OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第67話

中央暦1640年 10月28日

-ロウリア王国 北の港周辺地帯-

 

 ロデニウス大陸から日の光が消えようという時間。ロウリア王国『北の港』の周りではロウリアの大軍が動き出した。

 

 『北の港』都市外縁から500m。地面という地面に膨大な数の戦列歩兵が並んでいた。その数10万。ネズミ一匹は入れないような強固な包囲陣が敷かれている。

 

 『北の港』から街道沿いに1kmのところに指揮官のテントが置かれており、総指揮を執るエドメンティン・ミミネルが部下の参謀から報告を受けていた。

 

「ーーミミネル将軍。各前衛の戦列展開が完了しました」

「よろしい。特技兵団に『火弾』を投擲するよう伝達せよ」

「ハッ!!」

 

 参謀が伝令に指示を出しに行くと、ミミネルは静かに指揮卓を眺めた。

 

「さてさて。ニホンの力。見せてもらおうか」

 

 

 ロウリア軍特技兵団にミミネルの指示が伝達されると、野営テントに隠された投石器が姿を現した。

 

 特技兵が投石器を発射できるよう準備した。投射される弾は直前に火が点けられ、かがり火のように辺りを明るくしている。

 

「隊長。各隊発射準備完了っ!!」

「よろしい。攻撃はじめっ!!」

 

 ガヒュンッという音を立てて投石器(形状はオナガー風)から次々と火球が打ち上げられ、『北の港』市街に殺到した。

 

 あたりが暗くなってきたということもあり、打ち上げられた火球はとても見えやすかった。だが、その膨大な数に日防軍兵士は少なからず恐怖した。

 

 AFCVに乗り込んだ荒谷は落ち着いた様子で報告を聞いた。

 

「敵野戦軍後方から多数の火炎弾の投射を確認しました」

「慌てるな。各隊は落下地点から退避。相手の発射陣地はわかったか!?」

「敵軍歩兵戦列の後方200mの位置。野営テントに隠していたようです」

「待機中の自走迫に攻撃を指示。目標。敵投石器部隊。送れ」

 

 岸壁沿いに並べられた24台のSPMT(自走迫撃砲)からバスッバスッという音と共に迫撃砲が打ち出された。

 

 100を優に超える投石器の段列に近接信管付きの120mm迫撃砲弾が殺到した。

 

≪だんちゃーく……今っ!!≫

≪効力射有効。続けて攻撃。送れっ!!≫

 

 投石器が爆炎でいくつも吹き飛ばされると、特技兵団の隊長は浮足だって部下に次の攻撃を急がせる。

 

「次の発射準備を整えろ。急げっ!!」

「だめですっ!! 弦がまだ絞れてませんっ!!」

 

 その破壊力はロウリア軍の投石器を超えており、さらに連射性能でも優越していた。

 

「来るぞっ!! 退避ぃ~!!」

 

 迫撃砲弾内の炸薬は投石器とそれを操る特技兵を丸ごと吹き飛ばし、5分もしないうちに投石器はすべて残骸と化した。

 

 

 荒谷はドローンの映像から投石器の段列が壊滅したことを確認した。

 

「荒谷団長。敵投石器部隊は壊滅しました」

「よし。各隊に敵が突撃備えるよう伝達しろ」

「わかりました」

 

 

 ミミネルは戦いが始まって10分もしないうちに特技兵団の殆どが壊滅したことに頭を抱えていた。

 

「ニホンの実力は思っていた以上かっ!! 投射できた火球の数は!?」

「400から500といったところです。予定の10分の1にもならないかと……」

「えぇい仕方ない。投射できたことには変わらんのだ。ワイバーン隊を出撃させろっ!!」

 

 王都ジン・ハークの竜舎から、次々とワイバーンが飛び立った。

 

 

 ワイバーンは自然界の中で捕食者側の部類だ。だが、その目の構造は昼間の活動に適したものとなっており、夜間では空を飛ぶことは困難だった。

 ロウリア軍は遊兵と化していた130騎(追加で配備)のワイバーンを何とか戦場に投入するため策を施した。

 

「夜間に飛べるよう。『北の港』に火を放ちましょう」

 

 作戦計画を練り上げているころ、「火矢程度ではあまり明るくできないのではないか?」と反論されたが、発案者は「投石器で火球を港に投射しましょう。敵戦力を削りつつ、うまくいけば建物に火を放つことでワイバーンの目印になります」と……。

 軍議に参加したロウリア軍将校たちは、その案に半信半疑だった。だが、王宮魔導師であるヤミレイの大魔術は完成することはなかったため、有力な戦力であるワイバーンの投入はある種の決定事項となった。

 ロウリア軍の将軍たちは日防軍の対空能力に不安を抱きつつも、一縷(いちる)の望みをかけて夜間にワイバーン投入できるよう作戦計画と準備を整えたのだ。

 

 

「スターゲイザー隊。全員離陸したな」

 

 飛び立ったワイバーン130騎の内。比較的練度の低い(最近調達した)30騎を率いるのは、とある日の戦いにて日防軍艦隊を前に敵前逃亡したエドルト・フィックス竜騎士だ。

 

 彼は昨年。『ロデニウス大陸北方海戦』にて指揮官アルデバランを始め299騎の味方が次々と落ちていく中。早々に戦意を無くし、そのまま帰還してしまった竜騎士だ。

 もちろん帰還した直後は他の竜騎士や百人隊隊長。さらには動員兵からすら激しい罵倒を受けた。

 ただ、海戦の報告書が届けられると、ごく少数を除いてエドルトの敵前逃亡に閉口した。

 

 パタジンを始め、ホエイル等はエドルトの敵前逃亡を「ニホングンを前に唯一生存した竜騎士」という見方が加わったからだ。

 もちろんエドルトも敵前逃亡を恥じていたが、かといって名誉にもならない屠殺を仲間と一緒に受けたいか?と聞かれれば、勿論NOである。

 

 その後、エドルトは東方征伐軍に戻らず、王都で“アレ(対空ミサイル)”の対処法を独自に考える日々が続いた。

 

 その考えが正しいかどうか、この戦いで見極めるため囮同然の新生ワイバーン隊の隊長をエドルトは引き受けたのだ。

 

「スターゲイザー隊から全騎。出撃前に教えたように、光の矢が見えたら只管(ひたすら)回避運動に専念し、決して敵に一太刀入れようなどとは考えるな。避けて避けて。空を飛び続けることが味方の勝利につながると心せよっ!!」

≪≪≪了解。隊長っ!!≫≫≫

 

 

 空高く飛ぼうとするワイバーン30騎を捕捉したのは、洋上で待機していた巡洋艦『茶臼』とフリゲート『馬淵』だった。

 

 『馬淵』艦長の和田 壱朗中佐はCICの情報を確認した。

 

「艦橋からCIC。バンディットの数は?」

≪CICから艦橋。バンディットの数。高空に30。低空は多数。数不明≫

「艦橋了解……。司令。如何いたしますか?」

 

 和田は隣に座る23戦隊(第2艦隊第3戦隊)司令。上谷 浩輝少将に話しかけた。

 

「艦長。我々はただ浮かんでいればいいというわけではない。直ちに対空戦闘を始めたまえ」

「了解しました。艦橋からCIC。バンディットに対して攻撃を許可する」

≪CIC了解。対空誘導弾。撃ちぃ方ぁはじめっ!!≫

 

 『馬淵』の艦橋前に備わっているVLSハッチが開いた。

 ハッチ横からロケットブラストが暗い海を照らし、1秒ごとに短距離艦対空ミサイルが飛翔していった。

 

 

 日がまだ落ち切っていないながらも、光の矢(ミサイル)から迸る閃光を見つけたエドルトは部下に指示を飛ばした。

 

「ニホンの光る矢だっ!! 全騎散開っ!!」

 

 エドルト達30騎は各々回避行動を始めた。

 

「こ……こっちに来るなぁぁぁああ!!」

 

 運の悪い竜騎士は1分もしないうちに爆音とともに空で散り、それを皮切りに次々とワイバーンが撃ち落されていった。

 

 エドルトは命令を発した後、一目散に低空へと降下した。

 自身が乗るワイバーンは翼を限界まで折りたたみ、限界速度で降下した。そのおかげで、運よく1発は避けることができた。

 

 

 『北の港』上空でエドルト達が決死の演武を踊る最中。残りのワイバーン100騎は味方が置いた篝火を頼りに匍匐飛行で『北の港』へ接近した。

 

「よいかっ!! 高く飛ぶ者(エドルト)たちが敵の攻撃を引き付けている。その間、我らは低空から一気に『北の港』に近づき。敵を一掃するっ!!」

≪≪≪了解っ!!≫≫≫

 

 100騎のワイバーンを率いるのはソーマ・デンキンス隊長だ。

 開戦前から竜騎士団の隊長を務めていたが、開戦から王都防衛に専従していたため、アルデバランのように戦場で散ることもなく今も竜騎士として生存している。

 自分により先任の隊長格は戦死したため、必然的に彼がこの100騎の竜騎士隊を率いることになった。

 

 翼端や尻尾が地面に擦れないよう注意深く飛んでいくと、空の上からバンッ。バンッという炸裂音が数秒間隔で聞こえてくる。

 

 ソーマは内心。彼らの(エドルト)側でないことを安堵していた。明らかに危険な相手に対する囮役など、死ぬ未来以外思い描けないからだ。現に、空の上で飛んでいたであろうワイバーンの残骸のようなものが嫌な音を立てて次々と落ちてきている。

 

 そんな竜騎士として不謹慎な考えを胸に抱いきながらソーマたちは『北の港』へと迫った。しかし、奇襲を想定していたソーマたちとは裏腹に、荒谷たちは100騎のワイバーンを既に捕捉していた。

 

 

≪ーープリズム1(偵察装甲車の符丁)からHQ22。敵ワイバーンが低空から接近中。数不明。送れ≫

「HQ22からプリズム1。ワイバーン接近了解。オーバー」

 

 AFCV(前線装甲指揮車)の少し離れたところにRAV(偵察装甲車)が複合カメラを伸ばして『北の港』に接近する脅威を捜索した。そして、そのカメラはきっちり役目を果たしたのだ。

 

 荒谷は付近の戦力で防空力を持った洋上の鉄城に連絡を取った。

 

「HQ22から『馬淵』。敵航空戦力が低空で接近中。迎撃可能か?」

≪『馬淵』からHQ22。対象はこちらのレーダーで捕捉できない。迎撃困難。繰り返す。迎撃困難。送れ≫

≪『茶臼』からHQ22。こちらも低空から接近するワイバーンを補足できない。送れ≫

「HQ22から『馬淵』『茶臼』。迎撃困難了解。オーバー」

 

 ソーマたちの思惑は日防軍に対してしっかり効果を発揮した。

 

 本来なら、この手の低空脅威を早期探知するためAEW(早期警戒機)AWACS(警戒管制機)を展開させるのだが、未だこの空の上に到達していない。

 

「HQ22からすべての自走対空砲。敵ワイバーンが多数低空より接近中。洋上の援護は困難。各自の判断で攻撃せよ。オーバー」

≪≪≪了解っ!!≫≫≫

 

 第22任務旅団には24両のSPAAG(対空自走砲)が配備されている。さらに、IFV(歩兵戦闘車)WAP(ヴァンツァー)でも限定的ながら対空戦闘は可能だ。だが、頼りとなる対空レーダーの情報は建物が邪魔となっているため探知情報が共有できない。

 

「前線の状態は?」

「所定の通り。自走迫と歩兵による連携で迎撃していますが、敵の数が多く。すべて排除する前に、市外外縁に取りつかれるかと……」

「敵ワイバーンは対空自走砲で対処する。外縁の部隊は所定の通り、手持ちの弾薬を撃ち切ったら後退させろ」

「わかりました」

 

 荒谷の指示が車内に響く中、敵ワイバーンは少しずつ『北の港』に迫った。

 

 

 『北の港』外縁では、曳光弾の雨がロウリア軍重装歩兵に殺到していた。

 外縁の建物2階から日防軍歩兵がドドドッという音を立てながら分隊支援火器で掃射している。

 

「くそっ!! 思ったほど敵が倒れないっ!!」

「ただの大楯じゃない。そのまま撃ち続けるんだっ!!」

 

 分隊支援火器が弾薬ベルトを次々と飲み込んでいくが、発射された弾丸の数に対して、ロウリア軍の死体は多くなかった。

 

 それもそのはず。ロウリア軍は大楯を重装歩兵に持たせるのではなく、押し車に何枚も重ねて固定した物を仕立て上げ、それを最前列に配置してゆっくり前進しているのだ。

 重装歩兵の盾はあくまで人間が持てる重さもあるが、防ぐ対象に銃弾は想定されていない。

 『北の港』奪還作戦を考えるロウリア軍の将官達は、どうやって敵に近づくかという案を考えた。その中である種の自暴自棄でこの攻城兵器?(突撃用盾装兵器)を作り上げた。

 そのヤケクソ染みた急造兵器だったが、今回限りは最大限効果を発揮した。

 たまに押している歩兵が運悪く貫通した銃弾で倒れるが、|従来の大楯による亀甲隊形に比べれば少ない損害《既に1000人以上の死傷者が出ている》で戦列は前進していた。

 

「ミミネル将軍。前線の急造兵器ですが、敵の地を這う流星群を何とか防いでいます」

「あぁ。だが王都にある攻城兵器と大楯のほとんどをこいつに使っている。市内突入時はすべて軽装歩兵になってしまうな……」

 

 戦列の後方から指揮を執るミミネルはゆっくり前進する戦列を後方から眺めていた。

 この急造兵器。最大の弱点はとにかく重く遅いことだ。可能なら馬や牛で押せればよかったのだが、軍馬は騎馬隊に重点的に回されてれ、牛に至っては予算の都合で確保できなかったのだ。

 

 屈強な元重()装兵士達は、自ら装備していた大楯の末路に悲観しつつも、その末路が兵士たちの命を繋ぐ。まさに盾として機能しているのだ。

 そうとも知らず日防軍の前線部隊は弾幕を展開する。

 

 前線で応戦する日防軍の目に、大きく黒い影が迫った。

 

「くそっ!! ワイバーン接近っ!!」

「乗っている騎手を撃てっ!!」

 

 橙色(オレンジ色)に光る銃弾の雨が重装歩兵からワイバーンに狙いを変えた。

 ワイバーンに殺到した曳光弾の雨が数体を地面へと突き落とす。

 

「ちぃっ!! 小癪なぁっ!!」

 

 ソーマは曳光弾の雨から逃れるようにワイバーンを操り。『北の港』の上空へ舞い上がった。

 

「今まで討たれた戦友の仇だっ!! たっぷり喰らえっ!!」

 

 ソーマの乗るワイバーンの口から導力火炎放射が放たれた。

 運悪くすぐ近くに機関銃を構えていた日防軍兵士に降り注いだ。

 

「うわぁぁぁっ!!」

「あぁ。あついぃぃっ!!」

 

 日防軍兵士の苦しむ姿にソーマは高揚したが、それも一瞬だった。

 

「目標。敵ワイバーン。撃てっ!!」

 

 射撃準備を整えていた自走対空砲の35mm弾が殺到し、ソーマは叫ぶ間もなく小間切れにされた。

 

 ソーマに率いられたワイバーン隊は同じように『北の港』へと進入した。しかし、事前に日防軍はワイバーンを捕捉できていたこともあり、ほとんどの個体は攻撃する間もなく自走対空砲の餌食となった。そして、100騎のワイバーンはものの数分で空から消え去った。だが、日防軍も少なくない被害を受けた。重機関銃を据えた陣地が数か所破壊され、火やワイバーンの残骸で押しつぶされる建物が何十と発生した。市内はまるで地獄に似た様相を見せていた。

 

≪プリズム1からHQ22。敵ワイバーン全騎撃墜を確認。送れ≫

「HQ22からプリズム1。敵ワイバーン全騎撃墜了解。そのまま低空を監視せよ。オーバー」

「荒谷団長。敵ワイバーンの攻撃より死傷者発生。さらに、外郭防衛線数か所に敵が取り付きました」

「所定に基づき外郭防衛線は順次放棄。及び外郭防衛線各陣地の発破準備を指示する」

「わかりました」

 

 荒谷はこの『北の港』において防衛戦になった際、いくつかのプランを考えていた。その中でまずいと考えたことは『多数の敵兵が津波のように市街に流入すること』だった。

 まず単純に22旅団は兵員数的に劣勢(6千強)である。技術的格差により対応可能だが、建物1軒1軒が陣地化されているわけではない。

 いかに日防軍がセンサー設備満載のUAVや装甲兵器。歩兵装備で固めようとも。抜け道自体は十分に存在する。そして、その抜け道を完全にふさぐことは難しい。

 敵が少数ならどうとでもなるが、これが数に物を言わせて市内に攻められては、個々のユニットが敵兵の津波に巻き込まれて建物単位で孤立する危険があるのだ。

 

 部隊が孤立する危険があるなら防衛線を縮小する。当然の選択である。

 

「後退指示が出た。余っている銃弾は可能な限り持ち帰るぞっ!!」

「高野っ!! C4の点火用意だっ!!」

 

 外郭防衛線の陣地が放棄されていくと。自然と銃火の数も減っていく。

 

 後方の指揮幕ではミミネルが伝令から報告を受けていた。

 

「ミミネル将軍。幾つかの部隊が敵陣地に到達しました。さらに、敵からの攻撃も弱まりつつあります」

「ふむ。誘われているか可能性はあるが、引くという理由はない。全体に攻撃を継続するよう指示を出せ」

「ハッ!!」

 

 ロウリア軍は銃火が弱まったことを好機と捉え、次々と市外外縁の建物に侵入しようと試みる。しかし、日防軍は市街進入を少しでも防ぐため、正面と岸壁端の3か所以外。さらに外縁沿いの建物1階はすべて入れないように塞いでいる。

 

 ロウリア軍はすでにそのことを承知しており、重装歩兵の後ろには、梯子やハンマーを持った兵士が何人も続いている。

 銃火がなくなったことにより、次々と建物やバリケードを超えようとロウリア軍は駆けずり回る。

 

「よし。中にニホン兵がいないか確認しろっ!!」

 

 ロウリア軍が建物に入ると、知らないうちに踏んだワイヤーセンサーが作動した。

 

「荒谷団長。敵軍が外郭防衛線に侵入しました」

「前衛の後退は完了したか?」

「あと少しです」

 

 日防軍兵士は外郭防衛線から退避すると、大急ぎで報告を上げた。

 

≪アルカディア1からHQ22。アウターライン(外郭防衛線)から全チームの後退を確認。送れ≫

≪ブルーマンデー1からHQ22。アウターラインから全チームの退去完了。送れ≫

≪コスモポリタン1からHQ22。コスモポリタン全チーム。アウターラインから退去完了。送れ≫

「荒谷団長。外郭防衛線の全部隊退避完了」

「よろしい。各隊に伝達。外郭防衛線を発破せよっ!!」

「了解。アルカディア。ブルーマンデー。コスモポリタン各隊はアウターラインを爆破せよ。送れっ!!」

≪≪≪了解≫≫≫

 

 外郭防衛線から退避した日防軍兵士は手元のC4点火装置を起動させた。すると、市街外縁の建物が次々と次々と崩れ始めた。

 

「何だっ!? 何が起きたっ!?」

「崩れるぞぉぉ!!」

「ギヤァァァーー……」

 

 丁度中を漁っていた兵士達は崩れる建物ごと押しつぶされ、梯子で越えようとした兵士はC4で吹き飛ばされた。

 

 指揮幕ではミミネルの元に伝令が飛び込んできた。

 

「報告します。『北の港』外縁の建物が一斉に崩れ落ち、多数の兵が巻き込まれました」

「いったい何があったのだっ!?」

「わかりません。無事だったものの話では、“何かが爆発するような音がした”と聞いております」

「ニホン兵共は我らが外縁に迫ることを見越していたか……だが、敵は防壁をの一つを失ったことを意味する。進撃を続けてーー」

 

 ミミネルが命令を発しようとした瞬間。別の伝令が駆け込んできた。

 

「ミミネル将軍。敵から猛烈な地を這う流星群を受けております。さらに、投石器を破壊した爆轟も降り注いでおり、多数の兵が死傷しております。また、崩れた建物が兵たちの進軍を妨げております。ご指示をっ!!」

「そんな馬鹿なっ!! まだ戦いが起きてから1刻(約2時間)も経っておらんのだぞっ!? ワイバーンも投石器もないのだ。残骸を踏み越えて進軍させるのだっ!!」

 

 ミミネルは手元の戦力を確認した。投石器は全て失われ。ワイバーンは既に1頭も残らず叩き落されていた。しかし、王都に残されたとある戦力を思い出した。

 

「伝令。王都守備隊に魔導兵団を寄こすよう要請を出すのだ」

「ハッ!!」

 

 ミミネルの要請に王都で様子を見ていたパタジンも応え、出せるだけの魔導兵団と歩兵戦力を増援として差し出した。

 

 

 荒谷たちの方でも、その増援が迫っていることは確認できた。

 

「荒谷団長。王都より多数の歩兵が出現。増援のようです」

「数はわかるか?」

「軽く数万は居るかと……自走迫に敵増援を狙わせますか?」

「いや。あえて合流させる。あと1時間もしないうちにこちらも増援が到着する」

「わかりました」

 

 車内にいる荒谷は、無意識に東の方へと視線を向けた。

 

 

 外郭防衛線を破壊し、ロウリア軍は遮二無二残骸を超えようと前進。対して日防軍は重機関銃や分隊支援火器。自走迫の攻撃を以てロウリア軍の屍の山を大量に築いていた。

 残骸の陰には血だまりが所々で生まれ、人間の一部だったものも混ざっている。だが、それでもロウリア軍全体の被害で言えばまだ許容範囲(約2万人が死傷)であり、増援の戦力も控えている。

 

「怯むなぁっ!! 進mーー」

 

 ロウリア軍兵士たちは地を這う流星群に臆せず進もうとするが、身を乗り出した瞬間に重機によって肉片へと変えられていく。

 

「給弾と銃身交換急げっ!!」

「敵を近づかせるなっ!!」

 

 日防軍側もありったけの銃弾をロウリア兵へと浴びせていく。

 

 日が完全に落ちてから約2時間。日防軍はロウリア軍に砲火を浴びせながら踏みとどまり。ロウリア軍は戦死した仲間の死体を超えて前進を続けた。

 そして、荒谷が乗るAFCVに通信が入った。

 

≪ハープ1からHQ22。通信テスト。繰り返す。通信テスト。送れ≫

「HQ22からハープ1。通信良好。繰り返す。通信良好。送れ」

≪ハープ1からHQ22。『北の港』上空まで後10分で到達する。爆撃地点を指示されたし。送れ≫

「HQ22からハープ1。到着予定時刻1940。オーバー……宮野。空軍の攻撃隊がやってくる。IRニードルと閃光弾を用意してくれ」

「急ぎ指示します」

 

 日没から続いた戦いに日防軍は渾身の一撃を用意し始めた。

 

 約10分。ロウリア軍が残骸を超えようと四苦八苦する中、空がいきなり明るくなった。

 

「なんだこの明るいのは?」

「魔導兵団が閃光魔法を使ったんじゃないか?」

 

 空を明るくしたのは、自走迫が発射した閃光弾だった。さらに、IRニードルも閃光弾に紛れ込ませて発射している。

 

 『北の港』から距離にして10km。高度6,000mの上空に闇夜に溶けた渡り鳥が飛んでいた。

 

「ハープ1からハープ各機。第1弾投下用意」

 

 4機のA-3B攻撃機が爆弾倉を開いた。

 

「投下5秒前……3……2……1……ボムズアウェイ!!」

 

 爆弾倉から1つ。また一つと等間隔で爆弾が投下される。

 ヒューという音を立てながら落ちていく96発の100kg爆弾は敵軍の頭上に到達すると、信管が作動して次々と爆発した。そして、爆轟が起きると何万ものロウリア兵が次々と消し飛ばされた。

 

 ロウリア軍指揮幕では轟音と爆風が吹き抜け、いったい何が起きたのかと驚愕していた。

 

「いったい何が起きたっ!? 伝令はどこだ!?」

 

 ミミネル達は辛うじて爆弾の加害範囲から離れた位置に居たため、指揮幕が捲れるだけで済むんだ。そして、ミミネルたちが外を見ると、辺り一帯から焼け焦げた匂いに満ちていた。

 

「うわぁぁ熱い。熱いよぉっ!!」

「誰かぁ。手を貸してくれぇ。足がなくなっちまったよぉ……」

 

 辺りを照らしていた篝火は倒れ、松明を持つ兵士はほとんどいない。草木には火が燻り、辺り一面が地獄を体現したような光景が広がっていた。

 

「こっ……これは一体何なのだ!?」

 

 ミミネルたちは戦列より後方にいたことにより被害を免れた。しかし、膨大な戦力を消し飛ばされ(・・・・・・)、ミミネルを含んだ多くのロウリア軍将兵の士気はガタガタに落ちていた。だが、悪夢はここで終わらなかった。

 

 前線の軍と合流のため動いていた増援の戦力の頭上にも爆弾が落とされたのだ。

 

 ドカンッドカンッと炸裂音が指揮幕の後方で響くと、これまた多くの兵士が吹き飛んだ。しかも、貴重な魔導兵団を含んでだ。

 最初に導入した戦力は多くが吹き飛び、増援で訪れた戦力も過半が死傷してしまった。

 ミミネルの元にはまともな伝令すら来ることがなくなり、ただ“動けるから”というだけで代理の伝令が“我が隊は壊滅しました”という報告をして動かなくなるものがほとんどだった。

 どの兵士も、もはや戦意のせの字すらなく、ただただこの火が消え去るのを待ち望んだ。しかし、日防軍はその程度で戦いを止めるほど生易しくなかった。

 

「HQ22からメイス及びナックル。反撃行動を開始せよ。送れ」

≪メイス1からHQ22。反撃を開始する。オーバー≫

≪ナックル1からHQ22。『北の港』の外へ向かう。オーバー≫

 

 『北の港』正面と岸壁東の2か所から街道の障害を除去しつつAEV(装甲工兵車)を先頭に反撃戦力が出陣した。

 

 メイスは22旅団隷下から2個戦車大隊と1個機械化大隊で臨時編成された戦闘団だ。戦車60両を中核に18両のIFVが直協支援で続く。

 ナックルは隷下のWAP中隊5個に1個機械化大隊。さらに戦車大隊のWAPを組み込んだ近距離戦闘を重視した戦闘団だ。WAP52機にIFV18両。さらに特例として大型機動兵器『ガルセイドXO』が2機参加している。

 

「メイス1から各メイス。敵主力を右翼より殴りこむぞ。全車我に続け」

「ナックル1から全ナックルへ。草刈りの時間だ。動ける奴はすべて標的だと思え」

 

 爆撃を受け、壊滅状態のロウリア軍にとって2つの戦闘団が戦場に投入されたことは、ある種の死刑宣告となった。

 

「『北の港』から巨人(ヴァンツァー)が出てきたぞっ!!」

「1体や2体じゃないっ!? もっといるぞっ!!」

「何だあの4つ足(ガルセイド)はっ!? 巨人よりでかいっ!?」

「に……逃げろぉ~~!!」

 

 最初に接敵したのは戦闘正面に展開した22.2戦闘団(“ナックル”の正式名称)だった。

 WAPやガルセイドの装備する火器が火を噴くと、燃えカス同然となった生き残りのロウリア兵に止めを刺していく。

 肉と土の山が至る所で生まれ、それを日防軍兵士は生き残りが居ないか刈り取っていく。

 

「クソッ……これでも喰らえっ……!!」

 

 少ない生き残りの中で、何とか闘志を残していたロウリア兵が集まってWAP相手に矢や槍で対峙するが、直後に缶ジュース(缶コーヒー位)位の大きさの銃弾(・・)が殺到。反撃したロウリア兵を跡形もなく肉片へと変えてしまった。

 

「退けっ!! 退けぇ!!」

「こんなの戦いじゃねぇっ!!」

 

 生き残ったロウリア兵の多くは我先にと逃げ出した。しかし、戦闘団は背を向ける敵兵にも容赦なく銃弾を浴びせ続けた。

 

「何だあのカニ(ガルセイド)みたいな奴はっ!?」

巨人(ヴァンツァー)より大きいっ!?」

「あれから離れろっ!! あれの腕は魔導兵器だっ!!」

 

 ガルセイドの進路上に運悪く隊列を組んでしまったロウリア軍の集団は、ガルセイドが装備する両腕のキャノン砲がドウンッと轟音を奏でると、その集団は跡形もなく吹き飛ばされた。

 

 

「我々は、いったい何と戦っているのだっ!?」

「将軍っ!! ここは危険です。急ぎ後退をっ!!」

 

 ミミネルは眼前の戦場で繰り広げられる行いに、参謀の声すら耳に届かず、ただただ戦場を眺めることしかできなかった。

 もはや指揮は崩壊しており、ロウリア兵の多くは、狼から逃げる羊の群れと化していた

 そして、ミミネルの絶望した視線がガルセイドの射線と重なった時、運命は定まった。

 

 ガルセイドのキャノン砲が火を噴き、砲弾はミミネルと随伴の参謀団の両方を吹き飛ばした。

 

 ミミネルが戦死した後も、ロウリア軍の悲劇は続いた。

 まともな戦力がない中。ロウリア軍右翼より22.3戦闘団(“メイス”の正式名称)の攻撃が始まった。

 後退が遅れた敵兵は王都に逃げ込もうと敗走しており、標的といえる存在ではなかった。

 

 車内の時計が0時を回るころには、激しかった戦闘音のほとんどはなくなり、せいぜい銃撃の音が時たま聞こえる程度にまで静かになっていた。

 

「荒谷団長。ナックルとメイス各隊から“残敵なし”の報告が多数届いています」

「なら、最後の仕上げといこうか……所定に基づき、王都の城壁まで移動してくれ」

「わかりました」

 

 『北の港』中央陣地で指揮していた荒谷たちは、この戦争を終わらせるため、護衛を伴ってAFCVを『王都ジン・ハーク』の城壁外周まで移動させた。

 

 荒谷が乗る幕僚団は『北の港』と『王都ジン・ハーク』の街道を利用するが、街道だった痕跡しか残っておらず、数多くのクレーターで進みは遅かった。

 20分ほど道を進んだ後。荒谷たちは『王都ジン・ハーク』の北城門20mの位置まで近づいた。

 

「長野中佐。頼んだ」

「わかりました」

 

 荒谷に命令された長野はAFCVのハッチから顔を出した。

 城壁のロウリア軍は攻撃準備を整えるが、手は出さなかった。

 手を出したらどうなるか、着の身着のままで逃げ帰ってきた味方の様子を見れば一目瞭然だからだ。

 

 城門の衛兵は目の前に鎮座する鉄馬車に対して恐怖を抱いたが、その心を何とか押し殺して誰何した。

 

「ここは王都ジン・ハークである。ここに何用かっ!?」

「こちらは日防軍である。ロウリア王国国王に伝えたいことがある」

「こちらで伝えるが、宜しいか?」

「かまわない」

「では、言伝を教えられたい」

「わかりました。“降伏せよ。回答は明朝まで待つ。降伏以外の回答。もしくは行動を選択した場合。『王都ジン・ハーク』の一切を破壊する”とお伝えしていただきたい」

 

 衛兵は長野の言葉に激高しそうになったが、冷静に返答した。

 

「ーー直ちに伝える……」

 

 衛兵は駆け足で衛兵詰め所へと走っていった。




解説
『ガルセイドXO(エックスオー)
 出典元は『フロントミッション5th』に出てくる『ガルセイドXM』及び『ガルセイドXN』を参考に作中オリジナルの機体。分かりやすい四脚双腕の大型機動兵器。設定集では『霧島重工製』となっており、ゲーム中で言及されていないが複数製造されていると思われる。
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