中央暦1639年 4月30日
-クワ・トイネ公国 マイハーク日防軍基地-
マイハーク市街から西へ1kmの位置。ここにはクワ・トイネから借用した日防軍の基地が設営されていた。
基地といっても、設営許可が降りてから10日しか経過していない事もあり、野営テントが乱立する前線基地と呼称した方が適切な状態だった。それでも、最低限
また、車両待機場には重工兵部隊向け作業用重機とは別に各種の装輪戦闘車や装輪自走砲が整列していた。出撃がいつかかってもいいように、何人もの整備員が車両の整備を行っている。
そんな中、ひと際異質な存在を放っている物があった。見る人が見れば人型兵器とわかるが、マイハークの少なくない市民は以前に目にしていたゴーレムだと勘違いした。しかし、実際に基地内に置かれているのはヴァンダーパンツァー。略してヴァンツァーと言われる人型“戦闘”車両だ。全高約6m。前後約3m。幅約4m。重量は機種によって20tから40tとばらつきが存在する。
長らく人型兵器の有効性や開発に関する議論があったが、一つの起点となったのは2020年代にECのシュネッケ社がWAPの前身であるWAWの試作1号機を完成させた時だ。
ただ、開発初期の段階でWAWはあくまで作業用重機という位置付けだった。それが戦場投入されるきっかけとなったのは2030年代に起きたアフリカ紛争である。
このとき投入されたWAWは『対機甲部隊用の切り札』という名目だったが、より正確にはWAWが戦場で使えるかどうか実地試験も兼ねる形の評価試験部隊であり、ECとOCUがアフリカの諸勢力へ試験部隊を派遣した。
最終的にOCUから派遣されたWAW部隊がアフリカ紛争を沈静化させることに成功させた。余談だが、その部隊の1人がアフリカ再建運動を支援し、伝説として現地に残っている。
結果的にWAW部隊は成功したかに見えたが、悲しいことにWAWをそのまま軍で使うには費用対効果の面で難しかった。しかし、時代がさらに進んだ2040年代。より軍用を意識したWAPが開発された。これにより各国で順次WAPを配備。2070年及び2090年のハフマン紛争で獅子奮迅の活躍を見せたのである。
現在、日本国防軍に配備されているWAP乗員でこのハフマン紛争参加者は多くない。それでも、OCU陸防軍からフィードバックされる各種データを元に装備開発や乗員マニュアル。各種支援体制を日防軍は確立させている。
閑話休題。
今回クワ・トイネに派遣。編成された部隊『クワ・トイネ遠征派遣群』は大きく2つに分けられる。まずマイハーク基地の設営と保安。さらに市ヶ谷の国防省と連絡。調整と後方任務を請け負う『マイハーク基地隊』。もう一つは前線運用される『第21任務旅団』である。
マイハーク基地に展開予定の戦力は以下のとおりである。
『クワ・トイネ遠征派遣群』
↓ ↓
↓ 『マイハーク基地隊』※マイハーク基地常駐
↓ ↓→第6師団第61後方通信中隊
↓ ↓→第6師団第61防空大隊/補給中隊
↓ ↓→航空陸戦群/第201連隊/第1大隊
↓ ↓→警備大隊※クワ・トイネ軍将兵を指揮下に含む
↓ →→基地設営隊
↓
『第21任務旅団』※機動運用部隊
↓→第6師団/第61機動連隊
↓ ↓→本部中隊※前線指揮中隊
↓ ↓
↓ ↓→第1機動大隊
↓ ↓ ↓→第1中隊
↓ ↓ ↓→第2中隊
↓ ↓ ↓→砲兵中隊
↓ ↓ →→防空中隊
↓ ↓
↓ ↓→第2機動大隊※上記と同じ
↓ ↓
↓ ↓→第3機動大隊※上記と同じ
↓ ↓
↓ ↓→機動砲兵大隊
↓ ↓ ↓→第1中隊
↓ ↓ ↓→第2中隊
↓ ↓ ↓→中距離誘導弾中隊
↓ ↓ →→防空中隊
↓ ↓
↓ →→整備中隊
↓
↓→第3師団/第31機動連隊/第3大隊防空中隊
↓
↓→第7師団/第72機動連隊/第2大隊防空中隊
↓
↓→第8師団/第81機動連隊/第1大隊防空中隊
↓
↓→第1師団/第11戦術機甲大隊
↓ ↓→第1WAP中隊
↓ ↓→第2WAP中隊
↓ ↓→戦車中隊
↓ →→中距離誘導弾中隊
↓
→→第10師団/第101重工兵大隊
↓→第1中隊
↓→第2中隊
↓→機動中隊
→→補給中隊
派遣部隊に複数の防空中隊が編成されているが、これはロウリア軍のワイバーン対策である。『ロデニウス北方海戦』において299騎のワイバーンを撃墜したが、なおギム周辺に101騎のワイバーンが展開しているのを確認している。
さらに、ギム侵攻時のワイバーンの戦闘様相から『ワイバーンは戦闘ヘリに近い能力がある』という考えに日本は至っている。
であるなら、航空優勢を確保するために戦闘機隊の派遣が基本的な考えなのたが、ここで問題が起きた。
国防空軍の主力戦闘機は第6世代及び第7世代戦闘機である。その性能は折り紙付きだが、それを下支えする航空基地が土を均して固めた程度の野戦飛行場ではデリケートすぎて運用できないのだ。
マイハーク基地は日本国内基準の航空基地レベルまで設営するが、野戦飛行場状態の現段階では国防陸軍の
マイハーク基地の戦力が不十分ということで、基地からよく飛び立つのは航空陸戦群に編成されている無人観測機だけである。その任務もロウリア軍の監視という地味なものだった。
基地内の待機場には日本本土から輸送された何種類もの車両が整列していた。しかし、現段階で基地に集まっているのは第1陣の3割である。
派遣部隊の第1陣は最終的に戦闘用装輪車両が191台。戦車10両。支援車両144台。WAP36機が集結する予定だ。
全体的に疎らと言える中。先行して到着した陸軍の暁が乗機の整備状態を確認するついでに基地の中を散策していた。
そんな中、日防軍士官の一人が暁に近づいてきた。
「失礼します。暁大佐ですか?」
「そうだが。貴官は?」
「61連隊の日野大尉です。旅団長付補佐を勤めています」
「そうですか。第11戦術機甲大隊長の暁 廉也大佐だ。これからよろしく頼む」
「よろしくお願いします。大佐の戦場伝説は何度となく聞いております」
「戦場伝説とは?」
「はい。なんでも第2次ハフマン紛争初期にUSNに制圧されたフリーダムシティから敵WAPを破壊しつつ脱出したとか、機動遊撃戦で多くの敵戦力を撃退したとか、軍の極秘作戦に投入されたのが大佐の部隊だとか」
「はははっ! 噂が独り歩きしていますよ日野大尉。あの紛争で戦い抜いたのは事実ですが、単純に運よく生き残ったようなものです。伝説というのはキャニオンクロウに送る物ですよ日野大尉」
「しかし、我が軍の中でヴァンツァー乗り出身の大隊長は貴方だけです。噂の一部は本当ではないのですか?」
「いやいや、ヴァンツアーに20年間も乗ってますから、腕に自信はありますよ? ただ、軍での序列は長く働いていたら自然と上がるものです。日野大尉も旅団長付としてしっかり務めを果たせば、大佐も夢ではないですよ」
「そうですか? それならよいのですが……すみません。他にも職務がありますので、これにて失礼いたします」
日野は敬礼した後、踵の向きを変えると暁から離れていった。
(極秘作戦って議員の別荘襲撃だよな。表向き“施設を占拠するUSN軍の撃退”って事になっているが、裏じゃぁ政治家がため込んでた国債を回収することが任務だったし、詳細は口外禁止だしな)
暁は第二次ハフマン紛争のことを思い出しつつ、久々の戦場ということもあり気持ちが少なからず昂っていた。そんな気持ちをあまり表に出さず、基地の散策を続けた。
用語解説
『EC』
現実より成功したEUが名称を変えてECに名称変更しました。作中登場なし。
『WAP』
本編中でも解説してますが、さらに補足すると上半身。腕部(正確には肩から先)及び脚部(正確には腰から下)を別のメーカー品でも結合できる構造を有している。各ゲームでは『プレイヤーが考える強力な機体』を考えると思うが、ゲーム内には職種というものがあり、そこから外れる組み合わせはあまり使えない。
余談みたいなもの
『暁 廉也』
フロントミッションの漫画『DOG LIFE & DOG STYLE』及び『THE DRIVE』に出てくる数少ない日本人WAPパイロット。作中筆者が出したかったキャラである。
両作品で同じ名前の人物が登場するが、骨肉隆々な点以外あまり似ていない。それ以前に同一人物ではない(世界戦が違うという感じで筆者は認識しております)
キャラクターの性格は『THE DRIVE』を参考にしてます。