OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第35話

中央暦1639年 10月25日

-クワ・トイネ公国 マイハーク日防軍基地-

 

 中世社会の中に在って現代の建物群に秋風が吹いた。基地中央庁舎のゲートに1台の馬車が訪れた。

 

「……ここに来るのは初めてか。何とも味気ない建物ばかりだな」

 

 馬車を降りてきたのはクワ・トイネ公国において軍務局に努めているモデスト・ハンキ将軍だ。軍務卿の名代として遣わされたのだ。

 庁舎には案内役の日防軍士官が待機していた。

 

「マイハーク基地へ御足労頂きありがとうございますハンキ将軍。日本国防衛軍の炭釜と申します。階級は中尉」

「ご苦労。それで、見せたいものがあると聞いたのだが?」

「準備は整っていますので、格納庫へ案内します」

 

 炭釜はハンキと共に格納庫へ移動した。

 中には将兵以外にも背広や作業着の人間が馬車のようなものを背にして待っていた。彼らは装備品の製造メーカーの社員だ。今回はある種商品の宣伝のために集まっている。どの作業員も非常に真剣な表情で待機している。

 

「炭釜中尉。これらは何かね?」

「以前貴国より兵器購入の話があったと思います。それに対して我が国の企業が提案する装備をこちらに搬入しました。細かなことは近くの担当にご質問ください」

 

 作業着姿の兵士はハンキの存在を認知すると、被せ物を外した。

 馬車サイズのモノが2台。長机には鉄筒が据えられた木の杖(試作の小銃)が数本並べられていた。

 ハンキはまず長机の方に寄った。近くで待っている背広の男が挨拶してきた。

 

「お疲れ様ですハンキ将軍。H社の北見と言います。ご検分されますか?」

「どうも。北見殿。失礼だがこの杖のようなものは何かね?」

「こちらは左より……7.62mm半自動小銃のモデル『イ』(M14風)モデル『ロ』(Gew43風)モデル『ハ』(SKS風)。こちらは同口径の分隊支援火器モデル『A』(BAR風)モデル『B』(ブレン軽機関銃風)。こちらは士官や憲兵向けの9mm拳銃モデル『α』(コルト・パイソン風)モデル『β』(P38風)モデル『γ』(M1911風)。こちらは5.56mm小銃モデル『ニ』(M1カービン風)。他にも散弾銃のモデル『ア』(M870風)モデル『カ』(レバーアクション式)擲弾銃のモデル『サ』(M79)。さらに7.62mm槓桿式(ボルトアクション)小銃のモデル『ホ』(九九式騎兵銃)。陣地若しくは車載用に7.62mm機関銃モデル『C』(M1919HMG風)を用意しています」

「うぅむ。それぞれ違うものだと判るのだが、さりとてどう凄いのかまったくわからん」

「近くに射撃訓練場があるので、他の装備を紹介した後そちらに行きましょう」

「うむ」

 

 ハンキは一通り銃器を見聞すると、車両の方に目を移した。

 

「これは貴国の……センシャだったか?に比べると妙に小さいな」

「そうですね。我が国が使っている四三式や七五式に比べると仕方ないですね。でも、このくらいのサイズなら貴国だと丁度良いくらいではないかと思います」

「貴国の物を見ると何ともなぁ……」

「あぁすみません。私K社の成宮と申します」

「そうか。それで成宮殿。この2つは似ているようで違うようなのだが、どう違うのだ?」

「こちらですか? まず右手側の物は『7トン級装甲車』。左手側は『9トン級装甲車』です。両方とも現段階で試作品です」

 

『7トン級装甲車』(画像はSprocketより)

 

【挿絵表示】

 

 

『9トン級装甲車』(画像はSprocketより)

 

【挿絵表示】

 

 

「両車とも違いは車体幅と装甲の厚さ程度です。エンジンをはじめ搭載装備品はほぼ同じです」

「ほほぅ。しかし、これが我が軍にどう有効なのだ?」

「まずこの装甲車は人間では追いつけません。弓や剣でこの車両を止めることは困難でしょう。騎馬には速度で劣りますが、H社が紹介した銃器を搭載すれば、これ1台で敵の戦列歩兵100人や200人と対峙できます。さらに、荷馬車1台分の荷物を載せても、更に荷馬車を牽引することができます」

「それはすごい。だがやはり実感が湧かぬな」

「仕方ありません……とりあえず射撃演習場までこれに乗っていきましょう」

「おぉっ! 乗れるのかね?」

「ええ。もちろんです。準備しますので少々お待ちください」

 

 成宮は作業員と共に装甲車のエンジンを始動させた。ディーゼルエンジン特有の駆動音と黒煙にハンキたちは慣れないものだった

 準備が整うと、成宮はハンキを7トン装甲車の方に搭乗させ、動き出した。他の人もトラックに分乗して後に続いた。

 

「おお♪ これはなかなか気持ちがいいな」

 

 ガタガタという音を立てながら、ハンキたちは基地の北側に造成された銃射撃演習場に向かった。

 到着すると、ハンキ達が装甲車が降りるよりも素早く作業員が銃器の準備を始めた。

 10分ほどで作業員は銃器の点検と弾薬の準備を終わらせた。

 

「どうぞハンキ将軍」

「使ってみてもよいのかね? 私は剣や弓しか使ったことがないぞ?」

「しかし、今後クワ・トイネ軍の戦力強化を考えるなら、兵士に持たせる武器の性能は気になるかと存じます」

「それはそうだが……」

「ご安心ください。使い方をを教えますので」

 

 ハンキはまずモデル『ホ』を渡された。基本的な銃の取り扱いについてレクチャーした。

 一通り作業員から扱い方を教えてもらうと、ハンキは改めて弾薬を装弾した。

 

「大きい音が鳴るので気を付けてくださいね」

 

 ハンキは構えたモデル『ホ』の照星(フロントサイト)と照門《リアサイト》が組み合わさるように狙いを定め、引き金をゆっくりと絞った。そして、落雷のような音と共に強烈な反動が右肩に伝わった。

 

「おおっと……。ボウガンの要領で撃ってみたが、反動が桁違いだな。これは(小銃)

「多分肩当が甘かったのかもしれません。次は左手をもっと右肩に引き付けるようにしてください」

「ふむ。そうか」

 

 ハンキは槓桿を傾けて排莢。再装填を拙い手つきで行いながらも、改めて的に狙いを定め、また引き金を絞った。

 さっきと違い、弾は何とか的に当たった。

 

「うぅむ。使い方は分かってきたがこの音は慣れんな」

「最初はみんなそう思います。慣れないのであれば慣れるまで訓練しましょう。こっちなんかは将軍が今後使うことになると思います。どうですか?」

 

 作業員はハンキからモデル『ホ』を受け取ると、代わりにモデル『α』を渡した。

 

「ふむふむ。さっきのが槍や剣なら、これは短剣といったところか」

 

 ハンキはモデル『α』を眺めると、教えられたとおりに構え。引き金を絞った。

 バァンと弾けた音が鳴ったが、的には当たらなかった。

 

「--長物よりなかなかいいが、当てるのは難しいな……可能ならこれを頂きたいのだが?」

「……お好みになられましたら、個人向けに装飾や刻印も付けることができます。本来の価格よりお高くなりますけど♪」

「ほほぅ。考えておこう」

 

 ハンキはモデル『α』を渡すと、他の銃もそれぞれ試した。

 

 射撃の音より所々で腹の虫が鳴る頃合い。ハンキはすべての試作モデルを撃ち終わった。

 

「--なかなか興味深い体験だった」

「今後ともご贔屓にお願いします」

 

 作業員たちは手早く試作モデルを片付け、ハンキたちは庁舎で基地司令と会食を経た後、マイハーク基地から帰路に就いた。

 

 

 翌日。ハンキは早速蓮の庭園に呼ばれた。円卓には他にカナタと軍務卿。財務卿の3人が待っていた。

 

「--昨日の件に関して、報告をお願いします」

「はい。閣下。日本から我が国向けに武器の導入を提案されました。その一部を私自身で試してみました」

「あぁ。そういえば少し前に日本製の武器を導入できないか話しましたね。どうでした。使い心地は?」

「使い方はボウガンのそれに近いものがあります。しかし、威力や射程。連発性能は比ではありません。ただ、その性能ゆえ価格に関しては据え置き式のバリスタより非常に高くなっております。こちらが製造会社から頂いた仕様書です」

 

 財務卿がハンキが渡した書類に目を通した。

 

「……高いですな。安いものですら剣を30本。高いものだとワイバーンは買える価格ですぞ? それに、この戦車というものは1台で軍艦1隻に匹敵する価格。幾ら使えるからと言ってこれらを大量購入するほど国庫の中身は多くありませんぞ?」

「しかし、百人隊と銃を持った兵士1人では銃を持った兵士が有利です。今後のことを考えたら、可能な限り日本製の武器や兵器は導入したい所です」

「私も日本製の武器導入に賛成です。可能な限り財務卿にはこれに関して予算を融通していただきたい」

「--少なくとも、纏まった量を購入するだけでも、10年近くは掛かりますよ--それでもいいですか?」

「それで十分です」

「はぁ……早めに予算案をお願いしますよ。軍務卿」

「わかっているよ。財務卿」

 

 今日の政治部会が閉会した後、カナタと軍務卿はクワ・トイネ軍の未来の姿を思い描いた。

 

 

中央暦1639年 11月2日

-ガハラ神国 予言の祭壇-

 

 フェン王国と点対称な形状の国土を有するガハラ神国。

 そこの首都『タカマガハラ』の奥深く。そこには巫女と宮司以外立ち入ることができない神殿が鎮座している。

 その神殿の広間に巫女が祈りを捧げていた。

 

 現代社会の我々からすると不思議なことだが、この異世界において『占い』や『予言』は国や地域による差こそあれ、非常に精度が高くそこそこ具体的な内容で提示される。

 そして、ガハラでは月に一回。国事である『お告げ』を執り行っている。目的は単純であり、この国を中心とした短期的な吉凶を『予言』しているのだ。

 

 巫女が体を震わせると、近くに置かれた筆で予言を書き記し始めた。

 

「--降り積もる雪……砕かれる壁……魔獣の群れとそれを率いる魔王……斃れる人々……多くの流星……陽に焼かれる大地……勝鬨を挙げる巨人……ゥッ!」

 

 巫女は滝汗を流しながら気を失ってしまった。

 

「巫女様っ!! 急ぎ部屋と医師の手配を!」

「わかりました!」

 

 宮司の一人が足早に広間を後にし、他に宮司は巫女の介抱を始めた。

 もっとも格の高い宮司は巫女が記した書を纏めると、神王の元へと向かった。

 

 日が変わる頃合い。神王『ミナカヌシ』の執務室では蝋燭の薄っすらとした光が部屋全体を照らされている中、報告書や決裁書に目を通していた。

 

「陛下。失礼いたします」

「巫女の『神託の儀』は終わったのか?」

「はい。こちらが巫女様が記した書です」

 

 宮司は持ってきた書を手渡し、ミナカヌシは手早くその内容に目を通し、その内容を理解するとまるで戦場に立ったが如くの凄味を出した。

 

「……至急外務卿(外務大臣)に来るよう伝えよ」

「わかりました」

 

 時間が時間ということもあり、いつもより外務卿が訪れるには時間がかかった。

 

「我が主。至急とのことですが、何かありましたか?」

「うむ。まずはこれを読むとよい」

 

 ミナカヌシは外務卿に予言の書を渡した。

 外務卿はさっと書に目を通すと、その内容に血の気が引いた。

 

「これはっ……まさか、かの伝承にある魔王『ノスグーラ』が蘇るのですか!?」

「巫女の予言はそうそう外れぬ。故に最悪の事態に備えねばならん」

「しかし我が主。かつてのような種族間連合や古代魔法があった時代であればいざ知れず。昨今の情勢で魔王を退けるのは難しいかと存じます」

「……余もそれに関しては疑念に思う。それでもフィルアデスに住まう多くの民のために動かねばならん。急ぎ各諸国に使いを送り、ト―パ王国に参集するよう願い出るのだ」

「わかりました。急ぎ準備します」

 

 この日のミナカヌシの居城は一晩中蝋燭の火で灯された。




 読者の皆様。問う作品を読んでいただきありがとうございます。
 作中画像リンクがありますが、これは原作を読んでいてヤキモキすることに対する自分なりの考えです。
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