OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第19話

中央暦1639年 5月2日

-クワ・トイネ公国 ギム‐エジェイ街道-

 

 ギムとエジェイは移動するための街道が整備されている。その街道からエジェイまで25kmの位置を東へ移動する集団がいた。

 彼らはギムから少し離れた位置で生活するエルフの集団だ。

 ギム陥落は即日でクワ・トイネ政府上層部に届いたが、このエルフの村に情報が届いたのはほんの数日前だった。

 他の国境近くの村や町の住民はギム陥落の一日二日で避難を開始している。しかし、この集団はエルフの古い慣習で生きていたため伝達が遅れ、避難開始が他と比べ大きく遅れてしまったのである。

 さらに言うと、この集団に若い男はほんの数人しかいない。開戦間近となりクワ・トイネ軍の動員令で招集されたからだ。

 集団のほとんどは子供や老人。若い人も女性ばかりだ。進む足はそこまで早くない。

 その光景を遠くから2つの騎馬が眺めていた。

 

「頭ぁ。獲物を見つけましたぜ!」

「あぁん? 確かに旨そうな獲物だ」

「ヤリますか?」

「何言ってやがる。持ちろんヤルとも」

 

 “赤目のジョーヴ”が率いるロウリア軍ホーク騎士団第15騎馬隊は角笛の音を轟かせると馬を走らせた。

 

 角笛の音は避難民の耳にも届いた。

 避難民の一人であるパルンはその音に振り返ると、音の正体を探った。

 

「ロウリア軍の騎馬隊だっ!! みんな走れっ!!」

 

 避難民の最後尾で警戒に当たっていた若い男性が叫んだ。

 パルンはその言葉に従って、妹であるアーシャの手を引いて走り始めた。

 

「アーシャ走れっ!! ロウリア軍が迫ってるっ!!」

「はぁ。はぁ……。待って……。待ってお兄ちゃんっ! 早いよっ!」

「そんなこと言ってたら、相手の騎馬に追いつかれちゃうぞっ!!」

 

 2人は……否。避難民は必死に走った。すぐ後ろに敵が。“死”が迫ってきているのだ。必死にならないわけがない。

 まして、相手は人間至上主義の兵隊だ。捕まればどうなるかわかったものではない。

 しかし、避難民の必死の努力をあざ笑うかのように第15騎馬隊100騎が迫ってきた。

 

「ヒャッハーーッ。覚悟しやがれっ!!」

「叫べ叫べっ!! あと少しだぞぉおお!!」

 

 蹄をたたく音と共に騎馬隊から下劣な言葉が聞こえてきた。

 彼らは所属こそ騎士団だが、元を辿れば山賊の集まりなのだ。品位の欠片など存在しない。

 ミーシャの手を引きながらパルンは祈った。

 

(怖い。怖い……っ! ボク達が何か悪いことをしたのっ!? 神様。せめて妹のミーシャだけでもどうか助けてくださいっ!!)

 

 後ろから迫りくる威圧に恐怖しながら、パルン達は必死に走った。

 

 

 騎馬隊隊長のジョーヴは獲物が必至な形相で逃げようとしている様子に昂った。

 ギムを落とした直後。嬲って良し、奪って良しというお達しがあり。ジョーヴは喜々と猫人の親子を虐殺した。

 あの時の昂揚感は未だにジョーヴの中で燻っていた。

 目の前の獲物に舌なめずりしながら、獲物から残り200mというところまで近づいた。

 

「獲物は好きにしていいぞっ!! 全騎突撃いいぃぃぃ!!」

 

 もはや万事休すという時。騎馬隊と避難民はブオオォォという妙な音が聞こえてきた。

 音に気づいた瞬間。騎馬隊に何百もの土埃が生まれた。

 土埃が通り過ぎた後、そこにあったのは土と血肉が混ざった騎馬隊の残骸だった。

 

「何だっ!?」

 

 ジョーヴが騎馬隊の動きを止めて上を見ると、轟音を立てながら過ぎ去っていくワイバーンのようなものが目に入った。

 

「あいつぁ何だ? クワ・トイネのワイバーンか?」

 

 足を止めた騎馬隊に別のソレが追撃をかけた。土埃が騎馬隊を通り過ぎると、そこにいた数十の馬と兵士はモノ言わぬ死体と化していた。

 

「頭っ!! 空飛ばれてちゃぁ手が出せね。ここは引き上げましょうぜっ!!」

「ちっ。運のいい奴らめっ! 引き上げるぞっ!!」

 

 角笛が鳴ると騎馬隊は急いで反転。離脱を図ろうとした。しかし、空を飛ぶソレは騎馬隊を逃がす気はなかった。

 空飛ぶソレは騎馬隊の上空を通り過ぎつつ、壺を細長くしたようなものを翼から切り離した。

 ジョーヴらは逃げの一手だったため、それが落ちてくることに気が付かなかった。

 細長い壺が地面に着いた瞬間。轟音と共に騎馬隊を爆炎で包み込んだ。

 ジョーヴも何が起きたかわからず、意識を焼き尽くされた。

 

 

「イーグルクロー5。ガンズガンズガンズ」

 

 ロウリア軍騎馬隊を攻撃しているのは、マイハークに拠点を置く航空陸戦群の軽攻撃機『AT-41』だった。

 最初は翼下に装備する7.62mmミニガンポッドで攻撃を図った。所詮中世の装備で固める騎馬隊である。音速の3倍で何百と飛んでくる7.62mm弾を防ぐことはできない。

 

「イーグルクロー6。ボムズアウェイ」

 

 潰走を図りつつ、固まっている騎馬には50kg爆弾を頭上から見舞った。

 地面に着いた爆弾は騎馬隊を何十と爆炎で吹き飛ばした。

 

 最初100騎いた第15騎馬隊は2機の軽攻撃機により、たった3騎にまで減らされた。

 その3騎は生き残るためにバラバラの方向に逃げ出した。

 

「イーグルクロー5からマイハークコントロール。複数の騎馬が分散して逃走を図っている。追撃するか?」

≪マイハークコントロールからイーグルクロー5。追撃の要無し。直ちに帰投せよ≫

「イーグルクロー5からマイハークコントロール。避難民の退避支援もいらないか?」

≪マイハークコントロールからイーグルクロー5。周辺の脅威なし。さらにエジェイより車両隊が向かっている≫

「イーグルクロー5了解。RTB(基地へ帰投する)

「イーグルクロー6。RTB」

 

 こうして、2機の軽攻撃機は北東へと飛んでいった。

 

 パルンをはじめ、避難民たちは一様にポカーンとなっていた。

 

「いったい何だったんじゃ?」

「クワ・トイネ軍はいつの間にあんなすごいワイバーンを準備したんだ?」

 

 避難民は騎馬隊に襲われる危険から解放されたものの、助けてくれたのが誰なのかわからず呆然としていた。

 

「皆の者。危機は去った。歩けるものはけが人に手を貸し、エジェイへ向かうぞ」

 

 エルフの村長が声をかけると、他にエルフもそれに倣って集まり、足を動かし始めた。

 

「あれは何だったんだろうか?」

「見た事はおろか、聞いたこともないのぉ。あんなもの」

 

 避難民は先ほど飛んでいったワイバーン?のことをそれぞれ話し合った。

 

「ねぇお兄ちゃん。お空に飛んでたの何だったの?」

「さぁ。何だったんだろうね。お兄ちゃんにもわからないや」

「そういえば、羽のところに赤い丸が描かれてたよ」

「へぇ。赤い丸ねぇ……」

 

 パルンは赤い丸と聞いて母から聞いた古い伝説を思い出した。

 

――遥か昔、魔王軍が攻めてきた。

 フィルアデス大陸の各種族は強力な魔王軍に対抗すべく『種族間連合』を組織して対抗した。しかし、魔王軍の力は凄まじく。戦ったら戦っただけ敗退し、種族に関わらず多くの戦士が殉死した。

 魔王軍はフィルアデス大陸からロデニウス大陸を渡り、侵略を続けた。

 種族間連合は『聖地リーン・ノウの森』と言われる所まで後退していた。

 エルフの信仰を受ける緑の神は創造主である太陽の神に救済を祈った。

 太陽の神はその祈りを聞き、使いを種族間連合の元に顕現させた。

 太陽神の使い達は凄まじい魔導を以て魔王軍をロデニウス大陸から追い落とし、さらにフィルアデス大陸北東端まで魔王軍を追撃。撃退したのだった。

 救われた種族間連合は使い達にお礼として金銀財宝を提供したが、使い達は受け取らず。役目を終えたとばかりに彼らの目の前から去って行った。

 去る時、使い達が使っていたワイバーンの内一つが動かなくなり、置いて行ってしまった。エルフたちはそのワイバーンに時空遅延式保管魔法を掛け、森の奥にある祠へと安置した。

 今でもそのワイバーンは保管されており、パルンたちも時たまその動かなくなったワイバーンに祈りを捧げている――。

 

「案外。あの空に飛んでいたのは、太陽神の使いなのかもね」

 

 パルンはアーシャに応えると、エジェイから延びる街道から猛烈な速度で濃い緑色の荷馬車の隊列が近づいてきた。

 

「なっ。何じゃあれはっ!?」

「またロウリア軍か!?」

「いや待て。クワ・トイネ軍の旗を掲げているぞっ!」

 

 避難民たちは初めて見た荷馬車に肝を冷やしたが、クワ・トイネ軍の旗を見て敵ではなく味方であることを確信し安堵した。

 

 謎の荷馬車が避難民近くで止まると、後ろの荷台からクワ・トイネ軍の兵士と斑服を着る汚らしい人(日防軍兵士)たちが降りてきた。

 

「リーンの村の方ですね。ロウリア軍の騎兵に襲撃されたと聞いてお迎えに上がりました。この荷馬車に乗ってくださいっ!」

 

 避難民はクワ・トイネ軍兵士の指示に従い、荷馬車へと乗り込んだ。

 荷馬車は10台しか無かったので、荷台はすし詰め状態になったが、無事エジェイへとたどり着くことが出来た。

 

 なお。この荷馬車の正体はクワ・トイネ軍の荷馬車ではなく、日防軍の車両隊である。

 元々、この車両隊はエジェイ近郊に日防軍向けの野営地を設置するために資材を運ぶ任務に就いていたのだが、無人観測機が避難民とロウリア軍騎兵隊を捕捉すると、資材を大急ぎで下ろして少数の歩兵だけを乗せて避難民の元へと急行したのである。

 車両隊の先頭と最後尾には護衛の軽装甲車が同伴しており、護衛班の班長はマイハーク基地へと通信を行った。

 

「エスコートホースからマイハークベース。対象の避難民収容完了。これよりエジェイへ向かう。送れ」

《マイハークベースからエスコートホース。エジェイに避難民を送ったら、燃料補給後、マイハークへ帰投せよ。送れ》

「エスコートホースからマイハークベース。燃料補給後、マイハークへ向かう。オーバー」

 

 班長の通信が終わると、機関銃に就いている兵士が班長に話しかけた。

 

「班長。こんなこと(避難民収容)ってこれからも起きるんすかね?」

「さぁな。少なくとも昨日から航空陸戦群が飛び上がっている。俺たちがドンパチするのはまだまだ先だろう」

 

 班長の言う昨日。つまり5月1日にマイハーク基地に展開する航空陸戦群の軽攻撃機が飛び始めた。その任務はギムを中心に活動する敵騎兵隊への攻撃だ。

 今回は偶然避難民がいたということもあり、そちらの保護を優先したが、他の箇所ではロウリア軍騎兵隊による襲撃が散発していた。

 マイハーク基地に展開している航空戦力は、無人観測機4機と軽攻撃機16機だけだった。そこで、事前に敵戦力を削ぐために2機単位で出撃を始めたのだ。

 イーグルクロー5と6による攻撃は今回が初めてだった。だが、別の小隊は攻撃を実施しており、既に敵騎兵隊3隊を撃破している。

 

 

同日

-クワ・トイネ公国 占拠中のギム-

 

 5月を境に複数の騎兵隊が壊滅的な被害を受け、生き残りがギムへと帰還した。

 パンドールは帰還した騎兵から“空から攻撃を受けた”という報告を受けていた。

 

「空からいきなり猛烈な魔導で攻撃を仕掛けてきて味方が吹き飛んだだと? まさか、エジェイの近くに日本軍が駐留し始めているというのか? いったいどうすれば……」

 

 パンドールはこう予想したが、実際にはエジェイに展開している日防軍戦闘部隊(輸送部隊は除く)は居なかった。しかし、先月にはシャークン提督の艦隊が壊滅しており、ここに来て騎兵隊が日本のワイバーン?から攻撃を受け始め、ほんの数騎を残して壊滅しているのだ。東方征伐軍全体で見れば十分許容範囲内だが、これからもこのようなことが続くのであれば、戦略全体を考え直さなければいけないとパンドールをはじめ征伐軍は考え始めていた。




用語解説的なもの

『AT-41』
某最低野郎ではありません。正確には『攻撃兼用練習機』です。なお機体形状はT-4中等練習機とSu-25を足して2で割ったような形状とご想像ください。

Q.原作だとコブラとチヌークなのに、作中では軽攻撃機にトラック? 装備弱体化してない?
A.作中経過時間が3週間なので、エジェイに警備部隊と物資搬入するのが限界です。
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