OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第4話

同日

-ロデニウス大陸マイハーク港 沖合60km付近-

 

 時を同じくして。軍船『ピーマ』はマイハークの北東方面を訓練と哨戒を兼ねて航行していた。

 船長のミドリはマイハーク北東に現れた不明騎のことは知らなかった。それでも、ピーマの1km先に浮かぶ大型船を眺めていたミドリの感情は驚愕と恐怖に支配されていた。

 自身の乗る軍船はたった20m程度の帆船だ。そして、視線の先にいる灰色の船は200mを超える巨体なのだ。その巨体の中に何人の水兵がいるかもわからないが、ピーマより圧倒的に多いだろうという想像は難しくない。さらに、船体の材料が何なのかわからないが、その巨体を生かしてラムアタック(衝角突撃)されれば間違いなく沈められる。ミドリは他の部下の手前、平静を保っていたが、内心不安で押し潰されそうな気分だった。

 

「副船長。あの船はパーパルディアの軍船なのか?」

「船長。確かに私はパーパルディア皇国へ研修に行ったことはありますが、あの国の主力は魔導戦列艦と言われる大型の帆船です。目の前の船に比べれば我々の軍船に似ています」

「そうなのか? なら、他の文明圏国家の新型船か?」

「ミリシアルやムーならあのような軍船があるかもしれませが、付近の国家であのような軍船を保有しているという話は聞いたことがありません」

「……あれがロウリアの新型船なら大変なことになるな。通信士。これから対象の船に臨検を行うが、艦隊司令部から何か通信は入ったか?」

「先ほど入りました。第2艦隊司令部から“相手を下手に刺激しないよう慎重に臨検せよ”とのことです」

「わかった。副船長。臨検班の準備は大丈夫か?」

「準備はできております」

「臨検には私も同行する。私に何かあったときは迷わず逃げたまえ。いいな?」

「……わかりました」

 

 2人のやり取りが終わると、船長と臨検班を乗せた小舟はゆっくりと灰色の船へと向かっていった。

 

 

 視点を変えて日本国防軍海上部隊所属。巡洋艦『茶臼(ちゃうす)』の艦橋では複数の乗員が帆船に視線を向けていた。

 茶臼は沖縄の南西に現れた大陸の調査任務に赴き、大陸からの使者と思われる帆船と接触を果たしたというわけである。

 

「艦長。前方の帆船から小型ボートがこちらに向かってきます。いかがいたしますか?」

 

 航海長の報告に茶臼艦長の伊野瀬は双眼鏡を覗き込みながら考えた。

 

「戦うため……ではないだろう。何かしらの下調べといったところか?」

「それなら、本艦に乗艦させますか?」

「そうだな。お客さん(外務省特使)も加えて話し合いの場を設けよう。航海長。準備してくれ」

「わかりました」

 

 艦長の指示の下。茶臼の右舷に舷梯が海面すれすれまで降ろされた。それを見ていたミドリは小舟を対象船の右舷梯へ進めるよう命令を出した。

 小舟が舷梯の傍まで近づくと、ミドリは改めてその船の巨体さを再認識した。

 ミドリと部下は茶臼乗員に案内された。案内されている間、ミドリは見るもの聞くものすべてに驚愕していた。

(船体の素材は鉄のようだ。だがこれだけの船体を鉄だけで作るにはどれだけ熟練の職人が必要なんだ? それ以前に鉄だけでどうやったら海の上に浮けるんだ? まるでわからん)

 ミドリ達一同は応接室に案内された。

 最初の一声を発したのは、部屋で待っていた伊野瀬だった。

 

「ようこそ『茶臼』へ。この艦の艦長を務めているOCU日本国防軍海上部隊所属の伊野瀬 賢です。どうぞお座りください」

「お招きいただき感謝いたします。私はクワ・トイネ海軍軍船『ピーマ』船長のミドリ・ヴェントレーです」

 

 ミドリは伊野瀬に促され椅子に腰を下ろした。

 降ろした先の椅子はまるで高級家具かと言わんばかりに柔らかな座り心地を感じた。もう少しこの座り心地を堪能したかったミドリだったが、自身の任務を思い出して伊野瀬に問いかけた。

 

「伊野瀬艦長。いきなりで申し訳ないが、そちらの船はあと十数km進むと我が国の領海へと侵入することになります。そちらの航行目的と目的地を教えていただいてもよろしいですか?」

「航行目的ですか? それなら、こちらの者にお聞きください」

 

 伊野瀬は横に座る灰色の服を着た男性に視線を移した。

 ミドリに視線を向けられた男性は静かに会釈して自己紹介を始めた。

 

「初めまして。日本国外務省の仲嶋 諒一です。特使として派遣されました」

「仲嶋殿……ふむ。それで、そちらの目的はなんでしょうか?」

「5日前。我が国の南西方面に出現した大陸を目指し、可能ならそこにあるであろう国家と国交を開き、通商条約を締結するためです。そして今回、あなた方と接触したというわけです」

 

 ミドリや部下は一様に首を傾げた。大陸の北東といえば小さな島があることは知っている。しかし、海流が荒く、並みの船では航行できるような海域ではなかったと記憶していた。

 まして、自分たちより技術が発達している国があるなど、噂ですら聞いたことがなかった。

 

「そうですか。国交の開設。いち船長である私では荷が重い案件です」

「それは承知です。なので、可能なら貴国の港までこの船の水先案内をしていただけませんか?」

「なるほど、案内ですか……。本国と連絡を取りたいので船に戻っても?」

「かまいません」

 

 仲嶋がそう言うと、ミドリ達は急いで『ピーマ』へと戻り、第2艦隊司令部へと事の顛末を報告した。

 

 政治部会は、日本側のあまりに穏便な要求に肩透かしを食らった。

 交渉の必要性とロウリアという目の前の問題がある。更なる負担を増やさないため、マイハークへの入港許可と日本国軍船を案内するよう指示を出した。

 この決断がロデニウス大陸全体に波及するとはこの時カナタをはじめクワ・トイネ首脳部は思いもしなかった。

 




用語解説

『特使』
 首相や大統領が相手国に対して、特別の任務を委ねて遣わす使者。現代だと国交がない場合に用いたり、親書を運ぶ場合に任命される。
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