OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第47話

中央暦1640年 4月18日

-神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス-

 

 この日、日本から1万km離れた異国の地でとある会議が開催されていた。

 

「ーーこれより、先進11ヶ国会議を開催いたします」

 

 主催国である神聖ミリシアル帝国外務省のヒルベルト・リアージュ統括官が開催を宣言した。

 

 先進11ヶ国会議。それは第1文明圏から第3文明圏の主要国。さらに文明圏外から有力国家を合わせて11ヶ国選出し、今後の国家間運営や外交懸案を話し合う場だ。

 

 なお、今回の参加国は以下の通りである。

 

第1文明圏

常任枠 ・神聖ミリシアル帝国

常任枠 ・エモール王国

非常任枠・トルキア王国

非常任枠・アガルタ法国

 

第2文明圏

常任枠 ・ムー

非常任枠・マギカライヒ共同体

非常任枠・ニグラート連合

常任枠 ・レイフォル※未通達欠席

 

第3文明圏

常任枠 ・パーパルディア皇国

非常任枠・パンドーラ大魔法公国

 

文明圏外:南方

常任枠 ・アニュンリール皇国

 

 1638年の会議では常任枠は何事もなく出席し、非常任枠も会議に度々参加する有力国だ。ただ、今回の1640年に至ってはここ数百年でありえない事態が起きた。

 まず、常任枠にいたレイフォルが今回欠席している。

 もちろん、常任枠だからといって何かしらの事情で会議に参加できないということは主催であるミリシアルの歴史上何度かあった。しかし、今回レイフォルが欠席という形なのは、事前にミリシアル側に欠席の旨を伝えてないからだ。

 

(確か第八帝国とかいう新興の国家と戦争していたな。それが忙しすぎて欠席する旨を伝えていないのだろう)

 

 第2文明圏に属する参加国はレイフォルの欠席した事情を薄っすらと認識していた。ただ、どの国も真実は知らなかった。

 

 そして次に驚愕すべき事態が起きたのはエモール王国から全ての参加国に対する報告である。

 

「今年の初め。我が国は『空間の占い』を実施したところ、彼の魔帝復活の兆しが見えた。数年内に復活するということはないだろうが、何時頃復活するかどうか残念ながら不明である」

 

 参加各国はレイフォル(列強の末席)の欠席を忘れるほどの衝撃を受けた。

 

「魔帝復活なぞ御伽噺だと思ったが……」

「いや、魔帝の伝承は1万3千年前からずっと言われている。元々1万年で復活すると宣言していたのだ。遅すぎるくらいだ」

 

 エモール王国の言葉に参列国のどよめきを生んだが、報告した当の本人。竜人族のモーリアウムは至って平静に応えた。

 

「諸君らの知っている通り。今から約1万3千年前。魔帝は如何なる種族より優れた魔導を有し世界を支配していた。その驕りに驕った幼稚な精神ゆえ、世に住まう神々に弓を引いた。しかし、魔帝も地上に住まう一種族に過ぎず。逆に神々の怒りを買い、天罰を受けるに至った。だが、奴らは天罰を回避するため時を渡る魔導を発現させた」

 

 一同はシン……と静まり、モーリアウムの言葉に耳を向けた。

 

「先も言った通り魔帝復活の時期は未だ判らぬ。だが、遠くない未来に向け、魔帝の隷属に抗えるよう軍備増強に努めてもらいたい」

 

 モーリアウムの言葉の後、リアージュの言葉によって一旦会議は閉会した。

 

 会議が解散した後、パーパルディア皇国から参列したエルト(第1外務局局長)達の元にモーリアウルが訪れた。

 

「失礼。貴方がパーパルディア皇国の特使でよろしかったかな?」

「これはこれは。モーリアウル閣下。態々我が皇国のために足を運んでくださりありがとうございます。それで、何か重大なご用件でしょうか?」

「うむ。実は『空間の占い』では他にも神託が降りていたのだ」

「つまり、その神託は我が国にとって重要なことということでしょうか?」

「恐らく」

「失礼を承知でお聞きしますが、その内容を教えていただいても?」

「もちろんだ」

 

 モーリアウルは懐から妙に仰々しい巻物を取り出して広げた。

 

「占いの内容は明確な個人や相手を指すことはほぼない。ただ、それに関するもの。特に象徴的な物が何かしらの動きや事象を以て表現される」

 

 エルトは何も言わず黙ってモーリアウルの言葉を聞いた。

 

「内容についてだが、“群れを成すリントブルムの内。白銀の個体が他の仲間と共に朝日に近づこうとする。しかし、近づきすぎた群れは次々と灼熱に焼かれ、最後に群れを率いている白銀の個体も日の光を全身に浴びて息絶える”……というようになっている」

 

 モーリアウルは巻物を懐に仕舞いこんだ。対して、エルトは占いの内容を考察していた。

 

(リントブルムは我が国の象徴であるのは確か……しかし、白銀の個体など聞いたことがない。何かの比喩だとしても何を指しているのか……。息絶えるということは国全体に災いが降りかかるということでしょうか?)

「モーリアウル閣下。我が国のためにありがとうございます。後日御礼の品をお届け差し上げます」

「うむ。第3文明圏最強国であるパーパルディア皇国の存在は間違いなく世の秩序には重要だとワグドラーン陛下はお考えである」

 

 モーリアウルの言葉にエルトは笑顔を向けて答えたが、内心喜んでいなかった。

 母国が既に第3文明圏において最強でないことをこの場で誰よりも理解しているからだ。

 

 その後、世界11ヶ国会議は予定通り進んだ。

 

 エルトは特に皇国にとって重要でない議題の時は、ずっとモーリアウルから伝えられた予言に意識を持っていかれていた。

 

 

中央暦1640年 4月20日

-フェン王国 ゴトク平野-

 

「ーーいやぁ。ここもかなり変わっちまったなぁ」

「そうですねぇ」

 

 フェン王国ゴトク平野を行商人が進んでいた。

 この平野はフェン王国の中でも特に人が少ない荒地だ。

 この荒野の中に南北4km。東西2kmに亘って鉄条網と土擁壁で囲まれた空間があり、中の様子は分からない。

 

 並の状況なら周辺住民が不満を覚えるのだが、ゴトク平野は土質が悪く耕作にも牧畜にも向かない土地ということもあり、周辺に住民が一切住んでいない。

 日本と軍事同盟を締結した後、フェンにとって何の価値もない唯の荒れ地は国内でも随一の軍事拠点へと変化していった。

 

 擁壁の内側。もとい在フェン支援軍兼基地司令の木村 利夫少将が庁舎代わりに使っている野戦用テントで書類仕事に励んでいた。

 

「木村団長。こちらの決済と報告書の確認お願いします」

「ああ。わかった」

 

『フェン王国支援群

 

第5師団/第51機動連隊

前線指揮中隊

 ↓→第51機動連隊/第1大隊/第1中隊

 ↓

 ↓→第51重工兵大隊

   ↓→第1中隊※転移によって全損

   ↓→第2中隊

   ↓→機動中隊

   ↓→補給中隊

 

 仮称名『日防軍ゴトク航空基地』はフェンと軍事同盟が締結されてから、すぐ建設が始まった基地だ。

 到達点としては増強連隊1個分(約2500名分)の駐留能力。さらに自己完結性の高い航空団1個分(航空機60機分)の収容・前線整備能力を目指して造成が続けられている。

 

 剣王シハンの心中とは裏腹に日防軍基地の建設は計画的ではあるが、とてつもなく平穏に進んでいた。

 フェンという地域はパーパルディアと日本の間にあるということもあり、日防軍としては前哨拠点として有利な立地なのだ。ただ、1939年11月の『日本名:北の港の戦い(パ皇名:ロウリア懲罰作戦)』の後に日パ和親条約が結ばれると、日本国内で“フェン国内に基地が必要なのか?”という意見が出てきた。

 対して、フェン王国からの強い要請や『アルタラス王国の侵略併合』という一定程度の確度ある情報が入っているため、パーパルディアで大規模な政変でも起きたら和親条約を破棄し、再度日本と対決する可能性が論じられた。

 もちろん日本とパーパルディアの技術力の差は論じる方が馬鹿らしいレベルだが、かといって和親条約によってパーパルディアが日本に対する復讐心を完全に捨てたとは完全に言い切れなかった。

 よって、フェンの軍事基地建設はある種の保険という意味合いを込めて予算や資材の投入が継続されることとなった。

 

「多嶋さん。駐屯地庁舎基礎と宿舎基礎。航空用付帯設備の基礎工事が完了しました。通電テストも問題ありません」

「今日の作業分はこれで終わりだな。予定より時間はあるが、早上がりといこうか」

「作業員が喜びます」

 

 基地では重機の作動音が響き、建築会社とその従業員。そしてその作業を見守る日防軍士官が基地全体の設計図や工程表を片手に勤しんでいた。

 

「おい。監督官が今日はもう早上がりしていいってよっ!!」

「マジでっ!? 今日はしこたま酒が飲めるなっ!!」

「明日も作業はあるんだ。二日酔いしない程度に抑えろよ?」

 

 基地の周りには建築会社用のプレハブ住宅が佇んでいる。

 日本人も居住しているが、作業員としてフェン国民もかなりの数が住んでいた。

 

「何だお前たち。まだ夕方には早いぞ。作業はもう終わったのか?」

「何か、今日の仕事が予定より早く終わって早上がりになったっス♪」

「そうか。時間が時間だから冷えてないが、飲んでいくのか?」

「お願いします。あと漬物もお願いします」

 

 ゴトク平野という不毛の大地に軍事基地が設置され、その造成に労働者が集まるとなると、商魂逞しい者はすぐに行動を始めた。

 

 まず初めに荷馬車で運べる酒樽や保存食品を中心とした往年の屋台(昭和でよくある物)のような出店が現れ、そこからさらに換金業者や問屋の建物が幾つか建った。そこからはあれよあれよと建物が増えていき、今ではちょっとした集落が形成される規模にまで大きくなっていた。

 

 基地の完成すらまだまだ先だというのに、基地周辺の賑わいは日を追うごとに拡大していった。

 

 日防軍将兵も夕方や休みの日になると、フェン人が経営する居酒屋に足しげく通うものも出てきた。

 

 そのお陰なのか、日本人とフェン人による相互交流が進み、フェンの市井では“日本人はあのパ皇より強いのに、それを鼻にかけることもなく親しみやすい”という地に足が付いたような評価が増えている。

 

「あれ? 現場監督じゃないですかっ!」

「テイシャーとカッセイモンか? こんな時間から酒盛りか、明日も明日で沢山仕事があるんだぞ?」

「わかってますって……現場監督(日本人)はこの後どうするんですか?」

「アマノキに行く用事ができた」

「現場監督は大変っすね」

 

 何時もより早い酒盛りでゴトク平野はいつもより大きく賑わっていった。

 そして、その様子をカップを磨きながら観察する従業員がいた。

 

「……」

「おい新人っ!! こっちの器もちゃんと磨けっ!! いつまで同じ奴を磨いているんだっ!?」

「あっ! すいません大将っ!!」

 

 従業員は怒鳴られながらも、自らの職務(潜入調査)を果たすのだった。




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