OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第66話

中央暦1640年 10月14日

-OCU日本国 霞ヶ関-

 

 枯れ葉を巻き込んだ冷たい風が全国に吹いていたころ、官邸ではNSCが開かれていた。

 

 重要議題である公都奪還の報告を田澤(防衛大臣)が報告していた。

 

「ーー無事。去る11日に公都の奪還は果たされました」

「それは良かった」

 

 田澤の報告に他の参加者も安堵している。他の反応を確認した田澤は報告を続けた。

 

「増援で送った23旅団はそのままエジェイへ順次移動。国境線を固めている第21師団に合流させます。24旅団もエジェイへ順次移動していますが、国境線防衛は参加せずシンジケートF(ファンブルトン商会)の追撃任務に投入予定です」

 

 田澤の言葉に松河(官房長官)が反応した。

 

「シンジケートFとは何でしたかな?」

「クワ・トイネで内乱を扇動したパーパルディア皇国の諜報機関です。パストル・バトラー以下。組織の中核要因はクワ・トイネの南西に逃走を図っている可能性が高いと統合軍参謀部では解析されています」

「その対象は捕縛できそうなのか?」

「ある程度捕捉はできていますが、今しばらく追加の情報解析が必要です。ただ、24旅団がエジェイ近郊まで前進できるので、追跡と捕縛は迅速に進むかと思います」

「……では、他のクワ・トイネにて反乱軍に参加。もしくは協力した勢力は活動していないと見ていいでしょうか?」

「公都奪還からまだ3日目です。デュラム将軍は集結した軍を各地に展開させ、反乱軍参加勢力の出現。もしくはそれに準じた敵対勢力が存在していないか確認しています。まぁ。そこに関しては日防軍でも無人機を各地に飛ばして情報を収集しています」

「クワ・トイネは議会制で動く国家だが、その中身は貴族の影響が強い。地方の軍閥化には目を光らせる必要がある」

「わかりました。追加で出現した場合は可能な限り迅速に対応するよう志麻少将に伝えておきます」

 

 田澤の報告が終わると、枢木は思い出したように田澤に聞いた。

 

「そういえば、北の港に集結している敵軍の動きはどうだ」

「……今なお戦力の増強に努めています。規模は推定で20万」

「敵戦力の過半数が集結していることになるのか?」

「敵首都に駐留する戦力も勘案しているので、額面通りの戦力を即投入するかは不明です。しかし、ロウリア軍は頻繁に北の港防衛戦力と首都戦力を入れ替えています。さらに以前確認された北の港周辺の欺瞞陣地も以前より規模が拡大しいます」

「敵が北の港奪還に動いた場合。駐留戦力だけで撃退はできるのか?」

「時間はかかりますが、既に反撃計画と共に準備を整えています」

 

『第22任務旅団』

第11師団/第111機械科連隊

前線指揮中隊

↓→第111機械化連隊

↓→第111重工兵連隊※1個大隊欠

↓→第111自走砲兵大隊

↓→第3師団/第31機械化連隊※第111機械化連隊と同じ

↓→第12師団/第121戦術機甲中隊

 

『北の港』洋上待機中※ローテーションで展開

 巡洋艦   1隻

 フリゲート 1隻

 

『北の港』防衛戦投入可能航空戦力※有人機のみ

第2航空団※九州各地に展開

 戦闘機 20機

 攻撃機 8機

 

第4航空団※南西諸島に展開

  戦闘機 24機

  攻撃機 4機

 

第8航空団※四国地方に展開

 戦闘機 16機

 攻撃機 8機

 

 

「……この規模で足りるかね?」

「陸上戦力は数的劣勢は織り込み済みです。防衛計画には海軍や空軍の援護を予定していますので、十分覆せると統合軍参謀部は判断しています」

 

 枢木は田澤が提示した資料に目を通しつつ、それとは別に加藤(外務大臣)に質問した。

 

「加藤大臣。今回の件においてパーパルディアは我が国に何かしているかね?」

「その件ですが、在皇国大使館からの報告では“外部支局が独自の判断で動いたことであり、彼らに対して内乱を誘発するような命令は出していない。しかし、日本とクワ・トイネに甚大な被害を出したことに対し、皇国はそれに対して交渉する席と補償する準備がある”と皇帝自ら伝えてきました」

「トカゲのしっぽ切りか……だが、補償するというなら制裁をするのは控えた方がいいな」

「しかし、我が国はともかくクワ・トイネの立場から安易に補償という形で手打ちをしては、クワ・トイネ内の世論が沸騰する可能性があります」

「在クワ・トイネ大使館からは? クワ・トイネから何かしらの要請があると思うのだが?」

「今のところは何もありません。現状ロウリアとの戦争の真っただ中です。格上相手に強硬な手段は執らないかと思います」

「戦争中であればそうだろうが、ロウリアとの戦争が終結したら、間違いなく動くだろうな。直接だろうが間接的だろうが……」

「では、マイハークのパーパルディア特使には“いかに皇帝陛下が誠実な弁を述べても、それで失ったものは皇国基準の補償で埋め合わせできるものではない。それに、釈明すべきは我が国ではなく、クワ・トイネ公国に対してである。”という風に在パーパルディア大使に伝えるよう伝達し、今しばらく考える時間を稼ぐ方向でよろしいですか?」

「それでいい。後、クワ・トイネ側がこの事態に対して激高しないよう釘を刺しておいてくれ」

「わかりました」

 

 会議は静かに閉幕し、閣僚はそれぞれの持ち場に戻った。

 

 

中央暦1640年 10月20日

ーパーパルディア皇国 エストシラントー

 

 海洋からの冷えた風が市外の建物を撫でている中、その建物では銀髪の麗人であるレミールが不定期に行う密会の最中だった。そして、その相手はもちろんアンヴォフだった。

 

 彼女はお気に入りのお茶とお菓子を口に運びながら、目の前の御仁と話し合っている。

 

「ーーという風にペケット特使は日本から憤然の言を受けたということです」

「そうか。予想よりあっけなく事が終わったものだな」

「まぁ。もとより成功する目処などない計画ですから……。ただ、日本がバトラーの工作を把握していたのは予想外でした」

「工作の存在は仕方ないにしても、私たちに足が付かないようにしてるんだよな?」

「勿論です。直接バトラーを拷問して情報を吐かせても、商会が買い取る商品のほとんどは属国を挟んで取引しています。そう簡単に足が付くことはないでしょう」

「そうか。流石元国家戦略局局長だな」

(まぁ。知る者が知れば、行き着くのは貴女ですがね……)

 

 アンヴォフは愉快そうにお菓子を頬張るレミールを横目に、この計画の終着点を思い描いた。

 だが、この計画の進めるうえでレミールに託していることを思い出した。

 

「殿下。そういえば、陛下の説得はどうなりましたか?」

「ん? あぁ。あのことか……陛下曰く“時期尚早である。もう少し事態を見守ってからでも十分だ”と言われた。陛下にしては及び腰で参っている」

「まぁ。下手な対応を取れば日本が直接我が国に烈火の如く手段を講じる可能性がありますから、致し方ないでしょうな」

「そうなんだ。そこでアンヴォフに相談がある」

「なんでしょう?」

「陛下の決断に不満を持つ者が他にいないか探してほしい」

「理由の方は? まぁ言わなくても察しはつきますが……」

「如何せん私の言葉だけで陛下のご意思を変えることは難しい。他の……できれば有力諸侯や将軍の意見も必要だと思う」

「いいでしょう。殿下に考えと近しいものや賛同する者を探します。ただ、私も実権を離れた身ですから、探し出したものを動かすために何か利益がなければ賛同以上は得られないでしょう。それ()に何か充てはありますかな?」

「伊達に監査室業務はしておらん。いくらでも“融通”できる」

「それはありがたい。いい交渉材料になります」

「そうか。では頼んだぞ」

「お任せください。殿下」

 

 レミールは上機嫌なアンヴォフを玄関から見送った。

 アンヴォフは目の前の麗人(見た目だけの愚か者)に真意を悟られないよう次の策を考えるのだった。

 

 

中央暦1640年 10月28日

-ロウリア王国 北の港-

 

 そろそろ日が落ちようという時間。『第22任務旅団』団長の荒谷は仮司令部で書類業務に励んでいる中、当直参謀が駆け込んできた。

 

「荒谷団長。周辺の敵軍に動き有りっ!!」

「ーーとうとう来たか……警報を出せ。後、沖合の『茶臼』と市ヶ谷に敵襲を連絡しろっ!!」

「わかりましたっ!!」

 

 ドタドタと慌ただしく通信参謀が部屋を退室していった。対して、荒谷は落ち着いて腰に拳銃を用意すると、仮整備場に置かれたAFCVへと向かった。




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