OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第58話

中央暦1640年 8月2日

-クワ・トイネ公国 クワ・トイネーエジェイ間沿線-

 

「ーーこいつは酷いな……」

 

 脱線事故現場に到着した日防軍兵士が辺り一面の惨状に率直な意見を述べた。

 

 クワ・トイネでよく見られる風景といえば、作物や草原が視界一杯に広がることが多い。だが、ここにそのような牧歌的な光景は一切見られなかった。

 周囲に焼け焦げた金属片が広い範囲で散らばり、すさまじい爆発で線路が50mも断線していた。さらに、燃料が燃えたか被ったかは定かではないが、作物に薄っすらと油臭い匂いがこびり付いている。

 極めつけは、まるで隕石でも落ちたかのようにクレーターと化している爆発跡の存在だ。

 列車を牽引していたディーゼル機関車は脱線の衝撃と爆発によって焼け焦げており、窓ガラスはすべて吹き飛ばされていた。

 

 現場に到着した彼らは、ギムで待機していた『第11戦術機甲大隊』と『第101重工兵大隊』からそれぞれ1個中隊ずつ分派された臨時のチームだ。

 先月起きた脱線事故の確認と復旧のため、1週間かけてやってきたのだ。

 

 現場に到着したそれぞれの中隊長は現場の凄惨さに頭痛を覚えた。

 重工兵中隊を率いる番場 泰樹少佐は煤だらけの現場を横目に、まず線路の状態を確認した。

 すぐ後ろには、ヴァンツァー中隊の中隊長を務めている宍戸 隆少佐がバイザーを抱えて辺りを眺めている。

 

「番場中隊長。この状態でどうにかなりそうですか?」

「ーーエジェイから修理用の線路を持ってきたが、線路のバラスト周りを直すだけで丸3日はかかる。そこから線路の再敷設となると2週間といったところだ」

 

 番場はここへ派遣される前、河内(21師団長)から事故現場の状態を写真を含めて渡された。

 酷いだろうと予想はしていたが、実際に見ると予想を上回る被害が辺り一面に広がっていた。

 

「ひと先ず、街道と線路上の残骸を動かす必要がある。宍戸少佐。すまないが線路上の脱線車両を頼む」

「わかりました」

 

 宍戸は背後でアイドリング状態のWAPに乗り込んだ。

 

 護衛の装甲車は被害地域を包むように展開。反乱軍がやってこないか警戒を始めた。

 ヴァンツァーもレーダーパック持ちは周囲の警戒に入り、残りの機体は残骸の撤去を始めた。

 

 現場から離れた農道では、事態をよくわかっていない農夫たちが日防軍を眺めながら農作業に精を出していた。

 

 

 彼ら(日防軍)が到着してから数時間経ったころ、北東からゴォ~という音が響いて来た。

 マイハーク日防軍基地から飛び立ったAT-41の編隊だ。

 軽くこちらにバンクしながら、そのまま上空を通過していった。

 

≪エストック4からエストック1。あれが通過したってことは敵が近くにいるっていることですか? 送れ≫

「エストック1からエストック4。通信が入っていないということは、ここから離れた位置なんだろう。各エストックは作業を継続。オーバー」

 

 宍戸はショットガンを背中に担ぎながら、線路に中途半端な状態で脱線している貨車の撤去を続けた。

 

 

 番場たちが到着して4日目。線路周辺の爆発跡は何とか埋め戻され、新しいバラストと線路が届けば線路が再敷設可能なところまで修繕できた。ただ、鉄道会社の保線部門は公都側に置かれていたため、保線資材はおろか、鉄道会社の作業員一人現場にいない。

 

 番場たちは近くに野営地を設営し、交代で警戒と休憩を取っている。

 

「ーーこれで俺たちができることはなくなったが、どうしたもんかね。宍戸少佐」

「前衛部隊の私に聞かれても……HQ21かマイハークHQから何か次の指示は届いてますか?」

前線(HQ21)の方は1週間前の越境が嘘みたいに静からしい。ただ、別の補給線構築に忙しいそうだ」

「でしょうね……このままここに留まることになりそうですか?」

「それはわからん。CROと輸送部隊が合同で線路の資材を運搬する計画を立てている。それまでは周辺を監視しつつ待機だ」

「わかりました」

 

 2人がコーヒーを飲んでいると宍戸の部下が野営テントに入ってきた。

 

「隊長。使うのに問題なさそうな物資が纏まりました」

「ご苦労。どれくらいの量になった?」

貨物車両(コンテナ車)8両程です。小銃弾や機関砲弾。食料の一部や整備部品などです。ただ、断線した線路のクワ・トイネ側なので、そのまま運ぶことができません。エジェイ側から貨物編成一式を呼ぶ必要があります」

「先頭の機関車が持ってかれているからな」

「それに、この脱線事故は反乱軍による意図的なものだ。救援用の編成に護衛を付ける必要があるが、前線からさらに戦力を引っぺがす必要がーー」

 

番場が話していると、また宍戸の部下が入ってきた。

 

「隊長。報告します。HQ21よりエジェイから線路敷設資材を積んだ列車が護衛と共にこちらへ出発しました」

「噂をしたらなんとやらだな。いつ頃到着するか聞いてるか?」

「道中の妨害次第ですが、早ければ明日の昼頃には到着する予定です」

「わかった」

 

 宍戸の部下は敬礼すると、乗機のヴァンツァーへと戻った。

 

「宍戸少佐。周辺が安全か警戒してくれないか? こっち(重工兵中隊)は受け入れ準備を進める」

「ここを中心に警戒すればいいですか?」

「いや、エジェイ方面の線路沿いを頼む」

「わかりました」

 

番場と宍戸はそれぞれの職場に戻り、作業を始めた。

 ヴァンツァー中隊は周辺と沿線上の警戒に。重工兵中隊は撤去しきれていない残骸の解体と移動に専念した。

 

 翌日。予定より30分ほど早い時間に列車が到着した。

 列車を見た馬場はその編成に驚愕の眼差しを向けていた。

 

「ーーまさかコンテナ車に装甲車を括り付けるとは思わなかった」

 

 列車の標準的な編成だと、機関車の先頭に何も連結されない。

 機関士の視界を妨げるからだ。ただ、現場にやってきたきた編成は、MCV(機動戦闘車)載せた(・・・)コンテナ車を先頭に機関車。客車。通常の貨物車。最後尾にAPC(兵員輸送車)を載せたコンテナ車。その1両前にSPAAGV(装輪対空自走砲)を載せたコンテナ車が連結されていた。

 河内(21師団長)やHQ21の参謀たちの危機感の表れと言えるだろうが、まさか臨時の装甲列車がここに誕生するとは思わなかった。

 

 列車から降りてきたCROの保線担当作業長と臨時護衛小隊の隊長が番場の元に訪れるた。

 

「ーーお疲れ様です。番場少佐。機動防空中隊から派遣された栖川中尉です」

「あぁ。お疲れ中尉。このコンテナ車に乗ってる装甲車はここで降ろすのか?」

「いえ、師団長から“燃料の無駄だから降ろす必要はないっ!!”と伝えられています」

「そうか。追加の部隊が来るかどうか聞いているか?」

「今のところはありません。我々も保線作業が完了次第。一度エジェイに帰還するよう命令を受けています」

「そうか。わかった……このままクワ・トイネに進発することになりそうだな」

 

 栖川の言葉に、番場はCROの保線作業員が敷設作業を静かに眺めることとした。

 

 

中央暦1640年 8月8日

-クイラ国 首都バーダット-

 

 弱いながら砂嵐が吹き荒れるクイラ王国バーダット。

 政府公館も兼ねているバーダット城の謁見の間では、国王の眼前によく磨かれた鎧を身に着けた軍人が直立不動で王の言葉を待っている。

 今、その将軍に対してクイラ王国国王テルグラント・クラファール7世による出征の儀が執り行なわれていた。

 

「ーーサリヴァン・アリカジャール。其方を派遣軍指揮官に任ずるっ!! 同盟国クワ・トイネ公国が危機に陥っておる。其方の勇智によってわが友の混乱を速やかに鎮めるのだっ!!」

「このサリヴァン・アリカジャール。陛下の命に従い。速やかにクワ・トイネの安穏を回復いたします」

「うむ。期待しておるぞ」

 

 アリカジャールは回れ右をすると、真っすぐ謁見の間から退室した。

 

 クイラ王国はクワ・トイネ内乱の報を聞くと、最初はロウリアの調略を疑った。しかし、講和会議の直後以外。クイラ-ロウリア国境に大きな動きがみられないことを確認したクイラは、クワ・トイネの内乱を鎮定するため派遣戦力の編成に着手した。

 

 流石に国境から戦力を抽出し派遣することはできない。ただ、運がいいことに日本との交易でクワ・トイネに出稼ぎに行っていたクイラ国民のかなりの数が帰国していた。

 日本のゼネコンや石油会社に勤めている労働者から志願兵を募ることはできないが、それ以外の国民から募ることは十分可能だった。

 だが、この新規の志願兵はあくまでバーダットの治安維持用の戦力だ。派遣する本命の戦力は常設戦力を投入する方向で話は決まっている。

 

 クイラ王国派遣軍の規模は1万。クワ・トイネで内乱が起きてから10日で編成するという迅速さをクイラは発揮した。

 

 アリカジャールは謁見の間から退室した後、下の階にある会議室に足を運んだ。

 そこには参謀数名と副官。さらに日防軍(・・・)から駐在武官の三戸部 秀一少佐が待っており、アリカジャールが入ると全員敬礼を送った。

 

 アリカジャールは会議室中央に立つと、獣人(角牛人)とは思えぬ静かな口で言葉を発した。

 

「諸君の参集に感謝する。陛下よりクワ・トイネ内乱鎮定の命が下った。三戸部少佐。内乱の現状説明を」

「わかりました」

 

 三戸部は用意したスクリーンにロデニウス大陸全体を映した。

 クイラ軍将兵達は現れた光る絵画に見惚れてしまうが、それぞれ職務を思い出して意識を引き締めた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「まず我々がいるのがこの青い点で描かれているバーダット。赤い点が内乱の中心である公都クワ・トイネ。緑色の点は右からマイハーク。エジェイ。ギム。そして我が軍が占領するジン・ハーク北の港。黄色はロウリアの首都ジン・ハークです。ロウリアとの戦争は、地図の黄緑色の線が前線であり、現状膠着状態が続いています。この赤い円環はクワ・トイネ反乱軍のおおよその活動範囲を示しています。概略は以上です」

 

 三戸部の説明が終わると、クイラ派遣軍の参謀が口を開いた。

 

「三戸部少佐。クワ・トイネ軍と日本軍(日防軍)の現状と今後の動きをご説明ください」

「わかりました。現在クワ・トイネ軍は投入できる全戦力をマイハークに集結中です。一部のクワ・トイネ軍部隊はすでに公都包囲に動いています。対して、我が日防軍はその戦力を国境に展開させています。なので、現在クワ・トイネに増援戦力を編成。順次マイハークへの輸送を始めています。ただ、部隊を集結させるのに最低でも2か月間必要です」

「わかりました。アリカジャール将軍。我が派遣軍はどのように動く予定ですか?」

「うむ。まず日本が用意してくれた輸送船でマイハークに軍を移動。戦力が整い次第。公都クワ・トイネの包囲網に参加する。以後。クワ・トイネ軍の指揮下で行動することとなる」

「将軍。到着後にクワ・トイネ軍の指揮下に入るのは盟約で決まっているのは存じています。しかし、その総指揮を執る将軍は信頼できるのですか?」

「貴官の懸念は私も抱いている。三戸部少佐。現在クワ・トイネ軍の総指揮を取っている者を存じておりますか?」

「はい。現在クワ・トイネ軍の全権を握っているのはリビオ・デュラム将軍です。ご存じですか?」

「デュラム将軍なら存じています。クワ・トイネ軍の中では珍しく。騎兵や飛竜を中心に機動戦を重視する指揮官です」

「そうか。では編成は重装歩兵を重視した方がいいな。軍需監に重鎧と大楯を要請しておけ」

「わかりました」

「他に何か質問があるものは? ではこれにて会議は終了する。三戸部少佐。第1陣の出発日時は何時頃になりそうですかな?」

「はい。現在海運会社に高速カーフェリーの貸与を要請しています。早ければ1週間後。遅くとも10日後にはバーダット港に到着。そこから給油や荷役。将兵の乗降など3日ほど時間がかかると考えています。バーダット出港後は約3日でマイハークに到着するので、2週間から3週間で第1陣をマイハーク入りさせることができます」

「わかった。三戸部少佐の言ったとおり、第1陣は1週間後にバーダットを出発できるように準備を開始せよ」

「「「ハッ!!」」」

 

 この日、クイラ王国派遣軍最初の会議は閉会した。




解説はありません

追記
画像を忘れていたので追加しました。
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