OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第3話

中央暦1639年 1月17日

-OCU日本 首相官邸-

 

「ーーでは、報告を聞こうか」

 

 謎の閃光から10日。首相官邸の一室で首相と防衛大臣。外務大臣。国交大臣。官房長官の5人が日防軍士官から報告を受けていた。

 

「わかりました。こちらをご覧ください」

 

 日防軍士官は大型ディスプレイに日本を中心とする地図を表示した。

 

「哨戒機が持ち帰った地形観測データを統合した我が国周辺の地形図です」

 

 ディスプレイに表示された地図には、択捉島より北の千島列島。サハリン島は無くなり、北東4,000km辺りに謎の円環状の島が鎮座している。ユーラシア大陸は無くなり、代わりに別の島と大陸が現れた。南西方面は台湾島。フィリピンが無くなり、こちらも大陸が出現していた。

 

「……地形が大きく変わっているな」

「しかし、もし地形を大きく変える程の地殻変動ならば、閃光ではなく大規模な地震や津波が発生してもおかしくありません」

「当時や今のところ、それらの兆候は?」

「微弱な地震は観測できますが、地殻変動が起きるほどではありません。津波に関しても沿岸の観測状態から発生していません」

「ならば、これは地殻変動ではなく何と言えばよいのだ?」

「それに関してですが、併せて別の報告が上がっています」

 

 ディスプレイには、南と北東の大陸と島で確認された建物や港、そこに住む人々が順次映し出された。

 

「……映画を撮るための大規模なセットか何かか?」

「お言葉ですが、映画のセットではありません」

「つまり、あの中世みたいな風景がこれらの地域における文明水準ということなのか?」

「おそらくそうなります」

 

 5人は一度発するべき言葉に迷った。

 沈黙した室内で日防軍士官が口を開いた。

 

「多分に推測を含みますが、おそらく地球に異変が起きたのではなく。我々がこの謎の世界に転移したのではないかと思われます」

「……つまり。SF小説にあるようなブラックホールかワームホールに吸い込まれたというのか?」

「詳細は分かりませんが、それらは文科省に任せるとして、幸いなのは中国もザーフトラも存在しないということです」

「ならば、部隊の即応待機は順次解除しても問題ないでしょう」

「不幸中の幸いと言うべきか、塞翁が馬と捉えるべきか、何にしても、周辺地域の脅威は劇的に低下したわけだ。招集した部隊は順次平時体制に移行させることとしよう」

「わかりました」

 

 日防軍士官の一人が敬礼した後退出した。

 

「総理。そうなると現状軍事的脅威が無いのなら、優先すべきは国内経済に必要な資源の確保です」

「確かにそうだが、この世界……仮に異世界Xと呼称して。そこにある国々とは交易どころか国交すら存在しない」

「そうです。なので、迅速に周辺国との国交を開き、貿易協定を締結するために交渉団を派遣しましょう」

「加藤大臣。交渉団だけでは現地で問題があった場合。対処に限界が生じる可能性があります。あまり好ましくはないですが、ここは日防軍を同行させてはどうでしょうか?」

「いや、それなら日防軍巡洋艦で交渉団を現地まで行くのはどうでしょうか? 動力源が原子炉ですから、ある程度遠方でも長期行動が可能です」

「……それはもはや砲艦外交ではないか?」

「国内状況を考えれば、悠長に構えることはできません」

「ーー仕方あるまい。接触した際の交渉は平穏かつ穏便に行うよう準備を行うように」

「直ちに準備します」

「防衛大臣。派遣できる巡洋艦を用意してくれ」

「わかりました」

 

 枢木の指示に外務省と防衛省は迅速に交渉派遣団を編成しはじめた。

 編成が完了した派遣団は、順次未知の大陸へと出港していった。

 

中央暦1639年 1月22日

-クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ-

 

 クワ・トイネは政治部会の真っ最中だった。これは国の大臣や上級官僚が集まって話し合う重要な場である。首相のカナタのほか、各局大臣が出席している。

 内政のことなら各大臣に対して指示、伝達すればことは済む。だがここ最近はロウリアとの戦争になった場合の防衛体制に関する案件が毎回出てくる状態だ。

 しかし、今回は北東海域から現れた不明騎に関する報告が届いており、そのため情報分析部長が臨時で参加している。

 首相のカナタは報告書を読み進めていくと、軍務卿へと質問した。

 

「ーー不明騎は何もせず北東海域へと引き上げていったわけだが、軍務卿。どう見る?」

「正直、魔写の1つでもあれば何かわかるでしょうが、現状では接触した飛竜隊の報告しかありません。それだけではロウリアの新型ワイバーンなのか、それともそれ以外の国のワイバーンなのかも判断できません。軍として有効な対処案はありません」

「まぁ、相手が攻撃的でないことが救いでしょう。情報分析部長は何かわかりましたか?」

「申し訳ありません。こちらも分析を続けていますが、何もわかっていない状況です。ただ、不明騎は『羽ばたいていない』ことと独特な音が聞こえていたという報告があります。推測ですが、ムーにて使われている飛行機械に類似したものと推測しています」

「飛行機械。そんなものを使う国が近くにいるというのは由々しき事態だ。軍は引き続き警戒態勢を維持していただきーー」

「失礼しますっ!」

 

 カナタが話を続けようとすると、軍務卿の部下が入ってきた。

 

「おい。重要な話をしている最中だぞ。緊急でない限り――」

「マイハークの第2艦隊司令部より至急との報告が入りました」

「……何の報告だ?」

 

 政治部会参加者の視線は報告に上がった士官に集中した。

 

「マイハーク北東海域を哨戒していた軍船ピーマより『未確認の大型船を発見。これより臨検を実施する』と報告が入りました」

「……その大型船の国籍は分かったのか?」

「今のところ不明です。船首に掲げている旗は白地に赤丸と聞いています」

「白地に赤丸。1週間前の不明騎も目立つような赤丸が描かれていたな。何か関係でもあるのか……。第2艦隊司令部にくれぐれも相手を刺激しないよう慎重に臨検するよう伝えたまえ」

「急ぎ伝えます」

 

 伝令の士官は足早に政治部会を後にした。

 




用語解説

『ザーフトラ』…ザーフトラ共和国
 強化されたロシア連邦的な国家。登場なし。

修正。
7/15
書籍版の世界地図を基に、各地域の距離等を修正しました。
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