中央暦1639年 1月24日
-クワ・トイネ公国 マイハーク-
「大きいっ……!!」
「あんな船。見た事もねぇっ!」
「どこの国の船かしら?」
「白地に赤い円? 見た事ねぇな……」
日防軍巡洋艦『茶臼』は軍船ピーマの案内の下、マイハーク港へと投錨した。
茶臼の大きさにマイハークで働く多くの人間の注目の的となった。
茶臼に乗っていた仲嶋らはマイハーク市庁舎の応接間へと案内された。
応接間にはクワ・トイネの外務卿リンスイと数名の職員が交渉のために訪れていた。
「お初にお目にかかります。日本国外務省から派遣された仲嶋と申します。会談の場を設けていただきありがとうございます」
「クワ・トイネ公国で外務卿を勤めているリンスイと申します」
お互いの自己紹介が済むと会談を始めた。
「早速ですが、我が国は貴国との国交締結及び通商条約を締結したいのです」
「国交締結に関しては歓迎いたします。しかし、通商条約とはどのような内容ですかな?」
「はい。食料をはじめ多くの鉱物資源を適正価格での輸入を希望しています」
「食料……。貴国はとても運がいい」
「運がいいとは?」
「我が国は豊穣の神に愛されており、ちょっとした平地でも種を撒けば作物が育つほど土壌が豊かなのです」
「それはそれは……本国に吉報を届けることができます」
「そうでしょうそうでしょう。他国へ多く輸出できるくらい作物も畜産も多く生産しております。それで、貴国はどれくらいの食料を望んでいるのですかな?」
「そうですね。多ければ多いほど喜ばしいですが、最低でも年間2000万tは必要になります」
「にっ……2000万tですとっ!」
仲嶋の言葉にリンスイは耳を疑った。
「取り乱して申し訳ない。質問なのだが、貴国の人口はどれくらいなのだ?」
「人口ですか? 約1億になります」
「1億!? それはまた大国級の人口ですな……ハハハ」
リンスイは1億という数を聞いて思考が少し混濁した。クワ・トイネはそれなりの国土を有しているが、人口はたった700万だ。隣国であるクイラは食糧事情が悪いため400万。ロウリアは
「仲嶋殿。2000万tという量を輸出することは不可能ではないのだが、如何せんそれだけの量を運ぶ手段がわが国には存在しない。これに関してはどうすれば良いのだ?」
「なるほど。わが国には他国に対して政府開発援助という物があります。代金の前払いも兼ねて、港湾や輸送網の整備を請け負いましょう。貴国が単独でやるよりかなり大規模に開発ができると思います」
「そうですか。それはありがたい。では、通商条約として纏めるが、よろしいかな?」
「今後改訂や追加することが多いので、第一次条約としましょう」
この数日後、正式に日本とクワ・トイネは国交を締結し、第一次通商条約も同時に調印。
日本はクワ・トイネの外務局と商務局と折衝した上で港湾設備や交通網の開発。未開拓地の開墾と作物の生産体制も大馬力で実施していった。
用語解説ではなく余談みたいなもの。
本作中で食料輸入量2000万tという表記ですが、厚生労働省の資料では、輸入する食料品は肥料を含め3200万t。カロリーベースの食糧自給率が約38%です。純粋な食糧と肥料用を合わせると、凡そ5200万tが日本に必要な食糧総量です。
本作中では人口減による消費量の縮減。さらに生産能率の向上により必要な輸入量が減ったという設定です。