OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第49話

中央暦1640年 6月7日

-クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ-

 

 湿潤な空気と重い雲が公都を覆う中、国防を司る軍務局では将官級が集まって会議が開かれていた。

 会議室中央には戦況図が設けられており、クワ・トイネ軍。日本軍。ロウリア軍それぞれの駒が置かれている。

 

「ーーということもあり、ロウリア軍は国境周辺での巡回こそ頻繁に実施しておりますが、どの物見櫓でも国境を超えるそぶりはみられないと報告が入っております」

「やはり日本軍の逆襲を恐れていると見て良いでしょうな」

「はい。ロウリア軍の斥候は我が軍の野営地より日本軍の野営地付近に現れることが多いことがわかっています」

「このまま何もしてこなければよいですが、ロウリア軍の展開状態はどうなっていますか?」

「日本軍から提供される写真から解析しますと、国境線に沿って塹壕線や障害物を置いた防衛線を多数構築しています。さらに、国境線に続く街道には投石器などの特技兵や魔導兵団の展開も確認されています」

「ざっとで構わないので、国境線付近のロウリア軍の戦力規模はわかりますか?」

「はい。人数にして14万。内訳として歩兵が6万(弓兵含む)。騎兵5万。特技兵2万。魔導兵1万と見積もられます」

「我が方の戦力は?」

「2万の兵力を国境線の重要な4地点に展開。その間隙に小規模な日本軍(中隊規模戦闘団)の部隊が展開しています」

「説明ご苦労」

 

 ハンキは日防軍の連絡役を務めているランドレイ参謀に質問した。

 

「ランドレイ。日本軍からロウリア領内侵攻計画に関して何か聞いていないか?」

「計画自体はあるらしいのですが、物資集積状態とロウリアに関する不確定情報によって内容は錯綜しているようです」

「うぅむ。日本が本格的に動かない限り我らもどうしようもないのだが……」

「しかし、言ってしまえばその錯綜の裏返しで日本製の兵器を導入できているのです。日本の動きが鈍いなら、我らだけでもジン・ハーク攻略を計画してはどうでしょうか?」

「いくら日本製の装備が強力だからと言って、第1機兵隊は未だ錬成途上だ。1個兵団(連隊規模)分の戦力では大勢を変えられんよ。せめて練度と物資十分な状態の3個騎士団(3個旅団規模)分が揃わなければ……」

 

『クワ・トイネ軍 第1機兵隊編成表

 

機兵隊

 ↓→本部機兵隊

 ↓ ↓→兵団指揮小隊

 ↓ ↓→長距離通信小隊

 ↓ ↓→救護/衛生小隊

 ↓ ↓→野戦整備小隊

 ↓

 ↓→第1機兵隊

 ↓ ↓→第1機兵小隊/指揮小隊

 ↓ ↓→第2機兵小隊

 ↓ ↓→第3機兵小隊

 ↓ ↓→第4機兵小隊

 ↓ ↓→補給/整備小隊

 ↓

 ↓→第2機兵隊※編成は第1機兵隊と同じ

 ↓

 ↓→第3機兵隊※編成は第1機兵隊と同じ

 ↓

 ↓→第4機兵隊※編成は第1機兵隊と同じ

 ↓

 ↓→支援隊

   ↓→機兵小隊

   ↓→重整備小隊

   ↓→補給小隊

 

兵団指揮小隊:構成

人員・16名

装備・LT-9(戦闘指揮用)×1台

  ・LT-9×2台

 

長距離通信小隊:構成

人員・12名

装備・LT-9(長距離通信用)×1台

  ・LT-9(通信処理用)×1台

  ・LT-9×1台

 

救護/衛生小隊:構成

人員・11名

装備・LT-9×3台

 

野戦整備小隊:構成

人員・20名

装備・LT-9(整備器材運搬用)×2台

  ・LT-9×2台

 

指揮小隊:構成

人員・22名

装備・LT-9(戦闘指揮用)×1台

  ・LT-9×3台

 

各機兵小隊:構成

人員・24名

装備・LT-9×4台

 

補給/整備小隊:構成

人員・12名

装備・LT-9(簡易整備用)×1台

  ・LT-9×4台

 

重整備小隊:構成

人員・16名

装備・LT-9(重整備用)×2台

  ・LT-9×2台

 

補給小隊:構成

人員・12名

  ・LT-9×6台

 

人員総数:557人

車両総数:111台

 

『クワ・トイネ軍 機兵騎士団編成予定表

 

機兵騎士団・編成計画

指揮中隊

 ↓

 ↓→第1機兵団※上記機兵団と同じ

 ↓

 ↓→第2機兵団※上記機兵団と同じ

 ↓

 ↓→第3機兵団※上記機兵団と同じ

 ↓

 ↓→輜重隊※荷馬車と護衛

 

指揮中隊

人員・61人

装備・LT-9(野戦指揮用)×1台

  ・LT-9(長距離通信用)×1台

  ・LT-9(通信処理用)×1台

  ・LT-9(補助発電用)×1台

  ・LT-9×8台

 

人員総数:1731人※輜重隊含まず

車両総数:345台

 

 

「少し前から日本製兵器の供給速度は多くなりましたが、3個騎士団分となると、装備が揃うまで最低でも2年。錬成も含めると3年近くは掛かるかと……」

「そうなると、やはり日本軍にどうにかして動いてもらう方が確実かと思います」

 

 参謀の言葉に列席しているノウが口を挟んだ。

 

「しかし、国防はおろか戦争の行く末さえ日本にばかり決めさせるのはどうかと思います。せめて我が軍主導の攻勢計画が必要です」

「ノウ将軍の言っていることもわかるが、正面戦力比で6倍以上の戦力だぞ? 国境線の突破すら困難だ」

「そこはまぁ……。せめて日本軍に陽動でも頼むしか……」

「おいおい。おぬしだって日本軍頼みではないか!」

「しかしハンキ将軍。我々が主導権を執るのと、日本軍が主導するのでは訳が違いますっ!!」

「頼っているという点では変わらんだろっ!!」

「ハンキ将軍もノウ将軍も落ち着いてください。味方同士で言い争いをしても妙案は浮かびませんよ?」

「そうだな。すまなかった」

「いえ、こちらも熱くなって申し訳ありません」

「内容が行き詰ってきたので、一旦小休止を挟みましょう」

「そうだな」

 

 列席者は一旦全員席を外し、あるものは紫煙を吹かしに。あるものは別の部屋に置いてある日本茶を嗜みに行った。

 

 半刻が過ぎ、列席者たちは会議室に集まった。

 

「さてと……。まず軍の戦略方針だが、停戦協定が維持されている限りロウリア軍に対する攻撃はこれを全面的に禁止。そして維持する。ただし、ロウリア軍が矢の一本でも飛ばして来たらそれぞれ担当する戦域の防御に努め、味方や友軍の来訪を待った上で反撃に転ずるという方針だ。何か質問はあるか?」

 

 ハンキの言葉に補給担当の将校が口を開いた。

 

「将軍。兵力増強の案はどうなっていますか?」

「予算を日本製兵器で取られているから、それ以外は戦傷者補充分と新兵分しか増えてない」

「国内の番兵詰所から国内……特に東方やクイラ国境付近において盗賊行為が増えているという報告が来ています。それに対処するために可能なら警備兵増員の要請が各地から届いています」

「うぅむ……。ロウリア国境の防衛も疎かにできないし、日本製兵器を導入した新規部隊の編成もある。増員を求めたくとも当てがないぞ……」

 

 ハンキの苦悩に、ノウがとあることを思い出して意見を出した。

 

「ハンキ将軍。私の友人から聞いた話なのですが、ここ最近隊商護衛だった者で手隙が増えているそうです。彼らを警備兵代わりに雇用してはどうでしょうか?」

「いやしかし、隊商護衛を今から軍の指揮下……特に少数で巡回する警備兵任務に投入するには懸念すべき点が多い」

「では、即時ロウリア軍の攻撃を受ける心配がなく、かつ兵員が多い都市から一定の戦力を各地の警備兵に割き、隊商護衛を都市防衛戦力の穴埋めとして雇用してはどうでしょうか? 必要な軍律はもちろん残留する正規兵が握るという形で統制を図ります」

「まぁ新兵を一から教育するより隊商護衛の方が戦い慣れているだろうが、戦力の低下を招かないかね?」

「確かに短期的に見て戦力低下を招くでしょう。しかし、情勢が不安定な国境から兵力を引き抜くより、政情が安定している公都やマイハークから引き抜いても然したる問題はないかと……」

「……ワノダチ参謀。ノウ将軍の案を検討してくれないか?」

「わかりました。必要経費もろもろ精査してみます」

「頼んだ。では他に議題や報告がないなら会議は終了とする」

 

 ハンキが手を叩きながら閉会を宣言すると、各々元の職場に戻り自らの仕事に励んだ。

 

 

中央暦1640年 6月24日

-OCU日本 とある田舎-

 

 大粒の雨が山に生える木の葉を叩いていた。

 梅雨が訪れた日本各地ではシトシトと雨が降り続いた。

 

「今日の畑仕事は無理そうだ」

「まぁいいさ。農機のメンテする時間が欲しかった所だ」

「予備部品もなかなか手に入らないからなぁ。メーカーの部品製造が進まないらしいぞ」

「クワ・トイネ開拓団向けの部品供給もあるから、中古部品を扱ってる整備工場に在庫がないか聞いてみないとな」

 

 ここは日本の某県にある山奥の村の一つだ。

 転移してからほんの少しの期間で国内の経済活動は急速に低下した。

 1年以上たった現在では、経済の落ち込みも小さいがそれでも緩やかに経済は低下しつつあった。

 多くの労働者が路頭に迷う中、政府は失業者向けの救済策を始動させた。

 『特殊災害時農林畜水産業管制法』……経済の立て直しより、まず国民が飢餓に陥らないようにするための法律だ。

 転移直後に判明した日本国外全域の海洋通商路の消滅という前代未聞の状態において、政府は“流石に”そこまでは想定できていなかったものの、現状を受け入れて鬼の如く『特殊災害時関連条項』を発動させた。

 

 少数の国民や団体が反発したが、現状が絶望的と判断した大多数の国民は政府に従った。

 

 失業者の多くは今までのキャリアをほぼ喪失してしまったが、厳格な配給制度と徹底した農作マニュアルによって、栄養失調になりかけるも何とか飢餓に陥らずに済んでいた。

 

 この山奥の村は立地こそ最悪の部類だが、元々過疎による影響もあり土地は余り気味だった。

 

 最初こそ、古くから住んでいる者たちにとって政府の施策は村に余所者を多数招き入れるということを好ましく思っていなかった。現に、彼らが来た最初のころは住民と移住者の間で喧騒が何度も起きた。

 しかし、現状を受け入れて忍耐強く農作業に励む彼らの姿に村民たちも絆され、今では相互で自宅訪問をするほどの仲にまでなった。

 

「木嶋さん。吉さんが畑で取れた野菜を分けてくれたよ」

「何だって? 後で余ってる芋でも分けてあげないとな」

 

 日本の市場は政府の統制下にあった。しかし、個人が生産した作物に関して制限を設けなかった。

 

 政府の施策は『国内で生産しやすい作物』に集中しているので、ある程度商業規模で作っているならともかく、家庭菜園まで介入する気は起きなかった。

 

「木嶋さん。昼飯できたってよ」

「え? もうそんな時間か」

「もう12時超えてるよ。根詰め過ぎたら体に毒だぞ」

「わかった。すぐ行く」

 

 昔から農家をしていたものと政府の施策でやってきた者たちは、国家の非常事態ということもあり何とか協力関係を構築できた。

 

「今日のご飯はぁ~っと。今日は米と鳥の照り焼きと味噌汁か? 久々に肉が出るのはありがてぇ」

「クワ・トイネから肉や大豆が入って来たけど、まだまだ少ないからなぁ」

「お米は農家の保障政策である程度何とかなってたけど、大豆はなぁ……。味噌と醤油はまだ数年は保つって言われてるけど、砂糖はほぼ手に入らないよ」

 

 日本が転移する半世紀前。OCU設立と併せてアメリカとの関係見直しを図った。

 それまで米軍に頼っていた面をOCU加盟国間で支援体制に切り替えた。

 国防関連以外にも、産業部門でも同様の流れとなり日本国内で生産が困難な物の多くはOCU加盟国内での経済・貿易協定で賄われていた。

 それが転移により完全消滅すると、程度の差はあれ外国産飼料に頼っていた農畜産業者は規模縮小を余儀なくされた。割を一番食ったのは飼料を多く消費する牛や豚だった。

 現状は飼料の大規模供給が不可能ということもあり、供給量に比例した分の家畜しか日本では牧畜が許されておらず、現段階で畜産の自給率は10%を切っていた。

 といっても、少し前から外食産業。特に食肉を多く使うチェーン企業がクワ・トイネ内に牧場を広げはじめている。現状の配給体制ではまだまだ少量と言える量だったが、それでも少しづつ配給内の食肉の割合は増えつつあった。

 ただ、日本食でよく使われる醤油や味噌。砂糖の原料は国内生産だけでは十分とは言えず、さらに配給制を取った現段階でも供給不足のため、多くの日本人の食卓ではほぼ塩だけが調味料となっていた。

 

「そういえば配給の人から聞いた話だけど、夕食は白身魚らしいぞ?」

「あれ? 石油の備蓄か供給量が回復するまで漁業って内海の養殖以外禁止じゃなかったっけ?」

「なんでも最近自動車バッテリーを利用した漁船が出てきたらしい。輸出用の乗用車が港でほこりをかぶってるから、バッテリーを再利用して動かしているらしいぞ」

「それでも、発動機動かすのに燃料は必要じゃないか?」

「いや、電気自動車と同じ要領で外部から電源供給できるようにしたらしいぞ? ただ元が車用のバッテリーだから通常の発動機より非効率だし重くてあまり遠くにいけないらしいけど」

「食卓を豊かにしてくれるのはうれしいけど、バッテリー切れで漂流とかはやめてほしいな」

「ハハハッ。流石にそこまで馬鹿じゃないだろ。それに、今ならソーラーパネルを積んで電気船に仕立てること位できるだろ」

 

 彼の言った通り、漁船用の燃料はそう簡単に漁業組合に回ってこないため、発動機を取り外してバッテリーとモーター。さらにいざという時のためにソーラーパネルを搭載した漁船も登場し始めた。

 

 遠洋漁業は止まっているが、少しづつ沿岸域での漁業は再開され始めていた。

 ただ、漁獲量は転移前の1割を切っているのが現状だった。

 

「おいみんな。天候が回復するから、午後は畑の草むしりだ」

「「「わかりました」」」

 

 食事を終えた彼らは、転移前の豊かな食生活に思いを寄せながら草刈りを始めた。




活動報告的なモノ
製作用で使っていたPCがご臨終となりました。
特に各画像作成用のスプロケットにフライアウトが吹っ飛んだのが痛い(涙
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