OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第22話

中央暦1639年 5月16日

-クワ・トイネ公国 城塞都市エジェイ-

 

 先日15日の日防軍の夜間作戦は、翌日の朝においてノウは参謀の報告で初めて知ることとなった。

 

「……一体全体。どういうことか説明していただけますかな? 河内将軍」

「はて、何のことですかな?」

「昨晩。西の平原で戦っているところを我が軍の兵士が見ておるのです。我が軍は1人も城壁の外には出ておりません。それなら、外で戦っていたのはロウリア軍と貴国の軍隊ということになります。なぜ戦ったことを隠すのですかな?」

「隠しておりません。事後報告になってしまったのは申し訳ありませんが、今回の軍議で報告するつもりはありました」

「……私はあなた方に参戦要請をした覚えがないのですが?」

「そうは言われましても、本国から“クワ・トイネ軍と共同し、ロウリア軍を撃退せよ”という命令を受けております。今回はロウリア軍が我が方の陣地に接近してきたため、攻撃したのです」

「……それならば仕方ありません」

「そうだノウ将軍。先日やっと部隊の集結が完了しました。必要なら直ちにロウリア軍へ攻撃を実施できますが、如何いたしますか?」

「失礼ですが、兵は何人でしょうか?」

「そうですなぁ……。2千人(旅団総数1893人)といったところです」

「たった2千人程度ですか? 相手は5万に達する兵力。日本は戦う意思が低いように見受けられますが?」

「それはとんだ誤解です。兵士の数が少ないのはそれ以外で戦闘力を発揮することができるからです」

「ほう。では仮に明日決戦を挑んだとして、勝利することができるということですかな?」

「ええ。もちろんです」

「……いいでしょう。明日ロウリア軍に決戦を挑みます。よろしいでしょうか河内将軍?」

「大丈夫です。ではまず決戦前の配置ですがーー」

 

 ノウは日本の実力に疑心を抱きつつも、翌17日の決戦に向けて準備を始めた。

 

 

中央暦1639年 5月17日

-クワ・トイネ公国 エジェイ西・ロウリア軍野営地-

 

 翌朝。ジェーンフィルアはいつもより早い当直隊長の報告で目を覚ました。

 

「ジェーンフィルア伯爵っ! クワ・トイネ軍が城壁から出てきています」

「何っ!? それは本当か?」

「間違いありませんっ!!」

 

 ジェーンフィルアは大急ぎで軍装を整え、櫓の上に登った。

 そこから見えるのは、クワ・トイネ軍が戦列を敷いている光景だった。

 

「角笛を吹けっ!! 決戦の用意だっ!!」

 

 角笛の音がロウリア軍野営地に響くと、寝ていた兵士が飛び起き、軍装を整えて戦列を敷き始めた。

 ロウリア軍の動きはエジェイの城壁の上からも確認できた。

 城壁からはノウと参謀の他、河内と守屋を含む日防軍の指揮中隊も一緒に居た。

 

「ノウ将軍。予定通り相手も決戦準備に入りましたな」

「えぇ。では手筈通り、敵軍の準備が整ったら始めてください河内将軍」

「わかりました」

 

 クワ・トイネ軍の戦列が敷き終わってから半刻。ロウリア軍の戦列も準備が整った。

 その様子を確認した河内は、通信機を起動させた。

 

「コマンダーから砲兵隊。攻撃を始めろ。送れ」

≪砲兵隊からコマンダー。攻撃を開始する。オーバー≫

 

 エジェイから東に築かれた野営陣地では、25両の装輪自走砲が装備する155mm砲の仰角を上げていた。

 攻撃命令が届き、相手の戦列を再確認しつつ標的を選定した。

 

「各中隊。標的確認。攻撃開始っ!!」

 

 155mm砲25門が一斉に火を噴いた。

 

 

 戦列を敷いたロウリア軍はいつでも前進できる状態だったが、クワ・トイネ軍の動きを読めず、未だ野営地前に留まっていた。

 

「しかし、クワ・トイネ軍は何を考えておるのだ? 数が優位なようにも見えんが……」

 

 ジェーンフィルアがクワ・トイネ軍を観測していると、ヒューという風切り音が耳に入ってきた。

 ふと空を見上げると、戦列の最左右翼先端でいきなり爆発が起きた。

 

「何だっ!? 何かの魔導かっ!?」

 

 ロウリア軍の戦列に次々と爆発が起きた。爆発が起きると何十もの兵士が土塊と共に吹き飛んだ。

 

「ワッシューナよっ! あれは何かの魔法なのかっ!?」

「わっ。わかりません。私もこのような魔導は聞いたことも見た事もありませんっ!!」

「では、これはいったい何なのだっ!? どうすれば良いっ!?」

「このままでは謎の攻撃が続きます。軍を前進させましょう。敵味方入り混じった乱戦に持ち込めば、あの強力な魔導を使うのを躊躇するかと思われます」

「クソ……クワ・トイネがこんな魔導を開発していたとは……全軍前進せよっ!」

 

 角笛が吹くと、約5万の戦列は前進を始めた。それでも、謎の爆轟魔法?は継続され、多くの兵が戦死した。それでもロウリア兵は倒れた兵を鑑みず、ただひたすら前進した。

 

 

「敵軍。前進を始めました」

「コマンダーから砲兵隊。照準を修正しつつ射撃継続。送れ」

≪砲兵隊からコマンダー。照準を修正しつつ、砲撃を継続する。オーバー≫

 

 21旅団砲兵隊は、最初ロウリア軍の戦列先頭両端に狙いをつけていた。ロウリア軍が進むにつれて戦列中央両翼辺りにも照準を合わせて砲撃を継続した。

 

≪砲兵隊からコマンダー。残弾1割。繰り返す残弾1割。送れ≫

「コマンダーから砲兵隊。残弾1割了解。砲撃を停止せよ。送れ」

≪砲兵隊からコマンダー。砲撃を停止する。オーバー≫

 

 21旅団砲兵隊はロウリア軍が1kmほど進むと砲撃を終了した。

 

「コマンダーからハンマー及びアンヴィル。敵軍への攻撃を開始せよ。送れ」

≪ハンマーからコマンダー。前進する。オーバー≫

≪アンヴィルからコマンダー。攻撃を開始する。オーバー≫

 

 河内は砲撃を終わらせると、クワ・トイネ軍両翼に配置していた混成機動部隊を動かした。

 距離的にロウリア軍から見ることもできたが、クワ・トイネ軍と比べ迷彩による隠蔽が仕事をして、ジェーンフィルアはこの混成機動部隊を見つけることができなかった。

 

 クワ・トイネ軍の右翼側。そこにハンマーチームが待機しており、率いるのは暁だった。

 暁はマップに表示される敵戦力の位置を確認しつつ、

 

≪大佐。出番ですね≫

「そのようだな。ハンマーチーム各員。狩りの時間だ。我々日本軍の実力をたっぷり教えてやれっ! 前進っ!!」

 

 暁のWAPの他、ハンマーチームに配備されているWAPと装甲車群が一気に速度を上げ、ロウリア軍左翼へ襲い掛かった。

 

「おい? なんだあれっ!?」

「ゴーレムッ!? クワ・トイネ軍が!?」

「鉄の荷馬車だっ!! 何台も居るぞっ!!」

 

 ロウリア軍の視界に装甲車やWAPが入り込むと、それぞれが装備する火砲が動き出した。

 軽快な音から爆発的な音まで、膨大な数の炸裂弾がロウリア軍兵士に降り注いだ。唯でさえ密集隊形ということもあり、避ける間もなくロウリア兵は撃ち倒されていく。

 

「このままじゃ唯の的だっ!! 一気に走り抜けろっ!!」

「こうなったら自棄だっ!! うおぉぉぉーー!!」

「続けぇぇーー!!」

 

 ロウリア軍の一部勇敢な兵士は、ハンマーチームに肉薄するため遮二無二突撃を開始した。

 

≪敵兵。我が方に向け接近中≫

≪キルゾーンの隙間を抜けられますっ!!≫

 

 装甲車群やWAPは肉薄させまいと砲火を向けるが、何千もの兵士が一斉に突っ込まれては捌き切れなかった。

 

「ハンマーチーム全車停止。歩兵を展開させて援護させろっ!! 敵を肉薄させるなっ!!」

 

 暁はAPCやMCVの車内で待機している歩兵を展開するよう指示を出した。

 

「行け行けっ!!」

「しっかり狙えっ!! 敵は多いぞっ!!」

 

 歩兵が迅速に展開し、敵兵との距離が200mを切ると射撃を開始した。何とか生き残って突撃してきたロウリア兵も、砂糖が溶けるように減っていった。

 

「ちくしょぉっ!! こんなん戦いじゃねぇよっ!!」

「撤退だっ!! このままだと無駄死になるっ!!」

「撤退っ! 撤退っ!」

 

 日防軍の猛烈な鉄風雷火は5万近くいたロウリア軍を3万近くまで減らしていた。

 ロウリア軍は膨大な数の屍と強力無慈悲な魔導?を前に戦意を喪失し、残った兵士は我先にと自軍陣地へと逃げ始めた。

 

「ノウ将軍。大勢は決したかと」

「……そのようですな。では、わが軍も動きましょう」

「わかりました。コマンダーからハンマー及びアンヴィル。敵は敗走を始めた。追撃しつつ、ハンマーは敵野営地北側。アンヴィルは敵野営地南側に展開せよ。送れ」

≪ハンマー。了解。オーバー≫

≪アンヴィル。了解。オーバー≫

 

 エジェイ城壁の上で角笛が吹かれると、クワ・トイネ軍が前進を始めた。

 ロウリア軍の戦意はもはや無く。野営地に戻ってきた兵士を再度戦わせようとジェーンフィルアやアデムは檄を飛ばした。

 

「貴様らっ!! それでも栄えあるロウリア軍の戦士かっ!? 逃げずに戦えぇっ!!」

「逃げたら軍法会議ですよっ!? それでもいいのですかっ!!」

「ふざけるなっ! あんなのと戦えるかっ!!」

「俺は逃げるぜぇっ!! 命あっての物種だからなぁっ!!」

 

 ロウリア軍のうち魔導兵団は比較的後方で待機していたので戦意十分だが、それ以外の歩兵や特技兵。重装歩兵は度重なる攻撃で戦力を擦り減らされており、合計で1万を切っていた。

 もはや秩序というものがない状況にアデムは思案した。

 

(不味いですねぇ。まさかクワ・トイネ軍がここまで精強とはっ! ここは引くのが得策でしょう……)

 

 もはや勝てないと察したアデムはジェーンフィルアにバレないよう、馬に跨り急いで野営地からギムへと逃げ出した。

 ジェーンフィルアはアデムが逃げ出したことなど露知らず、ワッシューナに命じ魔導兵団による攻撃を始めようとしていた。

 この魔導兵団の攻撃準備が、ジェーンフィルアたちの運命を決定付けさせた。

 魔導兵団は何とか戦況を挽回するため、集合魔導術式を発動させた。その巨大かつ()()()魔法陣はエジェイの城壁から戦場を観察するノウ達の視界にも入った。

 

「まずいっ!! あれは恐らく対軍用の魔導術式だっ!!」

「対軍用の魔導術式とはなんですか?」

「個々の魔導士で発揮できる攻撃魔法はたかが知れる。それを複数の魔導士が同じ魔導を同時発動させ破壊力のある魔導を発現させるのだっ!! このまま魔導を発動させてしまっては戦況が覆るかもしれんっ!!」

「ノウ将軍。あの魔導が発動するまでどれくらいの時間がかかりますか?」

「ロウリア軍にどれだけの魔導士がいるかわからないが、あの魔法陣の大きさからだと、それなりに時間がかかる」

「では、まだ時間的に余裕はあるということですか?」

「確かにあるが、私は魔導士ではない。明確な時間は分からぬ」

「では、迅速に対処することにしましょう……コマンダーから砲兵隊。敵野営地を攻撃せよ。送れ」

≪砲兵隊からコマンダー。我残弾1割、なお攻撃するか? 送れ≫

「コマンダーから砲兵隊。残弾1割でも十分効果がある。敵野営地を攻撃せよ。送れ」

≪砲兵隊からコマンダー。敵野営地を攻撃する。オーバー≫

 

 河内の指示は迅速に21旅団の砲兵隊に伝わり、25門の装輪自走砲は敵野営地を狙い、砲撃を開始した。

 

 ロウリア軍の野営地ではワッシューナ達魔導兵団は必死に魔導術式を読んでいる最中、頭上からヒューという音が近づいてきた。

 

(不味いっ! これは敵の爆轟魔法の音っ!! だが、この魔導術が発動すれば……!!)

 

 魔導兵団は爆轟魔法が迫りながらも詠唱を続けた。しかし、魔導兵団の勇気と努力を嘲笑うかのように、155mm榴弾が降り注いだ。

 轟音と爆炎。ロウリア軍野営地は一気に地獄と化した。

 発動準備中の魔導術式は途切れ、野営地で籠っていた敵兵の多く……ジェーンフィルアやワッシューナはこの砲撃で体ごと現世から引き剥がされた。

 

≪砲兵隊からコマンダー。我残弾なし。繰り返す。我残弾無し。送れ≫

「コマンダーから砲兵隊。残弾なし了解。オーバー」

 

 敵野営地から濛々と黒煙が挙がった。

 

「コマンダーからハンマー及びアンヴィル。敵野営地へ突撃せよ。送れ」

≪ハンマーからコマンダー。敵野営地へ突撃する。オーバー≫

≪アンヴィルからコマンダー。敵野営地へ突撃する。オーバー≫

 

 ハンマーチームとアンヴィルチームに配備されているWAPが突撃すると、運よく生き残っていたロウリア軍兵士が弓矢や長槍で対抗しようとしたが、WAPの装甲と銃弾の前にして効果はなく、無残に散っていった。

 武器を捨て両手を挙げる兵士や膝をついて命乞いをする兵士ばかりが視界に入ると、暁は河内に通信を繋げた。

 

「ハンマーからコマンダー。敵野営地の制圧完了。送れ」

≪コマンダーからハンマー。抵抗勢力はないか? 送れ≫

「ハンマーからコマンダー。目の前にいる敵兵は慈悲を求めるやつばかりだ。武器持ちは確認できない。送れ」

≪ハンマーからコマンダー。後続部隊を待ち、周囲警戒とせよ。送れ≫

「ハンマーからコマンダー。後続を待ちつつ、周囲警戒を行う。オーバー」

 

 暁は通信機が切れているのを確認すると、コックピット内で首を鳴らしながら愚痴った。

 

「……あまり。面白くない戦いだったな」

 

 暁は歩兵やクワ・トイネ軍が野営地に来るまで、静かにWAP内で待機した。

 

 エジェイの城壁では河内とノウが話をしていた。

 

「ノウ将軍。敵野営地を制圧しました」

「……そうですか。まさか、勝てるとは思いませんでした」

「よかったではないですか。エジェイは救われたのですから」

≪アンヴィルからコマンダー。敗残兵がギム方面へ撤退している。追撃の要ありか? 送れ≫

「コマンダーからアンヴィル。追撃の必要はない。敵野営地で待機せよ。送れ」

≪アンヴィルからコマンダー。敵野営地で待機する。オーバー≫

「ノウ将軍。次はギム奪還です」

「えぇ。そうですね」

 

 ノウは目の前の戦闘に勝利したことを内心喜んでいない。なぜなら、戦果のほとんどが日防軍によって齎されたからだ。

 ノウの心には、河内と日本に感謝する気持ち以上に強大な力を持つ余所者に助けられるという屈折した考えが心に残った。




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