OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第44話

中央暦1640年 2月24日

-トーパ王国 『世界の扉』-

 

 『世界の扉』を奪還した連合防衛軍の将兵たちの士気はノスグーラと増援の魔獣軍団が現れたことによってみるみる低下していった。

 だが、すべきことを思い出した連合防衛軍各兵士の動きは素早かった。

 

「さっさと魔獣の死体を片付けろっ!!」

「廃材は外に運んで壁を作るんだ。後、堀も作るぞっ!!」

「弓兵隊。銃兵隊は上階で迎撃する準備だ。資材を運べるだけ運べ。バリスタの準備も怠るなっ!!」

「わかりましたっ!!」

 

 連合防衛軍兵士は大慌てで戦いの準備を進めた。

 『世界の扉』正面ではパーパルディア軍の兵士が魔導砲を並べて砲列と塹壕を構築していく。

 

「HQ23からオールヘリコプター(ウォリアー中隊とカーマイン中隊)。『紀伊』に弾薬及び燃料補給に向かえ。送れ」

≪ウォリアー1からHQ23。燃料補給にため、『紀伊』へ一旦帰艦する。オーバー≫

≪カーマイン1からHQ23。弾薬燃料補給に向かう。オーバー≫

「HQ23から歩兵チーム。『世界の扉』最上段で迎撃準備を整えろ。送れ」

≪ウォリアー1-1からHQ23。『世界の扉』最上段で迎撃準備を整える。オーバー≫

 

 山川もただ連合防衛軍の仕事を眺めるだけでなく、展開している部隊の再配置を指示した。さらに、本土の上級司令部(統合軍参謀部)に現状を報告した。

 

 ストングレイを含めた連合防衛軍の指揮官達は『世界の扉』における迎撃準備を着々と進めていた。しかし、無人機から送られてくる巨大なゴーレムの映像に指揮官の一人が質問した。

 

「ストングレイ団長。あのゴーレムに対して、何か有効な策はありますか?」

「残念だが、いくら伝承に載っているとはいえ、あんなものに対する対抗策などありません」

「では、『世界の扉』にあのゴーレムが到達するのを指を加えながら待つのですかっ!?」

「わかっていますっ!! しかし、我が方にあれ(・・)を打ち倒せるようなものなど……!!」

「流石に我が方の野戦魔導砲でもアレ相手に有効打足りえるかどうか……」

「せめて戦車があればなぁ……」

 

 若干呑気な言葉を挙げる山川に対して、他の指揮官は明らかに狼狽えていた。

 

「山川隊長。以前のようにコウクウブタイとやらは使えないのですか?」

「申し訳ありませんが、即時投入可能な航空支援はありません」

 

 山川と他国軍指揮官が口論に陥っていると、通信担当が報告した。

 

「隊長。洋上に展開している『石鎚』から通信が入っています」

「わかった……HQ23から『石鎚』。通信良好。送れ」

≪こちら巡洋艦『石鎚』艦長の新田だ。ライアー15の通信を受信してから傍観するわけにいかなかったのでな。現在全速で『世界の扉』近くの海域に急行している≫

「ありがとうございます。到着までどれくらいかかりそうですか?」

≪天測が正しければ、『世界の扉』から100km南東に位置にいる。こちらの兵装の射程から逆算して到着予定時刻は1時間30分後と思われる≫

「わかりました。こちらで時間を稼ぎます」

≪よろしく頼む≫

 

 『石鎚』との通信が切れると、山川はアキュリスに通信を繋いだ。

 

「HQ23からアキュリス1。巡洋艦『石鎚』がこちらに全速で向かっている。到着は1時間半後。その間『世界の扉』に敵戦力が接近するのを阻止せよ。送れ」

≪アキュリス1からHQ23。『世界の扉』に敵戦力が近づくのを阻止する。オーバー≫

 

 8機のヴァンツァーは『世界の扉』を背にしていた。

 百川は他の7機に通信チャンネルを開いた。

 

「アキュリス1からアキュリス各機。敵の軍団がここに迫っている。味方の準備が整うまで時間を稼ぐぞ」

≪アキュリス2からアキュリス1。消耗した弾薬の補充が必要だと考えますが?≫

「アキュリス2。残念ながらそれを待つ時間はない……損傷しているアキュリス7は『世界の扉』近くで待機だ」

≪アキュリス7了解≫

「他に質問はないな? 全機。スクリメージ」

 

 7機のヴァンツァーは腰を落とすと足元から土煙が勢いよく舞い始めた。

 ヴァンツァーの足裏にはローラーが装備されており、通常の歩行より早く移動することができる。

 

 猛烈な速度で土煙を曳きながら7機のヴァンツァーが魔獣軍団に迫った。

 

 

 ヴァンツァーが迫ってくる事はノスグーラも把握していた。

 

「ほぅ……人間共も強力なゴーレムを造れるようになったのか?」

 

 お互い細かな識別できるくらい距離が詰まった。

 先手を取ったのはノスグーラである。

 

「生ぬるい策などいらんっ!!」

 

 ノスグーラはカイザーゴーレムから降りると、カイザーゴーレムが低い姿勢でドシンッドシンッと一気に加速した。

 

≪アキュリス1。中央の巨大兵器が突っ込んできます≫

「アキュリス1から2と3。1と共に相手する。4と5。6と8で両側の奴(ガーディアンゴーレム)を相手してやれ」

≪≪≪了解っ!!≫≫≫

 

 たった数百mの幅しかない地峡で7機はそれぞれの標的に向かって別れた。

 突っ込んできたカイザーゴーレムは拳を振り降ろしたが、盛大に土を抉っただけだった。

 

「当たったらひとたまりもないな」

 

 ヴァンツァーは全身金属の装甲で覆われているが、細長いとはいえ全高20mもある岩の塊にぶん殴られればただでは済まない。

 もちろん。百川たちはゴーレム相手に格闘戦なんて仕掛けない。格闘戦ができる構造(人型兵器)ではあるが、相手の土俵で戦う理由がないからだ。

 

 カイザーゴーレムは他のヴァンツァーに近づこうとするが、ヴァンツァーの方が優速で小回りも利いた。

 

 百川は装備しているのレオソシアルMG(WAP用マシンガン)でカイザーゴーレムを攻撃したが、当たったところから砂が飛び散るだけで効果はなかった。

 

(魔法で作ってるから身が詰まっているのか? それならーー)

「アキュリス1から各機。ゴーレムの膝を狙え」

 

 何故?と聞く部下はいなかった。戦っているときに迷っている時間の方が命取りになるのをよく知っているからだ。

 

 1発2発当たったところでカイザーゴーレムの膝は何も起きなかった。しかし、20発30発を叩きこむとカイザーゴーレムの膝は砕け落ち、転倒した。

 

「各機。ゴーレムの弱点は膝関節だ。ヴァンツァーと違って岩を固mーー」

 

 百川が部下に攻略法を伝えていると、砕けた膝辺りに土や石がカイザーゴーレムに集まり、破壊する前に戻った。

 カイザーゴーレムはまるで膝の調子を見るように足を動かしている。

 

「訂正する。時間稼ぎしかできん」

≪自己再生能力付きとは、弾薬が無駄にしかなりませんよ。これ≫

「……アキュリス1からHQ23。敵巨大兵器は再生能力を有している。対処法求む。送れ」

≪HQ23からアキュリス1。対応を協議する。送れ≫

「アキュリス1からHQ23。了解。オーバー」

 

 百川が司令部との通信を切ると、カイザーゴーレムが土の塊を放り投げてきた。

 

 

 ヴァンツァーとゴーレムの戦闘はライアー15(無人偵察機)の映像からリアルタイムで把握していた。

 

「ストングレイ団長。あのゴーレムを破壊するにはどうすればよいでしょうか?」

 

 ゴーレムに関する知識がない山川は近くにいたストングレイに対処法を質問した。

 

「魔導士でなければ……おい。外にいる魔導士でゴーレムに詳しい者がいないか探してこい。いたらここに連れてくるんだっ!!」

「わかりました」

 

 ストングレイの言葉に参謀の一人が急いで魔導士を探しに行った。

 指揮官の一人が恐る恐る質問した。

 

「ストングレイ団長。仮にこのままあのゴーレムが迫ってきたら、どうしますか?」

 

 指揮官の言葉にストングレイは悩んだ。

 相手が魔獣だけなら『世界の扉』に籠もって戦えばいい。しかし、相手は巨大ゴーレムを先頭にノスグーラをはじめ、伝承に載ってない未知のオーガすら魔獣軍団に加わっている。

 とても楽観視できる状態でないのはストングレイ以外の指揮官も察していた。

 

 沈黙が司令部を支配していると、参謀が魔導士を連れてきた。

 

「ストングレイ団長。魔導士をお連れしました」

「ベシュテンドルフ公国より馳せ参じたマレク・リカルドです。何か緊急の案件と聞き及んでいます」

「リカルド殿はゴーレムにお詳しいと認識してよろしいか?」

「はい。地元でも簡単なモノならよく作っております」

「では、これ(ディスプレイ)に映っている巨大ゴーレムの弱点はわかるか?」

 

 リカルドはジッとディスプレイを眺めて、ストングレイに質問した。

 

「失礼ですが、術者がゴーレムをどのように造ったか見ていた方はおられますか?」

 

 リカルドの質問に答えられる者はいなかった。そこに、日防軍士官の一人が回答した。

 

「確か、ノスグーラが手に置くと地面が光ってそこから土や石が集まってゴーレムが形成されたように見えます」

 

 リカルドは数秒考えると質問に答えた。

 

「恐らくですが、あれだけ大掛かりなゴーレムを形成するにはそれに比例する膨大な魔力が必要です。自律型であの大きさを造るには巨大な魔石結晶を用意する必要があります。それがないということなら、術者が魔力を遠くから送っている可能性が高いかと思います。よって、ゴーレムの破壊ではなく術者の排除を狙うのがゴーレム破壊に最適かと思います」

「となると、敵中にあるノスグーラをどう排除するかということになりますが……」

 

 一同は山川に視線を移した。山川もストングレイ達が言わんとすることは理解した。

 

「……以前申したように航空部隊は投入できません。巡洋艦の到着次第砲撃。以てノスグーラの排除を狙うしかありません」

「そうなると、我々は『世界の扉』で防備を固める以外に策はありませんな」

「しかし、守るにしても『世界の扉』とて万能ではない、せめてゴーレムを破壊できる策を別で用意してはどうでしょう」

「しかし、あのゴーレムは自己再生能力すら持ち合わせている。生半可な手段では破壊できませんぞ?」

 

 指揮官たちは案を出しては有効性に疑問符を投げつけるという不毛な会話が続いた。

 その不毛な流れに終止符を打ったのは、フレンツマンだった。

 

「……我が軍には魔導砲用の魔石火薬が大量にあります。それを使いましょう」

「しかし、あれだけ巨大なゴーレム相手に魔導砲では威力不足ではないか?」

「魔導砲は使いません。使うのは魔石火薬だけです。それを大量に地面に埋めて、巨大ゴーレムがその上に差し掛かったら爆破させます」

「ゴーレムをうまく誘導する必要がありますがーー山川隊長。お願いしても?」

「何とかしてみましょう」

 

 連合防衛軍は防備を整えるのと併せて、ゴーレムを迎え撃つ準備を始める。

 

 

 戦場では、巨大ゴーレム3体とヴァンツァー7機による鬼ごっこが繰り広げられていた。

 最も巨大なゴーレム(カイザーゴーレム)もそうだが、半分サイズのゴーレム(ガーディアンゴーレム)にも自己再生能力があり、相手をしている4機も鬼ごっこに勤しんでいる。

 

(これじゃ埒が明かないな……決定打にも欠けるし、司令部も悩んでいるんだろうな)

 

 今のところ自機も部下のヴァンツァーにも被害は出ていない。だが、相手にまともな損害も与えていない。

 武装の威力不足も懸念すべきだがそれ以上に気になることが百川の頭の中にあった。ヴァンツァーのバッテリーの残量が心許ないのだ。

 ヴァンツァーが搭載する機関は半永久機関だ。だからこそ人型という形でも戦闘運用に耐えられる。しかし、バッテリーの消耗が激しい戦闘の合間にアイドリング(低出力運転)整備(停止状態)を挟まないと、戦場で立ち往生してしまう。ヴァンツァーは戦場にずっと張り付ける様な野戦向けの兵器ではないのだ。

 

(一撃でも当たれば即お陀仏になる攻撃を避け続けるのはきついな……)

 

 百川が時折部下から聞こえる動悸に耳を澄ませていると、別の通信が入った。

 

≪『石鎚』からアキュリスへ。攻撃可能ポイントに到達。必要なら支援要請せよ≫

「感謝する。アキュリス1から『石鎚』。敵巨大兵器を攻撃可能か? 送れ」

≪『石鎚』からアキュリス1。終端誘導支援装備はあるか? 無ければ機動兵器相手の攻撃は不可能だ≫

 

 百川は舌打ちした。ロケットブースターではなくヘリ吊下で投入されれば、それ用のバックパック(レーダーパック。ラジオパック)を背負ってこれたのだが、今回は誰も持っていない。だが、百川の苛立ちは別の形で終わった。

 

≪ライアー15から『石鎚』。終端誘導可能。レーザーコードを送信する。送れ≫

≪『石鎚』からライアー15。コードを確認した≫

≪ライアー15からアキュリス1。『石鎚』から巡航ミサイルを発射する。直撃させるために敵巨大兵器の足止めを行え。送れ≫

「アキュリス1からライアー15。敵巨大兵器を足止めする。オーバー」

 

 百川は部下の位置を確認した。

 

「アキュリス各機。聞いたな? 巡航ミサイル着弾前にまた膝を砕くぞ」

≪HQ23から『石鎚』。巡航ミサイルの攻撃は却下する。送れ≫

 

 横やりを入れてきたのは我らが司令部の通信だった。

 

≪『石鎚』からHQ23。敵機動兵器に対する有効策を別に在りや?≫

≪HQ23から『石鎚』。敵機動兵器は自己再生能力を有している。破壊するには敵機動兵器を造った術者……“ノスグーラ”を直接排除するしかない。送れ≫

≪『石鎚』からHQ23。その“ノスグーラ”の位置は掴めているか?≫

≪ライアー15から『石鎚』。こちらで捕捉している。送れ≫

≪HQ23からライアー15。『石鎚』に砲撃座標を指示せよ。送れ≫

≪ライアー15からHQ23。『石鎚』に砲撃座標を伝える。送れ≫

≪『石鎚』からHQ23。敵機動兵器はどうするか?≫

 

 『石鎚』艦長である新田の疑問は別の人間が答えた。

 

≪カーマイン1からアキュリス1。補給が完了してそちらに向かっている。到着は10分後。送れ≫

≪アキュリス1からカーマイン1。掩護感謝する。オーバー≫

 

 百川が乗るヴァンツァーのカメラアイの先は巨大ゴーレムに向けられた。

 

 

 ノスグーラの頭上から幾つもの飛翔音に気付いた。それが何なのかは過去の自分がよく知っている。ほぼ反射的に地面に魔法陣を展開して土壁の魔法を展開させた。

 

 155mm榴弾の爆発がノスグーラを包むが、本人は傷一つつくことなく生き残った。

 

「使い共めぇ。忌々しい……」

 

 防御魔法の展開でノスグーラ自身は平気だったものの、周りの魔獣が百以上黒焦げた肉片へと変わり果てていた。

 そして、その光景は無人機によって余すことなく撮影されていた。

 

 連合防衛軍司令部ではライアー15から送られてくる映像に指揮官一同は驚愕していた。

 

「山川隊長。そちらの軍艦が到着すればノスグーラを排除できるのではなかったのかっ!?」

「あの爆轟を生き残るだと!? ノスグーラは無敵の存在なのかっ!?」

「これでは幾ら防御を固めても無意味ですぞ!?」

 

 司令部内は映像のせいで阿鼻叫喚となったが、魔導士であるリカルドは冷静に分析していた。

 

「団長殿。ノスグーラの防御魔法は強力ですが、完璧ではありません」

「何故そう言い切れる?」

「どのような魔法も強力になれば膨大な魔力を消費するものです。ノスグーラの用いた防御魔法は確かに強力ですが、瞬間的に強い壁を作り出すのが限界のようです」

「ーー連続的に強力な攻撃を繰り出せば突破できるか……山川隊長っ!」

「指示を出しますーー」

 

 山川は洋上の『石鎚』に砲撃を継続するよう指示を出した。

 

 魔獣軍団は『石鎚』から断続的な攻撃を受けることとなり、既に数千の魔獣が榴弾によって次々にズタズタにされていた。しかし、膨大な魔力を持つノスグーラは何発もの榴弾の炸裂に耐えた。

 

≪カーマイン1からHQ23。攻撃に参加する。オーバー≫

「ちぃっ!! 小賢しい羽虫がっ!! 」

 

 攻撃ヘリ部隊の攻撃も加わると、少しずつだが事態は動き出した。

 それに気付いたのは巨大ゴーレムと交戦する百川の部下だった。

 

≪アキュリス3からアキュリス1。巨大ゴーレムの動きがトロくなっていませんか?≫

「アキュリス3。推測で物事を図るな」

 

 そう言って百川は巨大ゴーレムを観察した……部下が言うようにその動きは確かに鈍くなっていた。

 最初に出会ったときは突進をかましながら腕を力の限りぶん回せるほど勢いがあったが、今はまるで足に纏わり付いた獣を払うようにしか動いていない。

 

「アキュリス2。3。もう一度ゴーレムの膝を狙えっ!!」

 

 アキュリス2と3のパイロットは百川の意図を汲み取り、ゴーレムの膝を打ち砕いた。

 最初と同じように、周りの石や土がゴーレムの膝に集まり、再生しようとするが、最初に砕いた時と比べ修復速度が目に見えて落ちていた。

 

「アキュリス全機。敵は弱っている。全武器使用自由。畳みかけろ」

≪≪≪了解っ!!≫≫≫

 

 指示を受けたヴァンツァーの動きは速かった。ゴーレムの脆弱な膝関節に砲火を集中させ、あっという間に擱座(動けなくすること)させた。もちろん、ゴーレムは再生しようとする。それがノスグーラにとってさらに魔力を消耗するという悪循環に陥るということは想像に難しくない。

 ノスグーラは強力な高知能魔獣である。それは魔帝がどれだけ魔導技術に優れていたかを物語っている。よって、ノスグーラの魔力は賢者級の魔法使いを軽く凌駕している。しかし、いくら膨大な魔力があるからと言って、半永久的に使えるようなものではない。

 逆に、ゴーレム3体の生成維持と重防御魔法の連続使用によってノスグーラの魔力は枯渇へと近づいていた。

 

(ーーまさか、戦場で膝を屈するときが来るとは……)

 

 ノスグーラにもはやこの戦いの後悔を糧にする時間はなかった。そして、必死に展開させる防壁がとうとう崩れ、追加と言わんばかりに攻撃ヘリから対戦車ミサイルが叩き込まれた。

 

 ヴァンツァーと戦っていた3体のゴーレムは斃れるとともに砂の山を作って崩壊した。

 

「終いか……アキュリス各機。残弾報せ」

≪アキュリス2からアキュリス1。残弾1割≫

≪アキュリス3。こちらも1割程です≫

≪アキィリス4。2割といったところです≫

≪アキュリス5。残弾なし≫

≪アキュリス6。3割は残っています≫

≪アキュリス8。1割……は切っています。ざっと5%程≫

 

 百川は一旦仕切りなおすために下がろうかとも考えたが、魔獣軍団の突撃に備えることにした。

 

「アキュリス各機。魔獣軍団の攻撃に備えろ」

≪≪≪了解≫≫≫

 

 ノスグーラが排除されたことは、司令部でも確認された。

 

≪ライアー15からHQ23。ノスグーラの排除を確認。送れ≫

「HQ23からライアー15。魔獣軍団の動きを監視せよ。オーバー……ストングレイ団長。最重要目標であるノスグーラは排除できたと見て問題ないでしょう」

「確かにそうですが、未知のオーガと魔獣軍団に備えないと……」

≪ライアー15からHQ23。魔獣軍団が後退を確認。繰り返す。魔獣軍団の後退を確認。送れっ!≫

「これはつまり?」

「勝利した……と見て良いでしょうな」

「「「やったああぁぁ!!」」」

 

 今度こそ、司令部では歓喜の声に包まれた。指揮官の何人かは伝令にこのことを伝えるように指示を出した。

 

 歓声が司令部に響く中。ストングレイは山川に歩み寄り右手を差し出した。それを見た山川は握り返した。

 

「山川隊長。何から何までありがとうございます。我が国は救われましたっ!!」

「いえ団長。奮戦した将兵の献身があっての勝利です。我々だけでは勝てなかった」

「まったく。日本の謙遜は恐ろしいものですな。ハハハ」

 

 ノスグーラが出現したときの陰湿とした空気は完全に吹き飛んでいた。

 

 『世界の扉』に百川たちが帰還すると、連合防衛軍将兵から熱い歓声を持って受け入れられた。




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