OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第54話

中央暦1640年 7月25日

-クワ・トイネ公国 国境近く-

 

 ロウリア軍が越境してから1時間。日防軍部隊は偵察用ドローンを起動させると、ロウリア軍の頭上に展開させた。

 既にロウリア軍先鋒部隊はクワ・トイネ軍と交戦状態に入っており、両軍共まともに陣形を整えずに戦端を開いてしまったため、乱戦の様相を見せている。

 しかし、クワ・トイネ軍掩護のため側面で待機していた日防軍2個中隊が迅速に反応した。

 

「中隊長。RAV(偵察装甲車)からの情報を受信しました」

「よしよし。まだお互い本格的に激突していないな。このまま敵軍正面に突っ込んで戦力が流れ込むのを阻止するぞっ!!」

「了解」

 

 韋駄天っぷりを発揮したのは、装輪装甲車で編制された第61機動連隊/第2大隊/第2中隊だ。APC(装輪式兵員輸送車)6両。MCV(装輪戦闘車)2両。WAP2機。SPAAGV(装輪式対空自走砲)1両。RAV(偵察装甲車)1両の合計10両と2機が不整地で発揮できる最大速度で突き進んでいた。他にMGV(機動火力車)2両とCRV(戦闘救護車)1両が編制されているが、一緒に突っ込まず後方で待機させている。

 

 そして、彼らと同じように突進する集団がクワ・トイネ軍を挟む形で進んでいた。装軌車両を中心に編成された第41機械化大隊/第1中隊である。

 IFV(歩兵戦闘車)6両。MBT(戦車)2両の計8両が丘陵地帯を進んでいる。他にSPMT(自走迫撃砲)2両。SPAAG(自走対空砲)1両。RAV(偵察装甲車)1両CRV(戦闘救護車)1両が編制されているが、駐留地点で待機している。

 

「中隊長。機動中隊の偵察情報を受信しました」

「見せてくれ……機動中隊は火中に突っ込むか……」

「我々も突っ込みますか?」

「こっちはキャタピラなんだ。タイヤと同じ速度は出ないよ。それより、自走迫に照明弾を発射するよう命令。乱戦になったら敵味方判らなくなるぞ」

「わかりました」

 

 

「死ねっ!! 亜人共」

「うるせぇっ!! さっさと死に晒せっ!!」

 

 ガキンガキンっという金属同士がぶつかる音が響いていた。

 防衛線を敷いていたクワ・トイネ軍と軽装で一足先に突っ込んできたロウリア軍が戦っている。

 

 全体の戦況は、戦列をしっかり敷いているクワ・トイネ軍に優位だ。遮二無二突っ込んできただけのロウリア軍兵士を次々と切り倒している。しかし、クワ・トイネ軍側も準備不足な面もあり、予想外な所から吶喊するロウリア兵に肝を冷やしている。

 しかも、参入する戦力が増えると不利になるのはクワ・トイネ側だ。

 クワ・トイネ軍は遅滞戦闘を繰り返しながら戦列を少しずつ厚くしていき、ロウリア軍が突破できないように動いている。

 

 面倒くさいのはこの暗さだ。篝火こそ焚いているが、明かりが届かないところから敵が突撃してくるので、クワ・トイネ軍兵士はいつもより緊張を強いられている。

 

 ロウリア軍とクワ・トイネ軍が鍔迫り合いを繰り広げていると、いきなり空が明るくなった。

 両軍とも、夜の闇を打ち消すほどの明るさで辺りを照らす“それ”(照明弾)に視線を奪われた。

 

「あれはなんだっ?」

「誰か光天魔法でも使ったのか?」

 

 誰もがほんの数舜。その光に目を奪われるが、目の前の敵が居なくなったわけではないので思い出したように敵に向かって武器を振り下ろした。

 

 ロウリア軍の散発的な動きにクワ・トイネ軍は苦しめられたが、そこに突貫する存在が現れた。

 低いうねり声(ディーゼルの音)が戦場に響くと、ロウリア軍の血の気は奪われ、逆にクワ・トイネ軍の士気は高まった。

 

「日本の鉄馬車だっ!! 逃げろぉっ!!」

「騎兵隊の到着だっ!! 戦列を組み直せ。ロウリア軍を追い立てるんだっ!!」

「中隊各車。接近中の敵を狙え」

 

 装甲車群が戦場に到着し、夥しい銃撃音が響き渡ると蜘蛛の子を散らすようにロウリア軍は逃げ出し始めた。

 

「クソッ!! 覚えてやgーー」

 

 運悪くロウリア軍と装甲車の板挟みに合ったロウリア軍の内、逃げ出そうとした兵士は更に不運が重なった。突進してきた装甲車に吹き飛ばされたのだ。

 

 腕や背骨が変な方向にひん曲がったそれを見た他のロウリア軍兵士は、突っ込んできたときの威勢を完全に喪失し、槍や小銃で取り囲んできた相手に武器を捨てて両手を高く掲げた。

 

「こっ、降伏します。だから許してくれぇ……」

 

 次々と武器を捨て投降するロウリア兵を確認したクワ・トイネ軍兵士や日防軍兵士は武装解除と収容を開始した。しかし、その中に厄介な存在が含まれていた。

 

「ヒヒヒ……そうか。こんな時に使えばいいのかっ!!」

「おい貴様。何をやっているっ!?」

 

 明らかに見た目の悪い(盗賊みたいな)ロウリア軍兵士が淡い光を放つ石を懐から出し、両手で押さえつけると近くにいた兵士共々爆発して吹き飛んだ。

 爆発は3箇所で発生し、捕虜収容に動いた兵士や仲間すら一緒に吹き飛ばした。

 

 巻き込まれた兵士は無くなった腕を抑えたり、目に入った破片にもがき苦しんでいる。

 

「どうしたっ!?」

「ロウリア兵がいきなり爆発したぞっ!!」

「そんな馬鹿なことがあるか!?」

「ロウリア兵が爆弾を持っているぞ。離れろっ!!」

「自爆を狙っているっ!!」

 

 近くで爆発が起きたとなれば、手順通りに収容作業に勤しむ兵士も警戒し始める。

 両手を縛ったロウリア兵を蹴飛ばし転倒させ、急いで安全な距離を取ったのだ。

 

「武器をすべて放棄せよっ!! 指示に従わない場合。兵士ではなく罪人として射殺するっ!!」

「わかった。わかったからちょっと待ってくれっ!!」

 

 ロウリア兵の一人がズボンからごそごそと何かを取り出した。それは淡い光を放つ石を四角いブロックでサンドイッチにしたような見た目の物だった。

 このロウリア兵は吹き飛んだ他の兵士と同じように使い方“だけ”を教わったが、これが何なのかはわからなかった。そして、身近な仲間がそれを使って吹き飛ぶ姿を見て何なのかを察したのだ。もはや、彼にこれを使う勇気はない。

 

 手放したそれを確認したクワ・トイネ兵は槍の先端で軽く小突いたが、何も起きない。

 ロウリア兵に槍を向ける別の兵士が叫ぶように問いただした。

 

「おい。これはどうやって使うんだ!?」

「上か下のブロックを回すんだ。そしたら作動すると言われた」

 

 兵士は半信半疑でそれを見るが、どうすることもできない。

 

≪どうした? 手を貸そう≫

 

 ドシンドシンと音を立てて近づいてきたのは、機動中隊所属のヴァンツァーだった。

 機動中隊所属の小隊長が気を利かせて呼び寄せたのだ。

 

「荒木。すまないがこれを作動させてくれないか?」

≪……これが本当に爆弾なら、最低でも手首から先がなくなるんじゃないか?≫

「その時は損害報告で修理するだけだ」

≪ヴァンツァーのマニピュレーター(手指構造の機械)は交換に時間がかかるんだがな……≫

 

 荒木はWAPに装備してあるMG(マシンガン)を横に置き、ロウリア兵が言うブロック状の爆弾を持ち上げた。作動する気配はない。

 

≪よし。作動させるぞ。みんな距離を取ってくれ≫

「もう既に取ってる」

 

 荒木は小隊長の素早さに呆れを抱きつつ、マニピュレーターでゆっくりとブロックを回した。

 途端に強く光ったかと思うと、強い閃光を放ちながら爆発した。

 

≪どうやら、確かに爆弾のようだな≫

「そのようだな。おいっ! 連隊本部に今のことを報告してくれ。あと、他にブロック爆弾を隠し持ってないか確認するんだっ!!」

「「「了解」」」

 

 荒木は、明らかに動かしずらくなったマニピュレーターの作動確認をしつつ、MGを拾い上げた。

 

 日を跨ぐ頃には捕虜収容作業もほとんど終了し、戦いの喧騒が嘘のように静まり返っていた。また、ロウリア兵が作動し損ねたブロック爆弾も複数個回収することに成功し、安全に調査するため捕虜と共にエジェイへと送られた。

 

 ロウリア軍の越境という事実に他の戦域の部隊は防御態勢を取り続けた。

 日防軍とクワ・トイネ軍は夜通し厳戒態勢を続けたが、ロウリア軍がさらに越境することはなく、結果的にそのまま夜明けを迎えた。

 

 

 前線が緊張している最中、朝焼けがクワ・トイネに差し込んみ、とある公都の邸宅で男が魔信で信号を送っていた。

 

「……時は来た。英雄は立ち上がれり。繰り返す。英雄は立ち上がれり」

 

 男は魔信の受話器を置くと、レンガ(・・・)を体に巻き付けて準備を整え、政府部会が行われている公館へと向かった。

 

中央暦1640年 7月26日

-クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ-

 

「ーー事態を報告させていただきます」

 

 公都クワ・トイネは戦時とは言えないほど活気に満ちていたが、急遽集められた政治部会の空気はとても重かった。

 最初に口を開いたのは軍務卿だった。

 

「昨日夕方。講和会議終了のほぼ直後、国境付近のロウリア軍陣地で複数の爆発が突如発生。その後、ロウリア軍が越境し我が軍の部隊へ攻撃しました。ただ、日本軍の協力もあり迅速にロウリア軍の撃退に成功しております」

「それはよかったのですが、被害の方はどうなっていますか?」

「はい。詳細は確認中ですが、防衛線全体が崩れるような損害は出ていないとのことです」

「それはよかった。軍としての見解と今後については?」

「如何せん事態が昨日ということもあり、いまだ軍の公式な見解は定まっておりません。今後につきましても、本日午後より日本軍との合同作戦会議を実施して方針を決めることになります」

「わかりました……」

「カナタ首相。何かほかにありますか?」

「いえ、如何せん私も今までの状況に甘んじていたと反省していたところです。日本軍がいるから良いものを、既に停戦は破られていますし、それに気になる情報が……」

「その気になる情報とは、ノウ将軍のことですか?」

「えぇそうです。まさか実績ある将軍がこのようなことをーー」

 

 カナタが憂鬱気に語っているといきなり会議室の扉が開かれ、武器を持つ人間が多数入ってきた。そして、それらの先頭に立っていたのはノウだった。

 外務卿や財務卿。議員達はノウが入ってきたことに驚いていたが、カナタと軍務卿だけは全く動じていなかった。

 

「ーーノウ将軍。丁度あなたのことで軍務卿と話をするところだったのですよ」

「ほぅ。つまり、私がここに来ることを予知していたということですかな?」

「えぇまぁ。あなたの噂が風に乗って偶然にも私の耳に入りましてね」

「そうですか。どのような噂か存じませんが、一先ず政治部会の皆様全員を拘束させていただきます」

 

 ノウの言葉に呼応するように、周りの兵士?たちが政治部会のメンバーを縛り始めた。しかし、軍務卿とカナタだけはつまらなさそうにお茶を啜った。

 

「はぁ。軍務卿。これは本気のようですね」

「致し方ありませんな……せいっ!!」

 

 軍務卿は空になったカップをノウに投げつけると、ノウはそれを払いパリンッと音を立てて割れた。

 その直後、屋根からカキンッという音を立てながら、円筒形の物が落ちてきたかと思うと、強い閃光と甲高い音を辺りに撒き散らした。

 

「グオッ!!」

 

 ノウ達はあまりに強い閃光に目を覆た。そして、窓や屋根から明らかに人が入ってくる気配を感じ取った。

 

 パスッパスッという音が響くと、ノウが連れてきた兵士が次々と倒れて行った。

 

 ザザッという足跡が横を通り過ぎて行くと、何者かにノウは押さえつけられ、床に組み伏せられた。

 あまりの眩しさに目を開けられないノウの姿を、軍務卿がかなり余裕を持って眺めていた。

 

「ノウ将軍。まさか貴官の話が届いているというのに、何の対策をしていないとでも思ったかね?」

「くっ!!」

 

 ノウの視界に入ったのは、剣を構える軍務卿と全身を黒い装備で身を固めた兵士(日防軍特殊部隊)たちだった。

 

「さて、君の目論見は失敗したようだが?」

「フッ……ハハハッ」

「何がおかしい?」

「まさか、この程度で失敗と申されても……我々『憂国騎士団』の意思はその程度で折れることは断じてないっ!!」

 

 ノウは大量に用意したレンガ状(・・・・)の何かを作動させた。そして、その場にいたすべての人を爆轟と共に消し飛ばした。

 

 

 政治部会が行われている公館が吹き飛んだことを遠巻きに観察している男がいた。

 そして、男は魔信で仲間に連絡を送った。

 

「……あいつ(ノウ)は役目を果たしたな……各隊へ通達。石垣は崩れた。繰り返す。石垣は崩れた」

 

 これは、クワ・トイネの歴史において『英雄の反乱』と言われる内戦の序曲となる一幕だった。

 

 同日。公都クワ・トイネ市内では公国軍と反乱軍による壮絶な市街戦が勃発。公国軍は寡兵ながら反乱軍相手に善戦したものの、指揮系統の混乱と5倍以上の戦力差で敗北。公都内の主要施設はすべて占拠され、市外へ続く街道という街道は全て閉鎖された。

 公都クワ・トイネの市民たちは、戦争の火種が身近に迫ったのかと恐怖し、眠れぬ夜を過ごすのだった。




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