OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第42話

中央暦1640年 1月15日

-クワ・トイネ公国 某地方道路-

 

「ーー隊長。こいつで最後です」

「イテテ。もう少し丁寧に扱えよっ!」

「盗賊が何言ってやがる。自業自得だろうが」

「問答無用で切り捨てられるより随分穏当だろう」

 

 ここはクワ・トイネの地方にある町と町を繋ぐ道の一つだ。日本のように舗装されているわけでもなければ、○○号線や××道という識別はない。進みやすいという理由だけで自然と道路になった所だ。

 この道は周りを林に囲まれており、時たま荷馬車を襲う賊が現れる。しかし、今回は隊商護衛がきっちり仕事を成し、荷馬車を襲った賊の内、生き残りの全員が縄で縛りあげられた。

 

「クソッ! いつもは護衛が手薄だってのに、準備がいいこった」

「雇い主は積み荷を安全に届けるために護衛をケチらない主義なんでな。諦めて豚箱に運ばれるこったな」

 

 隊商護衛と隊長と賊達の軽口の応酬に隊商の長がリーダー格に寄った。

 

「……お前さんたちは地元の人間か?」

「あぁ? だったら何なんだよ」

「何。このまま軍に引き渡してもいいんだが、さっき隊長が言ったようにうちの商会は護衛をケチる主義じゃない。もし君らがよければ、うちの商会で雇っていい」

「……もし断ったら?」

「もちろん。次の町で軍に引き渡すだけだ。どうだ? このまま盗賊稼業で切り殺される運命を辿るか。堅実に仕事に励んで富を得るか」

「……俺たちみたいな破落戸なんて引き連れてたら、他の市民は白い目を向けるんじゃないのか?」

「うちには元盗賊の隊商護衛は幾らでもいるからな、何も問題ない」

 

 隊商長は自信たっぷりに盗賊のリーダーに応えた。

 盗賊のリーダーも隊商長の豪胆さに折れた。

 

「わかったよ。とんだ変わり者だな。あんた達」

「ハンッ! でなければでかい商会に成長しておらんよ……おいマルシオ(隊商護衛隊長)。仕事の流儀を教えてやれっ!!」

「わかりました。おい。縄を外してやれ」

 

 隊長の言葉に部下が手早く元盗賊の縄を解いた。

 

「フゥ。これからよろしくな。隊長さん」

「そうだな。新たな部下を歓迎しよう。ただし、俺の部下に対する教育は厳しいぞ?」

「おいおい。俺たちは元破落戸だぞ、たかが教育なんぞで根は上げねぇさ」

 

 元盗賊たち全員が出発準備を始めると、隊長はあることが気になった。

 

「おい。死んだ奴は埋めないのか?」

「はぁ? 死んだ盗賊にそんな上品な弔い方なんていらねぇよ。精々獣の餌になるのが関の山だ」

 

 隊長は無言で隊商長の所に向かい、少し話しをした後。元盗賊リーダーの元に戻った。

 

「出発まで時間がある、死んだ奴を埋めるくらいの時間はあるだろう」

「……いいのか?」

「生きていた時盗賊だからって、死者に鞭を打つような考えを持っていないからな」

「ーーすぐに終わらせる」

 

 元盗賊たちは元仲間(・・・)の遺体を林の奥へと運んでいった。

 護衛隊長や他の護衛は荷の確認という体でほんの少し出発にかかる時間を増やすのだった。

 

 

中央暦1640年 2月8日

-トーパ王国 トルメス近郊-

 

 2ヶ月ほど前。魔獣軍団を退けたトーパ王国トルメスでは市街復旧と平行して、再侵攻に備えた防衛設備の構築が続けられていた。

 今トルメスにはトーパ王国軍約20,000に日防軍2個中隊。パーパルディア皇国軍約15,000。別途他国の部隊が合計約10,000。総戦力にして約47,000人もの兵力が集結している。だが、未だ脅威が去っていないということもあり、戦力はさらに増強される予定である。

 また、各国の部隊が纏まった規模となった今、防衛効率を上げるため戦力と指揮系統の整理を図った。

 

『トーパ王国連合防衛軍

 

連合軍司令部

 ↓

 ↓→防衛兵団※ト軍・パ軍主力。他の国も指揮下

 ↓

 ↓→斥候兵団※日防軍部隊は全てここの指揮下

 ↓

 ↓→輜重隊※ト軍中心

 

 

 その中で日防軍部隊に託されたのは、連合部隊唯一といえる無人機を生かした広域偵察任務とオークなどの高脅威目標に対する優先攻撃だ。

 部隊規模が小さくとも、裏打ちされた総合力は魔獣軍団に数以上の損害を与えている。

 そんな日々が続き、防衛司令部の会議室では恒例行事となりつつある各国指揮官の連絡会が開かれていた。

 

「日本隊から報告します。『世界の扉』を占拠する魔獣軍団の戦力は数的には低下しています。しかし、『世界の扉』近傍においてはゴブリンロードやオークが今なお多数確認できました。ただ、現在でも魔獣軍団の増援は確認できません。日本隊からは以上です」

 

 山川は連日行っている偵察隊の報告を終えると、腰を下ろした。次いで、別の偵察隊の報告が始まった。

 

「独立魔導偵察隊から報告します。魔導反応より城塞内の敵の数は3000前後。ブルーオーガの反応は健在ですが、ノスグーラの反応は城塞内で確認できず未だ行方不明です。今後も『世界の扉』内部及び周辺に対する偵察を実施します。独立魔導偵察隊からは以上です」

「偵察騎兵隊から報告します。中立地帯において少数の魔獣と交戦。撃退に成功しました。また、魔獣軍団が仕掛けたであろう簡易的な罠が各所に仕掛けられています。さらに、交戦した兵の話を纏めますと、遭遇した敵の殆どがゴブリンであるとのことです。尚、偵察騎兵隊の被害は未だ100に届いておりません。今後も城塞周辺及び中立地帯における偵察活動を継続する予定です」

 

 偵察隊各隊の報告が終わると、参集した指揮官の一人が意見を出した。

 

「ストングレイ団長。そろそろ機は熟したと思うのですが?」

「機ですか……。フレンツマン軍団長。山川隊長。お二方から見てどうかな?」

 

 会報においてストングレイが二人を名指しで質問することはよくあった。

 フレンツマン率いるパーパルディア皇国軍は現状でも連合部隊において2番目の規模を有している。主力はマスケット銃を装備する軽歩兵だが野戦魔導砲も20門が到着しており、その戦闘力は列強国故裏打ちされていると言える。

 日防軍は言わずもがな、昨年12月の戦いにおいて最大の戦果を上げた部隊なのだ。ストングレイがある意味自国軍より期待しているからこそである。

 

 二人のうち、まずフレンツマンが口を開いた。

 

「やはり、最大の脅威であるノスグーラの所在が不明というのが厄介ですな。『世界の扉』に居ないと確証できるまで戦力の滋養に努めたほうが得策だと考える」

 

 フレンツマンの言葉に他の指揮官も頷く。そして、山川が口を開いた。

 

「城塞に対する被害をどの程度許容できるかで、いくつか策を考えています」

「……では、城塞になるべく被害を出さない案を教えていただいても?」

「はい。まず『世界の扉』の正面に大規模な戦列を展開。敵を可能な限り外に炙り出したあと、内部に制圧部隊を侵入させ、内部から攻略する案です。この案の実施においては事前に貴国から『世界の扉』の詳細な図面を提供していただくことが前提です。また、攻略を模擬した演習も必要と考えており、万全を期するなら凡そ2ヶ月間の準備期間が必要と見ています」

「今後のことを考えたら『世界の扉』への被害は抑えたいが、2ヶ月ですか……仮に『世界の扉』の損害を気にしなくて良いなら、どのような案になるのか?」

「それなら、以前のように空爆に加え砲撃を以て『世界の扉』を崩壊させます。ノスグーラが待ち構えていても無傷では済まないでしょう。準備期間も1週間あれば実施可能です」

「うぅむ……山川隊長。『世界の扉』を再利用できる程度に損害を留め、かつ準備期間が少ない案は無いだろうか?」

 

 山川はストングレイの言葉を理解しながら、統合軍参謀部より提供された戦力表を確認した。

 

「……2週間から3週間であれば別の策があります」

「では、聞かせていただいても?」

「まず、『世界の扉』正面(裏面?)に大規模な戦列を展開。魔獣軍団を引き付けます。次に、我が軍の機動戦力で『世界の扉』上面と背面を奇襲。順次制圧していきます」

 

 参列する各国指揮官が“山川隊長は何を言っているんだ?”という顔を向ける。そして、指揮官の一人が山川に質問する。

 

「山川隊長。『世界の扉』の構造は地峡を完全封鎖する形で建造されている。上面はワイバーンなどを使えばいけるだろうが、どのように背面に回るのか?」

「我が方は島国なので、島嶼強襲用の戦力があります。それを『世界の扉』背面に投入します」

「島嶼強襲用の戦力……わかった」

 

 指揮官は回答にイマイチ理解できず席に座った。

 

「山川隊長。仮に制圧中に魔王『ノスグーラ』が『世界の扉』内にいた場合どうするか?」

「制圧部隊を用いて排除します。ただ、排除に失敗したなら『世界の扉』ごと破壊するのが最善だと思われます。どうですかストングレイ団長」

 

 ストングレイは顎を撫でると静かに応えた。

 

「いいでしょう。山川隊長の案を採用します。他に意見があるものは?」

「私から特に異論はありません」

「私からもストングレイ団長の意思に従います」

 

 他の国の指揮官が一頻り熟考に入るが、日本より効果的な案が出てくることはなく。ストングレイの判断に従った。

 

「では、『世界の扉』奪還作戦は2週間後に実施するということでよろしいかな?」

「直ちに調整に入ります」

「よろしくお願いします。では各国軍の配置もーー」

 

 作戦方針が決まった連合防衛軍は『世界の扉』奪還の準備を始めるのだった。




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