OCU日本国召喚   作:Bu3og

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 長らくお待たせしてしまい申し訳ありません(ジャンピング土下座
 個人的事情により今後週1での投稿は難しい状況ですが、可能な限り投稿頻度を落とさないようにしていこうと思います(願望
 このような面白みのない作品ですが、生暖かい目で見守ってください。


第28話

中央暦1639年 7月20日

-ロウリア王国 北の港-

 

(まさか。この俺が交渉団代表を務めることになるとは……。せめて一度でもニホン軍の力を見てみたかった)

 

 ロウリア軍の将軍。スマークが乗る馬車が進んでいるのはジン・ハークと北の港をつなぐ街道だ。

 事の発端はハーク王とパタジン。マオスとの会議だった。

 ハーク王は北の港が落ちてから、可能な限り迅速なる奪還を希望した。しかし、そこで待ったをかけたのがパタジンとマオスだ。

 マオスとパタジンはニホン軍を打ち破るのに“開戦前の5倍は必要”と提示したのだ。

 いつもならハーク王も2人の話を聞き入れなかっただろう。しかし、現段階で総戦力の半数を喪失しており、ニホンの軍事力の底が見えないことに頭を抱えていた。

 その状況で2人が提示したのは、ニホンが更に侵攻したらそれを防ぐこと不可能だということである。ハーク王は致し方なく。恥も外聞もなくニホンとの停戦を決断したのだ。

 その停戦交渉のため、スマークを代表とする停戦交渉団を派遣したということである。

 

 スマークが窓を眺めていると、門の手前まで何事もなく近づくことができた。

 こういう時、ロウリアなら問答無用で弓矢の雨を降らせて、逃げようが命乞いしようが容赦なく皆殺しにした後、金目になりそうなものを根こそぎ追剥してきた。

 

 馬車は北の門に隣接する市内の門の手前で停止した。

 当たり前だが、お互い交戦状態ということもあり馬車から離れた位置には鉄の荷馬車やバリスタモドキ(機関銃座)で狙われている。

 

 スマークは蛮族から手酷い歓迎を受けたことは何度もあるので、狙われる程度で怖気づくことはない。ただ、運悪く選ばれてしまった交渉団員は緊張と恐怖で顔を青くしていた。

 

(……仕方ない。ここは俺が出ていくとしよう)

「全員。私が指示するまで馬車を降りるなよ」

 

 スマークは交渉団員を馬車に残して降りると、多くの銃座から狙われていることを改めて認識した。

 構えている兵士の1人が大きな声で誰何した。

 

「こちらは日本国防軍である。そちらの国籍と名前。こちらへ訪れる理由を説明せよっ!!」

「私はロウリア王国軍のボニファス・スマークである。こちらには貴国との停戦交渉のために訪れたっ!! そちらの指揮官とお会いしたいっ!!」

 

 スマークの言葉を聞いた日防軍兵士は、傍らに控える通信兵に状況を伝えて対応した。

 

「その場で待機せよっ! 協議の準備を行うっ!!」

「感謝するっ!!」

 

 戦争中でありながら、穏便な対応を取るニホンにスマークはホッとした。

 

 30分ほどたったことろ、白旗を掲げたニホン軍の荷馬車(水陸両用戦闘車)が2台近づてきた。

 スマークが降りるのを確認した日防軍士官が話し始めた。

 

「日防軍の尾崎です。今回は停戦交渉のために訪れたと聞いていますが、間違いありませんか?」

「そうだ」

「わかりました。馬車を前の車に合わせて移動させてください」

「わかった。おい。聞いた通りだ」

 

 スマークは御者に命ずると、1台の荷馬車は道からそれた位置に待機し、もう1台が反転してゆっくり動き出した。

 スマークの乗る馬車の前後に日防軍の荷馬車に挟まれる形で市内を移動した。

 

「……思ったより奇麗ですね」

「ん? あぁ、そうだな」

 

 市内の所々で戦闘の傷跡が建物に残っていた。人気も少なく、場所によっては有刺鉄線とバリケードで封鎖されているところもあった。

 しかし、残骸は少なく今進む街道もこれといって傷んでいる様子もなかった。

 交渉団は内容を再確認していると、馬車はロウリア海軍司令部へと到着した。

 いつもは国旗と海軍旗がはためく掲揚台には、白地に赤丸の旗が掲揚されていた。

 司令部の主が我々(ロウリア王国)からニホン軍へと移ったことを如実に示していた。

 

 交渉団は馬車から降りると、案内の日防軍兵士がやってきた。

 

「部屋までご案内します。こちらへどうぞ」

「ああ。ありがとう」

 

 スマーク達は日防軍兵士の出迎えに驚愕した。敵国の将なのにこのような丁重な扱いを受けたこともしたこともなかったからだ。

 海軍司令部内を案内されている間、調度品が並べられていたであろう廊下を進み、2階の奥にある重厚感を放つ観音開きの扉の前へ案内された。扉の脇には警備兵が待機していた。

 

「交渉団の方が到着されました」

「お通ししろ」

 

 交渉団が部屋に案内されると、上座に澤部が待っていた。

 

「どうぞ。お座りください」

 

 交渉団は言われた通り、ソファーに掛けた。

 全員が着席すると、澤部は早速話を始めた。

 

「それでは、ご用件をお伺いしたいのですが?」

「我々ロウリア王国はニホンとの休戦を希望します」

「休戦ですか……。それは、この戦争全体ということでよろしいでしょうか?」

「そうです」

「……失礼ですが、我が国と休戦するということは、同盟国であるクワ・トイネ公国とも休戦することを意味します。その認識はありますか?」

「認識しております」

 

 澤部は交渉団員の言葉に少し考えた。元居た世界では戦場における停戦は軍人が権限を有している。しかし、戦争の休戦となるとどの規模や期間のものであれ、上層部と政府に話を通さなければいけないのだ。単純に言うと、澤部は隷下部隊に戦闘停止命令を出す権限はある。かといって他戦域の部隊に命令権は有していない。

 

「お話は分かりました。本国と連絡する必要があるので少し席を外させていただきます」

「わかりました」

 

 澤部は部屋に部下を残して、外に置いてある通信中継車へと向かった。

 

 通信中継車の横に建てられたテントの中に入ると、通信士に話しかけた。

 

「本国に会議の様子は中継できたか?」

「中継できました。参謀部からの提案で内閣と映像通信の接続準備中です」

「あぁ。面倒臭い案件が舞い込んできたな……」

 

 澤部は現在の状態に少し頭痛を覚えていた。というのも、彼の指揮する部隊は殴り込み専門の部隊なのだ。

 北の港を占領することは判っていた。しかし、マニュアルこそあるが占領業務は澤部の不得意なものだった。

 今のところロウリア兵が大人しいため、占領業務は滞りなく実施できている。ただ、増援として『第23任務旅団』が来る予定なのだが、港湾能力不足(砲撃跡地状態)と輸送船舶不足で両用戦部隊以外の日防軍は北の港に展開できていなかった。

 

 澤部はテントの外で煙草を吸っていると、通信士が中から現れた。

 

「司令。内閣との通信準備が整いました」

「わかった」

 

 通信士とテントに入ると、モニターの先に枢木総理。松河官房長官。田澤防衛大臣。加藤外務大臣の4人が映っていた。

 早速枢木が澤部に質問した。

 

≪澤部大佐。ロウリアから休戦を希望する交渉団が来ているということだが、本当かね?≫

「はい。現在臨時司令部で待機してもらっています」

≪まぁ妥当だろう。休戦条件は何か提示しているのか?≫

「特に条件は提示していませんが、我が国との休戦はクワ・トイネとの休戦であることも認識しています」

≪要求される条件がないなら、拒否する理由はありませんな≫

≪それはそうだが、我々だけが無条件に納得してもクワ・トイネが現状を受け入れるかどうかは別ではないか?≫

≪しかし総理。多数の戦力を損失したとはいえ、現状のロウリア軍ですらクワ・トイネ軍の撃破は十分可能な規模です≫

≪だが、これはあくまで休戦だ。講和のために交渉の糸口は確保した方がよいのではないか?≫

≪ここにクワ・トイネの大使がいれば、意見を聞けると思うのですが……≫

 

 画面先の4人は停戦するかどうか迷った。いや、それぞれ内心は停戦した方がよいという考えはあるのだ。ただ。『侵略されたクワ・トイネを支援する』という大義の元、日本は行動しているのだ。

 ここで2ヶ国だけで休戦を決めてしまえば、クワ・トイネに対する裏切りと勘違いされる危険があるのだ。

 枢木をはじめ、4人はいくら考えても明確な答えが出ずにいた。

 煮詰まったころ、田澤は澤部に問いかけた。

 

≪……大佐。最前線にいる身として、貴官の意見はどうだね?≫

 

 まぁ来るだろうなという考えを顔に出さず、意見を出した。

 

「私としては、一時的な休戦であれば賛成です」

≪それは何故かね?≫

「まず休戦自体についてですが、純粋に現在展開している戦力の限界があります。偵察の結果。ジン・ハークには10万の歩兵と100騎のワイバーンが控えています。麾下の戦力(3個大隊・約1100人)だけでは対応できません」

≪それならば、やはり相手方から休戦要求が来たのは好機でしょう。1週間後に再度会談することを前提に締結しましょう≫

≪いいでしょう。その1週間の間にクワ・トイネと今後を決めるということで≫

≪よろしい。澤部大佐。ロウリアには1週間後に再交渉の場を設けるという形で休戦に応じてください≫

「わかりました。そのように」

 

 通信が切れると、澤部は待たせている交渉団の元へと戻った。

 

「申し訳ありません。お待たせしました」

「そんなことはありません。それでですが、休戦の件はどうでしょうか」

「そうですな……再度確認しますが、前提として我が国との休戦はクワ・トイネとの休戦も意味します。それに異論はありますか?」

「異論はありません」

「わかりました。まず我が方としては1週間の休戦であれば応じることができます」

「1週間の休戦ですか?」

「そうです」

「そうなると、賠償金や領土の割譲などはその休戦を結ぶ上で要求しないということですか?」

「降伏を希望でしたらもちろん受け入れる用意はあります。しかし、戦後賠償については上層部が考えることです。私ではその内容を決める権限はありません」

「そうなのですか? 貴国は将軍の権限が低いようですが……」

「我が国には我が国の事情がありますので……それで、1週間のみの休戦について、何か聞きたいことはありますか?」

「……1週間後。休戦が切れた場合貴国はどう動くおつもりか?」

「ーーそちらのご想像にお任せします」

「……」

 

 スマークは澤部の抽象的な物言いに苛立ちを覚えたが、日本の提案を拒否するとどうなるかわかったものではないと考え、従うことにした。

 

「我々ロウリア王国は、日本が提案する“1週間の休戦”に同意します」

「貴国の理性的判断に感謝します。急ぎ正式な文書を用意します」

「わかりました」

 

 その後。澤部とスマークの連名による停戦協定が結ばれた。内容は以下の通りである。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 『日本-ロウリア休戦協定(通称:サワベ=スマーク協定)

 

1:この協定は結ばれた時から7月27日23:59までの間。日本及びクワ・トイネとロウリア間の戦闘を停止する。

2:この協定が有効な間。自国及び占領地内での自軍の動きは特に制限しない

3:この条約締結による。占領地及び捕虜等の返還作業は実施しない

4:この協定を締結した両国は協定を遵守しなければならない

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「サワべ将軍。此度はありがとうございました」

「武人が交渉に来たのなら、それを迎え入れるのもまた武人の志と思います」

「そうですか……。では、また1週間後に」

「はい。お待ちしております」

 

 諸々の作業が終わった後、スマーク達ロウリア王国交渉団は北の港を後にした。

 馬車に揺られる中。スマークは離れ行く北の港を眺めた。

 北の港が日本の手に落ちてから2か月近く経つが、思ったより市街はそこまで荒れていなかった。

 

「……強さが増せば、それだけ理性も増すのだろうか? ニホンは不思議な国家だ」

 

 スマークたちは夕日が差す北の港に清閑を感じながら王都へ帰還した。

 

 

中央暦1639年 7月22日

-クワ・トイネ公国 マイハーク日防軍基地-

 

 鉄筋コンクリートで建造された日防軍基地庁舎の一室。そこには日防軍士官と共に普段訪れることのない仲嶋(大使)とクワ・トイネの外務卿とその部下たちが集まっていた。

 

 集まった中で外務卿が開口一番口を開いた。

 

「ーー多勢を寡兵で撃退する貴国にしては、つまらない選択ですな」

 

 外務卿の言葉は、侵略を受けているクワ・トイネの意思とは関係なく。日本とロウリアが停戦したことに不満を抱えていることの表れだった。

 

「不満があるのは重々承知しています。しかし、この休戦は条件こそないものの期限付きです。その程度であれば現場指揮官の権限範囲内です」

「それは理解しますが、せめて我が国の意見を受け入れるくらいはしてほしかったですな」

「理解しております。故に、この会談を設定したのです」

「フンッ! わかってますよ」

 

 外務卿は鼻息荒く捲し立てつつ、仲嶋の説明を待った。

 室内が薄暗くなりカーテンが閉じられると、スクリーンに映像がロデニウス大陸が映し出された。

 

「まず。現状ですが、ロウリア軍は侵攻初期と比較して兵力の半分以上を損失しました。ワイバーンは約400騎。軍船もほぼすべて損失しているので、額面以上の戦力を失ったとみていいでしょう」

 

 スクリーンにそれぞれの占領地と3ヶ国の戦力が表示された。

 

「推測ですが、ロウリアが最も恐れているのは我が国が大挙してロウリア国へ侵攻を始めることです」

「何故そう言い切れるのか?」

「休戦を申し出たタイミングです。我が国が北の港を制圧して1か月半。ロウリア国内で戦力の補充を確認しましたが、戦略的再配置はありませんでした」

「……そうですか」

 

 外務卿は諜報員の情報からほぼ日本側と同じ結論に至っていた。

 日本の方は頻繁に無人機による情報収集に努めており、さらに夜間限定ではあるが『王都ジン・ハーク』にも偵察を実施している。

 読者の方から見ると“敵地上空に進入しても大丈夫なのか?”という疑問が生まれるかもしれないが、近代における“領空”や“防空識別圏”の概念こそないが、ワイバーンという航空兵力は存在するので『迎撃できない高高度を無害通過する』という形で偵察を繰り返している。

 

 外務卿は日本の活動のことなど露ほど知らず話を続けた。

 

「それで、今回の会談はこの戦争における講和案を纏めるということでよろしいですか?」

「その認識で合ってます。失礼ですが、貴国が望む講和条件はどういったものをお望みですか」

 

 外務卿は少し考えた後、質問に答えた。

 

「……第1に我が国の領土全域から撤退すること。第2に侵略によって生じた損害賠償。他にも細かいものはありますが、最低限この2つが必須の項目となります」

「その条件は理解できます。しかし、それはクワ・トイネ単独で達成可能ですか?」

 

 外務卿は何も反応しなかったが、内心突かれたくない核心を突かれたことに不快感を感じた。しかし、亡国を救ったのは紛れもなく目の前の大使が属している国家なのだ。

 理性を最大限働かせて腹の虫を抑えつつ、誠実な回答を伝えた。

 

「大使が懸念するように我が国単独ではどの条件も達成できないでしょう。日本の方はどのように考えておられるのですか?」

「貴国が提示した領土からの総撤退。損害賠償には同意します。我が国はロウリアに対して強く求める条件はありません」

「それは何故ですか?」

「我が国の参戦目的は貴国の防衛です。現状クワ・トイネ領土内からロウリア軍は既に駆逐し、ロウリア軍を国境線の向こうまで押し戻せました。これ以上。ロウリアと戦争を続ける理由はありません」

「そうなると。講和条件はほぼ我が国が提示する物に同意するということでしょうか?」

「はい」

「……我が国も、貴国と同様に戦争の長期化は望みません」

「それはよかった。その条件で次の会談に臨みましょう。次回の会談は7月27日の予定です。前日に北の港へ移動しますので、26日の朝にこちらへお越しください」

「わかった。首相に伝えておく」

「あぁ。申し遅れましたが、交渉団はあまり多人数でお越しになるのはお控えください」

「それも伝えておこう」

「カナタ首相によろしくお願いします」

 

 2ヶ国の会談は終了し、26日早朝。27日の講和会談に備えてクワ・トイネの交渉団が北の港入りした。




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