OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第7話

中央暦1939年 1月30日

-パーパルディア皇国 エストシラント-

 

 パーパルディア皇国。この世界においてその名を聞けば『第3文明圏最強の国』と言われる存在であり、列強の一角である。

 その列強国の首都エストシラントの港には百隻以上の戦列艦が鎮座している。

 いつもなら「我が皇国の戦列艦は世界一ィィィ!!」と答えるのだが、今回はどの水兵も港から1㎞離れた灰色の軍艦に目を奪われていた。

 投錨している灰色の軍艦はOCU日本軍艦の一隻である。

 水兵たちはそれぞれ思い思いのことを口にしていた。

 

「あれはミリシアルの軍艦か?」

「白地に赤い円。あんな国旗見たことないぞ」

「何処の軍艦なんだ? こちらより明らかに大きいぞ」

「何でもニホンとかいう国から来たらしいぞ」

「ニホン? 中央世界にそんな国あったか?」

「いや、何でも東の方から来たらしい」

「東? ここから東と言ったら小さな島しかないだろう」

「それ以上東となると、荒れた海が広がっていてまともに航行できないと聞いたが?」

「まぁあんなでかい船を持っているんだ。荒れた海を超えるのも難しくないんだろうよ」

「はぁ。ニホンとかいう国が敵じゃなければいいんだがなぁ……」

 

 水兵たちが話しているころ、同じ時に巡洋艦『愛鷹』の艦橋から岸壁を眺める目が複数あった。

 

「……凄い数の戦列艦だな。圧巻とは正にこのことを言うのだろうな」

「大航海時代全盛期のイギリスやスペインもこれだけの戦列艦を持っていたでしょうな」

「かもしれないな。しかし、所詮は帆船。この(愛鷹)に敵うことはあるまい」

「艦長。戦うことを前提にしないでください。聞く相手次第では艦を降ろされかねませんよ?」

「そうだな副長。今の話は秘密で頼む」

「はぁ……。わかりました」

 

 『愛鷹』艦長の牧田は艦の中へと戻っていった。

 『愛鷹』がここで投錨しているのは、外務省から特使である吉川達を護衛する為である。

 現在、吉川とパーパルディアの間で外交交渉が行われており、その結果を待っているのだ。

 

 パーパルディア皇国は外交において外務局が3種類存在する。それぞれ相手国の格によって対応する外務局が変化するからだ。

 列強と言われる国家を相手にする第1外務局。

 列強国に劣れど文明国を相手にする第2外務局。

 文明国に属さなさいという点で劣等と判断した相手に対応する第3外務局。

 パーパルディアは列強国の一角だ。もしパーパルディアと外交交渉をしようとするなら、ほぼ第3外務局が最初の相手となる。しかし、パーパルディア側は日本特使に対して普通ではありえない程慎重に対応していた。というのも、沖合で投錨する巡洋艦『愛鷹』が列強国で最も強力な神聖ミリシアル帝国の魔導戦艦と酷似していたからだ。

 ニホンという国名を聞いたとき、外務局の局員は「自分たちの知らない蛮族の国家なのだろう」と最初は考えた。しかし、エストシラント港に誘導された軍艦を見た職員は、一様に「ニホンはミリシアルの息がかかった国家ではないか?」という疑念が生じた。

 パーパルディアにとってミリシアルは大洋を挟んだ格上の国家であり、そして仮想敵国でもあるのだ。

 もしミリシアルの保護国もしくは衛星国の1つなら下手な行いがそのままミリシアルとの紛争に繋がりかねない。そう感じた外務局員は慎重にならざるを得なかった

 今回、第3外務局局長のカイオスと第2外務局局長のリウス。そして外務局監査室から派遣されたラキーネアの3人は補佐の局員とともに緊張した面持ちで吉川と応対していた。

 

「――では、貴国の仰ることが本当なら、凡そ2週間前にこの世界に国土ごと転移した国家であり、神聖ミリシアル帝国の保護は受けていないということですか?」

「そうです。我が国は独立国です。宗主国はなく、属国もありません」

「そうですか。とりあえず話は戻りますが、貴国は何のために我がパーパルディアを訪れたのですか?」

「……我が国と貴国の間で国交を交わし、そして可能な限り可及的速やかに通商条約。貿易条約を締結することです」

「通商条約ですか……。失礼ですが、貿易品目のリストはありますか?」

「こちらになります」

 

 3人は吉川が出した書類の厚さより、紙自身の品質に驚愕した。パーパルディア国内で流通する紙といえばザラっとした薄茶色の羊皮紙が主流だ。しかし、提供された紙は陶器のごとき白さと、繊維特有のザラザラがほとんど感じられなかった。

 ただ悲しいかな、3人はリストの内容が全く分からなかった。

 

「吉川特使。申し訳ないが、このリストは何語で書かれているのだ? 全く読めないのだが……」

「えっ!? すみません。てっきり言葉が通じるので、文字も大丈夫だと勘違いしてしまったようで……」

「リストは追々翻訳するとして、可及的速やかな通商条約の締結とおっしゃっていたが、優先すべき品目などがあるということですかな?」

「そうです。融通していただきたいのは食料です。我が国の生産量と備蓄だけでは、おそらく1年も持たないのです」

「ほう。食料ですか……。失礼。少し席を外しても?」

「はい。大丈夫です」

 

 3人は他の局員をおいて一旦応接室から退出すると、隣の会議室に入った。

 3人は各々座ると、ラキーネアが口を開いた。

 

「お二方。ニホンのこと。どう思う」

「嘘をついているとは思えません。ある種の必死さが窺えますので」

「私もリウス局長と同じ意見です」

「そうですか。私はニホンのことを皇帝に報告して、国交開設の承認を得ようと思います。異論はありますか?」

「異論はありませんが、皇帝陛下がニホンにどの程度理解を示すかという点で懸念があります」

「仕方ありますまい。皇帝陛下の心中は皇帝陛下しかわからないでしょう」

「私個人の考えですが、恐らくニホンは我が国を超える技術が多数あると見ています。通商条約を餌に技術開示を迫れば、断りずらいでしょう」

「確かに妙案です」

「国益の最大化を図るなら、相手の弱みは最大限に活かさないと」

「そうですな。しかし、ニホンの特使は如何いたしますか? 他の文明圏外国も交渉のために外務局へ訪れています。国家の格を見せつけるために一度返しますか?」

「そうですね。3か月後に再度来ていただきましょう。その間、国交締結の承認と通商条約の草案を外務局監査室で作成します」

「わかりました」

 

 ラキーネアは会釈すると会議室を後にした。

 カイオスとリウスは吉川が待つ応接室に戻り、3か月後に再度会談を行うことで合意した

 吉川は3か月後の会談を了承し、愛鷹へ戻っていった。

 

 吉川たちを回収した愛鷹は日本へと針路を向け、帰路に就いた。




余談みたいなもの。

日本「おっ! 大陸あるやんけ。ちょっと見てくるわ」
パ皇「知らん国やな、文明圏外? 船でかいな」
日本「国交と条約結ぼうず♪」
パ皇「ちょっち考えさせてクレメンス(ミ帝の手先じゃないよな?)」



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