OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第64話

中央暦1640年 10月5日

-クワ・トイネ公国 マイハーク日防軍基地-

 

 曇りがちな天気がマイハーク全域を覆う中。厳戒態勢のマイハーク日防軍基地の司令部庁舎に三軍それぞれの指揮官(志麻・デュラム・アリカジャール)が集まっていた。

 

「時間になりましたので『公都奪還作戦』の最終確認を行います」

 

 司会進行役の日防軍士官が音頭を取った。

 部屋は暗くなり、正面モニターに公都クワ・トイネの全体図が現れた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「作戦開始は10月8日0700。航空機により公都全域にビラを配布。降伏が受諾されない場合72時間後の11日0700に3軍合同部隊はそれぞれ攻勢発起点より進発。公都各区画を綿密に制圧しつつ、敵が籠城している官公庁街『クワ・トイネ公国軍軍務局』の制圧および反乱軍せん滅を狙います。なお、都市や住民に対する損害を局限するため、空爆及び砲撃は実施いたしません。作戦の流れは以上です。次に、各軍の作戦の流れを説明してもらいます」

 

 最初に話し出したのは、クワ・トイネ国内の日防軍を統括する志麻だった。

 

「まず我が日防軍は『クワ・トイネ中央駅』とエジェイ側沿線を起点に主要街道に沿って公都の北西側に展開。大型の橋梁が掛かっている街道から『中央官庁街』を目指します」

 

 志麻が座ると、次はデュラムが話し始めた。

 

「我がクワ・トイネ軍は公都の南方と南東部に陣取り、11日0700より進軍。戦列を展開し住民を避難誘導しつつ反乱軍を撃退。その流れで『中央官庁街』を目指します」

 

 デュラムが話し終えると、アリカジャールが静かに口を開いた。

 

「我々クイラ軍は日防軍の鉄騎馬(戦車大隊)と共に公都の東に展開。11日0700より進軍を開始し、『中央官庁街』まで進軍します」

 

 アリカジャールの説明が終わると、椅子に腰を下ろした。

 

『公都奪還作戦『オペレーション・ペストクリーナー』

参加兵力

 

日防軍/第23任務旅団(JDF23TB)

第11機械化連隊

前線指揮中隊

 ↓ ↓→第1機械化大隊

 ↓ ↓→第2機械化大隊

 ↓ ↓→戦車大隊

 ↓ →→WAP中隊

 ↓

 第22機甲連隊

  ↓→第12戦車大隊※クイラ軍と共に進軍

  →→WAP中隊

 

クワ・トイネ軍/デュラム軍団(CTA)

 ↓→第1軍団※合計1万人

 ↓ ↓→重装歩兵隊

 ↓ ↓→第1歩兵隊

 ↓ ↓→第2歩兵隊

 ↓ ↓→第3歩兵隊

 ↓ ↓→騎兵隊

 ↓ ↓→魔導隊

 ↓ →→特技隊

 ↓

 ↓→第2軍団※第1軍団と同じ

 ↓ 

 ↓→第1機兵隊※連隊規模機械化部隊

 ↓

 ↓→連合ワイバーン隊※

   ↓→第1飛竜隊

   ↓→第3飛竜隊

   →→第5飛竜隊

 

クイラ軍/派遣軍(KEA)※合計1万人

 ↓→第1重装歩兵隊

 ↓→第2重装歩兵隊

 ↓→第1軽装歩兵隊

 ↓→第2軽装歩兵隊

 →→偵察騎兵隊

 

「各国軍の説明は以上になります。何か質問はありますか?」

 

 最初に質問したのは、3軍の中で最も階級が高いながら、最後に戦列に参加したアリカジャールだった。

 

「可能な限り公都や住民に被害を出さぬようビラを撒くのは理解できるが、反乱軍がビラ程度で降伏しますかな?」

「参謀部のレポートでは“降伏しない”と結論が出ています。このビラ散布は反乱軍に対する動揺を誘発することと住民に対する避難勧告が目的です。よろしいでしょうか?」

「相手の心に対する作戦ということですか……我が軍では思いつかない作戦です」

「我々はそのような心の変動を誘う作戦を心理作戦と呼んでいます」

「心理作戦……興味深い戦い方ですな」

「他に質問がある方はおられますか?」

 

 次に手を挙げたのはクワ・トイネ軍のランドレイ参謀だった。

 

「失礼ですが、日本には遥か遠方から爆轟を起こす兵器を多数保有しています。公都奪還に投入しないのはなぜですか?」

「砲兵隊や爆撃を行わない理由はいくつかあります。まず敵が潜むからと言って都市に砲撃や爆撃を行ってしまうと、確実に周辺住民に対して被害が生じます。我々の目的は都市の破壊ではなく反乱軍からの都市奪還です。住民に対して被害を生じる行いは目的に反します。第2に都市区画を破壊してしまうと、自らの進撃ルートを塞いでしまい、作戦行動に制約が生じてしまうからです。さらに、破壊した建物は防御陣地に転用することができます。それなら建物を使えるよう制圧した方がいいのです。それに、都市の建物は住民のものです、戦いのために壊したとあってはその建物の住民は喜ばないでしょう。最後ですが、包囲せずに砲撃や爆撃で反乱軍を狙ってしまうと、間違いなく周辺に逃走を始める危険性があります。そうなると、散兵と化した反乱軍の追撃に手を尽くす必要があります。それなら、ネズミ一匹入れないような厳重な包囲網を敷いてから反乱軍の撃滅を狙う方が全体の損害を局限できます」

「日防軍の方が住民の安全と今後の戦いのために腐心していることはよくわかりました。ありがとうございます」

「他に何か質問はありますか? 無ければ連絡会を閉会しますが、よろしいですか?」

「最後にいいかな?」

「どうぞ」

 

 進行役に言葉に反応したのはデュラムだった。

 デュラムは席を立つと静かに語り始めた。

 

「……この度、我が同輩で起こした恥ずべき事態収拾に参陣していただき、軍を代表して御礼申し上げます」

 

 志麻もアリカジャールもデュラムが何を言わんとしているのか理解し、それぞれ回答した。

 

「デュラム将軍。今回の混乱は外国勢力による扇動でした。将軍が気に病むものではありません」

「左様。戦乱を利用し背後から策謀を図るなど言語道断。反乱軍や先導者に我らの結束を見せつけてやりましょうっ!!」

「お二人とも。ありがとうございます」

 

 デュラムは静かに息を吸い込むと、改めて作戦開始を宣言した。

 

「では、公都奪還作戦『オペレーション・ペストクリーナー』を開始いたします。各自所定の準備を始めてください」

 

 会議参加者は全員起立しそれぞれ敬礼をデュラムに送り、連絡会は終了した。

 

 

 司令庁舎で会議が行われている中、別の庁舎でも日防軍士官がせかせかと職務を果たしていた。

 建物の一室では、ブォ~ンという音と廃熱が部屋を支配していた。

 ここは日防軍のロデニウス大陸における情報解析における中央情報処理室(サーバルーム)だ。

 軍の派遣が決定したころ、ロデニウス大陸において海底ケーブルの敷設が進んでいないことを考慮し、ロデニウス大陸に軍用の独立した情報解析プラットフォームを設置した。

 主に各種偵察情報の個別解析と集合解析。敵軍の行動予測や新規作戦の動的経過と成否・損害判定が行われている。それ以外にも、防衛省情報局が集めた情報の解析も行われる。

 情報局のここ最近の大きな目標は、クワ・トイネ内乱の根源と言えるファンブルトン商会(秘匿名称:シンジケートF)に関する情報解析と追跡。そして捕縛だ。

 情報局としては、このような事態に対処できなかったことに屈辱を感じており、日々バトラーたちの所在を掴まんと動いている。

 ロデニウス大陸全域の情報局担当の時岡 宗一大佐の下にシンジケートF担当の天美 仁大尉が報告に訪れていた。

 

「ーー未だバトラーの尻尾を掴めないか……」

「申し訳ありません。内乱発生からクワ・トイネ国内の港から報告が一つも入っていないので、おそらくクイラ国境かロウリア国境に向かった可能性が高いと思われます」

「捕捉できそうか?」

「現状、クワ・トイネ国内全域で怪しい対象を50まで絞っています」

「50か……もう少し絞りたいな。せめて10まで減らせれば実働部隊(空中機動中隊)から臨時の捕縛チームを編成できるんだが……」

「そうなると、あと数か月は情報収集と解析が必要です」

「数か月か……公都奪還の後。戦力の多くは前線である国境線沿いに再配置される。本格的に動けるのはその後だ」

「わかりました。もう少し追跡対象を絞れないかやってみます」

「頼んだぞ。逃げられては目も当てられん」

 

 天美は会釈すると、部屋を後にした。

 

 

 

中央暦1640年 10月8日

-クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ-

 

「ーーブルーガル1からブルーガル各機。紙の雨を降らせろ。繰り返す。紙の雨を降らせろ。オーバー」

 

 朝方。静寂が包む公都の人々は、空を猛スピードで飛んでいく鉄竜(AT-41)の音が轟いた。

 空からパラパラと降ってくる紙の雨に市民や反乱軍兵士の多くが注目した。

 紙にはこう書かれていた。

 

 反乱軍に告げる。

 

 我々クワ・トイネ。日本。クイラの3ヵ国連合軍は10月11日に公都奪還作戦を発動する。

 

 作戦発動前に降伏するならば、降伏した反乱軍兵士の生命と人道を保証する。

 

 降伏しないのなら、いかなる事情があろうとクワ・トイネに弓を引いたことが何を意味するのか覚悟せよっ!!

 

 

 軍務局では、シュタグロフがちょうど回収された紙の一片を読み進めていた。

 

「……この紙が市内全域に降ってきたと?」

「はい将軍」

「他に変わったことは?」

「兵士の間に動揺が広がっています。“あの日本軍がとうとうやって来た”と怯えているものもチラホラと……」

「だろうな。私だって日本軍と戦うなんて馬鹿な真似はしたくない」

「しかし、相手はなぜこのような真似を……」

 

 シュタグロフは参謀の言葉に少しだけ思考を巡らせると、参謀の疑問に回答した。

 

「なるほど。日本は優れた軍備ばかりでなく、悪辣な手段も持ち合わせているということか……」

「将軍。それはどういうことですか?」

「貴官がさっき言っただろう? “兵士の間に動揺が広がっている”と」

「確かに言いましたが、それがこの紙と何が関係しているのですか?」

「うむ。これは今私も初めて認識したが、これは兵士の心に影響を与える戦法なのだろう」

「兵士の心ですかっ!?」

「いくら剣術や弓術の優れた兵士を練成しようと、心の強さは千差万別で目に見えん。それにその在り方は千差万別だ」

「心を揺さぶる作戦とは……日本軍は確かに悪辣ですね」

「まぁ。ロウリア軍にもその悪辣な策を使う奴がいるらしいが……」

 

 シュタグロフが紙を呼んでいると、伝令が駆け込んできた。

 

「将軍。住民たちが我先にと公都から脱出しようと行動しています。市外に続く兵士の数だけでは抑えが効かず。さらに農道や獣道から脱出する住民もいるとのことです。如何いたしますか!?」

 

 伝令の報告を聞いたシュタグロフと参謀は向き合って話を始めた。

 

「これもこの“紙の雨作戦”の一環ということでしょうか?」

「その認識で間違っていない。我々に対する動揺を誘うのと、戦場になる公都から住民を遠ざける役目を担っていたわけだ。とても効果的だ」

「将軍。逃げ出す住民はどうしますか? 切り捨てますか?」

「それでは却って逆効果だ。住民が減ったのなら、住んでいた建物に食料と資材が残っているかもしれん。動ける兵士を総動員して官公庁街に物資の集積と戦力の集結。あと、バリケードの設置も忘れるな」

「わかりました。兵士たちに伝えてきます」

 

 伝令と参謀は執務室を後にした。

 シュタグロフは紙を握りしめながら、静かに思案した。

 

「紙の内容に嘘がなければ、あと70時間は猶予がある。これが嘘だったとしても、反乱軍である我々が正道や騎士道を叫んでも無意味か……。まったく、虚実両面を備えた軍隊というのは厄介極まりないな」

 

 シュタグロフは紙をマッチで火を付けた。

 羊皮紙と違い日本製の紙はインクなどで完全に灰と化した。

 その様を見て、これが自らの運命なのだろうとシュタグロフは感じた。




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