軍司令部では戻ってきた軍船の船長や先任指揮官の報告書が山を築いていた。

 

「カンプ。戻ってきた船長の報告の内容はどうだ?」

「ホエイル提督。報告書類を何度読んでも理解なんてできません」

「だろうな。“巨大な軍船が火を挙げたと思ったら、味方が吹き飛んでいた”とか、“物凄い勢いで狼煙を挙げたと思ったら、巨大な矢のようなものが味方ワイバーンの近くで爆発した”とか。訳が分からん」

「はぁ……。荒唐無稽な内容ですが、艦隊を3000隻近くも沈めた相手です。無視はできません」

「これなら、台風や大波と遭遇して壊滅したと言われた方がまだ納得できるぞ」

「さらにはワイバーン300騎も失ってますから、言い訳も虚偽の報告もできません」

「まったく。王に直接報告せよと言われておるから、気が重いわい」

「それでも、残りの軍船はホエイル提督に全て委ねられる結果になりました。亡くなられたシャークン前提督に代わって指揮をお願いします」

「そうだな。現実を否定しても何もならんか……」

 

 数日間、海軍庁舎の執務室から灯りが切れることはなかった。




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