OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第37話

中央暦1639年 11月6日

-ロウリア王国 王都ジン・ハーク-

 

 ジン・ハークの外壁沿いにある尖塔に、監視の兵とは別に1人の人間が北の港を眺めていた。

 

「相手は列強。如何にニホンでも列強国相手は苦しかろうに……」

 

 一人呟くのはつい先日まで捕虜だったホエイルだった。

 ニホン人のある種の慈悲によって彼らは母国へと帰還した。

 何故捕虜である筈の彼がここにいるのかというと、それは戦いが始まる前日に遡る。

 

 5月末に北の港を占領してから捕虜の存在はすぐ問題になった。というのも、ロウリア軍兵士の数は2万を超えていたからだ。

 武装解除したからと言って、管理するどころか監視だけでもかなり苦労を伴う状態だったのだ。

 早い段階で後送するか返還すれば何も悩まなかったのだが、ロウリア側が講和に対して後ろ向きということもあり、返還できない状態が続いてしまったのだ。

 流石に2万の捕虜を北の港でずっと捕虜生活をさせるわけにもいかず、部隊交代と補給の帰り便に捕虜を少しずつクワ・トイネの捕虜収容所へ移送し続けた。そして、11月の段階で8000人にまで減っている。

 このまま移送が完了すればそれでよかったが、パーパルディア軍接近の連絡が入ったら、そんな悠長な事は言ってられない。

 第22任務旅団団長の荒谷が考えている最悪の状況は、パーパルディアと戦っている最中に捕虜が暴動や脱走を図った場合だ。現代装備の日防軍部隊だ。相手に後れを取ることは無い。しかし、横合いから殴られるという状況は防御側にとって不利になる。まして、暴動を予期して捕虜監視の戦力を正面戦力から抽出しなければいけないということも防御側にとっては不利な要因だった。また、捕虜達が他人の戦闘で犠牲になるというのも今後の外交と心情的にも看過できることでもなかった。

 ではどうするのかという話になると、過去の例で見るなら相互の捕虜交換を第3国経由で行うか、現場で処分(・・)するという選択だ。

 もちろん荒谷は捕虜を処分することなど一遍も考えていないが、さりとて捕虜をずっと抱え込むのも悪手だと考えた。そこで、仕方なく捕虜をロウリア側に解放する事にした。

 荒谷は市ヶ谷と官邸に事情を説明しロウリア軍捕虜解放の許可を取り付けた。

 捕虜の中で最先任者であるホエイルを旧ロウリア海軍司令部に招くと、荒谷は“北の港周辺が戦場になる可能性がある”ということをホエイルに伝え、同日中に捕虜全員を解放した。これで、後顧の憂いはなくなった

 夜が明けて2時間。櫛田がパーパルディア艦隊相手に善戦した後、第22任務旅団は既に防御態勢を整えていた。

 

『第22任務旅団』

 第11師団/第111機械科連隊

 前線指揮中隊

 ↓ ↓

 ↓ 第1機械化大隊

 ↓  ↓→第1中隊

 ↓  ↓→第2中隊

 ↓  ↓→第3中隊

 ↓  ↓→WAP中隊『メープル』

 ↓

 ↓→第2機械化大隊

 ↓  ↓→第1中隊

 ↓  ↓→第2中隊

 ↓  ↓→第3中隊

 ↓  ↓→WAP中隊『ジャム』

 ↓

 ↓→戦車大隊

 ↓ ↓→第1中隊

 ↓ ↓→第2中隊

 ↓ ↓→第3中隊

 ↓ ↓→機甲工兵中隊

 ↓

 ↓→整備大隊

 ↓ ↓→第1中隊

 ↓ ↓→第2中隊

 ↓ ↓→第3中隊

 ↓ ↓→輸送中隊

 ↓

 ↓→WAP中隊『シロップ』

 ↓

 ↓→第111重工兵連隊

   ↓→前線中継通信中隊

   ↓

   ↓→第1工兵大隊

   ↓ ↓→第1中隊

   ↓ ↓→第2中隊

   ↓ ↓→機動中隊

   ↓ ↓→補給中隊

   ↓

   ↓→第2工兵大隊※転移で全損

   ↓

   ↓→機動大隊

   ↓ ↓→第1中隊

   ↓ ↓→第2中隊

   ↓ ↓→砲兵中隊

   ↓ ↓→防空中隊

   ↓

   ↓→整備大隊※上記整備大隊と同じ

 

 水陸両用部隊と交代で入った第22任務旅団は戦車42両。歩兵戦闘車(IFV)36両。WAP32機。自走対空砲(SPAAG)12両。自走迫撃砲(SPMT)12両。装輪式兵員輸送車(APC)20両。機動火力車(MGV)6両。機動戦闘車(MCV)6両。装輪式自走対空砲(SPAAGV)5両。装輪式自走砲(SPGV)5両。偵察装甲車(RAV)8両。汎用軽装甲車(MLAV)16両。さらに非戦闘用の車両が多数配備されている。

 戦力に問題はない。ただし、厄介なことにパーパルディア陸上部隊(フューザー軍団)は東の海岸に上陸したことだ。

 何故なら、停戦協定によってロウリア領側(・・・・・・)に対して発砲を禁じられているからだ。

 パーパルディア軍が北の港に直接乗り込んでこれば何も考えず返り討ちにできたのだが、東の海岸は占領地域外なのでロウリア領のままだ。

 何も考えずパーパルディア軍に発砲すると、瞬く間にロウリアとの停戦違反になってしまうことを危惧した。

 荒谷は仕方なくパーパルディア軍を市街に引き込んでから迎撃するB計画を発動するよう各隊に指示を出した。

 

 ちなみに、本来港町周辺を固めているロウリア軍はパーパルディア軍が上陸してきたと知ると、問題を起こす前に東側から後退した。

 

 パーパルディア軍は戦列を敷くとゆっくりと北の港に進んだ。

 上陸した浜辺から港町外縁まで5km。完全装備で1時間以上はかかる距離だ。それなのに手を出してこないニホン軍の行動にフューザーラントは首を傾げた。

 

「……これは誘われているのか?」

「一度偵察を出しますか?」

「そうだな。頼んだ」

「わかりました」

 

 命令を受けた参謀の一人は部下を率いて駆けていった。

 

 フューザーラントたちが港町から500mの所で陣を敷くと、偵察に出した参謀が戻ってきた。

 

「将軍。戻りました」

「どうだったかね?」

「はい。町に防壁はありませんが、中に入れる道という道は全てバリケードが築かれており、幹線道路と岸壁以外。突入することができません。しかし、日本兵共は建物の屋根や窓からこちらを観察するだけで攻撃してくる気配はありません」

「やっぱり誘われているな」

「如何いたしますか?」

 

 フューザーラントは一度考えた。相手の大砲による攻撃があると思って構えていたが未だにない。これが並の戦いなら、沖合から艦砲射撃や飛竜隊に支援してもらうのだが、その戦力はすべて敵軍艦(櫛田)によって失われた。そして、この戦いに皇帝陛下は強い関心を示している。一旦引き上げて再起を図るという選択肢はフューザーラントにはなかった。

 

「……リントヴルムを街道に進ませて敵の動きを確認する。歩兵もそれに続かせろ」

「しかし将軍。町中では隊列が伸びて分断される可能性があります。それに、敵軍艦が使っていた連発銃(・・・)を配備しているかもしれません」

「確かに気がかりだが、あれだけ強力な装備を陸上で使えると思うかね?」

「それは確かにそうですが……」

「なに。所詮まともに魔法がない文明圏外の軍隊だ。我々の装備(マスケット銃)の前に立っていることはできんさ」

「はぁ……」

 

 フューザー軍団は隊列を整えると港町へと進み始めた。

 対して荒谷たちは観測用UAVでしっかり捕捉していた。

 

「旅団長。敵軍は耳無象を先頭に東街道を西進。歩兵部隊は側道には入らず、警戒しながら進んでいます」

「街道を隊列を組んで真直ぐか……恐ろしいな。最後尾の部隊は市街に入ったか?」

「あと少しです」

「各隊の準備は?」

「各隊何時でも行けます!!」

 

 それから数分後、待ちかねた報告が荒谷に届いた。

 

「旅団長。敵部隊。全て市内に入りました」

「よし。WAPは東街道を封鎖。自走迫に攻撃命令。最終弾着後に歩兵を突撃させろ」

「了解。HQ22より各隊。材料はすべて闇鍋の中。繰り返す。材料はすべて闇鍋の中。送れ」

≪ジャム1からHQ22。材料はすべて闇鍋の中。オーバー≫

 

 町の東で待機していた『ジャム中隊』は2機のWAPを相手が進んでいる東街道の交差点に向かわせ、先頭のリントブルムの前に立ちはだかった。

 いきなり鉄の巨人(WAP)が現れたことに、パーパルディア兵は浮足立った。

 

「ゴーレムだとっ!?」

「我が皇国ですら使っていないものを敵は持っているのかっ!?」

 

≪ジャム1からジャム3。ジャム4。攻撃を許可する。送れ≫

≪ジャム3。了解≫

≪ジャム4。了解≫

 

 片方のWAPが装備する50mm級半自動砲(イグチ社製ライフル)がダンッダンッと重い発射音を奏でながら徹甲弾を耳無象に対して発射した。

 50mm級徹甲弾はいとも容易くリントブルムの頭蓋を粉砕し、力なく横倒しとなった。

 

「リントブルムを一撃でっ!? 聞いたことがないぞっ!!」

「怖気ずくなっ!! 導力火炎弾用意っ!!」

 

 後ろにいたリントブルムが馭者によって口に淡い光が集まってくるが、それより早くもう片方のWAPがマシンガンで対応した。

 導力火炎弾を溜めていたリントブルムは20mm弾によってずたずたにされた。さらに導力火炎弾のエネルギーが四方八方へとばら撒かれ、馭者や近くの兵士を巻き込んだ。

 

≪ジャム4。ターゲット2撃破≫

≪ジャム3了解。後続のターゲット3を攻撃する≫

 

 縦列で進んでいた4体のリントブルムは2機のWAPによってものの1分もかからず巨大な肉塊へと変えられた。

 後続の兵士たちはリントブルムを撃ち倒した鉄の巨人に恐怖を感じた。

 

「そっ……そんなっ!!」

「リントブルムが手も足も出ないだとっ!?」

「落ち着けっ!! 隊列を整えて迎撃を--」

 

 歩兵が縦列を敷こうと動き出すが、空からヒューという音が幾つも近づいてきた。

 何の音かと探っていると、隊列の所々で魔導砲に撃たれたような爆発がパーパルディア兵を襲いかかった。

 

「何だ何だっ!?」

「どこから撃たr--」

「退避だっ!! 退避ぃ--」

 

 爆発は1か所や2か所ではない。気付いたら隊列の前も後ろも爆発している。

 運良く爆発から逃れて機転が利いた兵士の何人かは、直ぐ近くの建物へと駆け込み、爆発が収まるのを今か今かと待ち望んだ。

 1分が1時間になったような時間が過ぎると、東街道は静かになっていた。

 生き残った兵士が街道を眺めると、爆発によって同僚や戦友だったものが散乱していた。

 勝ち戦しか経験したことがない彼らにとって、目の前の光景は耐え難いものだった。

 部隊を統率すべきフューザーラントは馬に跨っていたため、迫撃砲弾の爆発をもろに受けて知らず知らずの内に肉塊にされていた。

 

「こんなの……こんなの戦いじゃねぇ……っ!」

 

 兵士が棒立ちになっていると、横道という横道から日防軍兵士たちが大勢現れ、生き残りを手早く包囲した。

 

「我々は日本国防軍である。武器を捨てて投降せよっ!!」

 

 生き残ったパーパルディア兵士は完全に戦意を損失し、持っていたマスケットを次々と地面に捨てた。

 

 マイハーク基地から飛来した4機の戦闘機が轟音を奏でながら北の港上空を旋回している中、第22任務旅団はパーパルディア軍の投降者に対する収容作業を進めていた。

 

 捕虜が誘導され歩いていく光景を荒谷は指揮装甲車の上から眺めていた。

 

「……案外あっさり終わったな」

「はい」

 

 何事も準備が肝心と言われるが、この戦いだと真面に使った戦力は全体の10分の1程度だ。使用した砲弾や銃弾は迫撃砲弾を除けば備蓄量の20分の1程度だ。

 

「……南城。司令部に向かってくれ。本土に報告せにゃいかん」

「わかりました」

 

 荒谷が乗った指揮装甲車が走り出した。

 東街道の彼方此方から小規模な煙が立ち込めていた。しかし、消火作業は既に始まっており、程なく鎮火することだろう。

 北の港の戦いは、日本の勝利で終息したのだった。




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