OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第25話

中央暦1639年 5月26日

-OCU日本 内閣府-

 

「ーー総理。失礼します」

 

 早朝。枢木が内閣府に到着すると日防軍士官が報告に訪れた。

 

「クワ・トイネのギム奪還が完了したと昨晩に報告が入りました」

「そうか。作戦の第1段階は無事成功したということか」

「はい」

「前線の状態は?」

「現在統合軍参謀部の戦況レポート待ちですが、敵軍はこの1か月で20万近くの戦力を損失しています。即時再侵攻はかなり低いかと思われます」

「よろしい。クワ・トイネが停戦交渉の準備に入る。軍には交渉失敗に備えて次の策を考えてくれ」

「それは、ロウリア王国領に対する進攻計画という認識でよろしいでしょうか?」

「そうだ」

「わかりました。後日大臣経由でプランを提出します」

「頼んだ」

 

 総理が内閣府の一室に向かうと、日防軍士官は市ヶ谷の防衛省へと向かった。

 

 

同日

-OCU日本 防衛省-

 

「……ギム奪還は為したか」

 

 三垣は朝早くから各所の報告に目を通していた。その中に、クワ・トイネ遠征派遣群からの報告が含まれていた。

 三垣は受話器を取ると、参謀部へと電話を掛けた。

 

≪はい。参謀部総務室です≫

「三垣だ。今日の1300にクワ・トイネ救援に関する今後の方針を話し合いたい。参謀と参謀長を招集してくれ」

≪わかりました≫

 

 三垣は午前の仕事を捌きつつ、手早く食事を済ませると副官が呼ぶまで雑務に勤しんだ。

 書類を読んでいると副官が執務室に入ってきた。

 

「失礼します。参謀部の参集が完了しました」

「わかった。いこうか」

 

 三垣と副官は会議室に入ると、参謀たちが起立し敬礼を送った。

 三垣も返礼すると、いつもの席に座り話し始めた。

 

「……全員知っていると思うが、昨晩ロウリアに占領されていたギムが奪還された。その報を受け、外務省はクワ・トイネの外務局と共にロウリア王国との停戦交渉を開始する」

 

 参謀一同は頷いた。

 

「しかし、交渉中若しくは決裂した場合。ロウリア側が再侵攻してくる可能性がある。ただ、政府としては長期戦は避けたい構えだ。交渉決裂後、迅速にロウリア王国を降伏に追い込むための戦略を練り上げたい」

 

 三垣は一息入れるようにお茶を啜ると、話を続けた。

 

「それぞれ。意見を言ってくれ」

「参謀長。軍事的屈服か降伏を迫るなら、相手の首都……『王都ジン・ハーク』の攻略は必要です」

「そうなると。以前内閣に提案した『北の港強襲案』が使えるな」

「しかし、敵の数は現段階でも30万以上残っています。撃滅するか、遊兵化させる必要があるかと」

「……『第22任務旅団』の状態は?」

「編成は完了しました。出征の指示があればいつでも派遣できます。こちらが編成になります」

 

 参謀の一人がスクリーンに編成表を表示した。

 

『第22任務旅団』

 ↓→第4師団/第41機動連隊

 ↓ ↓→本部中隊※前線指揮中隊

 ↓ ↓

 ↓ ↓→第1機動大隊

 ↓ ↓  ↓→第1中隊

 ↓ ↓  ↓→第2中隊

 ↓ ↓  ↓→砲兵中隊

 ↓ ↓  ↓→防空中隊

 ↓ ↓

 ↓ ↓→第2機動大隊※上記と同じ

 ↓ ↓  

 ↓ ↓→第3機動大隊※上記と同じ

 ↓ ↓  

 ↓ ↓→機動砲兵大隊

 ↓ ↓  ↓→第1中隊

 ↓ ↓  ↓→第2中隊

 ↓ ↓  ↓→中距離誘導弾中隊

 ↓ ↓  ↓→防空中隊

 ↓ ↓

 ↓ ↓→整備中隊

 ↓

 ↓→第41重工兵大隊

 ↓ ↓→第1中隊

 ↓ ↓→第2中隊

 ↓ ↓→機動中隊

 ↓ ↓→補給中隊

 ↓

 ↓→第41機械化大隊

 ↓ ↓→第1中隊

 ↓ ↓→第2中隊

 ↓ ↓→第3中隊

 ↓ ↓→WAP中隊

 ↓

 ↓→第43機動連隊/整備中隊

 ↓

 ↓→第8師団/第81機動連隊/第1大隊防空中隊

  ※第21任務旅団より移管予定

 

「……大臣経由でクワ・トイネに派遣許可を取り付ける」

「よろしくお願いします」

「北の港強襲案だが、地形データの方はどうなっている」

「北の港及び南北100km四方の地図は既に作成済みです。さらに、24時間ごとに敵戦力の移動を監視できる体制も整えています」

「参加戦力の方は?」

「こちらになります」

 

 先ほどと同じように編成表を表示した。

 

『北の港強襲作戦計画・参加戦力』

陸軍

 ↓→第14師団/本部中隊

 ↓

 ↓→第14師団/第141水陸機動連隊/第1大隊

 ↓ ↓→第1中隊

 ↓ ↓→第2中隊

 ↓ ↓→航空打撃中隊

 ↓ ↓→航空偵察中隊※不参加

 ↓

 ↓→第3師団/第31水陸機動大隊※上記と同じ

 ↓

 ↓→第7師団/第71空中機動大隊

   ↓→第1中隊

   ↓→第2中隊

   ↓→第3中隊※不参加

   ↓→航空偵察中隊※不参加

 

海軍

 ↓→第21戦隊

 ↓ ↓→戦艦『磐城』

 ↓ ↓→駆逐艦『黒潮』『朧』

 ↓ ↓→フリゲート『小矢部』『亀島』

 ↓

 ↓→第91戦隊

 ↓ ↓→フリゲート『天塩』『新井田』

 ↓

 ↓→第1輸送隊

   ↓→揚陸艦『野間』『志摩』『薩摩』

 

空軍

第21航空団『ファイアバード』※空中管制機

 ↓

 ↓→第9航空団

 ↓ ↓→第1飛行隊『ヌート』

 ↓

 ↓→第41航空団『ライアー27』※無人航空機

 ↓

 ↓→第21航空団

   ↓→第2飛行隊『リオ1』『リオ2』※給油機

 

「投入する戦力に問題はないようだな。各自、いつ命令が来てもいいように準備を頼む」

「「「わかりました」」」」

 

 会議が終わると、参謀たちは各々の部署に向かい次回の戦いの準備を始めた。

 

 

中央暦1639年 5月29日

-ロウリア王国 王都ジン・ハーク-

 

 夕日が強く差し込む時間。数人のクワ・トイネ外交官が王城を後にした。

 3日前にギムが陥落した後、クワ・トイネは迅速にロウリアに対して停戦交渉に入った。しかし、ロウリア側は多くの兵力を失いながらも継戦の意志は強く。1回目の交渉は不発に終わった。

 

 謁見の間にはハーク王と宰相のマオスが報告に訪れていた。

 

「ーー陛下。クワ・トイネに対して停戦の意思はないと伝えましたが、それでよろしかったのですか?」

「うむ。軍部から多くの兵力とギム喪失の報は受けたが、大陸統一という大願を前に停戦する理由はなかろう?」

「そうですが、パタジン殿から再侵攻は難しいと聞いております」

「確かにそうだ。だが、元来戦争とは攻めより守りの方が容易いものだ。クワ・トイネの人口では残った我が軍の兵力に対抗する軍を構築することはできまい?」

「確かにクワ・トイネだけならそうですが。ニホンについてはどう対処するのですか? わが軍の被害はほぼすべて彼の国が原因です」

 

 ハーク王は少しの時間黙すると、とある人物の名を出した。

 

「メイドよ。ヤミレイをここに」

「はい陛下」

 

 マオスはヤミレイの名前を聞いて納得した。ヤミレイは王宮に仕える最も優れた魔導士なのだ。

 数分するとヤミレイが謁見の間に現れた。

 

「陛下。お召に上がり参上いたしました」

「おおヤミレイよ。ニホンに対する備えはどうか?」

「はい。その件ですが、パタジン殿の提案や確認できる報告を基に幾つかの装備や新魔術を開発しております」

「うむ。順調そうだな。マオスよ。確かにニホンが強いのは事実だ。だが、パタジンやヤミレイに指示を出して有効策を考えておる。マオスは宰相として内政に励むがよい」

「陛下がそこまで仰るなら。わかりました。命に従います」

 

 マオスはハーク王に一礼すると謁見の間を後にした。

 少しすると、ハーク王はヤミレイに再度質問した。

 

「……話を戻すがヤミレイよ。実際のところ新たな魔導や装備でニホンを退けられるのか?」

「それは、先ほど申した通りですが……」

「いやいや。マオスが居た手前。ああは言ったが、余として懸念がある。そこで先の質問なのだ」

「そういうことでしたか……。結論から申しますと、仮に新開発した装備や魔導を用いても、日本を退けるだけでも難儀なものになると思われます」

「……それは真か?」

「はい陛下。ニホンの行う魔導はとある伝承に出てくる記述と酷似しているのです」

「その伝承とは、まさか魔帝の伝承か?」

「そうです。飛竜をいともたやすく屠る“誘導魔光弾”の伝承が、まさにニホンが用いている空飛ぶ鏃(=対空ミサイル)とよく似ております」

「そうなると、我が王国はどう足掻いても大願を果たす処か、亜人共に膝を屈することとなるか……!」

「陛下。心中お察ししますが、このまま戦争を継続すれば我が王国は亡国と化しましょう」

「しかし、しかしっ! 大陸統一の大願を為すためにどれだけ“あの皇国”に借りたと思う!?」

「……申し訳ありません陛下。その点については存じ上げません」

「……15年分だ」

「陛下。今何と?」

「国家予算15年分に相当する武具や装備。ワイバーンに兵隊だ」

「……よく彼の皇国が貸してくれましたな」

「違うっ!! マオスと財務郷以外は知らぬが、現物を直接貸与されたのだっ!」

「陛下。それらの担保というのは一体?」

「……大陸統一を果たした後のクワ・トイネやクイラの土地や亜人奴隷売買。他にも農地や鉱山。港の各種権利だ」

「へっ、陛下。流石にそれは不味いのでは?」

「確かに。並みの国家であれば応じる気などなかった。しかし、相手はあの“パーパルディア皇国”だぞ? 仮にその提案を拒否したらすべて持っていかれたかもしれんぞ!?」

「陛下の胸中はさぞ苦悩させられたことと存じます」

「それに、それだけの借款を以てすれば大陸統一は十二分に果たせる筈だっだ。ニホンの存在がなければ、だがな……」

「しかし陛下。ならば何故クワ・トイネとの停戦を拒否したのですか?」

「そこだっ!! 確かにニホンの力は強大だと思う。しかし、ニホンは伝説の魔帝に比肩しないと余は考えておる」

「はぁ? 陛下。その心は?」

「仮にニホンが魔帝かそれに準ずるものなら、有無を言わせず我が国に侵攻してくるであろう。しかしそれがない。つまり、ニホンが派遣した兵力が我が方に比べ少数であり、クワ・トイネに派遣した分が限界ではないかと余は読んでおる。そう考えれば、あの強さも説明できる」

「つまり、兵隊を揃えるのではなく。一兵の強さを極めたのがニホンの強さであると?」

「左様。故に今を凌げばこの戦。逆転できると考えておる」

 

 ヤミレイは魔導の専門で軍略の類は専門外だ。しかし、50万の兵力が2か月も経たないうちに20万の兵力が損失した報告は知っていた。

 ハーク王のこの自信はどこから来るのだろうかと不審に感じたが、軍事に明るいわけでもないので、意見しなかった。

 

「陛下がそこまでお考えなら。このヤミレイ。最後(・・)の時までお遣い致しましょう」

「うむ。頼んだぞヤミレイよ」

 

 ハーク王の盲目的な自信に対して、ヤミレイは一抹の不安を抱えつつ。最悪の事態を想定しながら自室へと戻った。




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